ゴンドラ
「またその話してるのか!」
ショッポはドックチェリーに呆れたように話かけた
ドックチェリーはショッポになぜ信じないのかと言わんばかりにジェスチャーが大きく熱くなっていた
ストレートにしても粗悪な麻薬でもやって幻覚でも見たのだろうと思っていたが当然口にはしなかった
ドックチェリーとショッポの小競り合いが終わるとノーチラスはオカリナの歓楽街に繰り出す事にした
オカリナの巨大な歓楽街には
飲食店 カジノ 風俗店 クローンを戦わせる格闘技場 違法人体改造する医療施設 ありとあらゆる欲望を叶える娯楽が溢れ あらゆる人間が蠢いていた
ノーチラスはショッポの愛車の骨董品の赤いキャデラックに乗り込み 歓楽街にある大きなレストラン(ゴンドラの羽)に到着する
レストラン(ゴンドラの羽)はタイムトレジャーハンターの大組織ゴンドラが経営する店でオカリナの無法地帯の中では比較的に安全なレストランだった
五人は談笑しながら食事を楽しむ
食事が終わり各々くつろいでいるとこに
一人の男が現れる
「ショッポさんボスが話をしたいと言っているんですが宜しいですか」
ショッポはトカゲに目線を送り二人は席をたつ
ショッポがこのレストランに訪れたのは最初からこれが目的だった ゴンドラの楊貴妃と呼ばれるボスと話す事
サニーとドックチェリーはこの事態を予想していたかのように二人が動くのを見送った
二人は店の奥にある護衛のついたエレベーターに乗り 上階にあるゴンドラのオカリナ事務所に向かった
頑丈なロック式の扉が開き中に入ると 三人の男が立っていて 三人とも武装していた
何もない部屋の中央に通信用のコントロールキットが置かれ 大きなディスプレイにはゴンドラのボスが映し出されていた
「久しぶりね」
長い黒髪を美しい宝石の散りばめられた かんざしで留めた
美白の美しい女性がゴンドラのボス 楊貴妃
地球の衛星 月のコンドラの本部からの生放送だった
ショッポにはゴンドラの言いたい事は分かっている
こっちの敷地に土足で入ってくるな
と言いたいのだろう
当然の事だった
クリッターにノーチラスの情報を流して襲わせたのもゴンドラに違いない
この状況を予想していたショッポには秘策があった
キャプテンハットを触り被り直すとショッポは上着の内ポケットに手を伸ばす
ゴンドラの三人の男は銃を抜こうと構え
トカゲは
一人目の敵の首すじに素早い動きで金属の尻尾刃をあて動きを止め
二人目 三人目の敵には交互にハンドガンの銃口を向ける
「落ち着けよ」
ショッポは内ポケットからゆっくりと手を出すと
その手には大きな真紅のルビーと緑のエメラルドが向かい合って装飾された指輪があった
「それは太陽と月の指輪か」
楊貴妃が叫ぶ
楊貴妃は無類の宝石コレクターでそのためにタイムトレジャーハンターになったほどの宝石好きだった
闇市で博打勝負で手に入れた切り札で
この勝負はショッポの完全勝利だった
ショッポは宝石の代償として条件を出す
クリッターにノーチラスが計画を中止したと嘘の情報を流す
今回のトレジャーハントには干渉しない
日頃からクリッターとの情報戦を繰り広げるゴンドラには朝飯前だった
楊貴妃は渋々条件を飲み この場は治まった
楊貴妃は手下に渡された指輪を丁寧に保管するように命令する
「条件は飲むが 今襲われるあの坊やはどうにもならないわよ」
楊貴妃は唇に手をあてて笑う
ショッポとトカゲは愚かな若者を助けるために行くのだった




