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俺が由紀の学校生活をほんの少しだけ知る件について

今回から由紀編です。今まであまり遊と1対1で絡む事のなかった由紀ですが、今回初めて本格的に絡みます


では、どうぞ

 朝、起きたら隣りで寝ているはずの香月がいなかった。傍から見れば俺は金を持ち逃げされたように見えるかもしれないが、俺と香月は恋人同士だ。金を持ち逃げする意味はないし、俺は香月を信頼しているから金銭関係で疑うなんて事はしない。それはいい。が、どうして昨日いなかったはずの由紀が俺の隣りで寝ているんだ?


「俺が寝ている間に香月と由紀が入れ替わった」


 何を言っているんだ?俺は……


「おはようございます。遊さん」

「あ、ああ、おはよう。由紀。ところで、どうして由紀が隣りに?」

「そんなの香月さんと入れ替わったからに決まってるじゃないですか」


 俺が聞きたいのはそこじゃない。いつから香月と入れ替わったかを聞きたいんだよ


「そうか。で、由紀と香月はいつから入れ替わったんだ?」


 俺は香月と一緒に寝たはずだ。当たり前だが、俺の記憶が正しければ寝る前までは香月と一緒だったのは覚えている


「遊さんが寝た後で入れ替わったんですよ」

「え?マジで?」

「はい、マジです」

「打ち合わせでもしたのか?」

「はい、遊さんを独占するのは日付が変わるまでで、日付が変わったら次の日に遊さんを独占する娘が遊さんのベッドに潜り込むって私達の間で決まってるんです」


 そんな決まり俺は聞いてないぞ?


