俺と遊華が父さんを見捨てた件について
今回は遊と遊華の2人が遊斗を見捨てる話です
今回もヤンデレ遊華が出てきます。恋人になったからと言って遊華のヤンデレは失われたりしません
では、どうぞ
相手は自分を知っている。あるいは自分は相手を知っている。これって不思議な感じがする。どこであった?どこで自分を知った?相手は自分を知っているという場面ではこう思う。逆に自分は相手を知っている場合は友達から聞いて知っている。家族から聞いて知っている。という感じだ。俺の場合は未来で家族だった。なんて言っても信じてもらえないだろうし、知っている理由としては弱いだろう
「父さん、羽月さん来てるって本当?」
遊華と部屋からリビングに移動した俺はリビングに入るなり羽月さんが来ているかを確かめる。一応、未来では義母だったので愛着が全くないわけではない。
「うん、来ているよ?今は席を外しているけど」
来ていても会えなきゃ意味がない。だが、焦ってもしょうがないのも確かだ。ここは気長に待つとしよう
「来ているならいいけど、どこにいるんだ?」
トイレか?とは聞けないよな……隣りに遊華もいるんだし。遊華で思い出したが、やけに静かだな……てっきりどんな人?とか聞いてくるものだとばかり思っていたが……
「ん?母さんと料理してるよ」
「そうか。で、羽月さんの旦那と香月と美月は?」
「あれ?僕は羽月が家族で来ているって言ったっけ?」
俺の口から羽月さんの旦那と香月、美月の事が出たのに驚いた様子もなく親父が聞いてきた
「いや、聞いてないけど?ただ一家で来ているのかな?って思っただけだ」
「そっか。羽月の旦那はあそこで伸びてるよ?」
親父が指差した方角を見ると、そこにはグッタリした様子の男性がいた。
「何があったんだ?」
俺は呼ばれてきて初対面の人との対面がグッタリした状態だなんて初めてだ
「お兄ちゃん、あの人死んでないよね?」
隣りにいる遊華が俺の服をキュッと掴みながら問いかけてきた
「多分……」
死んでないと信じたいが、絶対に死んでないとは言い切れないし、そもそもがどうしてこうなった?ここで殺し合いでもしてたのか?
「父さん、どうしてこうなった?」
「ああ、あれね。単純に酔いつぶれているだけ」
「「はい?」」
俺と遊華は間抜けな声を上げてしまった。目の前でグッタリしている人間……しかもピクリともしない人間が酔いつぶれているだけ?信じられるわけがない。
「いやぁ、羽月と久々に会うし、そこで寝ているのにも久々だったからね。ついはしゃぎ過ぎちゃった☆てへっ!」
この親父……1発ぶん殴ってやろうか?ウザいなぁと常々思っていたが、殺意が湧いたのは初めてだ
「父さん」
「ん?何?」
「キャバクラの名刺はちゃんと処分しとけよ?」
「え?」
俺は仕返しにありもしないキャバクラの名刺の話をどこにいるかもわからない母さんと羽月さんい聞こえるようにわざと聞こえるように仕向けた。せめてもの仕返しだ
「遊華、晩飯まで2人きりでイチャイチャしようぜ」
「え?いいの!?」
「ああ、父さんはほら」
俺は父さんの方を指差した。そこには────
「ち、違うんだ!今のは遊の冗談なんだって!」
「へぇ、遊の冗談なら遊斗はどうしてそんなに狼狽えてるのかしらぁ~」
「そ、それは母さんが怖いからで……」
鬼の形相の母さんと狼狽えながらも必死に言い訳をしている親父の姿があった
「お兄ちゃん、お部屋でいっぱい可愛がってね」
「ああ、もちろん」
何かを察したのか、遊華も部屋に戻る事に賛成してくれた。遊華、兄としても彼氏としても察しがいい妹や彼女は好きだぞ
「俺と遊華は部屋に戻るから晩飯になったら教えてくれ」
聞こえてるかどうかは知らんが、とりあえず親父と母さんに一声かけ部屋に戻る事にした
「はぁ……父さんも普通に状況を説明してくれればあんな事にならなかったのに……」
「あ、あはは……」
部屋に戻ってきた俺と遊華はただただ親父に飽きれていた。その証拠に遊華よ、笑えてないぞ?
「さて、晩飯までどうするかな?」
「え?イチャイチャするんじゃないの?」
「そう言えばそうだったな。で?何する?」
イチャイチャすると言ったが、具体的に何をするか決めてない。
「膝枕とか?あ、私やってみたい事があったんだ!」
「何だ?」
ここなら2人きりだし、誰かに見られる心配もないからある程度の事は大丈夫だと思う
「とりあえず、寝室いこ?」
「あ、ああ」
遊華に手を引かれて寝室へと向かう。本当に何する気だ?公序良俗に反する事はしたくないぞ?
「で、何をするんだ?」
寝室に連れて来られただけなので俺は具体的に何をするかを聞かされていない。何をされるんだか……
「これから説明するからここに寝て」
遊華が指差したのはベッドだった。え?寝るだけでいいの?マジで?なら、楽でいいが
「わかった」
遊華の指示通りにベッドに寝転んだ。そして────
「お兄ちゃん、ずっとずーっと一緒にいようね?」
俺の頭が遊華の胸にスッポリと収まった。未来とは違い、呼吸困難になる事はない。だが、この状況は何て言うかこう……ヤンデレヒロインが主人公の頭を抱えているようにも見えなくはない。
「あ、ああ……」
どことなく怖いものを感じたが、それをツッコむのは止めておこう。後が怖い
「お兄ちゃんは私のものお兄ちゃんは私だけのもの誰にも渡さない髪の毛1本だってやるもんか!お兄ちゃんは私だけを見て私だけを愛していればそれでいいのそうしたら幸せになれる他の女になんかもったいない全部私のものお兄ちゃん……ううん、遊……愛してる」
俺は何もしてないのに遊華がヤンデレになった……どうなってんの?
