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女王の治世

 








 そこは女王の執務室。デスクで書類仕事をする女王に矢継ぎ早に情報を報告する伝令係。


「陛下!ロマネ国との国境に騎士団が無事到着しました!簡易の野営地を作り、ロマネ人を収容しているとのこと。混乱も少なく怪我人も少ないです」


「私の国民に危害はありませんか?」


「はい。みな無事です。ロマネ国への出国も止めております」


「そう。ロマネ国にいるバラント人の保護を頼みます」


「かしこまりました!」


 伝令係は「失礼しました!」と去っていく。また別の伝令係がやってきた。


「陛下!失礼致します!フレンスの反資本主義派が我が国に攻撃を仕掛けると密偵から報せを受けました!」


「何?」


 書類を処理する羽ペンの動きが止まる。


「海路から攻撃を仕掛ける様です!」


「すぐに会議を行います。至急皆に伝えなさい」


「はっ!」


 2人目の伝令もそそくさと出て行った。


 女王はふかふかの背もたれにボフッともたれた。目頭を指でほぐす女王。光るトカゲが突然足元に現れた。サラマンダーは疲れている女王を見ると不思議そうに首を傾げた。


「偉い奴って忙しいんだな。何で女王なんてやってんだ?」


 女王はサラマンダーを睨んだ。


「流石無神経な精霊ですね。何でではなくて、やらざるを得ないのです。精霊には一生わからない事ですね。人間だったとは到底思えません」


 サラマンダーは「おおう。こわぁ」と震えた。


「ヴィニーは栄華を極めたがってた。それって幸せなのか?」


「忌々しいサラマンダーですね。私は生まれながらにして栄華を極めていた。私にとっては当たり前のものです」


「お前嫌味な奴だな」


「サラマンダーに言われても痛くも痒くもないです。私は栄華が逆に怖いです」


「...怖いのか?」


「栄華とは必ず続くものではありません。必ずどこかで廃れます」


 女王は必ず訪れるだろう未来に想いを馳せた。普段は見た目が若く見える女王はこの時は年相応の表情をした。


「もう、遠くもない未来に廃れるでしょう」


「お前は凄い奴だってヴィニーは認めていた。そんなお前の世が終わるのか?」


 女王は眉間に皺を寄せる。


「質問ばかりで鬱陶しい精霊ですね。なら、見してあげます。そして、迷惑料として私の命令に従いなさい」


「それは楽しみだな。まぁいいさおいらお前の事認めた。お前ヴィニー並みに神経図太いな」


「...水をぶっかけて差し上げましょうか?」


 にっこりと仄暗い笑みを浮かべる女王にサラマンダーは「やーだよ!」と消えた。







 その頃、王都の広場の掲示板に大勢の人間が集まっていた。呪われた女王と騒いでいた神教の信者3人の処刑予告の紙が貼り出されていた。


 何だ何だと騒ぐ人々。神教の者は「あの魔女め。本性を現したな」と憤る。精霊教の者は「今まで好き放題してきたツケが回ってきたのだ」と女王に賛同する。そして、宗教に所属していない者は「処刑はやり過ぎだ」と困惑した。


 これから女王の悪政が始まる。これはほんの序章に過ぎなかった。








 私兵の報告にアベルは困惑した。アベルはクレールの工場の視察に来ていた。ガチャガチャという金属音が響く。


「女王陛下は神教の者を公開処刑するそうです」


「こんな時に神教の奴らの反感を買ってどうするつもりなんだ」


 瘴気の問題に隣国の内戦。問題は山積みだ。騎士団が国境沿いにいる今、神教が徒党を組んで戦を仕掛けてきたらたまったもんじゃない。


 女王は何を考えている?


「すぐに女王の元に向かう。前触れを出してくれ」


「はい!」


 俺は国を人間を見捨てる訳にはいかない。女王を止めなければならない。











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