「はぁ、そうですか……」


 これ以上俺に何を言えと?女子って怖い……


「何ですか?私じゃ不満ですか?」


 そんな事は一言も言ってないのに不満と受け取るな


「不満じゃないが、由紀は中学生だろ?学校に行ってる間はどうするんだ?」


 香月や美月だったら学年が違うだけだから休み時間になったら会う事が可能だが、由紀、美優、遊華は別だ。彼女達は中学生だから気軽に会いに行くなんてできない


「それは問題ありませんよ?だって────いや、これは秘密にしておきましょう」

「何だよ?気になるな」

「秘密です。後から知った方が遊さんにとってはいいと思いますよ?」


 何が問題なくて何が後から知った方が俺にとってはいいのか、それはサッパリだが、俺にとってはよくない事が起こりそうな予感


「教えてくれる気はなさそうだな」

「ええ、今教えると楽しみが減りますので」


 由紀もそうだが、俺の恋人達は変なところで頑固だ。俺も由紀達に何も言わずに物事を決めてしまう事があるから人の事を言えた立場じゃないがな


「無理に聞き出しても仕方ないから無理には聞かないが……」


 納得いかないし、無理やり聞き出そうと思えばやってやれない事はない。が、それじゃ頭の悪い警察官と同じだ。


「ええ、そうしてくれると助かります」

「さて、朝飯の準備もあるから起きるか」

「そうですね」


 俺と由紀は起き上がろうとした。が、その時─────────


 きゅ~


「…………」

「…………」


 “きゅ~”という何とも可愛らしい腹の音がした


「由紀、腹減ったのか?」

「……………遊さんこそお腹すいたのですか?」


 腹の音がどっちから鳴ったかはいい。人間だから腹が減るのは当たり前だ


「俺じゃないと言いたいが、それを言うと由紀も否定するだろうからあえて言わない」

「私も否定したいですが、そんな事で時間を無駄にはしたくありません」

「意見が合ったところで、朝飯の準備するか」

「はい」


 俺と由紀はキッチンにへと向かった


「あ……」

「どうしました?」

「昨日の夜に今日の分のご飯炊くの忘れてた……」


 昨日、香月と一緒に夕飯を作ったのはいい、その後は香月といて今日の分のご飯を炊いて寝るのを忘れていた


「き、今日はパンでもいいと思いますよ?」

「ごめん……今日はパンって事で」


 ご飯はないが、幸いな事にパンがあった。これでパンも切らせていたら俺達は朝食抜きか朝食が麺類になるところだった


「遊さん、マーガリンといちごジャムが切れそうなんですけど?」


 冷蔵庫を漁っていた由紀からマーガリンといちごジャムが切れそうとの報告があった。マーガリンは帰りに買ってくるとして、ジャムは……冷蔵庫の牛乳で作ろう


「そうか、じゃあ、マーガリンは後で買ってくるとして、ジャムは牛乳で作るか」


 空き瓶は余ってるし、市販のジャムもいいが、たまには自分でジャムを作るのも悪くない。が、いちごジャムとか、オレンジジャムはスーパーでも買える。ここはスーパーでは見かけないジャムを作ってみるのもいい


「ええ!?牛乳でジャムを作るんですか!?」

「そうだけど?え?牛乳ジャムって知らない?」

「あんまり聞かないですね」

「そうか……由紀は聞いた事ないのか」

「私もそうですけど、多分、遊華も美優も知らないと思いますよ?香月さんと美月さんはどうか知りませんが」


 香月と美月の年上組はともかく、由紀達の年下組は知らないのか……


「そうか、じゃあ、一緒に作るか?」

「はい!」

「じゃあ、学校から帰って来たら作るか。今は時間がないし」

「はい!」


 牛乳ジャムは作り方こそ簡単だが、鍋で作るので平日の朝に作るには不向きだ。それに、熱を取って冷蔵庫に保管しなきゃいけないし


「ふぁ~、おはよう~、お兄ちゃん」

「おう、おはよう。遊華」

「遊華、おはよう」


 眠そうに目を擦る遊華。俺はいつも遊華より早く起きる。だが、由紀は遊華達と同じ時間に起きてくる事が多いので由紀にあいさつがなくても無理はない


「あれ?由紀、今日は早起きだね?」

「うん、遊さんと一緒に寝てたから自然とね」

「そっかぁ~、お兄ちゃん、由紀、私はシャワー浴びてくるね」

「「いってらっしゃい」」


 遊華は眠そうな顔で浴室に行った。時々転ばないか心配になるが、遊華が転んだところを1回も見た事がない


「シャワーで思い出したが、由紀はシャワー浴びて来なくていいのか?」


 俺は顔を洗う程度でいいが、女性陣は寝起きがいい方とは言えない。目を覚ますという意味でもシャワーを浴びた方がいいと思うのだが?


「私は朝食が終わってから浴びますから」

「そうか」


 本人がそれでいいなら俺は何も言わない。それに、こうしてちゃんと話ができている時点で意識ははっきりしているし


「それより、今日の朝食なんですが」

「ああ、ご飯は炊き忘れたが、パンはあるし、卵もあるからトーストと目玉焼きくらいはできるぞ?」

「そうですか。じゃあ、私はスープでも作りますね」

「ああ、頼んだ」


 俺は目玉焼きを、由紀は適当な野菜を切り、鍋に水を入れ火にかける。別に客に出して金を取るわけじゃないから野菜の大きさも食べやすければ適当でいいしな


「由紀、先に冷蔵庫から必要なものを取っていいぞ」

「いいんですか?」

「ああ、俺は卵を取り出すだけだが由紀は野菜を選ばなきゃいけないから時間掛かるだろ。俺は由紀が野菜を選んでる間にフライパンと鍋を用意しておくから」

「そういう事でしたら遠慮なく」


 由紀が野菜を選んでいる間に俺はフライパンと鍋を用意する。2人で冷蔵庫を覗いていたら狭いしな


「それにしても、起きた時はビックリしたなぁ」

「なんですか?いきなり」


 いきなりだとは思う。だが、俺は由紀ともっと話がしたい。普段は由紀と2人で話す機会なんてないとは言わないが、多い方じゃない


「いや、昨日は香月と寝たはずなのに起きたら由紀がいた。一緒に寝たはずの人間がいなくて別の人間がいたらビックリするだろ?」

「それはそうですけど、唐突過ぎますよ」

「そう言うな。いつもは遊華達と一緒で1人1人とちゃんと関わる機会が少ないんだ。少し俺のバカ話に付き合ってくれよ」


 本人には言わないが、未来でも遊華、香月、美月と関わる機会が多かったが、由紀と美優との関わりは少なかった。それこそ、未来で初めて会った時なんて由紀は警戒心丸出しだったし


