第二十九話 漆黒の一角獣~フラグは成立する為にある~
『会いたかったぞ紛れ者』
いや迫力半端なああああああい!
み、見ただけで分かる・・!
鑑定しなくても分かる。
目の前にいるこの黒い馬は、とんでもなく強い・・。
これまで遭遇した魔物なんか目じゃない。
きっとヒューゴよりも、強い。
「師匠!下がっていてください!」
ヒューゴがニエンテを手に、私の前に出た。
アーニーさんも巨大な斧をいつの間にか手にしている。
ルルは私に抱き付いて黒い馬を睨んでいる。
「何者だ貴様・・・!」
「魔物除けの結界を突破しやがったのか・・?」
『我にあのようなレベルの結界、効くわけがないだろう』
黒い馬、馬鹿にしたような言い方してる。
あ、アーニーさんに怒りマークが浮かんだのが見える・・。
ヒューゴは今にも特大級の魔法を放ちそうだ。
『武器を下げろ。最もそんなもの我には効かぬが、我は争いを起こしに来たのではない』
それを聞いて、私は黒い馬を見つめた。
確かに、敵意はなさそう。
戦うつもりならとっくに攻撃してきてるだろうし・・。
「な、なら・・何しにきたの・・・?」
黒い馬は、にっと笑った気がする。
『我はそれを求めに来た』
黒い馬が蹄である方向を指差す。
差された方向を皆が振り向く。
それは、まだ残っていた山盛りのから揚げと塩おむすびだった。
『うむ、うむ!やはり絶品っ』
がつがつと黒い馬はから揚げと塩おむすびを食べている。
お味噌汁なんか、鍋のまま飲み干した。
よく食べるなぁおい!
ヒューゴとアーニーさんはまだ警戒心MAXだ。
いや、当たり前だろうけど・・。
ルルは、羨ましそうに黒い馬を見ている。
「ルル、まだ食べたかったのに・・」
食の方だったか。
また作ってあげるよルルちゃん・・なでなで。
「貴様、いったい何者なんだ・・」
全て平らげた黒い馬にヒューゴが睨みつける。
『我か?我の名はパテル。冥界を統べる冥王様の元配下であり、漆黒の一角獣の一人である』
はい漆黒の一角獣さんでしたーーー!!!
フラグ成立ううううう!!
ご対面した時から予想はしてたけどね!!!
「し、漆黒の一角獣だと!!?伝説級の魔獣じゃねえか・・・・!」
アーニーさん後ずさった。
てか伝説級なんだ・・。
ちょっと、怖いけど鑑定してみよう・・・。
こっそり状態情報の術を使ってみる。
【名前】パテル
【年齢】3020歳
【種族】漆黒の一角獣
【レベル】1210
【魔力】9680
【攻撃力】9900
【守備力】9600
【俊敏性】9680
【運】9500
【スキル】魅了魔法 闇魔法 星魔法 全自然魔法 回復魔法 空間魔法 結界魔法 変身術 血操術 完全無効化 戦闘強化 魔力増幅 千里眼 転移魔法
とんでもなくえげつない結果が出た。
レベルやステータス値が桁外れええええ!!!!
いや、∞のステータス値な私が言える事じゃないだろうけど!
これまででダントツ1位だよちょっとっ!
そんな凄い魔獣さんがから揚げや塩むすびを食べに来たなんて・・・。
『うむ、やはり美味かった。千里眼で見たときからどうしても食べてみたかったのだ』
「え、見たって・・」
『そなたがこの世界に来たときからずっと見ていたのだ。紛れ者よ』
つまり、私がこの世界に召喚されたときからって事・・・?
紛れ者って、そう意味?
「何だ?紛れ者とかこの世界に来たときからって?」
あー!アーニーさん!
そこ気になっちゃいますかーっ
そりゃそうですよねええ!!
でも一応私が召喚された事は内緒なんですよおおお!
「(あ、あの・・できればそこら辺は内密に・・)」
こそこそと小声で頼む私。
『む?おお、そうだったな。では名前で呼ぶ事にしよう。イクミでよかったな?』
できれば最初からそうしてください。
うわあ、アーニーさんが疑わしく見ているううう!
は、話を逸らさなければ!
「あ、あの貴方は冥界の馬なんですよね?それが何でここに?」
「!そうだっ何で冥界に住んでる魔獣がここにいるんだっ?」
ほっアーニーさん、そっちに関心がいったみたい。
意外と単純な性格なのもしれない。
「冥王の元配下と言っていたな?元とはどういう事だ」
『では順を追って話そう』
パテルという黒い馬は真剣な目をした。
な、何かとんでもない話が出そう・・。
思わず息を呑む。
『冥王様の配下として働いていたのだが、毎日毎日死した者どもの魂を管理する仕事ばかりで飽き飽きしてもっと刺激のある生活を求め、先日辞表を出してこの地に降り立ったのだ』
会社か!!!!!
思わず呑んだ息を返して!!!
ヒューゴもアーニーさんも何とも言えない顔してるしっ
ルルは?と首を傾げてる。
「じひょーって何?」
「えっと、ルルにはちょっと難しい、かな?」
にしても、冥王の配下って辞表出すもんなの?
それで辞められるの?
私の中の冥界っておどろおどろしいイメージだけど、何かガラガラと崩れたぞ。
『この地で何か面白いものはないかと、まず変身術でスライムに化けこの魔物が住むリンベルト山に腰を下した。
それから千里眼であちこち見ていたのだがそこでイクミ、そなたを見つけたのだ。最初は単なる物珍しさで観察していたのだが、そなたが作る料理が何とも美味そうでな。特にから揚げと塩おむすび・・!
どうしても食べたくて仕方がなかったのだが、そなた達が偶然この山に来る事を知りずっと待ちわびていたのだ。
あまりに楽しみでそなたの夢に現れたりしてな』
「それがあの夢・・・」
夢の真実がそれか!
もっと大層な意味だと思ったのに、目的はから揚げと塩おむすび!!!
ただの食事目的っ!
あ、何か凄い拍子抜けした・・。
大層なお願いじゃなくて良かったけどさ。
「な、何か漆黒の一角獣ってもっとこう、高貴?な印象だったよ俺・・」
「よもやこのような・・・何が伝説級だ・・・」
ヒューゴとアーニーさん、意気投合してる。
うん凄く気持ちは分かる。
『いやしかし、想像以上に美味だった。それにイクミ、そなたは実に面白い運命の持ち主のようだ。旅をしている姿を見て確信した。だから我は決めたぞ』
え?何を?
うわっパテルさんがまた赤く光り始めた。
また姿が変わっていく。
光が収まり、私の目の前にいたパテルさんは、黒い馬の姿ではなかった。
艶々な長い黒髪をポニーテールのように縛って、執事のような服を着た長身の物凄いイケメンさんが立っていた。
イケメンさんは私の手を取って、膝まづく。
「イクミ、我を是非そなたの従魔にしていただきたい」




