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第二十六話 ブランネジュ国


「ここがブランネジュ国か~」


キーランさんが言っていた、エップルという果物が有名な国。

ようやくついた。

この国の先にリンベルト山がある。


フィオフルルの時と同じように入国審査所があった。

ただあの時はライリーさんのお陰ですんなり通れたけど、今回は時間がかかった。

ヒューゴはSランク冒険者だからか簡単な質問だけで終わった。

私はBランクだからヒューゴよりは時間はかかったけど、何とか入国OKだった。


「この子は?」

「私の妹です」

「何故裸足なのですか?」

「この子、裸足で歩き回るのが好きなんです」

「では年齢は?」

「あ、えー、5歳です」


流石に生後一ヶ月とは言えん。


女性の審査官は三角眼鏡をぎらりと光らせながら、ウソ発見器の鈴を見て質問を続ける。

でもその鈴は私には効かない。

何故なら事前に補佐丸から便利な術を教えてもらったから・・!


それは忍法 魔道具無効化の術!


・・・補佐丸から聞いた時はまんまじゃん!って思いっきり突っ込んだよ。

効力は聞かなくても分かった。

魔道具の効果が効かなくなる術だって、まんまのネーミングだもん。

でもその術のお陰で、ウソ発見器の鈴はうんともすんとも言わない。

ただこの術を常時にしておくと、料理の時に使う魔道コンロや泡沫笛が使えなくなるので、入国できたら術は解除しておこう。

ずるいかもしれないが、ルルの為だもの。

人型になるスライムって騒ぎになったら嫌だもんね。


「10歳未満ですので銀貨3枚お願いいたします」


この女性の審査官、三角眼鏡といい雰囲気といい会社のお局さんみたいだ。

もしくは古い考えの中年女教師。

特に風紀に関して厳しいタイプ。

スカートや前髪の長さとか髪の色にあれこれ口喧しい、指揮棒を振りまわす昭和の教師・・。

うんピッタリだ。


「何か?」

「あ、いえいえ」


思わず吹き出しそうになっちゃった。

誤魔化しながらルルの入国税を払った。




「うわあっ」


国に入ると、半分が緑だった!

というのも、この国の半分が農園だったのだ。

甘酸っぱい林檎の匂いがする。


「この国のガイドブックをどうぞ」


女の人が無料で配布しているらしいガイドブックをくれた。

そのガイドブックによると、この国の若い人達は殆ど農園で働いているらしい。

この国のエップルは他国にも評判が高いとか。

エップルの写真もあるけど、やっぱり見た目は林檎だわ。

色は赤とか緑とかオレンジ、ピンクと色んな色がある。

・・・青や紫もあるけど、見た目毒林檎だよ。


「このエップルのパイとか美味しそう」


エップルを使った料理やお菓子がいっぱいあるなぁ。


「全店制覇しましょう師匠!」

「あはは・・・でもその前にルルのお洋服と靴を買わなきゃ」

「あ・・そうでしたね」


大事な事忘れちゃいけないよヒューゴ。

それに遊びに来た訳じゃないんだし。

でもこのパイは気になるな・・。


「山に向かうのは明日にして、今日はルルのお洋服買った後、色々お店覗こうか?」

「はい師匠!」

「ルルもおかしたべるー!」

「はいはい。えっと、子供服を売ってるお店は、と・・・」


色んなお店があるなぁ。

フィオフルルより小さな国だけど、豊かな国みたい。


「ルル、マ、おねーちゃんみたいな服が、いい」


よしよし、ルルも約束守ってるな良い子良い子。

プリンやクッキーをあげて、国に入ったら私やヒューゴの事はお兄ちゃんお姉ちゃんと呼ぶよう、何とかルルを説得させた甲斐があった。


「ルルも着物がいいの?あるかなぁ・・あ、このお店はヒノマル国のお洋服置いてあるって書いてある!」


よしさっそく行ってみよう!





「わあ!ルル可愛い!」


ガイドブックに載ってあるお店には、本当にヒノマル国の服があった。

ちゃんと子供サイズ!

