俺が遊亜と再会する件について
今回は遊亜と再会する話です
遊亜と再会するにはどうしたらいいでしょうか?
では、どうぞ
最近の俺は変だ。それは自覚している。そもそも、どうして記憶にない母親や会った事もない妹の夢なんて見るんだ?俺には遊華達や親父達がいるからそれでいいじゃないか……
「本当の母を夢にまで見るだなんてどうかしている……」
妹を名乗る人物を消し去ったところで俺は目が覚めた。だが、1番理解できないのは俺がどうして記憶にない母や会った事もない妹の夢を見るかだ。本当の母の事は俺が進学してから考えるって事で解決したはずなのに……
「俺ってこんなに女々しい奴だったか?」
誰かに指摘されたわけじゃないが、今の俺は女々しい。それこそ夢にまで見るんだからな
「あんまり続くようなら1回精神科を受診するか……」
俺が女々しいだけならいい。だが、本当の母の存在が俺にとって何らかのストレスになっているとしたら生活に支障が出るかもしれない
「お兄ちゃん……」
「遊……」
「遊ちゃん……」
「遊さん……」
「遊くん……」
遊華達が目を覚ましたみたいだ。さっきの独り言聞いてないよな?
「目が覚めたのか?」
「「「「「うん……」」」」」
「さっきの事、聞いてたか?」
「「「「「さっきの事?」」」」」
遊華達は寝起きで意識がハッキリしてないのか、俺の独り言については聞いてなかったみたいだ
「いや、聞いてないならそれでいい」
悩みや問題があったら話すって約束したが、本当の母の夢を見ただけだ。別に話す必要はないだろ
「お兄ちゃん嫌な夢でも見たの?」
「どうしてそう思うんだ?」
「う~ん、何となく」
「そうか。でも、俺は嫌な夢なんて見てないから安心しろ」
「うん」
遊華は何となく俺が嫌な夢を見たと思っているらしい。実際、俺は嫌な夢は見てないが、変な夢なら見た。だが、それを遊華に言ってどうなる?俺自身が解決方法を見つけられないのに人に話して解決できるなら苦労はしない
「それより俺はトイレに行きたいんだが、こういう時ってどうしたらいい?」
今の俺は売れっ子作家よろしく部屋に缶詰状態だ。トイレに行きたい時ってどうしたらいいかを聞いていない
「私がついて行くよ」
名乗りを挙げたのは香月だった。
「よろしく頼む」
「うん」
俺と香月は部屋を出てトイレに向かう。逃げはしないが、家の中でトイレに行くだけで恋人同伴なんて恥ずかし過ぎる
「じゃあ、私はリビングにいるから」
「ああ」
トイレの前で一旦別れ、俺はトイレへ、香月はリビングに行った
「遊華達が側にいたんじゃ本当の母の事についてゆっくり考えられないからなぁ……ここならじっくり考えられる」
傍から見れば俺は居場所がトイレしかない悲しい奴に見えるだろうが、部屋に戻ると遊華達がいるから本当の母についてじっくり考えられない。トイレにしか居場所がないってのも間違いではない
「まず、どうして俺が引き取られる時の夢を見るかだな……」
どうして俺が引き取られた頃、俺は言葉を発する事ができない歳の頃だ。つまり、当時の俺は物心すら付いてない。それなのにどうして夢に見る?
「考えられるのは俺の中に僅かな記憶が残っているって事だが……」
施設から引き取られるのって衝撃的な事か?住む場所が変わるだけじゃないか。それを考えると大した事じゃないな
「施設から引き取られる夢を見るのは何かの前触れって事か」
施設から引き取られる夢を見るのは多分、何かの前触れであり、それ自体は重要じゃない
「施設から引き取られる夢は重要じゃないって事は俺が預けられた時の夢の方が重要って事になるよなぁ……」
俺が施設から預けられた夢の方が重要になってくるって仮定だが、預ける側と預かる側の会話なんて2~3で終わる。そこに重要な事があるとは思えない
「預けられた時の夢もそうだが、どうして俺の夢に会った事すらない妹の夢なんて見るんだ?」
預けられた時の夢、引き取られた時の夢なんて俺からしてみればどうでもいい。が、どうして会った事すらない妹の夢なんて見る?
「こんな事なら遊亜に詳しい事を聞いておくんだった……」
夏休みに未来へ飛ばされた時は遊亜は自分の事で手一杯だったから俺と話す余裕がなかったかと思うし、実際問題、そんな余裕はなかった
「未来じゃ自分の家族の事で手一杯だった遊亜が唯一教えてくれたのは高2に進級した時に俺が失踪を決意するくらいの大事が起こるって事くらいだ。それに、あんまり未来の事を知り過ぎるのも今の俺にはよくない事くらい理解できるが、こればっかりはどうしようもない」
未来の事を知り過ぎるのはよくない。俺だって母さんや一月さんに未来じゃ死んでるって事を教えてない
「はぁ……結局1人で考えていても仕方ない。遊華達に話して解決策を見つけるか」
1人で考えてても仕方ない。遊華達に話して解決策を探すしかない事を受け入れトイレのドアを開けた。しかし──────────────
「よぉ、親父」
「ゆ、遊亜……?」
トイレから出たはずなのに目の前にいたのは息子の遊亜だった。
「よう。そろそろだと思っていたぞ」
「どういう事だ?」
そろそろだと思っていたってどういう事だ?俺が精神的に壊れるのがそろそろって事か?
