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俺が美優を家までおんぶで運んだ件について

今回は美優をおんぶで運ぶ話です

私が誰かを最後におんぶしたのは多分高校生の頃です

では、どうぞ

「やっと終わったな……」

「うん……」


 美優が風邪引いて病院に連れて行った。それはいい、それで点滴1本打って帰る。それもいい。だが、不思議な事に点滴を打たれた本人は歩きながら船漕いでる状態だし、俺は俺で謎の疲労感に襲われてるし……病院って不思議だ


「んぅ……眠い~」


 点滴の影響なのか、それとも、病院で待たされたのが原因なのかは知らないが、大分眠そうな美優。しゃーない、負ぶって帰るか


「美優、そんなに眠いなら負ぶってくぞ?」

「でも、遊くんも疲れてるでしょ?」


 確かに疲れているが、それでも美優に転ばれるよりマシだ


「俺なら大丈夫だ。それよりも美優が転んだりしたら大変だ」


 このまま歩かせて転んでケガしても大変だし、水たまりの上に転ばれて風邪が悪化しても大変だ


「ゆ、遊くんがいいなら遠慮なく」

「おう、俺は構わない」


 住宅街の真ん中で美優を背中に乗せる。いつもハグとかキスでしか体温を感じる事がない俺だが、こうして美優をおんぶしてみて改めて思う。人って温かいんだな……


「遊くんって温かいんだね」

「そりゃ体温を感じなかったら死んでる」

「それもそうだね」


 手の温かい人って心が冷たいってよく言うが、今回は温かいしか言われてないからな。心が冷たいって言いたいのか?なんて返しはしない


「誰かをおんぶするなんていつ以来だ?」


 未来に飛ばされた時だって誰かを負ぶった記憶はない。多分……


「遊華ちゃんにはおんぶしてあげなかったの?」

「あー、遊華はどちらかというと抱き着いてくる方が多かったからな。おんぶした記憶はあまりない」


 遊華が幼い頃に一緒に寝た記憶はあるけどおんぶした記憶がない。いや、少ないのか


「遊華ちゃんって幼い頃から本当に遊くんが大好きだったんだね」

「そうなのかな?俺が未来に飛ばされる前は会話すらしてなかったから何とも言えんが」


 未来に飛ばされる前、浩太と敬の2人と遊びに遊びに行こうとしたあの日、未来に飛ばされてなきゃ俺は遊華に告白しようとも思わなかったし、遊華とは冷え切った関係が今も続いていたかもしれない


「あ、遊くんは知らないんだっけ?」

「何が」

「学校じゃ遊華ちゃんはいつも遊くんの話をしているよ?」


 美優から聞かされる衝撃の真実。意外だ遊華が学校で俺の話をしているとは……


「そ、そうなのか……」

「うん。ちなみにどんな話をしているか聞きたい?」


 聞きたいか聞きたくないかで言えば聞きたい。その反面、聞きたくない。遊華の通う中学で俺の事がどんな風に伝わっているかを知るのが怖いし


「聞きたいような聞きたくないような……」

「どっちなの?」

「聞きたいと言えば聞きたい。だが、遊華が友達に話している内容を勝手に知るのはなしだと思うからいい」


 遊華本人から学校で俺の事をどんな風に話しているかを聞くならまだしも、美優から聞くなんていうズルをしてまで評価を聞きたくはない


「そっか……じゃあ、私が学校で遊くんをどんな風に話しているか聞きたい?」


 美優が学校で俺の事をどんな風に話しているか気にはなる。


「話してくれるなら聞きたいが、恥ずかしいなら無理しなくていい」


 話してくれるのなら聞いてみたいが、本人が恥ずかしいのであれば俺は無理に聞き出す事はしない


「別に恥ずかしくはないよ」

「そうか、じゃあ、聞かせてくれないか?」


 普段は聞く機会のない美優からの評価。どんな風に中学では俺の事を話しているんだ?


