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口だけの人っているよね

リウィア脳内では、アベルに敵う人間の女はいない。(顔面的な意味で)

 


 路地裏から出て、元いた商店街の洋菓子屋にウィルはいた。声をかけたらこんなことを言われた。


「え?もう終わり?また一日伸ばしてもいいんだよ〜?」


 沢山のお菓子を購入したセルウィルスは、リウィアに水玉模様の包み紙の飴玉を渡す。リウィアはありがとうと受け取った。アベルにも渡されたが、アベルはいいと首を横に振った。


「ウィルも暇じゃないだろ?」


「これも歴とした仕事じゃん」


 今までのセルウィルスのふざけた態度が頭を横切った。なら真面目にやれよとアベルとリウィアは同じ事を思った。

 ウィルはおもむろに紙を取り出してアベルに半ば押し付ける様に渡した。


「これが地図だから、あとよろしく〜」


 手を振って立ち去ろうとするウィル。

 アベルは咄嗟にウィルの肩を掴んだ。


「どこに行くつもり?」


 ウィルは痛いんだけど〜と笑いながら振り向く。しかし、アベルの顔を見た瞬間ヒェ〜と凍りついた。


「やだなー。ちょっとお菓子を妻に持って行こっかなって思っただけじゃん。そんなに怖い顔しなくてもいいじゃん」


「さっき仕事だって言ったことをもう忘れたのか?」


「だってさー。さっきの君たちを見たら無性に妻に逢いたくなったんだよ。俺もイチャイチャしたいんだよ」


「え?イチャイチャ?」


 アベルはなんの事かわからなくて、リウィアに問いかける。すると、リウィアが冷たい目で知らないわよと顔をそらした。


「え?リウィアちゃんの反応はともかく、アベル本当にわからないの?」


「ウィル。適当なこと言って逃げるなよ」


「ん?まぁいっか。じゃあね〜」


 店の中なのに風が強く吹いてウィルが消えた。急いで店の外に出たが見つからなかった。


「あいつっ!」


「いいじゃないのアベル。私たちで行きましょう」


 リウィアは冷静な顔だ。どうしたんだろう?いつもはもっと感情豊かな気がするから心配になった。

 アベルは、私兵の赤髪の女から聞いた事を思い返した。

 くすんだ金髪の男がリウィアに言い寄っていた。後ろにはサングラスの男にがいた。サングラスの男は昨晩リウィアを人質にした男に似ていたようだ。

 しつこい男だ。また狙って来たのか。

 リウィアが傷ついてないか心配になって顔を覗き込んだら顔を赤くしてしまい倒れた。混乱して昔の女について聞かれたので、男に言い寄られたのが相当ショックだったんだなと思った。あと自分は可愛くないとコンプレックスを抱いているようで、アベルの元恋人の容姿を羨んでたりしてたな。


 地図を見ながら、道を歩いた。リウィアがすぐ隣で黙って歩いている。付いてくるのが可愛いな。と顔をちらっと見ると、表情がないせいで、いつもより大人びてみえた。こげ茶の髪は結んで帽子に隠してある。肌はみずみずしく、化粧をしてないせいかきめが細やかだ。唇は小ぶりでぷっくりしていて可愛らしい。水色の瞳は澄んでいて神秘的だ。


 こんなに可愛いのにコンプレックスになるの?

 リウィアは理想が高いんだな。


「何よ?」


 こちらの視線に気づいたのかリウィアは無表情で聞いてきた。


「何でもないよ」


 にっこり笑うとリウィアの顔は赤くなった。その顔が可愛いのでじっくり見ようとしたが顔をそらされた。

 この反応癖になるなぁ。




(ここまでがアベル視点で、ここからリウィア視点になります)





 リウィアは内心苛々していた。

 アベルめ私のことをおちょくってるの?

 優しく見つめる目に恋愛感情があるのかと、期待してしまった自分が恥ずかしい。

 あの目は妹に優しくする兄って感じに違いない!

 だから、軽々しく顔に触れたり、お姫様抱っこしたり出来るのだ。

 ウィルにイチャイチャではないと否定したのがいい証拠だ。

 別に恋愛感情を持って欲しいって訳ではなく、紛らわしいことはやめて欲しいのだ。


 それにウィルのことだが、親切に精霊についてあれこれと教えてもらったが本当に信用できるの?リウィアには信じられるほどの月日をウィルと共にはしていない。あの自由奔放な性格は果たして演技なのか。自由奔放のくせに肝心なとき頼りになっている。何故そんなに協力的なんだ。

 ウィルについてアベルに聞けばいいのだが、この様子だとウィルのことを信じきっていそうだ。

 私がしっかりしなきゃ。

 気を引き締めていこう。


 アベルの後をついて行ったのはいいが、着いたのは治安の悪い場所だ。

 もしや、ウィルの罠かとリウィアは周りをキョロキョロ見渡した。

 アベルが立ち止まるから、リウィアも一歩下がった場所で止まる。

 アベルが首を傾げた。


「おっかしいなぁ」


 この発言に嫌な予感がした。


「ねぇ。そんなことないとは思ってるんだけど」


「ん?」


 アベルがリウィアに振り向く。


「迷った?」


 きゅとんとびっくりした顔から、にっこりと笑った顔になる。

 白々しい笑顔である。


「そうみたい」


 リウィアの額に血管が浮き出た。


「嘘でしょ〜!?」


 ははははじゃないから!アベルもウィルに負けずいい加減な人だわ!


「ちょっと!地図!」


「はい」


 アベルから受け取った紙キレには、地図が書かれていた。線が道で、四角が建物で、丸が目的地のようだ。丸が異様にデカイ。はっきりいって、大雑把な地図だ。


「何よこれ〜!」


 リウィアは地図を握りしめて震えた。


「まぁ。人を探してアンゲラに見てもらうしかないね」


 アベルは適当に歩き出した。仕方ないのでリウィアも付いていく。

 


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