天空神
アベル達を乗せた空飛ぶ船は雲の上まで上昇した。すると、目の前に現れた天空城。
[風の精霊の里へようこそ!]という旗を振る緑の髪の美男美女。天空城のある地へと甲板から降りた。
土の精霊が降りようとすると、風の精霊達は眉間に皺を寄せた。
こそこそ「汚い」
こそこそ「醜い」
こそこそ「ブサイク」
土の精霊はピクッと耳をジャンボにして、目をぎらつかせてブチ切れた。
「聞こえとるぞ!!!! 見てくれだけの、頭カスカスなシルフども!!!!」
「「「きゃーーーー!!?」」」
風の精霊達は蜘蛛の子を散らして逃げていく。
アベルの袖を引っ張って「君もシルフだろ! よく土の精霊なんかと一緒にいるね!?」と馴れ馴れしいシルフの男。
因みにアベルはシルフではない。説明するまでもない。
リウィアにも好奇心旺盛な女の子が「なんか水の気がする!?」と話しかけている。
ーーなるほど、ウィルの馴れ馴れしい態度はシルフの性質か。
風の精霊の賑やかな様子を見てアベルは半眼になった。
当の本人は馴れ馴れしくアベルの肩に肘を乗せる。
「ねぇ。親友。族長が後は案内してくれるからリウィアちゃんと2人で行ってきてよ。俺はノームを慰めとくでさ!」
土の精霊は「ガルルルッ」と揶揄う風の精霊達を威嚇してる。
ーーまあ、族長がいるなら良いか。リウィアと2人きりって気まずいし。
糸目の深い緑の髪に白い衣装の族長がニコニコと案内してくれた。
* *
白い石で出来た柱の祭壇が半壊してる場所。周りにそれしか建物がなく見晴らしが良い。日が暮れて青と日の色が混じり合う空。一番星が輝いていた。
「アベル殿に合わせたい方がいるのです」
族長が促す先にぽわっと光る人影。光る人なんて見た事がない。
ーーもしや、幽霊?
俺もリウィアも警戒しながら近づいた。
光る人影はプラチナブロンドのくるくるした髪の男だった。服装はトガという一枚の布を巻きつける衣装。
ーーその衣装見た事あるな。あっ。
くるっと振り向くお髭のその方。瞳の色はコバルトグリーン。俺を見てわーっと手を広げて駆け寄ってきた。
「孫ーーーー!!! 会いたかったーーーー!!!」
ガシッと筋肉質な身体に抱きしめられた。
ーー孫??
暑苦しい男の抱擁を見てリウィアは軽く引いている。
お髭がふさふさだ。
「娘にそっくりだ!! いやあ可愛い孫娘で嬉しいぞ!!」
「ちょっと、待って下さい。俺は男です」
目をパチクリして俺を見て胸を触って確かめるな。
「なっ!? そ、そんなぁ。女の子が良かった」しょぼん
「貴方は誰ですか?」
「儂? 儂はゼウスだよ。孫の母親の親。わかった? なあ。そこのかわいこちゃん紹介して」
この言葉の意味を解説しよう。神様時代のアベルの母はアウストレアであり、その父親という事だ。よって、神様時代のアベルのお爺ちゃんである。
ーーゼウスって天空神様であり、最高神じゃん!?
「ゼウス様……」
「お爺ちゃんって呼んでよ!」
「じじい」
「えっ。いきなり、じじい? 反抗期?」
「…………」
アベルは思い詰めていた。
「わかった」
肩を軽く叩かれた。
「かわい子ちゃんと風の長殿。少し2人きりにしてくれ」
リウィアは「そのアベルのお爺さん初めて見たわ」と正体に気づいてないようだ。




