美優が風邪を引いた件について
今回から美優編です。って事で、美優が風邪を引きました
風邪を引いた美優の為に遊はどんな看病をするのか
では、どうぞ
昨日の作戦は大成功した。大成功なのはいいんだが、問題なのは今現在だ。どうしてかって、そんなの決まってる。隣りに寝ている美優の様子が明らかにおかしいからだ。
「美優、心なしか顔が赤いけど、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ……そ、それより、早く起きて朝ごはんの用意しなきゃね」
大丈夫って言ってる美優は顔が赤いだけじゃなく、息遣いも荒い
「大丈夫な人間は息を荒くして顔を赤くしてない。そんな奴は欲情して暴走した奴か風邪を引いている奴って相場が決まってるんだよ」
俺が押し倒されてないという事は美優が風邪を引いているという事だ
「私は風邪なんて引いてないよ!こ、これは、そ、そう!遊くんと一緒に寝たから欲情してるんだよ!」
美優の表情は明らかに辛そうなのに欲情しているだなんて見え透いた嘘を吐いても俺には通用しない
「そうか、欲情してるなら俺を押し倒してくれ」
俺はベッドから降りていないものの上半身を起こしているだけの状態だ。男女で力の差はあれど美優に押し倒されるのであれば抵抗はしない
「も、もちろん!今からそうしようと思ってたところだよ!」
売り言葉に買い言葉とはよく言ったものだ。が、しかし、本人は認めようとしないが、美優が風邪を引いてるのは明らかだ
「そうか、じゃあ、やって見せてくれ」
「わ、わかったよ!」
美優に押し倒されるなんて事は滅多にある事じゃない
「どうした?」
「はぁはぁ……」
いつまで待っても一向に押し倒そうとしない美優に声を掛けてみるが、先ほどよりも更に息遣い。そして、美優の言葉がたどたどしいのも合せると風邪と見て間違いないだろう
「はぁ、風邪を引いてるなら最初からそう言えばいいものを……」
「だ、だって、遊くんに迷惑を掛けられないし……」
「風邪だって事を隠された方が迷惑だ」
「で、でも、今日1日遊くんを独占できるのに、風邪なんて引いて遊くんとの時間を無駄にしたくないし……」
美優の言い分はあれだな。デート当日に風邪引いた彼女の常套句だな
「俺と一緒にいたいって思ってくれるのは嬉しいが、自分の身体をもう少し大切にしろ」
「で、でも……」
泣きそうな美優を見ていると罪悪感に苛まれる。だが、俺からしてみれば風邪を引くなんて好きな人を独占できて逆にラッキーと思うんだが
「でもじゃない。今日は俺が付きっきりで看病するから大人しく寝てろ」
「うん!」
「が、その前に、まずは体温を測ろうな。咳はしてないようだが」
「うん」
「じゃあ、俺は遊華達に美優は風邪引いた事を伝えるついでに体温計を取ってくるから。大人しく待ってるんだぞ」
「うん!」
俺は美優を残し、部屋を出た。遊華達に知らせるとは言ったが、果たして遊華達が起きてるかどうか……
「遊華達が自分から起きてくるはずないよなぁ……」
最初に飛ばされた未来じゃ遊華、香月、美月が自分で起きてきた試しがない。由紀はどうか知らない。1度だけ家に泊まりに来た事があったが、その時は美優のストーカー騒ぎの時だし、自分で起きてたような気がするが……どうだったかな?
「あ、お兄ちゃん、おはよう」
な、なんだと……ゆ、遊華が起こされなくても起きているだと……?う、嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
「お、おはよう、遊華。今日は自分で起きたんだな……」
「むっ!お兄ちゃん、それじゃ私が1人で起きられないみたいな言い方だよ?」
「あ、いや、そう言ってるわけじゃないが……」
「ふ~ん……それより、朝ごはんは?」
朝飯の事もそうだが、美優が風邪引いた事を言いに来たんだ
「ああ、その事なんだが、実は美優が風邪を引いてな。看病しなきゃいけないから朝飯は自分達で何とかしてくれ。あ、昨日のカレーが余ってるから温めて食べてくれ」
「う、うん。香月さん達には私から言っておくからお兄ちゃんは美優の看病をしてあげて」
「悪いな。ついでに体温計の場所ってどこだっけ?」
「救急箱の中に入ってると思うよ」
「そうか、サンキュー」
俺は戸棚から救急箱を取り出し体温計を探す。体温計なんて俺はしばらく使ってなかったからな……俺が風邪引いた時に遊華達の誰かが体温計を使っていたような気がするな
「遊華を信じてないわけじゃないが、あるかどうか……おっ、あったあった」
救急箱の中から体温計を見つけ出した。後は美優の待っている部屋に戻るだけだ
「美優、戻ったぞ」
「お、おかえり、遊くん」
出て行く前と変わらない状態の美優が出迎えてくれた。が、顔はまだ赤い
「おう。俺がいない間に体調に変化はなかったか?」
「ちょっと咳き込んじゃったくらいで特に変化はないぞ」
「そうか。念のために聞くが、俺がいた時は咳を我慢してたとかじゃないとな?」
「そ、そんなわけないじゃん!」
俺が咳の事を尋ねた瞬間に目を反らした。つまり、俺がいる間は咳をするのを我慢してたんだな
「はぁ……そうかい。じゃあ、早速だが、体温を計ってくれ」
「うん」
俺は美優に体温計を渡し、後ろを向く。なんで後ろを向くかって?それは美優の胸元を見ないようにするためだ。断じて見たくないわけじゃないが、風邪引いてる奴を邪な目で見ない為だ
「どうだ?」
「どうだって、計り始めたばかりだよ?そんなにすぐにわかるわけないじゃん!」
「それもそうだな」
いくら熱が高かろうがすぐに体温がわかるわけない。それなのに何を俺は当たり前の事を聞いてるんだか……
「おっ、鳴ったよ。遊くん」
体温計の電子音が鳴った。さて、美優の体温はどれくらいかな?