「うん。じゃあ、話すけど、遊くんは私を守ってくれる素敵な人で何でもできる人ってお友達には話してるよ」


 端的過ぎる気がするが、評価の仕方は人それぞれだし、それに、端的であっても評価は評価だ


「何か照れ臭いが、俺のイメージに尾ひれが付かなくてよかった」


 実物と違う程イケメンに魔改造さても困るし、美優の評価が妥当なのかもしれない


「う、うん、私と由紀は遊くんの事を端的に且つ見てるままを話してるんだけど……」

「ん?うん、美優と由紀は俺の事を端的且つ見てるまま話してるけど?けど、どうした?」


 美優の事はストーカー事件を何とかしたから守ってくれるって評価は美優本人からしてみれば妥当なものなんだろうし、由紀はありのままを話してくれると思うから心配ない


「う、うん、遊華ちゃんが……ね?」


 美優の気まずそうな表情を見て俺は最初に飛ばされた未来の事を思い出した。あの時は遊華の仕事関係の人達に俺の事を言いふらされて大変な目に遭ったっけ……


「あー、美優の言いたい事は大体理解できた」

「察しがよくて助かります……」


 遊華の事だから俺の事を大げさに話しているんだろうなだなんて予想するまでもない


「家に着いたら何が食べたい?」


 俺達はまだ昼飯を食ってない。だが、美優からの返事が聞こえない


「すぅ……すぅ……」


 確認したら美優は俺の背中で気持ちよさそうな寝息を立てていました。


「何だ寝てたのか……」


 気持ちよさそうに寝ているんだ。このまま寝かせておくか


「今日は美優だったが、明日は誰になる事やら……」


 香月から始まり今日は美優なのだが、遊華、美月はすでに2人きりで過ごしているので新鮮さはあまり感じない。だが、遊華と美月だけ2人きりで過ごさないなんて事はできない。


「明日には美優の風邪も少しはよくなっているといいが……それは誰にも予測できないか」


 そもそもが風邪を引く事自体が予測できる事じゃない。美優の風邪がいつ治るかなんて俺が知る由もない


「着いたか」


 美優が寝ているため、誰と話すでもなく黙々と歩き続けて数分後、ようやく帰宅した。


「美優、家に着いたぞ。起きてくれ」


 気持ちよさそうに寝ている美優を起こすのは可哀そうだが、俺には2人分の昼食を作るという使命がある。


「んぅ?ついた?」

「ああ、着いたから起きてくれ」

「うん……」


 美優は俺の背中から降り、家の奥に入っていく。が、美優はまだ眠そうだ


「寝るなら寝室に行けよ?」

「うん……」


 おぼつかない足取りで寝室へと進む美優。ま、昼飯ができたら様子を見に行って寝ていたらそのまま寝かしておいてやろう


「さすがに1日2食のお粥は飽きるよな……」


 美優は病人だから消化の良いものを食べさせたいのだが、朝飯に卵粥で昼飯に普通のお粥っていうのはさすがに飽きるだろうし、朝・昼がお粥で夜もお粥とか何かのダイエットかよ……


