表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/165

俺が美優の心の内を聞く件について

今回で美優編最終回です

家に2人きりだからこそ言える事ってありますよね

では、どうぞ

 柔らかい……この感触は何だ?何かこう、ムニュって感触が何とも言えない心地よさを醸し出している。それでいて温かい。この柔らかくも温かいものは何だろう?


「俺はいつの間にこんな触り心地の良いものを手に入れた──────あっ」


 目を開けた瞬間、俺は言葉が詰まった。俺がさっきまで触っていた柔らかくも温かいものは美優の胸だった


「ヤッベ、こんなところを美優本人にもそうだが、遊華達に見られたら俺は確実に殺されるだろうな」


 美優が起きたら確実に怒られるだろうし、遊華達に見つかった時の事を考えると……想像したくもない


「んぅ……なに……?ゆうくん?」

「お、おう、お、起きたのか?」


 美優が目を起き上がる前に俺は美優の胸から慌てて手を離す。ふぅ~、危ない危ない、少しタイミングが遅れていたら危うく美優に大声を上げられるところだった……


「うん……それより、遊くんはどうして冷や汗なんて掻いてるの?」

「あ、いや、何でかな?」

「遊くん?」


 美優の俺に向ける純真無垢な眼差しが心に刺さる……


「お、俺が汗を掻いてる理由なんてどうでもいいだろ?それよりも腹減らないか?」

「あ、そういえばお腹すいた……」


 寝起きのせいか会話がかみ合ってない気もするが、話題をすり替える事ができたのでよしとしよう


「うどんだったらすぐにできるが、それでいいか?」

「うん」

「じゃあ、すぐ作ってくるからここで待っててくれ」


 俺は美優の遅すぎる昼飯を作る為、寝室を出る。が──────────────


「私も行く」


 美優が自分も行くと言い出した


「行くって美優は風邪引いてるんだし寝ててもいいんだぞ?」

「黙って寝てても暇だしリビングで待ってるよ」


 美優は病人だし寝てた方が楽だと思うんだが……うーん、本人が行きたいと言ってるし、いいか


「わかったよ」

「うん!」


 俺と美優はリビングに向かった。体調が悪いのに寝てなくていいんだろうかとは思うが、実際はどうなんだろう?


「遊くんって私に対して過保護過ぎないかな?」

「そうか?」


 うどんを食べ終えた美優から唐突に過保護過ぎだと言われ、食器の後片付けをしている俺の手が止まる。俺ってそんなに過保護か?


「うん。風邪引いてみてわかったけど、遊くんって私に対して──────いや、私達に対して過保護過ぎない?」

「うーん、そんな事はないと思うが……」

「そう?私の気のせいかな?」

「ああ、気のせいだ」

「本当にそう?」

「ああ。それより、どうしたんだよ?急に過保護過ぎじゃないかとか言い出して」


 美優だって人間だ。普段から思うところがあって当然だ。が、しかし、唐突に過保護過ぎと言われても身に覚えがない


「だって、今日は私が風邪引いたから仕方ないとして、いつもは肝心な事を言わないよね?どうして?」

「どうしてって聞かれないし、肝心な事って言っても大抵は俺自身の問題だし言う必要ないかな?って思って言わないだけだ」


 屁理屈かもしれないが、聞かれてない事や俺が言う必要がないと判断した事は言わないようにしている。それだけの話だ


「それって遊くんは私達の事を信じてないって事かな?」

「信じてないってわけじゃない。ただ、美優達を俺自身の問題に巻き込みたくないだけだ」


 俺の幼い頃の話や本当の母の事は俺自身の問題であり、美優達には関係ない。


「それって信用してないって言ってるのと同じだよ?遊くん、私や由紀ちゃん、遊華ちゃんは遊くんより年下で頼りないのは解るよ?それでも頼ってほしいって言うのが本音だけどね。でも、遊くんより年上の香月さんや美月さんにも相談しないなんて酷くないかな?」

「美優達にもそうだが、香月達にも相談しないわけじゃない。ただ、機会がないだけだ」


 そう、相談しないわけじゃない。ただ、相談する機会がないだけだ。俺は嘘は吐いてない


「遊くん!言い訳しないでよ!!」

「美優……」


 気が付くと美優は泣いていた。女性の涙には滅法弱い俺。俺の幼い頃の話は高校生の女の子や中学生の女の子には荷が重すぎるし、本当の母の事については美優達に話したら逆に俺が恥を掻く。特に進級と進学を間違える大人が俺の母だなんて知られたら常識がない奴の息子だと思われるし


「辛い時はちゃんと言ってほしいし、悩んでる事があるなら相談してほしいんだよぉ……」


 泣きながら俺に抱き着いてくる美優。幼い頃の事は言わなかった俺が悪い。ま、一緒に施設に行ったからいいとして、本当の母の件については話すのが本当に恥ずかしかっただけだ


