第十話 赤ちゃんスライムと名前とおむすび
「師匠、どうするんですかそのスライム」
「うーん」
私の頭の上には、私をお母さんと認定した赤ちゃんスライム。
赤ちゃんスライムは私の頭の上ですっかり落ち着いてる。
「私個人は別に全然大丈夫。むしろ何か可愛いし。ヒューゴは嫌?」
「俺は師匠が良いのでしたら気にしないです。危険性もないようですし」
「でもスライムって魔物だから、国とか連れてってたら騒ぎになっちゃうかな?」
しかし私はもうこの赤ちゃんスライムに情が移りはじめていたり・・。
だって、私に凄く懐いてるんだもん!
私をお母さんと思って、手に甘えたり頭の上に乗ってても時々すりすりしてきたりっ
可愛いよ赤ちゃんスライム!
「魔物や魔獣を従魔にしているテイマーもいますので、大丈夫だと思いますよ。
さすがにスライムを従魔にしている者は見た事ないですが・・」
その言い方からして、この世界ではスライムは弱い魔物のようだ。
王道だ。
けれど王道でいくなら、このまま上手く育てばこの赤ちゃんスライムも最強のスライムになる可能性も・・。
あれ?私今フラグ立てたかな?
まさかね・・。
てかテイマーいるんだ。王道!
いるんなら一度は会ってみたいなぁ。
お約束で言うなら、伝説と呼ばれた魔獣をつれたテイマーとか!
「寝ちゃったようですよ師匠」
「あ、ほんとだ」
頭の上の赤ちゃんスライムを手に取ると、すやすや眠っている。
「スライムは人を見ると逃げますけど、こうして見ると可愛いですね」
「人に襲ったりしないの?」
「進化したスライムならともかく、大抵のスライムは弱いので逃げるか隠れますね。
むしろ初級冒険者が魔物討伐の練習として追い回すので、襲う側は我々の方ですかね」
・・・スライム乙・・。
そんな話を聞いて、益々私は手の中で眠るスライムの赤ちゃんに情が湧いた。
私が守るからね!
「私、この子の面倒見るよ。お母さんに選ばれたのもきっと何かの縁だろうし。
何よりこんな小さな赤ちゃんスライム、ほっとけないもん」
「さすが師匠・・!お優しいですねっ」
だとしたら名前、つけなくちゃな。
どんな名前がいいかな?
私、ネーミングセンスないからなぁ・・。
うーん・・?スライムだからライム?スラちゃん?
安直すぎる。
うーん・・。
水まんじゅうのように柔らかくて、ぷるんとしてて・・。
ぷる・・るん・・・るる・・・・る・・・るる、ルル!
「ルル、ルルにしよう、この子の名前はルルっ」
これも安直だろうけど、気にしない気にしない。
凝った名前を考える主人公もいるけど、そこまで凝った名前を思いつくほどの知恵が私にはない。
「ルル、可愛らしい名前ですね。響きも良いですっ」
「ありがとっ。今日からお前の名前はルルだからねー」
あ、ちょんちょん指で触ったら起きちゃった。
でもぐずりもせず、ルルと呼んだら嬉しいようにすりすりしてきた。
可愛い・・癒しや・・(後にステータスを確認したら名前の所がルルになってた)。
森の中を進んでいくと、角の生えた大きな鶏が現れた。
すんごい煩い鳴き声!
ルルは大丈夫かな?!
あ、気にせずまた寝てる・・大物になるわこの子・・。
ヒューゴは言うにはこれはビッグホーンクックというらしい。
普通のホーンクックは通常の鶏より少し大きいくらいでランクもEランクとか。
でもビッグホーンクックは鼓膜を破くほどの鳴き声を上げ、人間を丸呑みするほどの危険性があって、Bランクだと言う。
・・あの鳴き声、鼓膜を破くのか・・色んな術、かけといてよかった。
ヒューゴも平気のようだ。
「ここは俺に任せてください師匠!」
ヒューゴは手を翳して、ファイヤーアローと唱えると大きな火の矢がビッグホーンクックの胸を貫いた。
瞬殺!
