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男惚

第15話 男惚


巧は何か考えていたが

「拳さん、任せといてください。トオルにはよく言い聞かせておきますから」と、言った。


俺は巧の顔を見て

「トオルって奴は面倒臭そうな奴だな?」って聞いた。


巧は苦笑しながら

「はい。まだガキの跳ねっ返りで自分の事しか考えられない奴でして」と答えた。


「巧も大変だな。よろしく頼むよ」


「はい。トオルには手出しはさせませんから」と約束してくれた。


「おい、タケシ。拳さんに迷惑かけたやつらを呼んで来い」


呼ばれて来たのはトオルを除く今朝の四人と兄貴と呼ばれてた奴と俺に殴りかかって反吐をはいた奴の六人だった。


巧はそいつらにゆっくり話始めた。

「お前らは自分が強いと思ってるだろう? 俺も昔はそう思ってたからな。だけどな世の中には怪物みたいに強い人もいる。拳さんもそういう人だ」と話し出した。


聞いてる俺は恥ずかしかったが止めなかった。

これも巧による若い者の教育だと思ったから。


「あれは五年前だ。俺は調子に乗ってた。怖いものなど何もなかった。そんな時、対立していた組の奴等に取り囲まれた。相手は七人だ。おまけに奴等は鉄パイプを持ってた。それでも俺は勝てるとおごっていたが、そんなもんは只の妄想だった。俺は直ぐにボコボコにされ殺されかけた。そりゃそうだ。勝てるわけない。そんな時、拳さんが現れてくれた。拳さんはな、そりゃ強かった。凄かった。本当にあっと言う間に七人を倒していたよ。俺はびっくりした。世の中には凄い人がいるもんだと」と


そこで巧は一旦話を置いた。


あの時の事を思い出してるのだろう。


再び話し出す。


「そして、拳さんは俺を助け起こすと『あんまり無茶するなよ。命の無駄使いしちゃいけない』と言ってくれた。それから病院まで運んでくれて名前も言わずに消えてしまったんだ。俺は拳さんに惚れた。それから俺は変わったよ。男として成長出来た。だから俺は拳さんの為なら何だってするつもりだ。俺の命の恩人だからな。街で再会できた時はそりゃあ嬉しかった」と、本当に嬉しそうな顔になった。


それを聞いて六人の男達は土下座して俺に謝った。


巧は麻衣の治療代として少なくない金を包んでくれた。



俺はマンションに帰り、顛末を話して麻衣に巧が包んでくれた金を渡した。


麻衣は喜んで何度も俺に礼を言った。


しかし翔は怒っていた。


「何でそんな無茶事するんですか? 命を粗末にしないで下さい」と。


巧に言った言葉と翔の言葉が重なっていたのが可笑しくて笑ってしまったら


「何笑ってるんですか」ってまた怒られた。


俺は翔を預かって良かったと思った。


少し笑えるようになったからだ。


翔といると俺の心は少しだけ軽くなる。


それは生まれて来れなかった子供の代わりに翔の事を可愛がれるからなのかも知れない。


マサはそこまで読んでたのかもな。



その後、一月程してトオルが翔に仕返しにやって来たが、危うい所で俺が気づき、今度は俺が反対の腕をへし折って巧に連絡した。


巧はひたすら謝っていたが

「気にするな。後の始末は任すから」と言っといた。


後の事は知らない。


聞かないし、巧も話さない。


もう二度とトオルは俺達の前に姿を現す事はないだろう。



〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜



「なぁ〜んか男同士で見つめちゃてやらしい」って言った。


「何言ってる。変な事言うなよ。明日香」ってマスターが笑って言い返した。


私はやっぱりこの二人の間には入れない。


悔しいけど。


私と翔さんとどっちが大事なのって、思わず聞きそうになったけど、そんなの答えられる訳もないし、嫌われるのがわかってたから黙ってた。


私はちょっと機嫌が悪くなっている。


多分マスターには私の気持ちはわからないだろうな。


「明日香? どうした、食べ過ぎて気分が悪くなった?」ってマスターが聞いて来た。


マスターの馬鹿。


もう私は帰りたかった。


マスターと二人きりになりたかった。


翔さんの事は好きだけど、やっぱり邪魔。


私は焼きもち焼いてるだけってわかってる。


しかも男の人に。


美和さんなら絶対こんな事は思わないんだろうな。


あ〜あ。私は可愛くないな。


ちょっと自己嫌悪になってきた・・・

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