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俺の行動で誤解が生まれた件について

今回は誤解が生まれる話です

遊のどんな行動で誤解が生まれるのでしょうか?

では、どうぞ

 俺の過去に関する事は雨宮さんから聞いた話で一旦ケリがついた。それはいいとして、人間、好き嫌いがあると思う。例えば、幼い頃だとピーマンが嫌いな子は多いと思う。それと同列で人参が嫌いな子もいるだろう。俺、藤堂遊にも嫌いなものや苦手なものはある。俺はトマトジュースが苦手だ。ケチャップやトマト単体は平気なのにトマトジュースはどうにも好きになれない。が、苦手なものを苦手なままにしておくのもどうかと思って俺は現在──────────


「うげっ、トマトジュースはいくつになってもマズイ……」


 俺は雨宮さんの施設を訪れた時、幸いにも子供と鉢合わせする事はなかったが、いい機会だから苦手なものを克服しようと思い、今日、トマトジュースを克服すべくこうしてチャレンジしているわけだ


「唐突に思い立ったとはいえ、いきなり苦手なものを克服しようだなんて無理か」


 苦手なものをいきなり克服する事なんてできるはずがない。年齢を重ねる度に食べられたりするものもあるが、俺は高校生になってトマトジュースを克服しようとしている。昨日は俺の誕生日だったからとか、年齢を重ねてたからとかそんな理由じゃない。断じて


「も、もう一杯……」


 苦手なトマトジュースを克服すべくもう一杯口に含む。遊華達は揃いも揃って寝てるし、俺に苦手なものがあるとか彼女達には知られたくない。俺はいつでもカッコいい彼氏でいたいんだ!!


「お兄ちゃんおはよ~」

「げほっ!げほっ!」


 俺は遊華に後ろから声を掛けられたせいで口に含み、飲みかけていたトマトジュースを吹き出してしまった


「お、お兄ちゃん!?大丈夫!?」

「あ、ああ、大丈夫だ!それより俺は着替えてくるから!」


 遊華にトマトジュースが苦手でそれを克服しようとした事を知られまいと捲し立ててキッチンを出たが、それが後にとんでもない誤解を生む事になるとはこの時、まだ知りもしなかった。


「あービックリした……まさか俺が起こすまで起きない遊華が今日に限って自分で起きてくるとは……」


 1人で起きてきた事を本来なら褒めるべきなんだろうが今回は素直に褒める気にはなれなかった


「はぁ~、見られた以上は正直に話してしまおう」


 見られてしまったからには正直に俺がしていた事を全て話すしかない。人間誰しも嫌いなものの1つや2つある。遊華なら理解してくれるはずだ


「見られたのが遊華でよかったような悪かったような……」


 今なら遊華しか起きてないはずだから気軽に俺が苦手なものを克服しようとしていたと言える。そう思っていたが─────────


「お兄ちゃん……」

「遊……」

「遊ちゃん……」

「遊さん……」

「遊くん……」


 何でだろう?遊華だけじゃなく、香月達まで俺に悲しみの視線を向けてくるのは……


「お、おう、どうした?朝から辛気臭い顔して?」


 俺は何か遊華達を悲しませるような事をしただろうか?全く身に覚えがない


「お兄ちゃん……死んだりしないよね?」


 は?何を言っているんだ?俺が?死ぬ?意味不明なんだが?


「はい?俺が?死ぬ?何言ってんだ?」


 俺が死ぬなんて冗談だろ?俺が死んだら未来で遊亜達は存在しないんだが?


「遊、遊華ちゃんから聞いたよ。遊が血を吐いたって」

「え?」


 俺がいつ血を吐いた?俺は健康そのもので血を吐いた覚えなんて……アレかー!!俺がトマトジュース飲んでて吹き出したアレしか思い浮かばない!!


