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小話 操り人形のお姫様



「聖女様・・どうかこれを受け取ってほしい」


レイナード様が私にそう言って差し出したのは、小さな箱。

まさかこれって・・・!


レイナード様が箱を開けると、そこには指輪があった。

赤い宝石の綺麗な指輪。


「私の気持ちです・・・」


レイナード様は優しく微笑んで、私の左手を取った。

これって、これって、プロポーズ?!

そんな、まだ心の準備が・・!

ああでも断るなんてもったいない事できないわ。

でも、私には逆ハーレムエンドが待ってるのに・・レイナード様だけのものになるなんて・・・。

でもでも、人妻になった私をひっそりと慕うヘンリー様達とか、そんなシチュエーションも美味しいわね・・。

ああ、どうしよう。



「これからも、我が国の為に尽くしてもらうぞ・・聖女様?」

「え・・・・・」


指輪が私の左手の、中指にはめられる。

途端に私の体は固まった。

え?何これ動けない?


「ちょっ」

()()()

「!?」


声も、出ない!?

ちょ、何なのこれ!??


「では聖女様、これから貴方が過ごす新しい部屋へご案内しよう。()()()()()()()


レイナード様が歩き出すと、私の足も彼の後を勝手についていった。

どうなってるのよ!??




「さあここが今日から貴方の部屋だ」


何よここ!?

ついた場所はお城の東側にある古い搭。

長い階段を上らされて、レイナード様が私の部屋だと言ったのは何とも狭い部屋。

元の部屋と同じくらい飾られてはいるけれど、窓もない。


「君の功績をたたえて、内装だけは整えた。今日から貴方はここで暮らしてもらう。()()()


永遠にって・・それどういう事!?

問いただそうとしても全く声は出ないし、体は動かなかった。


「貴方のお陰で我が国はダイヤモンド王国として生まれ変わった。心から礼を言う。これからもこの国の為にその力をここで存分に発揮してくれたまえ!では聖女様、()()()()()()()()()()()()


レイナード様はそう言い残して、部屋を出た。

途端にようやく体が自由になった。

私は慌ててレイナード様の後を追いかけたが、扉は目の前で閉められ鍵をかけられた。

私は必死にレイナード様の名前を叫んだが、声は相変わらず出なかった。


「そうそう教えてあげよう。その指輪は『隷属の指輪』という魔道具で、もう貴方は我々王族の言う事には逆らえなくなった。現に私が静かにしろといったら声が出せなくなっただろう?これはミーナとベンジャミン夫妻の最高傑作だからな」


夫妻!?

あの二人夫婦だったの!?

そんな・・私のベンジャミンが・・。


「あと貴方のお気に入りの我が幼馴染ローガンも、相思相愛の婚約者がいる。弟のヘンリーも今日ある令嬢との見合いがあるのだが、知らせによると中々いい雰囲気のようだ」


はああああ!?!?

何よそれ!?

ローガンもヘンリー様も私のものよ!!!


「そして私は恋い焦がれていた隣の国の王女との婚約がようやく認められた。向こうの父君は子煩悩で中々許可を貰えなかったのだが、これも貴方の力のお陰だろうな。流石は聖女様だ」


隣の国の王女との婚約!?

何よそれ許さないわ!!!

貴方達イケメンは皆私のものなのよ!!!

逆ハーレムエンドはどうなるのよ!!!


そう叫びたくても声は出なかった。


「それでは・・・・・・もう会う事は殆どなくなるだろうが・・ごきげんよう聖女様」


レイナード様はそのまま行ってしまった。

その時、初めて気づいた。

レイナード様達は、彼らは一度も私の名前を呼ばなかった事に。


待ってよ!!

私はお姫様よ!

選ばれた聖女よ!?

こんな扱い許されるはずがないわ!!

ここから出して!

ねぇ!出してよ!!!





数日後、レイナードは隣の国マリーナ王女との婚約を盛大に発表した。

近日中に結婚式も挙げる予定だ。

マリーナ王女はレイナードから聖女の事を初めて聞かされた。

そして、一度どんな姿か見てみたいと申し出てレイナードは愛しき王女の願いをすんなりと聞き入れた。


「レイナード様、少しだけ彼女と二人きりにさせてもらえませんか?」

「二人に?何故?」

「理由は後でちゃんとお話しますわ。大丈夫、どうせ彼女は何もできないのでしょう?何かあったらすぐに貴方様を呼びますわ・・」


レイナードの胸元に擦り寄り、微笑むマリーナ。

悩むレイナードだったが、扉越しなら大丈夫だろうと思い分かったと頷いた。





「・・・・・・・・久しぶりね藍原舞花」


扉の柵越しにマリーナは冷たい眼で、その名を呼んだ。

久しく聞いた自分の名前に項垂れていた舞花は顔を上げる。


「・・・・・・私の事が分からない?まあ以前とは顔も声も違うから無理ないわね・・。私は麻里(まり)よ。中学一年の時貴方にいじめられて・・・殺された館花麻里(たちばなまり)


藍原舞花はつまらない日常に飽き飽きしていた。

中学一年の時、クラスで目立たなかった館花麻里に目をつけ遊びという名で彼女に壮絶ないじめをした。

ある日、階段から突き落とされて館花麻里は頭を強打して亡くなった。

だがそれは館花麻里が足を滑らせた事故という事で処理された。

その目撃者は藍原舞花。

猫を被っていた彼女の証言を誰も疑わなかった。


「前世の記憶を思い出したのはもうずいぶん昔・・。ファンタジーのようなこの世界にお姫様として生まれ変わったと気づいた時は戸惑ったけど、それでも私は幸せだったわ。まさか貴方が聖女としてこの世界に来るとは思わなかったけどね・・。名前を聞いた時は驚いたわ」


くすくす笑うマリーナ。

呆然と藍原舞花はマリーナを見つめる。


「良いざまだわ藍原舞花。貴方に対する恨みは残っていたけど、その落ちぶれた姿を見て、大分気がはれた。私はレイナード様と結婚するし、もう幸せの絶頂よ。・・・・さようなら藍原舞花・・・操り人形さん」


マリーナは颯爽とその場から立ち去った。

藍原舞花は柵に捕まって声なき声を上げた。

しかしその声は誰にも届かなかった。


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