「まぁ、それを説明してもいいが、ここから離れないか?さすがにトイレの前で男2人が駄弁ってるのはヤバいだろ」
「あ、ああ」
今回は元いた場所と同じ場所でよかったと喜ぶべきか、それとも、人生で3回も未来に飛ばされた事にツッコミを入れるべきか……もう俺はここが何年後の未来かなんて考えるのも面倒になってきたし
「じゃあ、俺の部屋でいいか?」
「あ、ああ。それより─────」
「遊理姉さん達は仕事で全員留守だから気にするな」
俺が遊理達がどこにいるかを聞こうとしたが、それを遊亜が遮り留守だという。留守なら部屋に行く必要なくないか?
「留守ならどうして遊亜の部屋に行く必要があるんだ?リビングでもいいじゃないか」
別に場所を指定するつもりはないが、リビングでもいいと思うのは正直なところだ
「リビングでもいいが、ドッキリよろしく姉さん達が突然帰って来たら面倒だ。それに、親父は重要な事を聞きたいんだろ?」
重要な事を聞きたいが、遊理達は遊亜に対し頻繁にドッキリを仕掛けているのか?
「ああ、重要な事は聞きたいが、遊理達は頻繁にドッキリを仕掛けているのか?」
遊華達は俺にドッキリを仕掛けたなんて事はない。が、遊理達はドッキリを仕掛ける方なのか?
「そうだな……前日の夜に部屋で1人で寝てたとする。だが、翌日には姉さん達の誰かが隣りで寝ているくらいでドッキリとは言い難いが、それでいいならリビングで話をしようか」
「いや、遊亜の部屋でいい」
遊亜から多くは語られる事はないが、遊理達は日常的に遊亜の部屋に突撃しているって事は理解した
「そうか。じゃあ、行くぞ」
「ああ」
俺達は遊亜の部屋へと向かった。遊理達が今の俺の事をどれくらい知っているのかは知らないが、この話は聞かれたらヤバい事だって事くらいは理解できる
「さて、親父が聞きたいのは本当の母についてとどうして会った事すらない妹の夢を見るかって事だろ?」
未来の俺は遊亜に本当の母と妹の話もしていたのか……まぁ、未来に飛ばされるカラクリを話すくらいだ。それくらいの事を話していても不思議じゃないか
「ああ。どうして俺は施設から親父に引き取られる場面と施設に入れられる場面、会った事すらない妹の夢を見るんだ?」
俺が本能的に会いたいと願っていると言われたらそれまでだが……
「親父、最初に言っておくが、ここは親父達が夏休みに飛ばされて来た未来から3か月経った未来だ」
「ああ」
「さて、どの未来に飛ばされたかを教えたところで本題だが、親父が施設に預けられた場面と施設から引き取られた場面を夢に見るのは親父が女々しいとかじゃない」
俺が女々しいんじゃなければ何だって言うんだ?
「女々しいんじゃなければ何なんだ?」
「そうだな。親父が本当の母や会った事すらない妹の夢を見るのは口や態度じゃ気にしてない風に装っているが、本当は本当の母や妹と一緒に暮らしたいと思っているからだ」
俺が……本当の母や妹と一緒に暮らしたいと思っているだと……?そんなバカな事があるか!本当の母は俺を施設に預けたんだぞ?
「俺が……本当の母達と一緒に暮らしたがっている?そんなバカな話があるかよ!俺を施設に預けるような人間なんだぞ?」
施設に預けられたからいいものの、最悪の場合は猫や犬と同じように段ボールに入れてその辺に捨てられてたかもしれない。それに、赤ん坊の頃は施設に預けたかもしれないが、今度は無一文で放り出されるかもしれない
「そうだな。親としては最低かもしれないが、親父にとっては遊斗爺ちゃんと華婆ちゃんも親だが、本当の母も親なんだよ。この意味は理解できるな?」
「ああ。育ての親と生みの親って事だろ?」
遊斗さんと華さんは俺の育ての親で本当の母は俺の生みの親になる。だが、俺には育ての親がいればそれで十分だ
「ああ。親父、アンタは育ての親がいれば十分だと周囲には話しているだろうし、親父自身もそう思い込んでいるだろう。だが、親父は心の奥底じゃ本当の母とも暮らしたいと思っている。だから夢にまで見る」
俺が本当の母と暮らしたがっているだと……?そんなバカな
「仮に俺が本当の母と暮らしたいと思っていたとして、どうして高2を迎える前に夢に見たりするんだ?これは俺達の中では高2になるまで忘れると決めた事だぞ?」
俺達は本当の母については俺が高2に進級した時に改めてどうするかを考えるという事で結論を出した。それがどうして高2を迎える前に考える事になる?
「そうだな。確かに親父と母さん達は保留という結論を出した。が、しかし、それはあくまでもみんなで決めた事だ。親父1人の答えじゃない」
「何が言いたい?」
「本来ならばこの問題は親父1人で考えるべきだったんだよ。まぁ、浩太さんを始めとする親父の周囲には無駄に勘が鋭いのが集ってるから隠し通すのは無理だから仕方ない事ではある。だが、親父は浩太さんも母さん達も頼るべきじゃなかった」
頼るべきじゃなかった。確かに遊亜の言う通りだ。この問題は俺1人の問題で人を頼るべきじゃなかった
「それはそうかもしれないな」
「ああ。それに、本当の母と対面する前に親父の未練を断ち切らなきゃな」
「未練?俺に未練があると言うのか?」
「ああ。このままだと親父は本当の母と対面し、誘われた時に揺らぐ。それは間違いない」
どうやら俺は優柔不断な性格らしいな
今回は遊亜と再会する話でした
遊亜は未来に飛ばされるカラクリを知っているので簡単に遊を未来に呼ぶ事ができました!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました