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雨降って地固まる

 






 城に戻り疲れた体を休める女王。怪我は無かった。だが、戦争でバラントの多くの騎士を失った。亡くなった騎士ひとりひとりを思い浮かべて、国を守ってくれた事に感謝した。


 今日はこれから一般の国民も傍聴できる演説を行う。そこで待ち構えてるのは落胆か叱責か。ロマネ人を犠牲にしようとした私を国民は許さないだろう。


 侍女に身支度を手伝ってもらう。サラマンダーが現れた。


「おいらに破滅を見せてくれるんじゃなかったのか?」


 女王は容赦なくヒールの靴でサラマンダーの尻尾を踏みつけた。


「いでーー!?」


 真っ赤に腫れた尻尾をふーふーと息を吹きかける姿を冷めた目で睨んでやった。


「女性の身支度してる部屋に入るとは育ちが随分よろしいのですね」


 侍女はサラマンダーをきらきらした目で見つめていた。精霊を信仰しているからだと思われる。


 ーーこんな蜥蜴の何が良いんだ?


「はー? 人間の女の裸なんざ興味ない」


 げしげし


「あででで!!」


 失礼な精霊だ。これから受けるであろう事を思うと胸がすーとする。


 ーー重責から解放されて父に政権が戻るか。別の者が立候補されるだろうな。


「嬉しそうだな。良い事でもあったのか?」


「これから起こるんです」




 * *




 外が騒がしい。国民達が今か今かと女王の姿を待ちわびてる。


 ーーおかしい。もっと怒号が響いてると思ったのに、皆品が良いのか?


 わーー


 女王様ーー


 式典用の格式高い衣装に身を包む女王は城のテラスから姿を現した。


「女王様ーー!!」

「エリザベス女王陛下バンザーイ!!」

「素敵です!!」

「こっち見た!!」


 ーー……女優になった気分だ。


 視線を向ければ手を振られ頰を染めて、笑顔を見せれば黄色い声が響く。人気舞台俳優への反応じゃないかと思えてきた。テラスにサラマンダーが現れた。土の精霊がーー


 ーーああああああ!?


 現れた。エリザベスは叫びそうになり、国民の前で情け無い姿を見せるわけにはいかないので踏ん張った。顔は蒼白だ。


 テラスの下にいる民衆は精霊に気付き歓喜の声を上げた。


 流石、エリザベス様は精霊に愛されている。流石、クリフォード様の娘だ。女王陛下の御代はこれで安泰だ。


 ーー精霊共め小賢しい事をしおって!? あっあれは!?


 民衆に混じってフリッツがいた。変装してるようで怪しいおじさんにしか見えない。女王より歳下にはとてもじゃないが見えない。フリッツは女王に向かってにやりと笑うと杖を振った。アンゲラが現れ、雲ひとつない青空から雨を降らした。


 うわぁ!?


 驚く民衆達。そして、歓声へと変わった。


 雨が止むと空に虹がかかった。フリッツとアンゲラからの思わぬ贈り物に女王の顔は引きつった。


 ーーこれでは女王が辞める事が出来ないじゃないか。


 エリザベス女王陛下の願いは女王をさっさと引退してのんびりと暮らすことであった。


 なのに、民衆はまだ働けとばかりの視線を寄越してくる。ふっと女王は笑った。


 ーーそれでも、良いかもな。




 * *




 女王は執務室にフリッツとリウィアとセルウィルスを呼んだ。


 帽子を深く被るフリッツに「さっきは良くもやってくれたな」と、憎まれ口を叩いた。


 フリッツは「何の事か全く分かりません」ととぼけた。リウィアは「フリッツってロマンチストよね」と感心している。あの場にいたようだ。セルウィルスは「あー。俺も参加するべきだったかー。でも、女王に痛めつけられるのも……ありかも」こいつはもうダメだ。何を言ってるのか意味がわからない。


「まあ。良いです。瘴気の件ですが良くやってくれました。バラント国民代表として感謝します。ありがとう」


 フリッツはむず痒そうな表情だ。リウィアは内心礼を言う女王が信じられなくて戸惑う。セルウィルスに至っては自分に言ってるとは微塵にも思ってないらしく微動だにしない。


「もう少し素直に受け止めてほしいんですが?」


「えっあ。どうも」


 フリッツは頭を下げるが後の2人は固まったままだ。


「「……」」


 ーーこれだから、精霊は嫌いなんですよ。空気が読めないんですよね。


「リウィア。私は貴女をせっかく認めてあげたのですから感謝して下さい」


「はあ。そうでしたか」


 どうもとぺこっと頭を下げるリウィア。


 女王はリウィアに特別な職を与えることにした。


「貴女には精霊の相談役見習いとして働いてもらいます。よろしくお願いします」


「へ? それはどういった職ですか?」


 ーーきゅとんとした顔がなんとも間抜けですね。


「王家と精霊との間を取り持つ仕事です。そこのシルフに詳しくは教わって下さい」


 セルウィルスが「やったー! リウィアちゃんよろしく! 俺の事は先輩って言ってね!」と喜ぶ。


 ーーこいつの場合はサボれると思って喜んでるだろうがな。


「では、きちんと指導するように。リウィアさんセルウィルスがサボっていたらすぐに教えて下さいね」


 セルウィルスはぎくっと固まった。




実は地味な王女の世界とこの世界は一緒で、地味な王女がエリスの後ぐらいの世界です。フェルディは女王のご先祖様です。なんの話だって感じの方すいません。私の別の作品の話です。

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