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俺が香月と2人きりで話す件について

今回は香月に体験談を聞かせる話です

本日のテーマ、下手でも不恰好でもちゃんと自分の言葉で伝える

では、どうぞ

 自分の話をするのは恥ずかしいと思う。自分の事を知ってほしい願望がある人は違うと思うが、俺は自分の事を知ってほしいとは思わない。その場に自分がいたらなんてのは仮の話で現在の話ではない。何が言いたいかって言うとだな。俺が未来に飛ばされてした苦労話なんて人に話す価値なんてないって事だ。だが、目の前の香月は……


「早く早く!遊の未来で体験した話して!」


 キラキラした目で俺が未来で体験した話を聞きたがっている。初対面の時は疑いの目を俺に向けてなかったか?


「未来での体験談って言ってもなぁ……何から話したらいいか……」


 俺が未来に飛ばされた時の話をするのはいいが、何から話せばいいんだ?


「遊が未来に飛ばされてから帰ってくるまでの話を一通りしてくれればいいよ」

「俺が未来に飛ばされてから帰ってくるまでの話か……」

「うん!」


 俺が未来に飛ばされてから帰ってくるまでってちゃんとカウントしたわけじゃないが、3か月くらいはあったと思うんだが……まぁ、いいか


「俺が未来に飛ばされてからは……専業主夫みたいな生活をしてたから他人と関わるなんて事は遊華や香月、美月の仕事関係の人か浩太と敬くらいしかいなかった」

「学校に行ったり、バイトしたりしてなかったの?」


 普通の人間なら未来に飛ばされても学校に行くかバイトをするって選択をするだろうが、俺はそうはしなかった


「俺も本当はそうしたかったんだが、学校に行くと余計な事を話しそうだったし、バイトは……香月達に止められてた」


 学校で余計な事を話しそうだったというのは嘘じゃない。転入した学校で同級生と再会でもしようものなら俺はきっと余計な事を話す。主に生徒に


「学校に行かなかったのは遊なりに考えた結果だと思うけど、私達がバイトを止めたってところが気になる」

「あー、それはだな……」


 言えないよなぁ……飛ばされた先じゃ遊華のヤンデレブラコンがすでに末期になっていたとか、遊華もそうだが、香月や美月が過保護になり過ぎてバイト禁止令が出されたとか……


「何?私には言えない事なの?」

「いや、言えるには言えるが……どうしたものかと思ってな」


 香月には言えないって言うか、香月、遊華、美月には言えない。由紀と美優には言えるんだが……


「遊、私は大丈夫だから。全て受け入れるから」


 香月はまるで癌を宣告される前の患者のようだが、言った後でショックを受けないよな?


「どんな事になっても後悔するなよ?」

「うん!」

「本当に後悔するなよ?」

「遊、しつこいよ」


 しつこく言わなきゃ俺が不安なんだよ


「じゃあ、言うが、バイトは飛ばされた未来の香月、美月、遊華に禁止令を出されたからしなかったんだ」


 学校に行く事も俺が余計な事を話してしまいそうだって言ったが、本当はバイトと同じく香月、美月、遊華に禁止された事も理由の一部だ。ほんの少しだけだが


「そ、そうだったんだ……」


 顔が若干引きつっているが、ショックらしいショックを受けている様子はない


「ショックこそ受けてないが、目に見えてわかるくらいに引いてるな」

「うん……遊が飛ばされた未来の私って意外と大胆なんだなって思って……」


 大胆かどうかは知らんが、俺に対しては少し過保護過ぎだとは思った


「ま、まぁ、未来の香月は初対面からブラコン全開だったしな。仕方ないんじゃないか?」

「そ、そうだったんだ……」

「ああ。まぁ、コーヒーでも飲んで落ち着けよ」

「うん」


 俺と香月は一息入れる為にコーヒーを飲む。俺が飛ばされた未来の話をするだけだから香月の精神にダメージはそ少ないと思っていた。コーヒーだって喉が渇いた時に飲めばいいと思っていたが、別の意味で役に立つとは思わなかった