流石はSランクっ魔法かっこいいー!
また起きちゃったルルも感激した様子でヒューゴを見ている。
ビッグホーンクックは羽根やツノ等、結構言い値で売れるらしい。
「この肉も中々美味しいですよ」
「え?ほんと?」
「はい。何なら俺が解体しましょうか?」
本来ならギルドで魔物は解体してもらうが、ヒューゴは自分で解体もできるとか。
凄いなヒューゴ!
ビッグホーンクックって見た目は鶏だから、肉は鶏肉になるかな?
もし鶏肉ならアレが食べたい・・。
「んじゃお願いしていい?」
「はい!少々時間かかりますが・・」
「あ、何ならここでお昼にしようよ。お昼作ってる間に解体してもらっていいかな?」
「はい!」
ヒューゴはアイテムボックスから解体する時に使うというテーブルを出した。
外で調理する時に便利そうだから、複製魔法で私のテーブルも作ってもらった。
いやー複製魔法便利!
「私も使えないかな・・・?」
忍法、複製の術とか創製の術とかさ。
魔道具・・自分でも作れたら便利だなぁ・・。
言い方を忍術風に言えばどうにかなるんじゃないか?
補佐丸、どうかな?
『お答えするでござる。可能でござるよっ
ただし魔道具の創製は無理でござる。
あくまでも主殿は忍者故、魔法で創る魔道具は無理でござるよ』
あ、さいですか・・。
使う忍術はもう魔法みたいなものなんですけど?
でも裏を返せば魔道具以外ならできるって事か・・。
よしっやってみよう。
欲しい物があるのだ。
「忍法、創製の術」
頭の中でイメージしながら術を唱えた。
そしたら光の粒子が集まって、私がイメージした物の形ができていく。
「おお・・・できた!」
光が収まって出来上がったのは、土鍋。
米を炊く用の土鍋だ。
ある異世界物の小説で、何らかの方法で米を手に入れ、それを土鍋で炊いて食べると言うシーンがあったのでそれを思い出して土鍋を作ったのだ。
やはり日本人だもの、お米が食べたくて仕方ない。
ヒューゴはお米、大丈夫かな?
まあ、あの食欲なら大丈夫な気がするけど。
ルルは不思議そうに土鍋をつついてる。
可愛いなぁもう。
あ、もう一つ土鍋はあった方がいいかな?
色々使えると思うし。
「忍法、複製の術」
土鍋に向かって唱えると、もう一つ同じ土鍋ができた。
やった成功!
「さすがです師匠!」
おおびっくりした!
ヒューゴはずっと私のやっていた事を見ていたらしい。
「創製魔法と複製魔法のスキルは、レベルと魔力をうんと上げないと会得できないんですが、それを軽々と・・!
俺は何年もかかったんですが、やはり師匠は凄いです!!」
あ、そ、そんな大変な魔法なんだ。
何年もって事は、ヒューゴも苦労したんだろうな・・。
何か、ヒューゴに申し訳ないような・・・。
『ヒューゴ殿は全く気にしてないようでござる。善意百%で主殿を尊敬してるでござるよ』
わあ・・かえって心が痛い。
せめてうんと心を込めて昼食を作ろう、うん。
術でお米や色々取り寄せ、昼食作り開始!
術で出した水は飲んでも大丈夫と補佐丸が言っていたので、土鍋に米と水を入れ30分置く。
とぐのめんどいから無洗米を取り寄せた!
