表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

明日香 再び

第1話 同棲


『奴』の事件の後、私はマスターの部屋に転がり込んだ。


と言うか、足を怪我したマスターのお世話をしてあげたかったんだ。


私を助けてくれたせいで怪我したんだし、お世話するのが当たり前だと思ったから。


お母さんは寂しそうだったけど、ちょっと我慢してもらう。


時々は家にも帰ってあげるし。


最初、マスターは迷惑そうにしてたけど、そんなの気にしない。


だって私はマスターの事が好きになってたから。


マスターは

「俺と居たらまた怖い目に遭うかもしれないぞ」って言ったけど


私は

「でも、また助けてくれるんでしょ」って笑って答えた。


マスターは呆れた顔してた。


だって私は二度もマスターに助けられたんだよ。


それにびっくりするくらいマスターは強かった。


って言うか凄いカッコ良かった。


ボクシングをしてたみたい。


それとバーをする前は探偵さんだったんだって。


何か謎だらけの人だよね。


ボクサーで探偵さんでバーのマスター。


前はちょっと危ない感じの人だと思ってたから警戒してたけど、悪い人じゃ無いことはもう良く判ったし、寧ろ色んな人を何度も助けてるんだって。


マスターの友達のマサさんも何度も助けられたって言ってた。


そうそうマサさんはマスターが入院してた時、私の事を嫁さんだと勘違いしたんだ。


なんだか凄く嬉しかった。


その時、私はマスターの事が好きなんだって気づいたんだ。


そして、マスターが入院して、わかった驚いた事。


マスターの名前。


『拳一』だった。


それまで名前なんて知らなかった。


ずーと『マスター』って呼んでたし。


友達のマサさんは『拳ちゃん』って呼んでた。


『拳ちゃん』・・・漢字は違うけど


これって偶然?


私はほんの数ヶ月前に失恋した。


相手は健太さん。


多分私のお父さん。


恋敵はお母さん。


お母さんは『健ちゃん』って呼んでた。


笑っちゃうよね。


知らなかったとはいえ、お父さんに本気で恋してたなんて。


でも告白する前に気づいたから、ぎりぎりセーフ? だと思う。


だって、お母さんには敵わないもの。


「私には健ちゃんしかいません」だって・・・


重い言葉だった。


それもあって少しだけお母さんと距離を置きたかったんだ。




マスターは無愛想だ。


いつも言葉が短い。


でも一緒に居てると、本当は優しくて、明るい性格だったんじゃないかと思うようになってきた。


何かよっぽど哀しい事があって、心を閉ざしてるんだと気がついた。


何があったのか知りたいような、知りたくないような。


マサさんに聞いたけど困った顔しただけで教えてくれなかった。


出来るなら本当のマスターを見てみたい。




1週間程経った頃、私は少し苛立ってた。


マスターと私の関係がまったく進展しないから・・・


「ねえ、マスター、お店はいつから開けるの?」って聞いてみた。


「さぁ、どうするかな」


「もう足は大丈夫だよね?」


「みたいだな」


「ねぇマスター、私の事嫌いなの?」


「どうして?」


「・・・」


「どうした? 明日香」


「だって、こんないい女が一緒に住んであげてるのに・・・」


「・・・」


「私ってそんなに魅力ない?」


「いや、そんな事はない」


「じゃあ何で?」


「・・・」


私はマスターを見つめていたが、マスターは哀しそうな顔をして何も言ってくれなかった。


私はさらに苛立って

「わかった、もう帰る」って言ってしまった。


私はマンションを出ると、自己嫌悪に陥った。


やっぱり私はかわいい女じゃなかった。


誰かが言った言葉

「明日香は黙ってたらいい女なのに」


マスターに嫌われたかも? って思うと死にたくなった。


公園の前に差し掛かった時には泣きそうだった。


その時、『男』が現れた。


『男』は不気味な笑いを浮かべ私の前に立つと突然「お前は何故生きている」って言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