花柄模様が可愛い着物だ。

帯でリボン結びにしてあげたら、とても可愛かった。

草履と足袋も・・・うん、ぴったりだ。


「おそろい、おそろい!」

「うん、お揃いだね。えっといくらですか?」

「全部まとめて金貨4枚です」


やっぱり結構するなぁ。

まあ今は懐もあったかいから払えるけど。


「師匠、俺が払いますよ」

「え、いや大丈夫だよ」

「いえ、俺もルルの世話をしてますし、師匠にばかり負担をかける訳には!」

「別に負担じゃないけど・・」

「なら半分!半分払わせてください!」


うーん。

ヒューゴ、何か必死だな・・何で?

・・あ、そっか!

ヒューゴはルルにとってはパパだもんね。

パパらしい事、したいんだね、うんうん。


「分かった。じゃ金貨4枚だから2枚ずつ出そうか」

「はいっ」


(この人達、一体どういう関係なのかしら・・?あのSランクのヒューゴ様が師匠と呼ぶあの子は一体・・それにこの小さな子・・まさかご夫婦・・この二人の子供!?ま、まさかね・・) by店員の心の声。





「なんか、あるきにくい」

「その内慣れるよ。頑張って」


初めての靴(草履だけど)に歩きにくそうなルル。

転ばないようにしっかり手を繋いでおこう。


「じゃあ次どこ行こうか?お昼まだだし、食事にする?」

「そうですね。ガイドブックに載ってるこの店はどうですか?この国の伝統料理がいただけるようです」

「んじゃそこに行こう」


お店は国の中心部にあるらしい。

そこへ行ってみると。



「・・・・・・何これ?」


中心部には銅像があった。

剣を持った七人のむさい親父と林檎、いやエップルを齧りながら巨大ハンマーを持った女の人の銅像・・。


「貴方達、旅のお方かしら?」


銅像を見ていたら、杖を持ったお婆ちゃんに声をかけられた。


「あ、はい」

「やっぱりねぇ。この国では見ない顔だし、この方達を知らないなんてこの国にはいないからねぇ」

「この銅像は何なんですか?」

「この方達は我が国の英雄の銅像ですよ」


お婆ちゃんはこの国の歴史を話してくれた。


「昔はこの国にも王様とお妃様がいたんだけど、お妃様は女の子を生んですぐに病気で亡くなってねぇ・・王様は寂しかったのかすぐに新しいお妃様を迎えたのよ。

でもそのお妃様、とても美しかったそうだけど自分が一番じゃ気がすまない方だったらしいのよ。生まれたばかりのお姫様はとても可愛らしくて成長に連れてどんどん美しくなっていってねぇ、お妃様はそりゃあもう面白くなかったそうだよ」


ん?この話どっかで聞いたような・・。


「お姫様が年頃になると、お妃様よりうんと美しいと評判になってねぇ。お妃様は怒り狂ってお姫様を魔物の出る山、あのリンベルト山に追いやってしまったのよ」


リンベルト山!

私達が目指している山だ。

てかこの話、もしかして・・。


「気の弱い王様はお妃様の言いなり状態。でもお姫様は運が良かったのか、リンベルト山で魔物退治と武器や道具作りで生計を立てていた七人のドワーフ達に助けられたのよ」


七人のドワーフ・・お姫様・・これまんま白雪姫じゃん!


「でもねっお姫様は実はやられたら何百倍にもやりかえす気が強いお方でねぇ」


ん?


「自分を追い出して優雅に暮らすお妃様とお妃様の言いなりな王様にブチ切れて、ドワーフ達に作ってもらった大槌を振り回して、ドワーフ達と共にお城に攻め込んだのよっ」


大槌を振り回すお姫様・・。

銅像の女性は確かに巨大ハンマーを持ってるけど・・・。


「国の住人もお妃様が税金を上げに上げた所為で苦しい思いをしていたから、みーんなお姫様の味方さ。あっという間にお妃様も王様も国を追い出されたのよ」


私が知ってる白雪姫とだいぶ話がずれてきたぞ。


「大槌を振り回して暴れるお姫様を、偶然通りすがった遠い国の王子様がとても勇ましいと一目惚れして、お姫様に求婚なさったのさ。お姫様も王子様の外見を気に入って求婚を受け入れたのよ」


外見かい!

