第三十一話 冷たい冷たい甘いもの
本当に色々あった次の日、いよいよアーニーさんの作業が始まった。
ヒヒイロカネ製の剣を直すのだ。
見てみると、作業は至ってシンプルだった。
剣を熱く熱して、叩いてまた熱して叩いて・・。
その繰り返しだった。
でも補佐丸が言った。
この作業はひたすら自分の魔力を剣に注ぎ込んでやる作業だと。
そうしなければ、特別な金属であるヒヒイロカネ製の剣は直せないらしい。
そう考えると、凄くしんどい作業だ・・。
アーニーさんは汗だくで、何度も剣を打っている。
だから私もできるかぎり協力しようと決めた。
お家に泊まらせてもらってるしね!
「さすがは師匠。俺もお手伝いします」
「我が主よ。この私に何なりとご命令を」
「ルルもがんばるぅ!」
私の提案に皆乗ってくれた。
ありがとう!
「にしても、パテルさん随分口調が変わったね」
「私は今、貴方様の忠実なる従魔ですから」
パテルさんは人型のままだ。
格好が格好なだけに完全な執事だよ。
しかも超イケメン執事。
執事喫茶だと、ご指名殺到しそう。
「馬は馬らしく、縄でつないでおきましょう師匠」
ヒューゴ、その縄どっから出したの?
「忘れたか?我は主の従魔。よって主の言う事しか聞かない。お前にどうこう言う権利はないんだぞ?」
小馬鹿にしたような口調のパテルさん。
私以外は元の口調に戻るみたい。
「黙れ!今この場で切り刻んで魔物の餌にしてやる!」
「はっ我とお前では力の差がありすぎるというのに、口だけは達者だな!」
うーん、この二人めちゃ仲悪い。
言ってる事が物騒だし、ルルにあんま聞かせたくないなぁ。
ルルは・・あ、また魔物の骨で遊んでる。
アーニーさんは良いって言ってくれてるけど(ちなみにあの骨は武器や道具作りに使うとか)。
「はいはーい!喧嘩は禁止!仲良くして!」
ぱんぱんと手を叩いて制止。
「今度喧嘩したら、から揚げ食べさせないよ!塩おむすびも禁止!!」
ぴたっと二人の喧嘩が止んだ。
凄いな、から揚げと塩おむすび効果。
「く・・・仕方がない。一時休戦だ」
「致し方あるまい・・」
何言ってるんだか・・。
「いーい?私は基本喧嘩嫌いっ。特に仲間同士のはね。もし冒険中に喧嘩して仲たがいしてる時に魔物に襲われたらどうなる?
どんなに強くても、必ずそこに隙が生まれる。んでジ、エンド!
そんな事になったら嫌でしょ?勿論お互い思う事はあるだろうけど、そんな時は喧嘩腰にならずなるべく話し合う事!分かった?」
もっともらしい言葉を選んでもっともらしい事言ってみたり。
はたして二人に効くだろうか・・。
「し、師匠・・!俺、まだまだ修行が足りませんでした!師匠の言う通りです・・っ。つまらぬ事で身を滅ぼすなんてあってはならない事です!」
「主のお言葉、心に染みました・・!私も反省いたします・・・」
めっちゃ効いたー!!
「いやまあ・・分かってくれたなら良いよ、うん・・・」
まあとにかく良しとしよう。
んじゃ改めて・・。
「頑張って剣を直してくれるアーニーさんの為に、アイスクリーム作ろうと思うの!」
甘くて冷たいアイス。
汗だくで明らかに暑そうなアーニーさんに是非食べてもらいたい。
「あいす、とは?」
「牛乳やクリームとかを混ぜて、冷やして固めたものだよ。冷たくって甘くておいしいよ」
「ルルもたべるー!」
ルルが甘くておいしいと聞きつけて飛びついてきた。
ルルちゃん・・また何の魔物か分からない骨なんか被って・・どっかの民族みたいだよ。
「冷やすのには本当なら冷凍庫使うんだけどね。ないから氷魔法で冷やしてもらわなきゃならないけど、ヒューゴもパテルさんも氷魔法使えるよね?」
「御意」
「勿論です。師匠、冷凍庫というのは?」
この世界にはやっぱりないみたいだね。
「冷凍庫ってのは私の世界では、食べ物を氷みたいに冷たく冷やして長期保存させる箱・・かな?あと冷蔵庫ってのもあって、それは冷凍庫みたいに冷たくはないけどたまごや肉とか飲み物を入れて冷やして保存させる箱だよ。温くなった飲み物も冷蔵庫に入れておけば冷たくなるんだよ」
「ふむふむ・・つまりアイテムボックスなしで、食料を長く保存させておく事ができる箱ですね」
「うん、まあそういう事かな。やっぱり食べ頃とか期限もあるからアイテムボックスみたいにずーっと入れておく事はできないけど、あると色々便利だよ。アイスとか他の料理を作る時にも便利だし」
「そうですか・・・」
ヒューゴはぶつぶつと何か考え込んでる。
ど、どうしたんだ?
「師匠、冷凍庫というのは凍らすのが目的なら冷蔵庫は飲み物が凍らぬ程度に食料を冷やすものですか?」
「え、うん」
「分かりました・・!なら俺、冷蔵庫と冷凍庫作ってみます!!」
「えええ!?」
つ、作るって創製魔法で?
