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俺が遊華の誤解を解く件について

今回は遊華の誤解を解く話です

誤解は悪化しないうちに解いてしまおう

では、どうぞ

 誤解する事は人間誰しもある。例えば、自分の恋人が自分以外の異性と楽しそうに笑いながら歩いている場面を見て実際は自分へのプレゼントを買いに行き、自分の話で舞い上がってしまったというオチだが、何も知らない方からしてみれば自分よりその異性が好きなのではないか?と思ってしまう事もある。俺の場合は異性関係ではない。強いて言うなら俺の命関係で誤解が生じてしまった。結論から言うとだな、どうしよう……という事だ


「遊華達にどう話したものか……」


 トマトジュースを飲んでいて吹き出し、それをどうして血と間違えるのか?そんな疑問は置いておいてだ、どうしよう……幸い、敬も浩太も親父も説明したらわかってくれた。が、遊華達はどうだろう?暗い部屋で1人考える


「漫画や小説じゃあるまいし、トマトジュースと血を間違えるなんてベタすぎだろ……」


 逃げるようにその場を立ち去った俺にも非があるが、トマトジュースと血を見間違える方もどうかと思う


「1人ずつ話をして誤解を解くしかないか……」


 俺の出した結論は遊華達1人1人と話をして誤解を解くというものだ


「方法は決まったものの、誰から話をしたらいいんだ?」


 方法は決まった。が、遊華達の誰から話をしたものかと思う。いや、違うか。誰が1番ショックを受けているか?だ。


「ショックを受けているのは遊華だよなぁ……」


 香月達がショックを受けていないとは言わないが、おそらく1番ショックを受けているのは遊華だ


「香月達には遊華の誤解を解いてから話をするとして、遊華から誤解を解くか」


 遊華から誤解を解くと決めた俺の行動は早かった。まずは遊華の部屋に行って今朝の誤解を解く。それだけだからな


「さて、行くか」


 地下室を出て遊華の部屋に向かう。こんな事なら苦手なものを正直に言っておくんだったと心の底から後悔しながら


「遊華、いるか?」


 遊華の部屋のドアをノックする。


『どうしたの?お兄ちゃん?』


 ドアの向こうから元気のない遊華の声がした。こりゃ相当ショックを受けているみたいだな……


「ちょっと話がしたくてな。今、いいか?」

「いいよ、入って」


 ドアを開け俺を出迎えてくれた遊華の目は真っ赤に腫れていた。部屋に籠って泣いていた事なんて容易に想像できる


「…………」

「…………」


 部屋に入ったはいいが、2人揃って黙り込んでしまう。だが、どちらかが何かを言わなければ始まらない


「話って何?」


 沈黙を破ったのは遊華の方だった。これから今朝の事を話すとなると気が重い


「あ、ああ、今朝の事なんだが……」


 誤解を解くために今朝の事を持ち出した。だが─────────


「嫌!!聞きたくない!!」


 遊華に拒否されてしまった。俺としては聞いてもらえなきゃ困るんだが……ここで俺まで熱くなったらジリ貧だ。ここは冷静に冷静に


「遊華、聞いてくれ」

「嫌!!聞きたくないよ!!」


 冷静な俺とは対照的に欲しいオモチャを買ってもらえなくて駄々を捏ねている子供みたいな遊華


「遊華」


 嫌だ嫌だとごねる遊華を抱きしめる俺。これ以上酷い状態になって近くの物を手当たり次第投げつけられたら敵わない


「嫌……いやぁ……お兄ちゃん死んじゃやだぁ」


 俺にしがみ付き遊華は泣き出してしまった。誤解を解いた時にどうなる事やら……


「遊華、俺は死んだりしない」

「本当?」


 涙を溜め、顔を上げて俺を見つめる遊華。いつもなら可愛いとか思うが、今回ばかりはそう思える状況じゃない


「ああ。遊華は俺が口から血を吐いたと思っているんだよな?」

「うん」

「俺が今朝吐いたのはトマトジュースだよ」


 前置きなしに俺は素直に今朝吐いたものの正体を伝える。ここであーだこーだと言うと言い出しづらくなる


「トマト……ジュース……?」

「あ、ああ、トマトジュースだ」

「…………」

「…………」


 遊華を抱きしめている俺と抱きしめられた状態の遊華との間を沈黙が支配する。


「お兄ちゃん」

「何だ?」

「わけを話してくれるよね?」

「は、話はするが、そ、その前に香月達の誤解も解かなきゃいけないだろ?」


 俺は本能的にヤバいと思い、抱きしめるのを止め、遊華から離れようとした。が、しかし───────


「離さないよ?」


 目に光が宿っていない遊華によって俺は拘束されてしまった


「ゆ、遊華さん?」

「わけを聞くまで離さないから。わかった?」

「は、はい」


 ヤンデレ遊華によって俺は拘束され、俺は逃げられなくなった


「さて、わけを聞こうか?」

「はい……」


 現在、俺は遊華に抱き着かれ────もとい、拘束された状態だった


「で、どうしてトマトジュースを飲んでいたのかな?」

「き、昨日、俺の誕生日だったじゃないですか」

「うん」

「俺ってトマトジュースが苦手だったわけでして……」

「うん」

「そ、それで、俺もこのままじゃいけないと思って苦手なものを克服しようと思って……」

「うん」

「トマトジュースを飲んでいました……」

「うん」


 先程から“うん”しか言わない遊華が逆に怖い。


「誤解させて悪かったな」


 同じ返答しかしない遊華は怖いが、誤解させたのは俺だから謝っておく


「お兄ちゃん」

「はい」

「言葉で謝るくらいなら誰だってできるよ」

「はい」

「だから、態度で示して」


 言葉で謝るのは誰でもできる。遊華の言う事は確かに正しい。が、態度で示すのは言葉で謝るよりも遥かに難しい


「た、態度で示せって言われましても、どうしたらよろしいのでしょうか?」


 妹兼恋人に敬語を使ってしまうなんて情けないな……俺


「キスして」

「は?」

「キスしてって言ったの!!早く!!」


 聞こえてないわけじゃない。むしろキス1つで許してくれるのならいくらでもしよう


「わ、わかった」

「そう、じゃあ、早く」


 俺は遊華の唇に自分の唇をそっとつける。別にどんなキスをしてほしいとかの注文がないからディープじゃなくてもいいだろ


「────!?」

「…………」


 俺は軽く遊華の唇に自分の唇をつけた。しかし、遊華は首に回していた腕を俺の頭に持って行き、ホールドしてきた。


「「はぁ、はぁ……」」


 キスが終わって後、俺と遊華は息が上っていた。どれくらいの時間キスしていたかなんて覚えていないが、せいぜい2~3分だろう


「ゆ、遊華、い、いきなり頭を掴むなよ……死ぬかと思ったぞ」


 死因がキスによる窒息死とか恥ずかしすぎる!


「お、お兄ちゃんが悪いんでしょ!説明もせずに私の前から立ち去ったんだから!」

「そ、それは悪かったが、トマトジュースが苦手だなんて言えなかったんだよ……」


 誰でも苦手なものはある。食べものでもそれ以外でも。だが、彼女の前では完璧でありたいと思うのは男なら誰でも思う


「それでも、ちゃんと言ってほしかった……」


 悲しそう顔で俺を見る遊華。今回ばかりは隠し事をした俺が悪いな


「ご、ごめん……」


 こればかりは反論できない。どんな形であれ遊華に隠し事をしたんだし


「よろしい!それにしても……」

「何だ?」


 俺が遊華を抱きしめた状態で話は続く。これ以上、小言を言われたら俺の精神が持つかどうか


「お兄ちゃん、トマトジュースが苦手だったんだ?」

「あ、ああ。トマトとケチャップは大丈夫でもトマトジュースは苦手でな」

「へぇ~、ふぅ~ん、そうなんだぁ~」


 何だ?そのおちょくるような目は?アレか?俺を脅迫するつもりか?


「何だ?俺を脅迫でもするか?」

「ううん、でも、お兄ちゃんに苦手なものがあるのが意外だったな~と思ってね」

「俺だって人間だ。苦手なものくらいある」


 苦手なものを克服しようとして誤解を生んだ結果、こうして遊華に弄られる。相手が親父だったり何もない時なら俺は容赦しなかったが、今回は弄られてもしょうがない


「そうだね……でも、どんな事でももう隠し事なんてしないでね?」

「ああ、わかった」


 今回の件で俺は隠し事をすることで後にどれだけ大変な事になるかを思い知らされた。これからはできるだけ隠し事はしないようにしよう


「はぁ……遊華の誤解は解けたけど、まだ香月達が残っているのか……」


 遊華の誤解は解けたにしても、まだ香月達の誤解は解けていない。人数でいうとあと4人残っている状態だ


「香月さん達の誤解を解きに行く時は私も行くよ。私のせいで広まったものだし……」


 元を正せば俺が逃げたのが原因だが、香月達に言ったのは遊華だ。少なからず罪悪感を感じているのだろう


「あ、ああ、よろしく頼む。1人より遊華と一緒の方がやりやすい」

「うん!」


 よく結婚式でケーキ入刀する時に初めての共同作業なんて言うが、俺にとっては香月達の誤解を解くことが遊華とする初めての共同作業になる。俺が撒いた種とはいえ、これが初めての共同作業とか悲しすぎる


「誤解を解くのはいいが、誰からにする?」


 俺1人の時は遊華が1番ショックを受けていると思って遊華から誤解を解くようにしたが、遊華と一緒だと順番をどう決めたものか迷う


「う~ん、私は美月さんか香月さんの年上コンビからの方がいいと思うよ?」


 遊華の提案は俺も考えていた。由紀と美優の年下コンビより先に香月と美月の年上コンビを攻略した方がいい。拗れた時の事を考えて


「そうだな、拗れた時の事を考えて香月か美月に真実を話した方がいいよなぁ……」

「うん!って事で最初は年上コンビに決定!」


 年上コンビの誤解を解くという事で俺と遊華の意見はまとまった。が、まだ決めていない事がある


「で、香月と美月、どっちの誤解から解く?」


 そう、年上コンビに決定しても香月と美月、どちらから先に攻略するかを決めていない


「私は香月さんがいいと思う」

「俺は美月からだな」


 年上コンビからというところは意見が一致したが、香月と美月で遊華と俺の意見が割れた。


「…………」

「…………」


 意見が割れた事により俺と遊華は黙り込んでしまう。遊華には遊華の考えがあって香月を選んだ。俺には俺の意見があって美月を選んだ。そこは間違いないと思うが、ここは遊華の考えを聞こうじゃないか


「遊華はどうして香月からの方がいいと思ったんだ?」

「え?特に理由はないけど、強いて言うなら1番年上だからかな?そういうお兄ちゃんはどうして美月さんからの方がいいと思ったの?」

「あー、洞察力が高いから?」

「そうなんだ……」

「ああ……」

「…………」

「…………」


 俺と遊華はそれ以上喋らなくなった。


「なぁ、遊華」

「何?お兄ちゃん?」

「香月と美月両方ここへ呼んで2人いっぺんにしないか?」

「そうだね」


 俺と遊華は考える事を止め、結局は香月と美月をこの遊華の部屋へ呼び出し同時に誤解を解くという方向で話がまとまった

今回は遊華の誤解を解く話でした

誤解が始まった遊華を攻略すれば後は楽だと思った

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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