「昼はうどんにするか」


 朝がお粥だったので昼はうどんにしよう。あ、でも、美優が寝てたらどうしよう……


「念のために確認しておくか」


 美優の昼飯を俺が勝手にうどんにしたが、美優がうどんでいいかどうかは確認していていない


「美優ー起きてるかー?」


 美優は多分、寝ているだろうけど、起きてたら困るから寝室は一応、ノックするが、返事はない


「寝てるか……」


 着替えていたとしても返事はあるはずだから寝ていると思うが、一応、中に入って確かめるか


「美優、入るぞ?」


 俺はラブコメの主人公じゃないから入る時には一声掛ける。じゃないと俺がケガするからな


「すぅ、すぅ……」


 案の定美優は規則正しい寝息を立てて眠っていた


「起こすのも可哀そうだし、このまま寝かせておいてやるか」


 俺は寝室を出てドアをそっと閉めた


「一応、汁だけ作っておいて美優が起きたらすぐに作れるようにだけしておくか」


 美優が起きるのを待っていてもいいが、起きる前に昼飯を食べ、その後で家事をして、美優が起きたら美優の昼飯を作ろう


「俺の昼飯は……あー、朝と同じくカップ麺でいいか」


 美優の昼飯にはあれこれ考えるが、俺の昼飯は適当になってしまう。まぁ、俺は病人じゃないし関係ないか


「ごちそうさまでした」


 カップ麺というのは早くて助かる。お湯を沸かせて火薬とスープを入れて後は待つだけ。うん、カップ麺最高


「さて、洗濯ものでも洗うか」


 今でこそ普通に洗濯ものを洗える。といっても洗濯機に放り込むだけだから大した手間はかからないがな。だが、最初に遊華達の服を洗濯した時は本人が着けているところを想像したりもした記憶があるが、今はそんな気は全くしない


「美優が起きてくる前に片付けないとな」


 美優が起きてくる前に洗濯ものを片付ける。この家の家事はほとんど俺がやっている。それはいいとして、遊華達の下着を俺が洗濯していいものだろうかと今更ながらに思う


「まぁ、母親に下着を洗濯されても何も思わないのと同じなのかもしれないからいいのか」


 こうして俺は洗濯をサッサっと終わらせた。そして、リビングの掃除から風呂掃除まで終わらせてしまった。平日の昼間で美優は寝てるし遊華達は学校だからこんなに早く終わるのか?


「暇だ……」


 家事を全て終わらせてしまった俺は暇を持て余していた。やる事がないとこんなに暇なのか……


「美優が寝てるしうるさくできないよな……」


 ゲームをしようにもアクションゲームはできないよなぁ……音は音量を小さくすればいいが、それよりも熱中し過ぎて起きてきた美優に気付かないなんて事もあるかもしれない。たまには浩太を見習って読書でもするか


「読書するって言ってもこの家にある本は一通り読んでしまったしなぁ……」


 たまには小説投稿サイトで小説を探すか


「できれば読んだ事のないジャンルがいいが……」


 読んだ事のない小説を探すのは俺にとって宝探しと同じだ。ネットでも書店でもそれは変わらない


「お、これは……独身を貫いた老婆が若返って男子高校生と恋愛する話か」


 ネットで読む小説の楽しみは感想を作者に直接言える事だ。書籍化した作者に感想を言うのは編集者を介さなきゃいけない。それに比べてネット小説は作者とのつながりが楽でいい。その分、マナーはきちんと守らなきゃいけないが


「今まで読んだ小説のヒロインは同じ年か後輩が多かったし、年上とは言っても1つ年上くらいだったが、この小説は若返ったとはいえ主人公とヒロインの差はおばあちゃんと孫くらい年齢差があるな」


 今日はたまたま恋愛小説だったが、普段はファンタジー小説だって読む


「もうこんな時間か……」


 気が付けば4時過ぎ。どうやら俺は時間を忘れて小説に熱中してしまっていたようだ


「美優はまだ起きて来ないか……」


 俺が気が付かなかっただけで美優はトイレに起きたかもしれない


「念のために様子を見に行くか」


 美優が起きてるかもしれないと思い、寝室へ向かう


「美優、起きてるか?」


 ドアをノックし返事を待つ。が──────


「返事なしか……」


 返事はない。つまり、まだ寝ているということか


「入るぞ?」


 俺はドアを開けて寝室へ入る


「すぅ、すぅ……」


 風邪を引いてる時ってどうしてよく眠れるのかは知らないが、美優は本当によく寝ていると思う


「なんか美優を見てると俺まで眠くなってきたな……」


 風邪が移るかもしれないが、今日は美優の日だ。隣りに寝ても文句は言われないだろう。


「ま、遊華達が帰ってくるまでには目が覚めるだろ」


 俺は美優の隣りに潜り込み、そのまま眠りについた

今回は美優をおんぶで運ぶ話でした

人をおんぶで運ぶって意外と大変ですが、人にもよるのかな?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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