「落ち着いたか?」

「うん」

「ならよかったが、今の話は未来に飛ばされてから1か月も経ってないんだがな」


 今話した内容は俺が未来に飛ばされてから1か月しないうちにあった事だ


「え……?今の話って1か月も経ってない時の話なの!?」

「ああ、俺自身、未来に飛ばされたって衝撃的な出来事に戸惑っていたし、その後は生放送に拉致られたり、いつの間にか事務所に所属させられてたりといろいろあったからな」

「遊、今の話ってもしかして……」

「ちゃんとカウントはしてないが、多分、未来に飛ばされてから3~4日くらいに生放送に拉致られたと思う」

「そうなんだ……」


 香月は未来の自分がしでかした行動に『そうなんだ』以外の言葉が出ないみたいだ


「ああ。でも、俺は別に嫌とかじゃなかったから怒ったりとかはしなかったぞ」


 未来の香月がした事なのに今の香月をフォローして何の意味があるのかはわからないが、何もしないよりはマシだ


「ならよかった……例え未来でも遊に嫌われたら私は生きていけない」


 未来でもそうだった節があるが、香月って誰かに依存するところがあるよなぁ……


「未来で遊華にも言ったが、俺はいなくなったりはしない。絶対にって保証はないが、できる限り香月達の側にいたいと思っている」

「うん……」


 俺が飛ばされた未来の話をしてたはずなのに、なぜかシリアスになってしまった。俺、シリアスな雰囲気と女の涙って苦手なんだよなぁ


「暗い話はこれくらいにして、俺が飛ばされた未来の話の続きするか」

「うん!」

「って言ってもなぁ……俺は飛ばされた未来じゃほとんど家に引きこもっていたからこれって言う話はあんまりなぁ……」


 俺が未来で学校に行ってたり、バイトでもしていたら未来の流行りとか知れただろうが、どちらもしていなかった


「じゃあ、遊はこの時代に帰ってくるまでずっと家に引きこもってたの?私達以外の誰とも会ってなかったの?」

「いや、遊華や香月、美月と買い物に行ったり仕事に付き合わされたりしたからずっと家に引きこもってたってわけじゃない」

「そっか……あれ?遊のお友達の敬君と浩太君の話が出てないよ?」


 言われてみれば、話してなかったな……ま、ここにいるのは香月であり、早川や明美さんじゃない。つまり、浩太はともかく、敬の変わり様を聞いてダメージを受ける人間は誰もいない


「浩太はともかく、敬は今と違いすぎるくらいに変わってたから本人には言いづらいが、香月なら大丈夫だろ」

「何?敬君ってそんなに変わってたの?」

「ああ。香月から見て今の敬ってどんな印象?」

「敬君?そうだね、私から見た敬君は男の娘みたいな感じだね」


 敬の容姿について俺も浩太も今まで触れなかったし、クラスの連中も特に何かを言うわけでもなかったが、香月に言われて初めて思った。アイツ、女装とか似合うんじゃね?


「そうか……でも、その敬が未来じゃチャラ男になってるって言ったらどうする?」

「はい?遊、今のって冗談だよね?」


 冗談でこんな事言えるか。俺だって最初見た時には反応に困ったわ


「いや、マジだけど」

「え、いや、でも、今の敬君からは想像つかないんだけど?」


 未来に飛ばされましたっていう現代科学じゃあり得ない現象を証拠もナシに信じる奴はまずいない。証拠があっても信じてもらえるかどうか……微妙なところだ


「俺も最初見た時は疑った。が、香月達と出会うずっと前の俺を知っていたようだし、免許書も見せてもらってようやく信じた」

「そ、そう……でも、あの敬君がチャラ男ね……ダメ……想像できない」


 そりゃ、そうだろ。今の敬からは絶対に想像できない


「で、浩太の方は明美さんの旦那」

「そう。それは何となく想像できる」


 敬の話は長くなったが、浩太の話は俺が『明美さんの旦那』って言えば、香月が『想像できる』だけで終わった。浩太、お前は劇的なイメチェンしてなかったせいで話が短く終わって俺は助かったぞ


