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おしまい

 



 それから4年後、リウィアはアベルの年齢に追いついた。


 城の廊下を歩いてると、寄宿学校時代からの2人の友人が待ち構えていた。1人は女王様の親衛隊でもう1人は裁判官。女性の社会進出を支える女王の恩恵は偉大だ。リウィアもその恩恵にあやかっている。


 だが、この問題ばかりはどうにもならないらしい。親衛隊である勝気な彼女はリウィアを心配した。


「もう婚期が過ぎてしまうぞ。いつまでも過去の男に囚われてはリウィアは幸せになれない。もうその男のことは忘れるんだ」


 裁判官である内気な彼女もリウィアを心配した。


「そうよ。いくらイケメンだったからって、世の中にはまだ沢山のイケメンがいるのだから、諦めちゃダメよ」


 ーーえ? 何でリウィアは面食いだってバレてるの? さてはウィルかな? 後で、殴っておこう。


 そもそも、アベルが好きなのはそんな表面上な理由だけではない。確かにくそが付くくらいイケメンだが、決して違う。


「私はアベルしか好きになれないの。私を何度も救ってくれたのはアベルなの。もうこの話はやめにしましょう」


「「ええ〜〜」」


 話を打ち切り2人からいそいそと離れるリウィア。さっきから捜してるのはウィルである。あいつまた仕事サボりやがった。


 廊下から中庭を覗いていると、騎士の男が近づいてきた。かつて、寄宿学校で俺の事が好きだろとか言い掛かりをつけてきたとんでもない男だ。真面目そうな武人という感じの彼は私の手首を掴んだ。


「返事をくれるか?」


 数週間前に私は彼に告白された。私は速攻で断ったが、じっくり考えてくれと言われてしまった。


 ーー何度も断ってるのだけどね! いつになったら納得してくれるのだろうね!


「は、離してほしい」


「良い返事をもらうまで離さない」


 ぞーと鳥肌が立った。拒否権はないって言いたいらしい。えっ怖っ。


「お前の友人やカーラ様からは許可をいただいた。もう、俺にしとけ」


 ーー何だと!? 友人もカーラもこいつに寝返ったのか!?


 離れた場所にいる2人の友人に視線を向けると、ぐっと親指を立てられた。ちくしょう。この男は外堀から埋める派だったのか。


 男の手を払おうと力を込めてもびくりともしない。


 ーー悔しい。女だからって舐められてるんだ。アベルはこんな扱いしないもん。優しいんだもん。


 じわりと涙が出てきた。すると、手首から手が離れた。


「悪い。泣かせるつもりじゃなかった。ただいつまでも過去に囚われてはほしくなかったんだ」


 怒りで頭が真っ白になった。


「なんで! なんでみんなして過去にするの!? 私は嫌なのに!? なんで! なんでよ!?」


 涙がぽたぽたと落ちてきた。


 最後に見た笑顔は昨日のことのように鮮明に思い出せる。大丈夫だ。まだ色褪せていない。


「私からアベルを盗らないで!」


 逃げた。アベルを盗る存在からひたすら逃げた。芝生の庭を走ってると黄緑色の髪の青年が寝そべってるのを発見した。


「ウィル!! 捜したわよ!!」


 涙を拭ってウィルを叱った。ずっと変わらない風の精霊の姿に安堵する。まだ、アベルがいる時と変わらない時が流れてるって感じられる。ウィルは無視して昼寝を続行した。リウィアは容赦なく脇腹を蹴っ飛ばした。


「あてっ!? リウィアちゃんの鬼畜〜。先輩は敬えって常識でしょ〜」


「サボってる先輩に敬うつもりはないわよ。私のことを面食いって教えたのウィルでしょ?」


「ひでー! あっそうそう。リウィアちゃんの好みのタイプを教えてくれって言うから素直に答えちゃった。ごめんね〜」


 私はもう一度脇腹を蹴っ飛ばした。ウィルが「むふふ」と頰を染めたので、蹴っ飛ばすのをもうやめようと思った。ウィルがそういえばと話し出す。


「サベラが結婚するって聞いた〜? レイアン子爵の代行を続けるつもりらしいで大変だね〜。俺なら仕事は辞めるわ」


 サベラはアベルの代わりにレイアン子爵の仕事を行なってる。忙しい彼女と暫くあっていないが、手紙のやり取りは続けてる。


「ええ。知ってる。サベラが結婚って、相手は女かと疑ったわ。ちゃんと男だったけど」


 ウィルはめちゃくちゃ驚いた。


「え!? サベラって男じゃなかったの!?」


 ーー多分。冗談よね。うん。まさか女って知らないはず無いよね。うん。


 ちなみにリウィアの両親は水晶宮で暮らす事にした。カーラに父が生きてると伝えたら、「戻ってきたら殺します」と物騒な事を言ってた。


 サラマンダーがてくてくと歩いてきた。


「おい。長からの伝言だ。火山に罪人が来なくなった。ありがとう。だってさ」


 それを聞いてリウィアはほっとした。

 女王に罪人をロマネの火山に放り込まないようにと、交渉した。初めのうちはめんどくさいと女王が聞いてくれなかったが、粘りに粘った結果、リウィアが強情すぎる、こいつのがめんどくさいと思われた結果、罪人を火山に送るのはやめになった。


 ウィルが「初仕事をやっと終えられたね。おめでとう」と寝そべりながら祝った。


「へえ。それは良かったね。今日はウィルの奢りだね」


「「「!?」」」


 精霊三人組は息を飲んだ。

 こちらに歩いてくる人影は照れ臭そうだった。

 あの時と変わらない姿だった。


 リウィアはダッシュでその人影に抱きついた。あったかい。ちゃんと生きてる。足が生えてる。幽霊じゃない。


「リウィアって積極的だね。……ちょっと待って」


「ぐす。え?」


 ーーどうしたの?


「なんだか綺麗になってない!?」


 ーー綺麗な顔の人に言われると悪い気がしないわね。


 ウィルが「面食い」と私に言ってる姿が頭の片隅に出てきた。


 天使の様に綺麗な顔立ちの青年はふるふると震えた。不安そうに私の顔を覗き込んでくる。


「まさか。男が出来た?」


「え!? いないわよ!」


 ーー私のことを疑ってるの!? え? 私はアベル一筋だよ!! サベラにクラっとしたことあるけど、あれは女だからカウントしなくていいよね!?


 ウィルとサラマンダーがこそこそと「心配症の男って重いわね」と仲よさそうに話してる。


 アベルは信じてくれない。


「嘘でしょ。こんな綺麗な子に言い寄らない男がいるはず無い。俺でさえ……。ごめん何にもない」


 アベルの場合は自身が体験してるぶん、信憑性があり、たちが悪い。


 ウィルが「リウィアちゃんにね〜告ってた男いたよ〜」と余計なことを言う。


 アベルは「親友。その話詳しく」と完璧な笑顔を浮かべて、仄暗いオーラを振りまく。


 ーーって、何でせっかく戻ってきたのに、そんな興味ない男の話になるのよ!?


 私はアベルをさらにぎゅっと抱きしめた。仄暗いオーラが急速に萎んでゆく。


「アベル。あのね。お帰りなさい!」


 顔を真っ赤にしながら、何とか伝える事が出来た。アベルは優しく微笑む。


「ただいま」





 END

私の初めてのなろう作品終わりました。最初と最後の文章の書き方が違うかもしれないです。すいません。一時的に離れてしまったこの作品を終わりまで書けて良かったです。最後にここまで読んでくれた方ありがとうございました。

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