序章
バラントは国名です。
リウィアはこげ茶の真っ直ぐな髪に澄んだスカイブルーの瞳の少女だ。目尻が少しつり上がっているため気が強い様に見えるが、事実気が強い。
父はクレイ伯爵家の次男で医者。母は元は普通の町娘。母は父の仕事を手伝い、7歳のリウィアは家庭教師から勉強を教わる。そんな一般的な日々を送っていた。
しかし、平穏な時間は長くは続かなかった。
クレイ伯爵の屋敷にて親族を集めた舞踏会が冬に執り行われた。
そこで火事が起こった。真夜中で誰もが就寝していた時間だ。屋敷の4階で寝ていたリウィア達は暑さで目が覚めた。何事かと扉を開けた父は真っ赤に燃える廊下を見て慌てて扉を閉めた。窓から、火の粉が舞っているが見えた。部屋に煙が充満してきた。
最悪な状況に父とリウィアは呆然とした。だが、母だけは諦めていなかった。母は任してほしいと父に頼み、父は母の言わんとすることを理解したようだった。
父はリウィアにベッドのシーツを被せて持ち上げた。シーツが顔に被せられたリウィアはその後のことはよく分からなかった。ただ父に外へ運ばれたことは分かった。
シーツを外されると母がぐったりして父にもたれかかっていた。母が何か無茶をして、リウィアと父を火から逃してくれたようだった。




