俺が失言してしまった件について
今回は遊が失言してしまう話です
失言は誰にだってあります。遊の場合は多分、取り返しがつかない可能性がありますが
では、どうぞ
俺のプライベートとプライバシーが遊華に筒抜けだったという事実が発覚してから数日が経過した。それからというもの、俺は事ある毎に遊華達に写真をねだられるが、それ以外は前と変わらない。そして、今日は休日。世の中じゃデートに行く人、家族と過ごす人といろいろいると思う。俺、藤堂遊の休日は……
「なぁ、遊華?」
「何?お兄ちゃん?」
「どうして俺は遊華達1人1人と写真を撮らなきゃいけないんだ?」
恋人達と写真を撮るという意味不明な状況だ。事の始まりが何だったかだなんて考えるのもめんどくさい
「だって、お兄ちゃんの行った未来じゃ私達は一緒に写真を撮ったんでしょ?」
唐突過ぎると思う。それに、俺は未来で遊華達と2人きりで写真を撮った覚えが……あ、あったな。美月とツーショットを撮ったわ。
「あー、未来の美月とゲーセンでツーショットを撮った記憶はあるな」
「「「「へぇ~、ツーショットねぇ……それも、ゲーセンで」」」」
「ゆ、遊ちゃん……」
目に光を宿していない遊華達と頬を真っ赤にして照れる美月。両者の反応は対照的だが、どちらかと言えば俺的には遊華達の方が怖いと感じる。はぁ、とりあえずフォローしておくか
「美月とはゲーセンでツーショットを撮ったが、遊華と香月とは別の日にツーショットを撮った。美優と由紀とは機会がなかったから撮れてないが……」
遊華と香月とツーショットを撮った記憶は微塵もないが、美月とツーショットを撮った以上、遊華と香月ともツーショットを撮った事にしておかないと俺は明日の朝日を拝めないような気がする。
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「無理にフォローしようとしなくていいから」
ヤンデレモードだった遊華から同情の眼差しで肩に手を置かれてしまった
「い、いや、別に無理なんてしてないぞ?」
遊華に同情された上に無理してフォローしようとしたのもバレバレだった事実に声が上ずってしまう
「遊、私達は未来で遊が美月と2人きりで写真を撮った事を怒ったりしないよ?」
「え?そうなの?」
てっきり俺は未来で美月とツーショットを撮った事を怒ってるのかと思ったが、実はそうではないらしい
「そうですよ。遊さん。私達は別に怒ってませんよ。そりゃ、少しは嫉妬しましたけど……」
由紀の言葉に美月以外の3人は頷いてる。さっきのは怒ってヤンデレになったんじゃなく、嫉妬してヤンデレになったのか……遊華達のヤンデレは見慣れているから怖くはないが、ヤンデレになる原因が予測不可能だから俺にとってはそっちの方が怖い
「はぁ~、よかった~、俺はてっきり未来で美月とツーショット撮って怒ってるのかと思った」
ヤンデレの原因が怒りではなく、嫉妬だったとわかって全身の力が抜けたような感覚になる俺。
「遊くんは私達を何だと思ってるの?」
人間は客観的に自分を見るって事ができない生き物だ。今の美優みたいに。俺が美優達を何だと思ってるかだって?そんなの決まっている。いつ、どこでヤンデレが発動するかわからない恋人(爆弾)だと思っている
「………………………………………………………………ノーコメントで」
本人達を前にヤンデレ爆弾(恋人)とは言えないよなぁ…………
「お兄ちゃん、今の間は何かな?」
「いや、別に。遊華達は本当に可愛いなと思っただけだ」
本当はヤンデレ爆弾(恋人)と思ったが、それを本人達に言うと俺の身が危ない
「ふ~ん、遊ちゃんは私達をヤンデレ爆弾だと思ってるんだ~」
美月さん?俺、口に出して言いましたっけ?