見た目で追い出されたお姫様が見た目で王子様を選んだって・・。


「お姫様はこの国はこの国の住人に全てを託すと言って、王子様の国へ嫁いでいったの。残された七人のドワーフと住人達は力を合わせて、この国を平和な国にしたのさ。ドワーフ達の作った強力な魔物避けの魔道具のお陰で、魔物に襲われる心配もない。そして今でもこの国は戦争もなく、平和が続いているのよ」

「す、すごいお姫様だったんですね・・」

「素晴らしい話だ。戦争もなく平和を維持し続けるとは」


あ、ヒューゴはそこなのね。

まあ確かにずっと平和ってのは良い事だけど。


「ちなみにお姫様の大好物がエップルで、エップルを丸かじりしながら大槌を振り回す姿が有名になって、エップル作りが盛んになったんだよ」


そこからかい!!


「ちゃんと歴史を継いでいるのですね・・。良い話でしたね師匠っ」

「いいはなし~」

「そ、そだね・・・」


良い話、だったのかなぁ?


「ずっとずっと昔の話さ。七人のドワーフも国が平和になったのを見届けて一人を除いて散り散りになってしまったし」

「一人?」

「七人のドワーフは一人だけ国に残って、他の六人は世界を見たいといって旅に出たそうなんだよ。その後の六人のドワーフの事は分からないけど、この国に残ったドワーフの子孫は、今は先祖に見習ってリンベルト山に住んでるよ」


え、リンベルト山に住むドワーフの子孫・・・。


「もしかして、その子孫の名前はアーニーさんというのでは・・?」

「おや、知ってるのかい?」


ドンピシャーーー!!!

何たる展開!

これから会おうとしていた鍛冶師のドワーフさんの話題がここで出るとはあああ!


「アーニーは幼い頃はこの国で暮らしていたんだけど、先祖の偉業を誇りに思って、その先祖のように立派なドワーフになりたいと言って、リンベルト山に住み始めたんだよ。

時折山から下りてきて、冒険者用の武器や道具を売りに来るよ」


ご先祖様のような立派なドワーフに・・うん、これは良い話だな。

あれ?でもヒューゴの話では、リンベルト山に住んだ理由は魔物の肉が目的だったような・・?


「俺が聞いた話ではアーニーという鍛冶師は魔物肉が好物で、その為に山に住んでるという内容だったが?」

「間違ってはいないよ。先祖を見習いつつ、毎日肉食い放題だと言っていたからねぇ」


やっぱり肉目的か!!


「お肉~ルルもたべたい!」


ルルちゃん、そういうお話じゃないんだよ・・。

アーニーさん・・ほんとにどんなドワーフなんだろう?

銅像みたいに、髭もじゃのむさい親父かな・・やっぱりドワーフだし。

ドワーフと言えば髭もじゃだよね、うん。



その後お昼を食べに、ガイドブックに載っていた伝統料理を出してくれるお店に入った。

出てきた伝統料理はというと。


林檎だ。

七面鳥の丸焼きみたいな大きい林檎が湯気を立てて、テーブルの中央に置かれた。

他にも姫りんごみたいに小さな林檎の串刺し(匂いはステーキ)に、ドレッシングがかかった林檎だけのサラダ。

丸ごと林檎が浮かぶスープ(匂いはオニオンスープ)に、林檎のグラタン。


・・・・フィオフルルの伝統料理を思い出した。

この世界の伝統料理は皆こんな感じかああああ!?


「味はいけますよ師匠」

「おいし~」


フィオフルルで慣れたのか、ヒューゴもルルもぱくぱく食べてる。

私も食べたよ!

味は、うん美味しいよ。

見た目林檎だけど、味は全然違ったよ。

中央の林檎は鶏肉の味がしたよ。

スープもオニオンスープだったよ。

串刺しもりっぱなステーキの味だったよ。

フィオフルルの伝統料理、花の料理と同じだったよ。

作り方はこの国も極秘なんだろうなぁ・・。



デザートはパイが出された。


「うんっこれは凄く美味しい!」


見た目を裏切らない、紛れもないパイの味だった。


「ルル、いっぱいたべる~」

「もう二つくらい頼みましょうか」


かなり大きなパイだったけど、ルルもヒューゴもぺろりと平らげおかわりもした。

私も3切ほどおかわりしてしまった。


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