「お、おい、遊華?」
「ん?何?遊」
呼び方がいつの間にか“お兄ちゃん”から“遊”になってるし……
「どうしたんだ?」
「どうもしないよ?ただ、遊には私しかいないし、私には遊しかいないなぁと思っただけ」
「さいですか」
いや、確かに俺にとって遊華は愛すべき彼女なんだが……ん?そういえば、よく小説とかだとヤンデレって拒絶したりすると狂ってしまう描写があるが、受け入れたらどうなるんだ?実験してみるか
「遊?どうしたの?まさか、この状況で他の女の事を考えてたの?」
俺の周りには言うほど女はいねーよ……学校じゃ敬と浩太ぐらいしか話す相手もいないしな
「そうだと言ったらどうする?」
未来でも散々振り回されたヤンデレ遊華だが、その頃は妹としての認識しかなかった。だが、今は彼女だ。さすがに殺されたりするのは勘弁してほしいが……
「私じゃダメなの?遊にとって私は魅力ないの?まぁいいや遊が他の女を見ないように監禁すればいいだけの話だもんね。っていうか、ここだと私と2人きりだし実質監禁してるようなものか遊は私を嫉妬させて愛を確かめたいんだね?今はキスぐらいしかできないけど、思う存分私を感じてね」
我が妹兼彼女であり、未来で見てきたものでもこうなった遊華には狂気にも似たものを感じる
「遊華」
今更遊華を拒む事はしないが、一応は名前を呼んで反応するかどうか確かめておこう
「何?今更私が怖くなった?そんな事ないよね?彼女を怖がる理由なんてないもんね?怖くないよね?」
反応はしてくれたが、どうして俺が遊華を怖がってるという結論になるんだ?意味がわからない
「彼女を怖がるわけないだろ?ただ、俺は遊華を愛してるんだなぁと思って名前を呼んだだけだ」
「そっか、遊は私を愛してるんだ……どれぐらい愛してる?世界で1番?それとも全宇宙で1番かな?」
世界で1番とか宇宙で1番とか俺には荷が重い選択肢が出てきたな。そんなありきたりな言葉がほしいならいくらでもくれてやるが……
「そうだな……このまま一生添い遂げて同じ墓に入って死んだ後も一緒にいたいくらいには愛してるかな」
フッ、世界で1番?全宇宙で1番?ヤンデレ状態の遊華にそんなありきたりな言葉を俺が言うわけないだろ?未来のヤンデレ遊華でわかってるからな!そんな小手先だけの言葉じゃダメだって
「え……?」
「どうした?何か変な事言ったかな?」
「今……なんて……」
「あ?ああ、一生添い遂げて同じ墓に入って死んだ後も一緒にいたいくらいには遊華を愛してるって言ったんだが、遊華はその歳で難聴にでもなったか?」
「本当に?ずっと一緒にいてくれるの?死んだ後も?」
「そうだけど?それがどうした?」
さっきそう言ったのに聞いてなかったのか?全く……
「嬉しい……すごく嬉しい……」
遊華はヤンデレ状態のまま頬を赤らめていた。うん、どこかのゲームのヒロインみたいだぞ?弁当作ってくれたと思ったら自分の血液混ぜました。なんて言うヒロインは終始こんな表情してるよな?
「それはよかった」
遊華に喜んでもらえて何よりだ。っていうか、いつの間にか遊華のヤンデレに耐性ついてないか?あれか?未来でたくさん見てきたのと、この時代じゃ遊華は俺の彼女だから恐怖を感じないのか?
「お兄ちゃん……ずっと一緒にいようね」
この後、俺と遊華は親父から晩飯を知らされるまでイチャイチャした。電話が鳴った時に遊華が不機嫌になったが、それを何とか宥めリビングへと向かった事を話しておこう。そして────
「遊は知ってると思うけど、一応、紹介しておくね。こちら僕の同級生の羽月さん」
「どうも、羽月です。よろしくね、遊君」
「遊です。よろしくお願いします」
羽月さんからしてみれば初めての、俺からしてみれば2度目の対面。未来の世界で義母だった人に改めて自己紹介をするなんて変な感じだな
「で、こっちは娘の香月と美月」
「どうも……」
「どうも~」
クール系と天然系はこの頃には既にできあがっていたわけか……未来での香月と美月の面影すら感じない
「キャラはこの頃から既にできあがっていたか……」
「「え?」」
「あ、ヤベ……」
思っていた事が口に出てしまったのか、香月と美月がキョトンとしている。
「遊、自分ばかり紹介してないで遊華の事も紹介してあげなよ」
意外な事に親父が助け舟を出してくれた。明日は雪かな?それとも、世界崩壊か?
「あ、そうだった。コイツは妹の遊華です」
「ど、どうも……」
突然話を振られた遊華は狼狽えながらも一応、あいさつをした。無茶振りしてゴメン、遊華……
「さて、お互いに自己紹介も済んだし、晩御飯にしようか」
待て、羽月さんの旦那の紹介と名字を聞いてないぞ?いいのか?
「香月さんと美月さんのお父さんの事はいいのかよ?」
「ああ、あれは当分起きないからほっとけばいいよ」
雑ッ!雑すぎるよ!親父!俺もさっき似たような事を親父にしたから人の事言えないけど!血がつながってなくてもこういうところは似るんだな……親父の女に弱い部分が似なくてよかったと今初めて思った
今回は遊と遊華が遊斗を見捨てる話でした
最後の方に義姉の2人がチラッと出てきました
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました