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第九話 生まれたての・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


夢を、見た気がする。

けれど何も覚えていない。

ただ、消えちゃったら意味ないじゃん!と凄く叫びたい。

何故かは分からないけど。

昨夜は確か、寝る前に親の事を思い出してちょっと感傷的になって・・そのまま寝ちゃったんだ。


でも何か、もう元の世界の事も両親の事も、思い出してもどうにもならないって気がしてきた。

う~ん・・。

この感覚、もう元の世界に戻れないという確信を得た時と同じだなぁ。

本当に何でだろう?


「・・・・まあ、考えても仕方ないな」


いくら考えても答えが見つかりそうにないので、私は早々に考えるのを放棄した。

あれこれ考え始めたらキリがないもんね!



異世界に来てから2日目。

見た目はテント、中はホテルのような部屋に明かりが差し込んでる。

窓も付いてるから、ほんとにこのテントの中はどういう仕組みになってるのか気になるよ。


窓を覆っているカーテンを少し開けると、朝日に照らされた森や湖がキラキラしてて綺麗だった。

今って何時くらいかな?


『お目覚めであられるか主殿。今は主殿の世界で言うと8時頃でござる』


補佐丸おはよー。

8時か。

元の世界だったら遅刻決定な時間だな。


隣のベッドではヒューゴはまだ寝ている。

・・・・・・・寝顔もイケメンだ・・。

顔が整ってるっていいね。

寝てるだけで絵になる。

異世界物では男主人公だとハーレム状態になったり、女主人公だと逆ハーレムになったりするけど、流石にそこまでいかないだろうなぁ・・。

ヒューゴはイケメンさんだけど、イケメン過ぎて別世界(異世界だけど)って感じ。

手が届かないというか・・。

とにかく恋愛フラグは立たないだろうな。

そもそもぽっちゃり体系で顔もぎり平均(だと信じたい)な私に恋する人は異世界でもいないだろう。



さて朝ごはんを作ろうかな?

先に着替えるため、脱衣所へ向かう。

顔を洗って、歯を磨く。

この世界でも歯を磨く習慣はあるようで、街で銅貨5枚で購入した歯ブラシと歯磨き粉を使う。

歯ブラシの持ち手は木製で、歯磨き粉は小瓶に入った液体タイプだ。

この世界ではこれが普通のようらしい。

補佐丸から使い方は聞いている。

液体の歯磨き粉を歯ブラシに2滴ほど垂らして普通に磨けばいいのだ。

味はまったくしないが、妙な味でも困るので気にしない。


『歯磨きしなくとも、主殿は術のお陰で怪我はおろか病気もせず、虫歯にだってならないでござるよ?』


補佐丸はそう言うけど、元の世界では歯磨きは日課なんだよ。

いくら虫歯にならないからって、やっぱり毎日磨かないとばっちいじゃん。

歯磨きを終えて、ジャージを脱いで無限空間に仕舞い、着物へと着替えた。


「朝ごはんは何しようかなー」


色々あるけど、たまごが食べたくなってきたのでたまごサンドを作ろうと思う。

焼いたタイプとゆで卵を潰したタイプがあるが、今日はゆで卵のほうにしよう。


さっそく食材を召喚して調理開始だ。

二つの鍋に水を汲んでコンロにかける。

一つはゆでたまご用、もう一つはコンソメスープ用だ。

たまねぎ、人参、キャベツ、ベーコンを細かく切って、湧いた鍋にたまごとスープ用の鍋に先に野菜を入れる。

たまごがゆで上がる間、テーブルの上に食器を並べておく。

ゆで上がったたまごは、水で冷やす。

野菜の方も熱が通ったらベーコンにコンソメと塩、胡椒を入れて軽く混ぜてもう少し煮込む。

カラを剥いたたまごをボウルに入れてフォークで潰し、マヨネーズに塩と胡椒を入れ、ちょびっと牛乳も混ぜてフォークでそのままぐちゃぐちゃかきまぜた。

パンの耳を切る人もいるけど、めんどいしもったいないので耳はそのままで。

バターを塗ってたまごを乗せてまたパンで挟んで、食べやすく切る。

こんなもんかな?


「おはようございますっ師匠」

「あ、おはようヒューゴ」


ヒューゴも目を覚ましたらしい。

おおう・・寝起き姿は色気が増して益々イケメン度がアップしてる・・。


「良い匂いですね。朝からご馳走がいただけそうです」

「ご馳走なんて大したもんじゃないよ。あとちょっと待ってて。顔洗ってきなよ」


ヒューゴが言われた通り顔を洗ってる間に、私は皿にスープを入れ、たまごサンドを用意する。

コップに牛乳を注いで、完成だ!

ヒューゴの分は私より多めにした。



「こんな美味しそうな朝食、初めてです・・っ」


たまごサンドとスープに、またもや感激の目をするヒューゴ。

この世界の食事情ってどうなってるのかな?

街についたら色々見てみよう。


「「いただきます」」


ヒューゴは朝から良い食べっぷりを見せてくれた。

こんなに美味しいたまご、信じられませんとサンドイッチにかぶりつく。

スープも大好評だ。

何より野菜の味が最高らしい。

多めに作ってよかった。スープはすぐに鍋が空っぽになったけど。

ヒューゴの胃袋はどうなってるんだろう。

一回どこまで食べれるのか試してみたい・・!