「そんな事はないぞ?自分の彼女をそんな爆弾だなんて思うはずないだろ?」
「遊ちゃん、別に隠さなくていいんだよ?私達は遊ちゃんにどう思われていようと側にいれるだけでいいの」
いつもなら言い訳をするんだが、今回はその言い訳すらさせてもらえない。というか、愛が重いんだけど……
「美月……」
愛が重すぎて名前を呼ぶのが精一杯だ
「お兄ちゃん、建前はいいから本当の事を言って?」
「遊、私達に隠し事はなしだよ?」
「遊さん……」
「遊くん……」
美月の言葉を引き金ににじり寄ってくる遊華達。俺は彼女達の頼みを無碍にできるほど冷酷な人間じゃない
「確かに俺は遊華達の事をヤンデレ爆弾だと思った。しかし、本当に思ってる事じゃない」
遊華達の事はヤンデレ爆弾だと思った。思いはしたが、心の底からそう思っているわけじゃない
「じゃあ、お兄ちゃんはどうして私達の事をヤンデレ爆弾だと思ったのかな?」
「そりゃ遊華達がヤンデレになる基準が読めないからだよ」
ヤンデレな彼女達が嫌なんじゃない。ただ読めないのが不安なんだ
「私達がどんな時に遊を監禁したり拘束したりするのがわかればいいの?」
香月が両手で俺の顔に触れながら訪ねる
「ああ。毎度の事ながらいきなり監禁、拘束は困る」
愛されて嫌な人間はいないだろう。しかし、俺にだって予定というものがある。例えば、浩太達と遊ぶ約束をしている時に監禁、拘束されたらたまったもんじゃない
「遊ちゃん、それさえわかれば監禁、拘束していいの?」
美月の質問はツッコミどころ満載だが、監禁、拘束にはもう慣れた。いっそのことヤンデレ全開の方が俺にとってはやりやすいのかもしれない
「ああ。浩太達と遊ぶ約束をしている時に監禁、拘束されたらたまったもんじゃないからな。せめてタイミングだけでも教えてくれ。いや、いっそのこと常にヤンデレ全開の方が俺にとってはやりやすい」
ヤンデレとノーマルを使い分けられ、唐突にヤンデレになられるのならいつもヤンデレの方が俺にとっては助かる
「お兄ちゃんは私達が常にお兄ちゃんを監禁、拘束しようとしたりしてた方がいいの?」
「そりゃ遊華達が常にヤンデレの方が俺としては先読みができるから助かるが……」
口に出して言わないが、遊華達が常にヤンデレでいる事は楽だがそれ相応のリスクも伴う。例えば、俺が遊華達以外の女子と事務的な会話をするだけで監禁、拘束されそうになるとかな
「そう……お兄ちゃんは私達の大きすぎる愛を常に受け止めてくれるんだね?」
「はい?」
俺は遊華達が常にヤンデレでいてくれる方が助かるとは言ったが、常に遊華達の愛を受け止めるとは言ってない。あれ?俺の言った事ってもしかして……
『常にヤンデレ全開の方が俺にとってはやりやすい』
遊華の言う通りだったー!!!!!!最初は遊華が曲解してると思ってたが、見方を変えると俺は遊華達の大きい愛を常に受け止めるって言ってるようなものだ!!どうするんだよ!?バカじゃねーの!?バーカ!
「だってお兄ちゃんがそう言ったんじゃん。私達の大きすぎる愛を常に受け止めてくれるって」
「あ、はい、確かに俺はそれを匂わせるような事を言いましたね……」
遊華達のヤンデレは今更だが、どうしてだろう?全身から吹き出す汗が止まらない
「遊、男に二言はないよね?」
光のない香月の目が俺を捉ええる。今の俺は蛇に睨まれた蛙だ
「はい……ありません」
俺はそう答えるしかできなかった
「遊ちゃん、私達はこれから全力で遊ちゃんを愛していいんだよね?」
「はい……」
今まで全力じゃなかったのか?という質問をする勇気は今の俺にはない
「遊さん」
遊華や香月、美月とは違い目にちゃんと光がある由紀。いくら俺の恋人達がヤンデレだとはいえ由紀は比較的常識人な方だ。きっと俺を助けてくれるに違いない
「由紀……」
俺は女神のような笑みを浮かべる由紀を見つめる
「今までは遠慮してましたけど、これからは遠慮なく遊さんを愛しますね」
前言撤回。先程まで女神のような笑みを浮かべていた由紀は一瞬で遊華、香月、美月と同じようにヤンデレの顔になってしまった
「はい……」
由紀がヤンデレになってしまった以上、俺は返事を返す事しかできない
「遊くん。心配しなくても私達が愛してあげるよ♪永遠にね」
遊華達同様にヤンデレと化した美優。未来に飛ばされた事のある俺でも彼女達が完全なヤンデレになってしまった時の対処法なんて思い浮かばない。しかも、こうなったのは俺の失言のせいだ
「お、お手柔らかにお願いします」
こうなったのは俺の失言が原因だし、そのうちヤンデレモードでいるのにも飽きるだろう。結論、ほとぼりが冷めるまで待とう
「お兄ちゃんから許可を得たんだから遠慮も手加減もしないよ。今まではお兄ちゃんに嫌われたくなくて遠慮してたけど、もう手加減なんてしないよ。だってお兄ちゃんが言ったんだもんね。私達の大きすぎる愛を受け止めてくれるって。永遠に一緒にいれくれるって。香月さん達はお兄ちゃんと過ごして間もないけど私は小さな頃からお兄ちゃんが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらなかったんだよ?」
ここまではいつものヤンデレ遊華だ。それにしても、遊華はよく同じ言葉を息継ぎなしで言えたものだと感心してしまう
「遊華が俺を好きでいてくれるのは嬉しいし、俺ができる範囲で遊華達と一緒にいるつもりだ。学校行事や学年的に遊華達と離れる事はあると思う。だから、必ず一緒にいるっていう風には言えない」
学校行事や学年の壁は俺の力じゃどうしようもないからどんな時でも一緒にいるとは言えないが、それ以外ではなるべく一緒にいよう。特に遊華には会話してない時期もあったからその空白を埋める為にもな
今回は遊が失言してしまう話でした
誰にだって失言してしまう事がありますが、遊の場合は日常生活に影響があるようです。この作品では新年一発目の話で遊華達が本格的にヤンデレ化してしまいそうですが、今までが控えめだったかなと思います
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!