30分経つまで、ヒューゴの解体作業をちょっと見学。
うわあ何というか・・鮮やか。
羽根は綺麗な方が高値がつくと言うので、血がつかないようにするのが大切らしい。
夕飯に使いたいから、肉は一口大に切ってほしいと頼んだら任せてください!と良い返事が返ってきた。
30分経ったら、ヒューゴが出してくれた外で使う用の魔道コンロの上に土鍋を置く。
土鍋で米を炊くやり方はおばーちゃんから教わったので問題はない。
おばーちゃん、炊飯器より土鍋でご飯よく炊いてたなぁ。
そんで朝ごはんや休みの日のお昼におむすび、作ってくれたっけ。
おばーちゃんはおにぎりじゃなくておむすびって言ってたんだよな。
『おむすびはね、良い縁を結ぶって意味があるんだよ。
心を込めて作ったおむすびは人と人を結ぶの。
若い頃、おじいちゃんにおむすびのお弁当作ってあげたらおじいちゃん喜んでくれてねぇ。
いくみちゃんも、心を込めたおむすびを作れるようになれば良い人達にいっぱい出会えて、良い縁がいっぱい結ばれるよきっと』
おばーちゃんはいつもおむすびを作りながらそう話してくれた。
だから私も自然におにぎりはおむすびと呼ぶようになった。
「・・・・よし、できた」
炊きあがったごはんを、塩だけで三角に握っていく。
ツナマヨとかたらことか色々具はあるけど、私が一番好きなおむすびは塩だけのシンプルなやつだ。
おばーちゃんのおむすびも塩だけだったけど、凄く美味しかった。
海苔を巻いて、二つずつ皿に並べる。
ヒューゴの反応を見て、いけそうだったからまた握ろう。
ルル用にも小さいおむすびを二つ作った。
スライムは雑食とヒューゴは言ってたから、大丈夫だとは思うけど・・赤ちゃんだからミルクの方がいいのかな?
もし食べなかったらミルクをあげてみよう。
一緒に豆腐のお味噌汁も作ったので深めの皿にお味噌汁を入れる。
「これは、何という食べ物ですか?」
先に解体を終えて、地図やコンパスで方向を確認していたヒューゴを呼んでようやく昼食の時間。
おむすびを見て、不思議そうに首を傾げてる。
「おむすびって言うお米の料理だよ」
「おこめ?」
「んー、と穀物の仲間、かな?」
「小麦、ですかね?」
「そうそう、そんな感じ」
やはりこの世界では米はない様だ。
異世界物では米もある設定もあるけど、どちらかというと米がない設定の方が多い。
「お米もこのお味噌汁も私のいた世界、私が住んでいた国では主食なんだ」
「師匠の国の・・!いわば伝統料理ですね!」
「う、うん。そんなもんかな?」
「光栄です!師匠の国の伝統料理が食べられるなんてっ」
まあ伝統といえば伝統かな?
おむすびもパンのように手に持って食べる事を教える。
ヒューゴは大事そうにおむすびを持って噛り付いた。
「!こ、これは、何て美味しさっこんな美味しい穀物があるなんて、信じられないです!
噛めば噛むほど甘味が出て・・しかしその甘味と塩が絶妙でさらに美味しさが増します!
このお味噌汁というスープも、不思議な味ですがとても美味しいです!
師匠の世界はまさに夢の世界ですね!こんな美味しいものがあるなんて!」
夢の国ときたかー!
某ランドを思い出しちゃう。
まあ確かに、美味しいものは沢山あるよな。
でもお米もお味噌もヒューゴの口に合ったようで良かった。
ルルはどうだろう?
あ、ルルも小さいおむすびを夢中で食べてる。
お味噌汁なんか顔を突っ込ませて完食。
ルルもどうやらミルクはあげなくてよさそうだ。
「まだお米もお味噌汁もあるからおかわりしても大丈夫だよ」
「お願いします!」
空になった皿を出すヒューゴ。
見ればルルも真似して皿を差し出してる。
思わず吹き出しそうになりながら、私はおかわりのお味噌汁をよそい、おむすびを握った。
ついでにもう一回土鍋で新しくご飯を炊いておく。
ヒューゴもルルもお米は大丈夫だと分かったから、夕飯も米にするつもりだ。
炊いて無限空間に入れておけば、いつでもあったかいご飯が食べられる。
鶏肉も手に入ったし、今夜はアレを作るぞ!
忍法をまとめてほしいとあったので
次に現時点で名前が出てる忍法をまとめたいと思います




