(アベル視点)自称おじさんが五月蝿い
リウィアが去って、アベルはほっと息を吐く。誤魔化せて良かった。リウィアの警備に2人の私兵に頼んだ。同じ建物だし、同じ階だし大丈夫だろう。ちなみに前にリウィアにつけていた私兵と同じだ。予想と違ってヴィニーに気絶させられただけだった。
しかし、さっきからウィルの視線が痛い。
「それで、俺が満足したと思う?」
くそっ ウィルを騙すのは無理そうだ。リウィアの鈍さが本当可愛らしく思える。
「何が不満なの?」
わからないふりしたが、年の功か知識量のせいか気づいた。
「最後の方。元に戻ったのを君が確認してるんだよね?おかしいんだよ。暴走がそんな簡単に収まるとは思えない」
ウィルはじーと俺を見ると、とんでもない事を言った。
「リウィアちゃんと寝たでしょう?」
この寝たとは、仲良く一緒にお寝んねしたの?という意味ではないだろう。男女の夜の営みを暗にさしてるな。
「いや。違うから」
これはあれか、ウンディーネってタイトルのミュージカルで観たことあるけど、お転婆な人間らしくないウンディーネの娘が騎士と結ばれて、淑やかで思慮深い素敵な女性になる。それを俺とリウィアに重ねるつもりか?!因みに元恋人とミュージカル行きました。
「違う?うそぉ。恥ずかしがってるんだよね?大丈夫。おじさんそういうの詳しいから、遠慮しないで」
ウィルは腕を組んでうんうんと頷いた。
「うざいぞ。オヤジ」
ウィルの見た目が20歳ぐらいにしか見えないから、年齢を忘れていた。中身は年相応のおっさんだった。
「だってさ、男を手当たり次第口説いてるってことは当然君も口説かれてるよね?」
「...そんなこともない」
リウィアから俺だけ口説かれなくて、やきもきしていたんだよ。
「でも、アベルがパートナーでしょ?」
舞踏会には基本、パートナーを同伴させる。リウィアは貴族の男の知り合いがいなかったので、カーラがアベルに頼んだのだ。 アベルは親切心から応じた。
「いや、ただリウィアには男の知り合いがいなかったから俺だっただけ」
リウィアからは俺が良いとは聞いてなかった。
「アベルさ。その舞踏会の辺りに恋人と別れたって言ってだよね?リウィアちゃんと何かあったんでしょ?恋人それ以来つくってないじゃん」
くっ やはり元恋人に結びつけてきたか。全くもってその通りだよ。
ウィルは真剣な表情になった。
「俺はからかってる訳じゃなくて、心配してきいてるんだよ?」
まぁ面白いけど。と小声で言ってるのをアベルは残念ながら聞こえなかった。
「誰にも話さないって誓える?」
「誓う誓う」
ウィルは真剣な顔で頷く。
仕方がない。ウィルがしつこいので話そう。
「俺は舞踏会でリウィアと一曲踊った後、リウィアが他の人を誘惑しないように個室に連れていった。淑女がはしたないことをしないようにって説教したんだ。そしたら...」
「そしたら?」
くっ 恥ずかしくなってきた!
「俺は恋人つくってリウィアに見せつけてるくせに、なんでリウィアはダメなんだと、言われ。俺と...」
「俺と?」
「俺とキスしたいって言っても断わるんでしょと」
「ほお!」
ウィルめ。目が輝いてるぞ。
「だから、他の人とキスしてやるってリウィアが言うからつい」
「つい?!」
「...キスしたよ」
「きゃーー!」
口を掌で覆って乙女のような声をウィルが発した。
本当に心配して聞いてるの?
「やっぱり、寝たのね?」
乙女がとれてないぞウィル。
ウィルの中では寝たこと決定らしい。いや違うぞ。
「だから、寝てはいない。いや、その後リウィアは寝ちゃったけど、そういう意味ではないから!」
「え?キスだけ?」
そうだよ。悪いか。
「君それ以来、何かおかしいことはな
い?」
思いっきりあるが、いくらウィルでもこれ以上は教えれない。
「ないけど、リウィアが忘れてたのはショックだった」
「そっかー。そういうこともあるんだねぇ。教えてくれてありがとうね」
ふむふむとウィルは考えて、勝手に納得したらしい。
アベルは精神的に疲れたので、今後のことを簡単に話した後、仮眠をとることにした。
ウィルはこき使われる可哀想なギャグ担当です。何気に有能で使いやすい。




