王都ローリス
王都ローリス。見渡す限り人ばかり。綺麗な建物が所狭しと並び、ひらけたと思うと中心に噴水がある大広場。木々も程よく植えられ、洗礼された場所だ。
寄宿学校もローリスにあったため見慣れているが、何度見てもリウィアは圧倒される。
広場を歩いているのだが、夕方のためなおのことロマンチック。あーこれを恋人と眺めていたらさぞ素敵だろうな。男は苦手だがせめてこれじゃなきゃな〜。
「何睨んでるの?」
「別に〜元からこういう目付きです〜」
アベルに舌を出しあっかんべーした。
「うわぁ。今のカーラが見たらぶっ叩くよ」
「そんなへましないわよ」
カーラは礼儀作法にうるさい。自分にも厳しいが、他人に対しては倍厳しい。
「アベルだって、品が良いとは思えないけど?」
ずっとその口調だと怒られるだろう。
「いや。怒られたけど、直す気が無かったから、そのうち姉が諦めたよ」
アベルって意外と根性あったわ。
「ここら辺で待ち合わせなんだけど、いないなぁ」
セルウィルスと待ち合わせしてるのだが、見つからない。大体、髪色が目立つ風の精霊が堂々と街中に現れるのはちょっとまずくない?
仕方ないので、先に宿を取ることにした。
とったのは6階建の2階の部屋。ケチった訳ではなく、ウィルを窓から捜すには丁度いいかと選んだだけだ。
質素な机と椅子とベッドが2人用あるだけの部屋だ。ちなみに、アベルと一緒の部屋に泊まるって訳ではない。ちゃんと2部屋とった。節度は貴族にとって大事だからね。なんだか、質素だけど。
アベルは仕事を持ってきてせっせと書類と格闘している。ウィルの捜索はリウィアに任せられた。と言っても眺めてるだけ。
「げっ。帽子で見えない」
上から街の通りを見ると、帽子を被った人は多いので、顔がほぼ見えない。
「あー。大丈夫。ウィルが見つけるからそのまま、眺めていればいいよ」
とりあえず、言われたとおりにぼーと眺めといた。
すると扉からノック音がする。アベルが仕事を中断させて、扉に近づくと、誰ですか?と聞いた。
「俺だよ俺」
「名を名乗れ」
「酷いな!ウィルだよ!」
ガチャッと鍵を開けた。あれ?髪色が茶色い。染めたのかな?
「紛らわしい言い方をするな」
アベルがピリピリしてる。よほど仕事が嫌だったのかな。
「ウィルさん!良く気付きましたね」
「うん。もうリウィアちゃん可愛いからすぐ分かっちゃった!」
「え?そうなんですか?」
ちょっと恥ずかしくなったが、アベルが冗談だから間に受けないのと呆れた。
「ウィルは風に化けれるんだよ。だから、リウィアには見えてないけど、ちゃんと窓の前にいたんだよね?」
「あーあ。ネタばらし早すぎー。アベル空気読めー」
「へー」
リウィアはとりあえず風の精霊って便利だなと思った。あとちょっとチャラいな。
「ウィルも来たことだし場所を移そう」
片付けをしだしたアベルに首を傾げた。
「折角だし、もっと高いホテルに泊まらない?ウィルはこう見えてお金持ちなんだよ」
アベルも歴としたお金持ちなのだけどね!てっきり倹約家かと思ったよ!
「なんで俺?」
「待たせたお詫びだよ」
「何だったらわたしが」
「「それは絶対ダメ!!」」
2人してダメって、じゃあ素直に払えよ!わたしだって一応貴族なので、お金持ってるんだけど、男のプライドが許さないのだろう。めんどくさい。
「しょうがないから、俺とアベルの割り勘な」
セルウィルスが 手をひらひらさせ、この話を終わらした。
はぁこんな醜い話聴きたくなかった。
場所を移したホテルは、そりゃあもう立派だった。あっこれ、プリンスってついてる。超一流ホテルじゃないか。
扉にドアマンいるし、ロビーにはシャンデリア。くつろぐスペースが広い。とにかくソファだらけで、ここに座ってるだけで田舎暮らしの私は充分満喫できる。
なるほど、支払いを押し付け合う訳だ。
リウィアは一人部屋をそりゃあもう満喫したのであった。