「何度あった?」
「38.5度」
「美優の平熱が何度あるか知らないから何とも言えないが、38.5度もあれば立派な風邪だな」
「うん……ゴホッゴホッ!」
「お、おい、大丈夫か!?」
俺は慌てて咳き込んだ美優の背中を擦る。こりゃ、病院に行かなきゃダメか?
「だ、大丈夫だよ。ちょっと咳き込んだだけだから……」
「だ、だが、念のために病院に行った方がいいな」
「う、うん……」
ただの風邪だろうけど、病院に行っておいて損はない
「遊華達はもう学校に行っただろうし、俺も学校に休むって連絡する。美優はどうする?学校には俺が連絡しておくか?」
「ぞれくらい自分でやるよ」
「わかった。連絡ついでに朝飯作ってくるな」
「うん」
朝飯と学校に連絡する為、俺は部屋を出る
「美優が風邪を引いてるから朝飯はお粥とか消化のいいものにして、俺はどうするかな……」
美優はお粥にするとして、俺は何にしようか迷う。リビングで食べてもいいが、それだと美優が寂しがるだろうから美優と一緒に食べるとして、俺が美優に食べさせるのはほぼ決定だろうから時間が経っても食べられるものがいいよなぁ……
「病人に食べさせるものじゃなくて自分が食べるものを迷うとは……」
初めての看病で病人に何を食べさせるか迷うことはあるだろうが、看病する側が食べるものを迷うなんて話を聞いた事があるだろうか?いや、ないな
「美優には悪いが、俺は美優が食べ終わってから食べるとしよう」
できれば美優と一緒に朝飯を食べたかったが、美優に食べさせてから1人で食べた方がいいという結論に至った
「まずは学校に連絡だな」
朝飯を作る前に学校に連絡しないと俺は遅刻扱いか無断欠席になってしまう
「はい、そういうわけで今日は欠席させていただきます」
『そうか、お大事にな。ところで藤堂』
「何でしょうか?」
『夏休み明けに先生方の机にグラビアアイドルのプロマイドが置いてあったんだが、何か知らないか?』
先生、今更それを聞きますか……夏休み明けに教室で心当たりがある奴がいないか聞いてもいいようなものの……
「何も知りません。っていうか、どうして今更そんな事を?」
『いや、俺も含めて男性教師は喜んだが、最近になって女性教師の目が夏休み明けよりもキツくなってな』
「そうでしたか。ですが、俺は何も知りません。それより、俺は今日、風邪を引いたんで欠席します」
『わかってるさ。無理はするなよ』
「はい。それでは、失礼します」
『お大事にな』
先生との電話は終わったが、欠席の連絡をしただけなのにいらん事まで聞いた気がする
「夏休み明けに確認すればいいのに喜んだって理由だけで今になってプロマイドの話をされるとは……」
夏休み明けの事を今更持ち出されるとは思わなかった。しかし、俺は今、それどころじゃない。さっさと美優の朝飯を作らなければ!
「美優の朝飯だが……卵と白だしがあったから卵粥にするか」
ご飯は冷ごはんを使えばいいし、卵と白だしがあったので卵粥にすることにした。
「俺は……カップラーメンにするか」
今は病人の美優を最優先にし、俺はあるものを食べればいい。カップラーメンがちょうど1つあったし、遊華達はカップ麺を食べる事ってあんまりない。
「じゃあ、早速調理開始だな」
土鍋に水を張り、その中に冷ごはんを入れる。沸騰したら火を弱めて白だしを入れるという超簡単で胃に優しい。
「さて、できたぞ」
鍋つかみを付け、土鍋をお盆に乗せて部屋へ運ぼうとする。が、しかし──────────
「遊くん、できた?」
美優が部屋から出てきてしまった
「ああ。それよりも寝てなくていいのか?」
「うん、ちょっと出歩くくらいなら平気」
「そうか。でも、辛くなったらちゃんと言うんだぞ?」
「うん」
本当は止めるべきなんだろうが、美優本人が大丈夫だって言ってるんだ。少しは信用してみるか
「卵粥にしてみたんだが、食べられそうか?」
「うん、お粥なら食べられるよ」
「ならよかった」
俺は今まで誰かの看病をした事がない。遊華が風邪を引いた事があったが、看病は母さんがしていた。幼かったって事もあったが、食事は母さんが作っていた。俺はというと風邪を引いた遊華の側に布団を敷いて寝てやるしかできなかった。
「遊くんは朝ごはんどうするの?」
「俺は適当にカップ麺を食べる。美優が俺の朝飯を心配する事はないぞ?」
「風邪引いてる私が言うのもアレだけど、遊くん、健康に悪いよ?」
確かに病人である美優が言うことではないな。だが、今日は美優の日だ。俺は1分1秒でも多く美優の側にいたいんだよ
「美優、今は俺の健康面よりも自分の風邪を治す事だけを考えろ。俺なら大丈夫だから」
美優を心配させない為にも大丈夫と伝える。俺は栄養が偏るだけだが、美優はこの風邪が原因で大変な事になるかもしれない。それを考えたら朝飯がカップ麺になるくらいどうって事ない
今回から美優編って事で美優が風邪を引きました
看病初めての遊が病人である美優に食べさせるものよりもまさか、自分が食べるものを悩むとは……
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました