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第九十七話 チャロアイトという男



ブルローネは自分の研究室に戻った。

がりがりと爪を齧って、書類が散らばる机をばんっと叩く。


「サヴェッジドラゴンに、ウイケト村は全滅・・それに続けてケートスまで失敗に終わるなんてぇ~・・・どうなってるのさぁ~!」


がしゃがしゃと机の上のものを全て床へと薙ぎ払い、ブルローネは髪を乱しながら椅子に無造作に座る。


「ブルローネ様、どうか落ち着いてください。お飲み物をどうぞ」


チーが入れたての紅茶をブルローネに差し出す。

王族の人間の血とブレンドした、ブルローネのお気に入りの紅茶だ。


「・・・・ふう・・・あのお方の言ってる通り、何かが起きてるのは確かだね~・・・・」


紅茶を啜り、少しだけ落ち着きを取り戻したブルローネ。

脳裏に浮かぶのは、洞窟で出会ったただの人間であるはずの少女だ。


「(・・・ケートスの件、あの子も関わってるかもしれないねぇ~・・もっと深く考えたら、サヴェッジドラゴンの件も関わっている可能性も・・・でも、それならあいつがとうに調べ上げてるよねぇ~・・・)」


何を考えているのかさっぱり分からない、あのお方に長年使えているチャロアイト。

気配を完全に消し、情報収集を得意としている黒猫。

彼の情報収集能力はブルローネも認めている。


「(今の所、あのお方はあの子については何も知らない様・・あの子の事を知ったら絶対に動く筈・・あいつの事だから、洞窟での一連もどっかで見ていた筈・・・でもあのお方の様子からして、報告はされていないようだった・・。・・・わざと伝えていない?何故?)」


チーが用意した真っ赤な色のマカロンを齧り、ブルローネはにやりと笑う。


「チャロアイト・・なーんか企んでるかもしれないねぇ~・・・。でも、あの子は僕の獲物だ・・誰にも邪魔はさせないよぉ~・・・・」




窓辺に腰を下ろし、赤みがかかった空を見つめながらチャロアイトは胸ポケットから懐中時計を手に取った。

蓋を開けると中はヒビが割れて、針は止まって動かないようだった。

蓋の裏側には写真もあった。

それを見つめ、チャロアイトは楽しげに微笑む。


「さあ、君はこれからどう動くのかな・・まだまだ観察させてもらうよ・・イクミちゃん」


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