「で、できるの?ヒューゴ、冷蔵庫とか知らないでしょ?」
「はい。ですが師匠の説明で何とかできそうです。俺の持ってる氷の魔石と俺の魔力でできるかと・・!」
「も、もしできたらすごく便利だけど・・」
そしたら味付けした肉をしばらく冷蔵庫の中で漬けて置く事できるし、ゼリーとかデザートも作れるけど、本当にできるの?
「とにかくやってみます!!ルル、師匠の手伝い任せたぞ。パテル、今回は仕方がいないからお前に任せる、くれぐれも師匠の邪魔だけはするな!」
ヒューゴはそう言って、集中する為に家の中へ入った。
な、何か凄い事になってきた。
「パパ、はりきってたー」
「うん、凄くはりきってたね」
「奴は魔道具師の方が向いてるのでは?」
うーん、まあ冷蔵庫や冷凍庫ができれば本当に便利だし、ここはヒューゴに任せよう。
本当にできたらすごいしね!
上手くいかなくても、私が術で作ればいいかも。
「んじゃとりあえずアイス作り、始めようか」
作業用の机に材料を並べる。
牛乳と上白糖を鍋に入れて、コンロを弱火にして牛乳が沸騰しないようよくかき混ぜる。
ボウルに溶きほぐした卵黄に鍋の牛乳を少しずつ入れて混ぜて、こしザルでまた鍋にこしながら入れ直して、中火でまた温める。
生クリームは一生懸命ルルがかき混ぜてくれてる。
ボウルがひっくり返らないよう、パテルさんが押えてくれてた。
「パテルさん、このボウルに氷少し入れてくれる?」
「分かりました」
水を入れたボウルの中に、パテルさんが大粒の氷をいくつか入れてくれた。
とろみがつき始めた牛乳を別のボウルに移しかえて、氷水につけてしばらく冷やす。
「冷えたら生クリームをここに入れて・・」
「できました師匠!!!!」
「はや!!!」
家の中から出てきたヒューゴの第一声。
え、嘘でしょ?
「見てください師匠!これでどうでしょうかっ」
ヒューゴが出したのは、まさに冷蔵庫そのものだった。
1人暮らし用の、小さめなまんま冷蔵庫。
「冷蔵庫と冷凍庫、どうせなら二ついっぺんにくっつけた方が良いかと思ってこんな形にしてみました。上が冷蔵庫で下が冷凍庫です」
いやもうまんまだよ!
まず冷蔵庫を開けてみる。
「わあ、台もある」
「その方が食材を置くのに便利かと思いまして」
中もひんやりしてるし。
続いて冷凍庫を・・。
うわっつめた!
まさに冷凍庫だこれ!
補佐丸、これ完璧な冷蔵庫だよね?
『お答えするでござる。ヒューゴ殿が作ったこの箱は主殿の世界でいう冷蔵庫と全く同じ働きをするでござる。冷蔵部分は約5℃を保ち、冷凍部分は約マイナス18℃を保っているでござる』
よし!完璧だ!!
「凄いよヒューゴ!!完璧な冷蔵庫だよ!冷凍庫、この場合冷凍室っていうんだけど完璧だよ!!」
「師匠・・!こんなに褒めてくれるなんて、俺感激です!」
思わず手を取って喜んでしまった。
でもほんと、あの説明だけでこんな立派な冷蔵庫作れるなんてヒューゴ凄すぎ。
流石は天才Sランク!
「主の世界には不思議なモノがあるんですね」
「ひんやり~~」
ルルが冷凍室に頭を突っ込んでる。
こらこら、冷凍スライムになっちゃうよ。
「でもこれで美味しいアイスクリームが出来上がるぞ!」
牛乳と生クリームを混ぜ合わせて、バニラエッセンスも少々。
パットに混ぜた材料を流し込んで、後は30分冷凍室へ・・・。
うまく固まるか・・・!
30分後。
冷凍室を開けると、アイスクリームは上手い具合に固まっていた!!
よし成功!!
でもこれで完成じゃない。
ここでいったんかき混ぜてまた冷やして固めるによって、より美味しくなるのだ!
ヒューゴ達は残念そうな顔をしたけど、しばし待て。
再び固まるのを待つ・・・。
「ん・・・・」
一口味見・・。
「・・・美味しい!!!」
見事にアイスクリームは大成功だ!
甘さもちょうどいい。
「ルル、アーニーさん呼んできて。休憩にしようって」
「はーい!」
私達はアイスをスプーンを使って小皿に移していく。
少しして汗を拭いながら、アーニーさんがルルと来た。
「何だこりゃあ?」
「アイスクリームと言います。冷たくて美味しいですよ」
「ふーん?」
スプーンでアーニーさんがアイスを一口。
「!!!!な、何だ!?すんげーつめて!!でも、うまあああああああい!」
良かった、アーニーさん気に入ってくれたみたい。
ヒューゴ達もアイスに感激している。
「何て滑らかな・・・これは暑い日に食べるとより格別ですね」
「上品な甘さだ・・・家畜が出した乳がこんなに美味なるものに変わるとは」
家畜が出した乳って・・その通りだけど言い方。
ルルは特に気に入ったみたい。
「おかわりー!」
「俺もだ!」
「師匠俺も・・」
「我もだ」
「はいはい」
そう言うだろうと思ったよ。
それにしてもヒューゴは本当に良いもの作ってくれたよ。
これからもこの冷蔵庫、大いに役立ちそう。
イクミ達は冷蔵庫を手に入れました!
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