「そういう事ならいいですけど、朝の時間は限られてますから手短にお願いしますね?」

「あ、ああ……」


 今更ながら由紀は本当に俺の事が好きなのかと疑いたくなる。だって、この子ビックリするくらい真面目だし


「それで?遊さんは起きた時に隣りにいたのが香月さんではなく私でガッカリしましたか?」

「ガッカリはしてないが、ビックリはした」

「そうですか……よかった」


 何がよかったんだ?


「何がだ?」

「私が遊さんのベッドに潜り込んでガッカリされなくて」


 由紀が俺のベッドに潜り込んでいてどうして俺がガッカリするんだ?


「香月じゃなくて由紀が俺のベッドに潜り込んできてガッカリするってどうして思ったのか聞いてもいいか?」


 俺はフライパンと鍋を取り出しながら聞いた。どうしてガッカリする?由紀は俺の恋人だ。恋人がベッドに潜り込んできて嬉しくない奴はいない


「私は幼い頃から周囲に真面目だと言われてきました。もちろん、遊さんと付き合うまで異性と付き合った事もありません」

「中学生で恋愛経験豊富だったら逆にビックリするわ」

「それはそうです。ところで遊さんは私が中学でなんて呼ばれてるか知ってますか?」


 遊華が中学でどんな風に過ごしているかを知らないのに由紀や美優の学校生活を知ってるわけがない


「遊華の学校生活を知らない俺が由紀の中学でのアダ名を知ってたら変だろ」

「ですよね……私は中学では『鉄仮面の由紀』って呼ばれてるんです」

「初めて知った。由紀は真面目だし、曲がった事が嫌いだろうからそう呼ばれても不思議じゃないが、それがどうかしたか?」


 アダ名なんて所詮、人が付けたものだ。言い換えれば価値観の押しつけとも取れる。が、人によってはそのアダ名に学校生活や社会生活を狂わされる事だってある


「私だって好きで真面目でいるんじゃないんです……」


 そりゃいつも真面目だと疲れるだろうよ


「まぁ、真面目が好きだなんて奴はそうはいないだろう」

「私だってたまにはサボったりしたいんです」

「サボりたかったらサボればいいだろ。それのどこがいけないんだ?」

「でも、私がサボると他の人に示しが……」


 お前はどこの組の組長だよ……ったく、由紀は真面目だが、息抜きの仕方を知らないのか……


「少しは肩の力を抜いてみたらどうだ?」


 俺はガス台にフライパンと鍋を置き、由紀を後ろから抱きしめる


「で、でも、それじゃ他の人に示しが……」


 まだ言うか


「由紀が思うほど他の人は気にしちゃいない。それに由紀はロボットじゃない。人間だ。少しくらいサボったり楽したりしてもいいと思うぞ?それに、アダ名なんて最初に付けた奴が自分の価値観で付けて周囲がそれに同調しただけだろ。なんて言われようが由紀は由紀だ」


 俺は泣いている遊華にしてたように由紀の頭を優しく撫でた


「いいんでしょうか?」

「何が?」

「私が楽をしてもいいんでしょうか?」

「いいんじゃないか?由紀だってたまには楽しなきゃな」

「はい!」


 後ろから由紀を抱きしめているせいで表情は見えないが、声色からして元気になったと思う


「元気になったところで悪いが、由紀」

「はい!」

「そろそろ冷蔵庫を閉めてくれ」

「はい……」


 俺が由紀を後ろから抱きしめた理由─────由紀を安心させる為ってのもあるが、1番は由紀の手を挟まないようにして冷蔵庫を閉めるためでもある。ま、由紀が何を思って何を感じているかを知れただけでも収穫はあったからいいか


今回から由紀編でした。今まであまり遊と1対1で絡む事のなかった由紀ですが、今回初めて本格的に絡みましたが、由紀との話はまだ続きます


今回も最後まで読んで頂きありがとうございました


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