「俺が美優を不安にさせてしまったのは悪いと思っている。それもこれも俺が美優達を心のどこかで信じきれてない部分があったからだと思う。そこは悪いと思っている」

「うん……」


 抱き着いてきた美優を抱き返し、頭を撫でる。確かに俺は肝心な事を言わずに美優達を心配させ過ぎたかなとは思う。だが……


「これからは隠し事しないようにしようと思う」

「うん」

「隠し事をしないようにするのはいいんだが、美優に1つだけ聞きたい事がある」

「うん、何かな?」


 俺にとって本当の母から手紙が来た事は問題じゃない。夏休みに行った未来で遊亜から言われた事の前触れ程度に思ってればいいんだから。問題はそこじゃない


「俺の母って事は俺の倍は生きてるよな?」

「そりゃそうだよ。遊くんを生んだだから」


 俺の腕の中で上目遣いに俺を見る美優


「そんな進学と進級を間違える人間を息子は母親からの手紙を彼女に見せたいと思うか?」

「……………」


 俺の質問に抱き着いたままで固まる美優。これについて思うところがあるんだろう


「どうした?何か言ってくれないと困るんだが?」

「遊くん」

「何だ?」

「何か、ごめん」

「いいんだ。わかりさえすればな」


 美優、理解してくれて何よりだよ。俺が本当の母の存在を言い出せなかった原因の1つでもあるんだからな


「そうだよね……さすがに進学と進級を間違える人から手紙が来ただなんて言えないよね……」

「ああ。それにこれはまだ誰にも言ってないんだが、あの手紙には本当の母って書いてあったが、実際のところ本当の母が書いたとは限らない。そう思っているんだ」


 遊華達にはまだ言ってないし、あの時は言える状態じゃなかったから言わなかったが、手紙の差出人=本人とは限らない。郵便で来たんじゃなくて職員室に置いてあったんだから実際に手紙を書いた人物の年齢を含めて何もわからない


「え?どういう事?本当の母よりって書いてあったんだから遊くんの本当のお母さんが書いたものじゃないの?」


 美優はとんでもない勘違いをしているようだが、必ずしも本人が手紙を書いてるとは限らない。手紙もそうだが、小説や詩、記事なんて書くのは本人じゃなくてもいい。発表する時にその人が書いた事にすれば何も問題ないわけだしな。じゃなかったらこの世にゴーストライターなんて存在しない


「進学と進級の違いの事が原因の一端を担ってるが、俺は本当の母が手書きで書いた文章を何も持っていない。つまり、手紙でどんなに本当の母を名乗られても信用性に欠ける」

「言われてみればそうだね」

「だろ?手紙は手書きだったが、これがワープロで打たれたりしたものだったりすると誰が書いたものかより一層わからなくなる」

「うん……」


 法律の事はよくわからないが、前にワープロ書きされた遺書は効力を発揮しないって聞いた事がある。それに、ドラマなんかだとワープロで打たれた脅迫状で刑事達が四苦八苦しているシーンを見た事がある


「ま、俺の本当の母の件は俺達が進級した時にもう1度話すとして、美優、離れてくれないと食器を食洗機に入れられない」

「あ、ごめん……」


 我に返った美優は俺から離れた。そろそろ遊華達が帰ってくると思うんだが……


「さて、食器も放り込んだ事だし、美優、体温を計ってみるか?」

「うん」


 食器を食洗機に放り込んだし、やる事もない。それに、美優の熱だって今朝よりはマシになってるはずだ


「何度あった?」


 美優が体温を計ってから1分後、体温計の電子音が鳴り響いた


「35度。平熱に下がったよ」

「それならよかった」


 点滴が効いたのか、それとも美優の身体が強かったのかは知らないが、熱が下がって何よりだ


「うん!明日には学校に行けそうだよ!」


 美優の熱が下がって何よりだが、晩飯はどうしよう……


「それはよかった。ところで今日の晩飯は何がいい?」


 美優はうどんを食べたばかりで食欲なんてないと思うが、俺が食べたいものを晩飯にしたら絶対に肉ばかりのバランスの悪い料理だけになってしまう


「ん~何でもいいけど、強いて言うならピザが食べたい!」


 美優は純粋にピザが食べたいと言っているんだろうが、俺にはある意味で出前を取れって言ってるように聞こえるのはどうしてだろう?


「出前でも取るか?」

「うん!」

「じゃあ、遊華達が帰って来てから電話するか」

「そうだね!でも─────」

「でも何だ?」

「今度は遊くんの手作りピザが食べたいな!」


 美優さん?いくらなんでも手作りでピザを作るのって大変なんで─────いや、そうでもないか


「ライスピザでいいなら今度作ってやる」

「ライスピザ?」


 ライスピザを知らないのか……まぁ、一般的なピザって言うとパン生地のが一般的だから仕方ないか


「パンの代わりに生地が米でできてるピザだよ」

「へぇ~、そうなんだ」


 感心しているのはわかるが、イメージはできてないらしいな。まぁ、当たり前っちゃ当たり前か


「さて、そろそろ遊華達も帰ってくるな」

「そうだね」


 今日1日美優と2人で過ごしていてわかった事は俺がどんなにアホらいしと思っても問題や悩みができたらちゃんと話そう。そう思った。さて、明日は誰の日になるのやら……遊華か?それとも、美月か?まぁ、何にせよ明日、明後日でこの罰も終わるからよしとしよう



今回で美優編最終回です

残るは遊華と美月ですが、遊華と美月は1度2人きりで過ごしたしなぁ・・・・

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