第二十話 旅立ちの日
「あら~もう国を出るの?」
「はい、冒険者として初めての依頼なんですっそれが遠出なもので今買い出し中なんです。それで旅の途中でぜひこのパンを食べたいと思って来たんです」
「嬉しい事言ってくれるねぇっ好きなの選んでちょうだい」
買い出しであのパン屋さんで色んなパンを購入した。
懐があったかいから買いだめだ。
くるみを入れたパンとか元の世界に似たパンもあるなぁ。
あ、これはシチューに合いそうっ。
「はい、これはサービスだよ。初めての依頼、しっかりね」
「ありがとうございます!」
おばさんはバラのジャムと蜂蜜の瓶をくれた。
バラのジャムなんて初めてだっ。
どんな味だろう?楽しみっ。
「お姉ちゃん、もう行っちゃうの?」
「初めての依頼、頑張ってください」
「旅のご武運を」
シュクレちゃん達にも挨拶に行った。
ついでに砂糖菓子もまた買った。
まだ手持ちに砂糖菓子は残ってるけど、旅の間のおやつにちょうど良いからね。
ルルも気に入ってるし。
「これはおまけです。お気を付けていってらっしゃい」
ジョージさん達はいっぱいお菓子をおまけてしてくれた。
何か悪いなぁ。
ヒューゴはまた袋いっぱいの砂糖菓子購入してるし(最初に買った分はもう殆どないらしい)。
「お姉ちゃん頑張ってね!」
「うん、ありがとう」
他には新しい下着や着替えを探した。
服屋を覗くと、今着ている着物と同じデザインのが色違いであった。
緑と黒の配色の着物。
他にも着物はあったけど、花柄で派手すぎた。
あれは流石に似合わないだろう。
しかもサイズちっちゃいし・・・。
可愛い系の服って、どうしてサイズちっちゃいんだろうなぁ。
まあサイズがあっても私の場合、顔が問題だけどね、フッ・・・。
ちなみにヒューゴには、できる限り自分の分は自分で払うと何とか納得させた。
渋々ヒューゴは承諾してくれたけど、まさか深夜までかかるとは思わなかった。
ヒューゴは結構頑固だと分かった。
ヒューゴもヒューゴで色々と何か買っていた。
特にクロユリという薬屋さんが凄く印象に残った。
ヒューゴと同じ魔法使いが店主の薬屋さん。
中は凄い、神秘的だった。
見た目はぼろぼろで今にも崩れそうな建物だったけど、中は凄かった!
「ふわあ・・・綺麗・・」
天井には宝石のような石がいくつも浮かんでいて(糸とかはなかった)淡い光で店内を照らしていた。
床なんて、一歩踏み出すたびに淡い緑色に光ってびっくりした。
色んな形で色んな色の瓶や薬草が棚に並んでいたり、よく分からない道具とかごちゃごちゃしてたけど、これぞまさに魔法使いのお店!
「ん?人形?」
椅子に人間サイズの藁でできた人形が腰かけていて、変わってるなぁと見ていたらぐるんと首が動いた。
「うぉお!?」
流石にびっくりした。
でも肩にいたルルが私以上に驚いて飛び跳ねて、近くの棚に激突して色んなものが崩れてしまった。
「ル、ルル!大丈夫?!」
「ひひひ、驚かせちゃったみたいダネ~」
ルルは目を回していた。
つばの広い帽子を被った藁人形は椅子から立ち上がって、甲高い声でしゃべり始めた。
え、この藁人形生きてるの!?
「ノンシャラン、貴様また客をからかったな。その癖止めろ」
「ひひひ、だって面白くてネ~」
「師匠に対しての無礼、俺が許さんぞ」
「おやおやおや、あのヒューゴ様に師匠がいたというのは本当だったんダネ~」
驚く事にこの藁人形がこの薬屋の店主で、ノンシャランさんという。
「魔法使いじゃなかったんですか?」
「ひひひ、ボクはれっきとした魔法使いダヨ~。むかぁし、ちょっとドジをしちゃってこんな姿になっちゃっただけサ~」
「ある女にストーカー行為をして、その相手に呪いをかけられた間抜けな奴だ」
「ひひひ、ストーカーだなんて~・ただちょ~っと半年ほどつけ回して行動を見守ってただけダヨ~」
うん立派なストーカーだよそれ。
気絶したままのルルを抱えて、私はちょっと引いてしまった。
そしたらノンシャランさんが首をこっちに180度回転させた。
ホラーだよもう!
目がボタンで、吊り上がった口元は糸でぎざぎざに縫われた顔は、中々に迫力がある。
ボタンの目がじー、と私を見た。
「な、何ですか・・?」
「ん~~、君さぁ~なーんか、不思議な感じがするネ~。どうしてかな~?どうしてかな~?なーんか、ボク達とは違う感じがするネ~?」
ぎくっ。
もしかして私が異世界の人間だと気づかれたかな?
「貴様、それ以上師匠に近づいたら許さんぞ」
「ひひひ、お~怖い怖い」
「それよりさっさと仕事しろ。こっちは客として来てるんだ」
「ハイハイ」
ほっヒューゴのお陰で助かった。
にしてもこのノンシャランさん、油断できないかも・・。
ヒューゴはハーブや薬草を色々購入して、その店を後にした。
「色んな意味で変わった薬屋さんだったね」
ルルはまだ気絶してるよ・・。
「あいつは薬師としても魔法使いとしても腕は良いんですが、性格がダメなんです」
「あはは・・・・」
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二日目は色々作りおき用の料理を作った。
流石に宿の部屋では作れないので、庭を借りて調理だ。
でも、元の世界の食材、見られたらやばいかなぁ?
『それなら忍法、隠密結界の術を使うでござる。この術による結界を張れば周囲からは視覚も嗅覚も遮断されるでござる。要は見えなくなるし、結界内で何をしても匂いも漏れないでござる』
匂いも漏れないとは、今まさに必要な術じゃん!
今後も色々使えそうな術だ。
さっそく私はその術を使って調理を始めた。
ヒューゴもルルも手伝う気満々なので少し笑ってしまった。
といっても、簡単なものばかりだ。
シチューとか、スープとか。
あと大量の塩むすびとから揚げである。
ヒューゴに野菜を切ってもらったり、ルルは一生懸命ビニールの中の肉を揉んだり。
結構楽しい時間だった。
おむすびはヒューゴ全然うまくにぎれなかったけど、それがまた楽しかった。
「それじゃあいってきますね」
「おうっ頼んだぞ」
「アーニー殿によろしくと伝えてくれ」
三日目、ついに出発の日だ。
ギルドへ行き、ライリーさんとキーランさんに出発の挨拶をする。
「オーウェンさんにもお大事にと伝えてください」
「ありがとよイクミ」
「リンベルト山に入る前に小さな国があるんだが、その国ではエップルという果物が有名でそれを使った菓子はとても美味と聞く。ぜひ寄ると良い」
「それは興味深い」
ヒューゴが真っ先に反応した。
頭の上にいるルルもだ。
かく言う私もだけどね。
えへっ。
でもエップルって何だろう?
『主殿の世界にあった、リンゴによく似た実でござる』
エップル、アップル・・ああ、なるほど。
さあリンベルト山を目指して出発だ!




