トカゲとサニーの命の借り
凄まじい過去をサラッと語るドックチェリーにサニーは
「最初に会ったとき、酷かったからねアナタは」
サニーとショッポの仲は古いもので、カジノの賭けチェスのロボットアームだったサニーを先に気に入ったのはサエコだった。
サニーはサエコを失って身体を失ったショッポが機械の身体を手に入れて、サエコを迎えに行くと奮起した頃に相棒としてショッポを手助けするため自分も身体を手に入れることをショッポに熱望する
ショッポはその希望に答えるために死神とあだ名されるクローンを売買するクローン商人の所へ出向く
ショッポは死神の噂を聞き、あまり気が進まない所もあったが
誰かを殺してサニーの身体を手に入れる訳にもいかず、仕方なくクローンを買うために死神を選ぶしかなかった
死神は生命延長させた上質なクローンを扱う一流の商人ではあったが、クローンを人ではなく、完全に物として扱う男で、残酷な人間だった
オカリナのスクラップ街にある死神の工場には
賭け格闘技に使う、限界まで肉体改造したクローン
射撃の的にするためだけに誕生させたクローンなど
それに伴い改造に失敗したクローンがスクラップの車のようにアチコチに無造作につまれていた
ショッポは吐き気がする 青白いライトが照らす工場で死神に注文する
「完璧な女型のクローンが欲しいんだか」
てっぺんがハゲ上がり両脇の残った髪を立たせたカッパのような髪型の死神は手招きし、ショッポを奥に奥に誘う
奥に進む中、大きな水槽型の生命維持に入れられた男性型のクローンに目が止まる
下半身がなく、腹部も削ぎ取られ、胸から背骨があらわになったクローンが目を見開いてこちらを見ている
ショッポがその液体の薬剤に浸かる男性型クローンに目を奪われていると
「そいつは出来損ないだからダメだ」
このクローンは残酷な人間たちがクローン狩りと称して、廃墟に逃したクローンを銃で撃ち殺すゲームのために売ったクローンだったが
逆に素手で銃を持った人間を返り討ちにして返品されたクローンだった
「切り刻んで生きたまま標本にしてるんだ」
そういうと死神は笑いながらショッポの前を歩く
ショッポはハンドガンを抜くと死神の後頭部を撃ち抜き穴を開ける
一番上等そうな脳死した女型のクローンと
この上半身しかない男性型クローンを黒田のラボに持ち帰ると
女型にはサニーを移植する
男性型にはその頃、黒田が研究していたネオクリスタルを使わない、金属と生命体の融合の実験を兼ね特殊な金属の背骨と尻尾を使うという条件で無料で移植を行う
トカゲと名付けたこの男にショッポは
不細工な身体で済まないなと言ったが
この身体ならアナタに借りが返せそうだとトカゲは答えた
サニーは新しい身体を手に入れ、優れたトレジャーハンターに生まれ変わった
「あんたクローンだったのか?で、サニーはクローンじゃないのか?」
男性型クローンは全て同じ顔なのだがトカゲは同じ人相を嫌い整形していた
「もっといい顔があったろ」
風を切る音がすると
タスキがけのように収納していたトカゲの金属の尻尾の刃がストレートの片方の眉毛をすべて切り落とした
ドックチェリーは爆笑し、サニーは呆れ顔で
トカゲは結局一言も発しなかった