「で、俺の未来に飛ばされた話をまだするか?」


 正直、ネタ切れだ。飛ばされた未来じゃ俺は遊華達の仕事関係の人達と敬、浩太くらいしか関わってきてないし、家事をやる以外はほとんど引きこもりみたいな生活をしていたから話せるネタがない


「うん。でも、遊がこの時代に帰ってくる前の出来事でいいよ。未来の私達の仕事関係か敬君、浩太君しかなかったみたいだし」


 香月の気遣いがありがたいと感じる反面、未来じゃお前は私達の仕事関係か敬、浩太以外の人間としか関わりがなかったのかよって言われているみたいで若干、傷つく


「未来でお前には出会いらしい出会いがないんだなって言われているようで悲しい気もするが、まぁ、いい。俺がこの時代に帰ってくる前にはミス声優コンテストがあったな」

「ミス声優コンテスト?何?それ?」

「まぁ、なんだ?大学のミスコンの声優バージョンでファンと男性声優の投票によって1番美人な女性声優を決めるってものなんだが……」


 俺は元の時代に帰ってくる前にあった騒動の中では1番であろう出来事だ


「ものなんだけど?どうしたの?遊」

「あ、いや、どういうわけか俺にはコンテストの話が来てなくてな。投票日当日になって女性声優の皆さんから追いかけ回された」


 今となってはいい思い出だが、当時はしんどかった……


「そ、そうなんだ……でも、そんな騒動の最中に元の時代に帰って来れたんでしょ?」

「ああ、ほとぼりが冷めるまで今いるこの部屋に隠れていようと思ったんだが、この部屋の存在は香月と美月も知っていたからな。すぐに見つかると思ったんだよ。そんな時に親父のメモを見つけてもう1つの隠し部屋に逃げ込んだんだ」

「もう1つの隠し部屋って前に遊が案内してくれた部屋?」

「ああ、その部屋だ」


 今の遊華が日記を書いてるかどうかは知らないが、俺の飛ばされた未来で遊華は日記を書いていた。この時代じゃ見た事ないが


「遊はその部屋で何を見たの?」

「遊華の日記だ。俺への思いが永遠淡々と綴られたな」


 自分で言ってて恥ずかしいが、あの日記がなきゃ俺は遊華を本当の妹だと思い続けていた。だが、実際、俺と遊華は実の兄妹じゃなく、義理の兄妹だった


「そうなんだ……その内容って私が聞いちゃいけない事だよね?」

「そうだな……遊華の為にも日記の内容は言えないな」


 俺だって遊華の日記を勝手に読んでしまった手前、詳しくは言えない。だから、俺は元の時代に帰ってきた時の話だけしようと思う


「遊華ちゃんの日記を読んで遊はどうやって帰ってきたの?」

「遊華の日記を読んだ俺は遊華に10年前の段階でカップルになってたら結婚していたかもなって話をしただけだ」

「そう。だけど、無事に遊華ちゃんと付き合えて今は私達とも恋人だからそれでいいんじゃないかな?」

「え?」


 香月から今がよければそれでいいみたいな事を言われるとは思わなかった


「未来の話を聞きたいって言った私が言うのもアレだけど、過去を振り返るより今を楽しんだ方が得でしょ?だから、今を楽しもう?」

「香月からそんな言葉が出てくるのには驚きだが、その通りかもな」


 この後、俺は遊華達が帰ってくるまで香月と抱き合っていた。今日の夕飯は香月と2人で作るか……新婚夫婦みたいに

今回は香月に体験談を聞かせる話でした

ようやく……イチャイチャにたどり着ける……

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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