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実は……

 

「よし全部倒せたな!」


 目につくウニョウニョと動く魔物をリウィアが斬りつけ、フリッツが瘴気と切り離しそれを浄化して元の木に戻す事に成功した。


 狩人は瘴気が浄化されたテルマ村を信じられない気持ちで観ていた。フリッツが「終わったぞ」とにっと笑って報せるとはっと気が付いた狩人は「……感謝する」とぼそりと呟いた。


 リウィア達は感謝されて嬉しい様なむず痒い気持ちになったが、亡骸が沢山転がってる状況を見て素直に喜べなかった。


「……これからどうするんですか?」とリウィアは狩人に問う。


 テルマ村には生き残っている人は残念ながらいなかった。おそらく村から逃げて生き延びた人がいるのであろうが戻ってくるのか謎だった。


「亡骸を埋葬したら村を出ようと思う。ここにいるのは色々と辛いからな」


 瓦礫と化した白い石造りの建物をじっと見つめる狩人。それは自分の家だったのかもしれない。


 フリッツは狩人の肩を軽く叩く。


「何かあれば俺のところに来い。これでも有名人だからな職の斡旋なら出来るぜ」


 そういえばフリッツはバラントで女の子に人気な脚本家でした。コネは沢山あるだろう。


 ーー物知りな上に顔が広くて頼もしいね! アンゲラが惚れる筈だ。見た目が35歳だが!


 浅黒い肌のシワが目立つ狩人は頷いた。


「ああ。名前は?」


「ただのフリッツだ。精霊の研究をしている。……25歳だ」


 フリッツは物言いたげなリウィアの目線に気付いたのか、わざと年齢を主張する。狩人は「ふむ」と頷くだけでそれで25歳か? とは言わなかった。


「ブレアだ。狩人で28歳だ」


 しん…… と静まった。

 リウィアはフリッツの袖を掴んで「もう、年齢の話やめようか」と首を振る。


 フリッツは何か物言いたげな目線をリウィアに寄越したが、ブレアの手を握って握手する。


「ブレア。これから大変だろうが、僕たちはもう友だ。協力出来ることは何でもする」


 ブレアは眩しそうにフリッツを見て「ああ」と僅かに口角を上げた。



 * *




 バラント国北部沿岸部にて女王は魔物の猛攻により苦戦を強いられていた。


 ーー大事な私の民達が死んでいく!


 女王は戦艦から小舟を出し陸へと向かっていた。水軍騎士達は急いでオールを漕いでいるが、私達が陸に着いたところで強靭な魔物への対応など出来ないだろう。文献を読んだかぎりでは精霊使いの能力が不可欠だ。フリッツ達は今はロマネ国にいる。ロマネ人を囮にしようと画策したものの、我が国の騎士や兵は私に逆らいロマネ人を庇っている。フリッツ達はロマネを救うべく動いている。


 ーー皮肉だな。神を嫌う私には相応しい状況か。


 天を仰ぎ、嗤いが込み上げた。同乗するアベルは「あの〜。手錠外してくれませんか?」と困っている様子。外すつもりはない。


 ふと、何かを思いついた。


「アベル。貴方はこの状況をどうにかできますか?」

「……多分」

「はっきりと言いなさいどうなのです?」

「はい! けど、俺1人じゃ大変です!」

「チッ」

「えっ今舌打ちしました?」


 ーー仕方ない。アベルに頑張ってもらうか。気に食わんが。


 私は水軍騎士に手錠を外すように命じた。海岸をざっと見て14体ほどの魔物がいた。騎士や兵は次々と魔物の伸びる手で吹っ飛ばされている。舟は陸に近づき女王は黒のスカートが濡れるのも構わず舟から海へと降りる。膝上まで浸かって布が水を吸って重いがざぶざぶと進む。水軍騎士が慌てて降りて女王を止めた。


「これより先は私達に任して下さい!! 陛下がいなければバラントはやっていけません!!」

「嬉しいことを言ってくれますね。だけど、これは私のミスです。私が責任を負わなくてはなりません」


 ーー自国の民を守れずに何のために女王などいるのだ! 女王などいなくなればいいのだ!


 自分を責める女王に高らかな女性の声が聞こえた。


 ーー「貴女はこの時のためにいます。今こそその血に流れるチカラを使うのです」


 女王は立ち止まって、周りを見渡した。女性など誰もいない。首を傾げる女王の姿に水軍騎士は不思議そうに首を傾げる。アベルは「えっ。そうなの!?」と驚いている。


 ーーこいつは何か知ってるな。


 女王はアベルに「何がそうなのですか?」と凄みを効かせて問う。


 アベルは「え、えっとですね。陛下には尊い神の血が流れてまして、その血のチカラを使えば魔物を浄化出来るそうです。はい」とビビりながら答えた。


 ーー聞いた事がないが、頑なにこの血筋が守られてきた歴史からするとあり得ない話ではないか。残念ながら瘴気の混乱期で資料が消失して確かめようがないが試す価値はあるか。神様とか気に食わんが民の命には代えられない。


「アベル。どうやればいいのか教えて下さい」


 女王に頼まれてアベルは何事かと物凄く驚いた。


 その時一陣の風が吹いた。ぐるっと竜巻になると茶色の髪のセルウィルスが現れた。


「親友! 何この状況テルマ村より大変じゃん!」

「ウィル! 何でここに? リウィアは?」

「聴いてよ〜。俺リウィアちゃんとサベラに殺されかけたんだよ。もうサイコーだね! ……ごめん。引かないでおじさんはテルマ村の魔物を殲滅できた事を報告しに来たの!」

「終わったんだ! お疲れ様! ウィル丁度良いところに来た! 手を貸してくれ!」


 新たな戦力を得て女王とアベルは協力して魔物に立ち向かうのであった。


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