「では師匠、行きましょう」


朝食の後片付けをし、身支度を終えたら出発だ。

テントをアイテムボックスに仕舞ったヒューゴの道案内で旅は始まった。

これから2週間森の中を歩くのかぁ。

先は長いな。


「ねえヒューゴ、歩きながらで良いんだけど冒険者ギルドの事教えてくれないかな?

ルールとか色々あるでしょ?」

「はいっ勿論ですっ」


ヒューゴは意気揚々と話してくれた。

まあ大体、異世界小説に出てくるギルドと同じような感じだ。


ギルドは大抵街の中心部にあって、登録料に銀貨5枚かかる。

S、A、B、C、D、E、Fと分かれてて、最初はFから。

登録終了後にギルドカードが渡されるという。


ルールとしては

・依頼失敗には報酬なし、違約金を支払わなければならない

・不正行為(略奪、殺人など)が発覚した場合、真意を調べる魔道具で取り調べののちにランク降格、または除名処分となる

・冒険者同士の争いはギルドは中立に保つため一切関知しない。ただし相手を死なせた場合は除名処分となる

・冒険者の怪我、死亡についてギルドは一切責任を持たない


うん、やっぱり冒険者ギルドは殆ど自己責任なんだな。


あとそれぞれのランクには期限もあって


Fランクは1ヶ月

E、Dは3ヶ月

C、Bは半年

A、Sは1年という期限内に依頼を達成しなければならないとか。


達成できなければ、登録抹消でランクは最初からやり直し、再登録はできるけどまた登録料がいるらしい。


ランク上げは

依頼達成数10を超すかランクアップ用の依頼を達成する事。

後は、依頼以外でモンスターを討伐した場合だと、その証拠をギルドに提示すれば、モンスターのレベルによってはランクアップできるとか。


Fランクは1ヶ月か~・・。

どうせなら色んな国を見たいから旅は続けたいな。

だからせめてEランク・・いやCは目指したい。

A、S辺りだと、何かめんどくさい事おしつけられそうだ。


「ん?」


視界の端に気になるのを見つけて立ち止まる。


「どうしましたか師匠?」

「これ・・何かな?」


大きな葉っぱの上に、手のひらサイズで水色の“何か”があった。

何だこれ?水まんじゅうかな?

いやいや水まんじゅうがこんな森の中にあるわけない。


「これは・・・恐らくスライムかと」

「えっスライム?!」


出たー!定番の定番スライム!

いや待て、スライムってこんなに小さいの?


「スライムってこの大きさが普通なの?」

「いえ、俺もこんな小さいのは初めてです。普通はこれくらいです」


ヒューゴは手と手で大きさを表した。

ドッジボールくらいかな?

なるほど、それに比べると小さいなこのスライム。


「鑑定してみたらわかるかな?」

「師匠は鑑定できるんでしたね」

「うん。状態情報確認」


スライムに向けて私は術を唱えた。

太鼓の音が鳴って目の前に巻物が出て、このスライムのステータスが出る。


【名前】なし

【年齢】生後5分

【種族】スライム

【レベル】1

【魔力】1

【攻撃力】1

【守備力】1

【俊敏性】3

【運】5

【スキル】なし


・・・・・・・・・・・・・・・・生後5分!?

完全に生まれたての赤ちゃんじゃん!?


「せ、生後5分って出た・・・」

「生後5分!?俺も旅に出て長いですが、こんな生まれたては初めてです・・。

しかしそれでもやはり小さいかと・・」


はー・・生まれたてのスライム、何か凄く貴重かも・・。

異世界物では強すぎるスライムの設定も数あるけど、この子はどうなんだろう。

今の所スキルはないけど。


私は好奇心で赤ちゃんスライムを突いてみた。

ぷにゅんとして、ぷるるんとしてる。

・・・やっぱり水まんじゅうだ。


そしたら赤ちゃんスライムはずるずる葉っぱから落ちだす。


「わっとと!」


それを両手で思わず受け止めてしまった。

少しあったかい。


「師匠、いくら害はないといっても魔物ですから、あまり関わらない方が・・」

「でもまだ赤ちゃんだよ。このままほっとくっていうのも・・」


手の中のスライムがもぞもぞ動き出した。

ぱちっとつぶらな目が開く。

じ、と赤ちゃんスライムは私を見つめる。


「・・・・・・・・・・・」


何か、可愛いかも。

へらっと笑ってしまう。


そしたら赤ちゃんスライムはすりすりと私の手に擦り寄る。

懐かれた、のかな?


『どうやらこのスライムは主殿を母親と思いこんだようでござる』


え?何それ?

私がスライムのお母さん?

どんな展開よそれ。


「な、何かこの赤ちゃんスライム・・私をお母さんと思ってるみたい」

「え!?スライムが師匠を?そんな、スライムに刷り込み現象はないはずですよっ」


あ、ないんだ。

え、じゃあ何でこの子、私をお母さんだと思ってるの?


『このスライム、どうやら変異種のようでござる。

よって普通のスライムとは色々と異なる部分があるようでござる』


特別なスライムって事かな?

これもまたお約束な!


「何か、変異種のスライムみたい」

「なるほど・・この大きさといい、刷り込みといい・・変異種というのなら納得です」


日下部いくみ 14歳。

異世界に来てから2日目。

赤ちゃんスライムのお母さんに選ばれたようです──。


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