サラマンダーとヴィニーの過去
人類が大勢住む世界、地球。地球には大まかに分けると7つの大陸がある。その1つユーロッパ大陸にバラント国はある。バラント国の西の隣国ロマネに精霊教の聖地の1つポルペ火山がある。その火山の噴火口付近に火の精霊は住んでいる。噴火口には年中グツグツと溶岩が流出してる。
火の精霊ことおいらサラマンダーも仲間と一緒にそこに住んでいた。日課の溶岩風呂に浸かって「極楽極楽」と1匹で浸かっていると、2人の男が噴火口にやってきた。
2人共顔が似てるから多分親子だな。また人間が来やがったな。入浴中に来るとは魔の悪い奴等だ。
人間が来るのは珍しいことではない。しかし火の精霊の領域に理由もなく多種族が入るのは契約違反だ。領域に入る人間はみんな死をもって償わせる。
無礼な人間にはおいらから挨拶してやる。
溶岩に浸かりながら、口から火の玉を人間に向かって放った。中年の男はぬおおぉっ?!と慌てて避けるが服に掠めて一部焦げた。もう1人の30歳手前の男は軽やかに避けた。
ちえっ。避けやがった。
サラマンダーは溶岩から地面に這い出ると、自慢の皮を見せつけた。
「よう!人間共!この皮が目に入らぬかー!おいらにあったからには人里に戻れるとおもうなよー!」
「火の精霊かぁ!?頼む儂は見逃してくれ!代わりにこいつは八つ裂きにしても構わん!」
自分の息子を指差し、命乞いする中年男。
このおっさん何か勘違いしてないか?領域に入った時点でアウトだっての。
サラマンダーは火の玉を連発して人間共に当てた。中年男には見事に命中して服が焦げ全身火傷になる。放っておけばそのうち死ぬだろう。問題はもう1人の方だ。攻撃に掠りもしない。
「お前なかなかやるな」
火の精霊は戦闘狂だ。火の性質は激しくて強くて熱い。戦いたくてうずうずした。ぽんっとトカゲから人型に変身する。男は僅かに驚き、再び無表情になる。その茶色の瞳から必ず生き延びるという強い意志を感じる。男は帯剣してる剣を鞘から抜くと構えた。
「いいねー!そうこなくっちゃ!」
おいらは火を剣の形にすると、男に勢いよく振りかざした。またしても避けられた。何度も何度も火の剣を振るったが避けられる。
ちょこまかと鬱陶しい!!
サラマンダーの集中力が切れた。男はそれに気づいて剣を振るった。見事にサラマンダーの肩を切り裂いた。
「いだっ!」
痛みに顔が引きつる。男との距離をとり、傷を焼いて止血した。
めっちゃ痛い!!もう許さん!!
涙目になったサラマンダーは呪文を唱えた。
「バースト!!」
男がいた辺りが爆発した。男は勢いよく吹き飛んだ。
やったか?
倒れた男に近寄り生死を確認しようとしゃがむと男は突然起き上がりサラマンダーの首を絞めた。咄嗟に自分の首を火に変えて男の掌を焼いた。
ジュッ
「くっ!!」
男は痛みに呻いたが、すぐに剣を持ち構えた。サラマンダーは男の往生際の悪さに驚いた。こんな人間初めてだった。ここに来る人間はみんな生きるのを諦めた目をしていた。
「おい!お前!何でこんなに頑張る?おいらを倒しても火の精霊はうじゃうじゃいるんだぞ?」
おいらを倒したところで次の仲間が現れる。ここはそんな場所だ。男は口角を上げ嘲笑う。
「貴様こそ人間の良いように利用されて満足か?」
初めて男と会話が成立した。少しびっくりした。
火の精霊の為にしか動いてないつもりだったがこいつは何を言ってる?
「何を言ってる?」
「ここにくる人間は、罪人という烙印を押された人間だ。しかも、みながみな罪を犯した訳じゃない。人は己の栄華の為なら邪魔者を排除する。そんな世界に敗れた者を排除する場所に成り下がったんだよ。火の精霊への信仰心もまるで無いな」
男は何がおかしいのか、笑い出した。
こいつ狂ってやがる。いや、こいつの言う通りだったら人間そのものが狂っている。
「お前は敗れたのに何故生きようとする?」
「我は敗れてはおらぬ。必ず生き延び、陥れた奴を全員殺す」
男は殺気に満ちた目でこっちを睨む。背筋がゾクゾクした。
殺すには惜しい奴だ。こいつが復讐を遂げる瞬間を見たくなった。
「我は必ず栄華を掴み取る!!」
「...ならおいらに勝ってみせろ。もしも勝ったらお前の復讐に付き合ってやるよ」
「ならば殺さないように手加減せねばな」
また男は口角を上げて笑い出した。
「言ってろ」
サラマンダーは再び火の剣を作り男に斬りかかるが、自分の負けだと既に直感していた。