「遊ちゃん、隠さなくていいんだよ?遊ちゃん病気なんだよね?」

「いや、俺は病気になんて─────」

「遊さん!!隠さないでください!!」


 病気になんてなってないという俺の言葉を遮って叫ぶ由紀。俺の恋人達の中では洞察力の高い美月と由紀がこれだ。俺が病気になったと完全に思い込んでいる


「いや、隠すも何も俺は病気じゃないし」


 病気じゃないって言って今の遊華達は信じてくれるかどうか……


「遊くん……私達はそんなに頼りない?」


 泣きそうな顔の美優。ダメだこりゃ……


「いや、頼りないとかそんなんじゃなくてだな……」


 病気じゃないし、今は困った事なんて特にないので頼るとか頼らないとかの問題じゃない


「私、ちょっと電話してくるね」


 遊華はフラフラとリビングを出て行った。電話?どこへ?


「あ、おい、遊華!」

「────ッ!」


 遊華は俺の静止を聞かずに寝室に籠ってしまった


「遊、私達も電話してくるね」


 遊華に続き、香月達もフラフラと出て行ってしまう。そして、リビングに1人取り残された俺は──────────


「どうしよう……凄い勢いで誤解が広まっていく」


 誤解が広まって行くのをただ茫然と見ているしかなかった。それにしても遊華達は一体どこへ電話してくるというのだろうか?


「え?電話?誰から?」


 遊華達が出て行って俺が呆然としてから5分が経過した時だった。俺の携帯に着信があった


「浩太か……」


 着信画面には『浩太』と表示されていた。浩太ならわかってくれる!ちゃんと説明したら理解してくれるはずだ!


「もしもし」

『遊、さっき明美さんの携帯に香月さんから着信があってお前が死ぬって言われたんだが?』


 なるほど、香月が電話したのは明美さんか……っていうか、明美さんは浩太の家にいるのな


「あ、ああ、その事なんだが、実はな───────」


 俺は浩太に事の顛末を説明した。俺が苦手なトマトジュースを克服しようとして口に含んでいたところに遊華が声を掛けてきて驚いた俺がジュースを吹き出してしまった事を。すると浩太は──────


『だーはっはっはっは!!お、お前……い、いくらなんでもベタ過ぎだろ!!や、ヤベェ、腹痛い……』


 爆笑していた。俺が浩太の立場でも爆笑するが、いくらなんでも笑いすぎじゃね?


「そ、そんなに笑うなよ……俺だって困ってるんだから……」

『わ、悪かった……ブフォ!』


 コイツ悪いと思ってないな?傍から見れば面白い事この上ないが……


「お前、本当に悪いと思ってる?」

『あ、当たり前だ……』


 浩太の声がまだ震えているが、いつまでも笑われたままじゃ困る


「落ち着いたか?」

『あ、ああ……』


 浩太に笑われてから5分後、落ち着いた浩太とどうやって誤解を解くかの対策を立てるための話し合いをしようと思う


「で、どうやって誤解を解いたらいいと思う?」

『遊が正直に全てを話せばいいと思う』


 全うな意見だが、それができれば苦労はしない


「それができてれば香月が明美さんに電話するなんて事態にならなかったんだけど?」

『そりゃそうだ。そもそも、どうして遊はトマトジュースを飲んでいたんだ?』

「俺、トマトジュースが苦手なんだよ」

『へぇ、で?』

「苦手なトマトジュースを克服しようとして飲んでいた」

『なるほど……まぁ、苦手なものを克服しようと思うのはいい事だし、それをいつ克服しようとするかは遊が決める事だから俺は何も言わないが……』


 浩太は何だかんだで美月や由紀以上に洞察力が高い。俺が何も言わずとも察してくれるはずだ


「そう言ってもらえると助かる。で、どういうわけか遊華が血と間違えて今に至るんだが、どうしたらいいと思う?」

『さぁ?ほっといていいんじゃないのか?』

「え?」

『遊がトマトジュース苦手な事は別に遊華ちゃん達に無理して言う必要はないし、それに、遊が弁明しようとして聞かなかったのは遊華ちゃん達だ。今回に限って言えば人に迷惑を掛けているわけじゃないから放置してもいいんじゃないのか?』


 一見薄情とも取れる浩太の意見だが、俺は説明しようとしたし、聞かなかったのは遊華達だ。だが、俺も逃げるようにしてキッチンを立ち去ったという後ろめたさがある


「放置してもいいが、俺も遊華に見られた時に逃げ出した後ろめたさがあるしなぁ……」

『じゃあ、遊がトマトジュース苦手な事を含めて説明するしかないな。遊にある選択肢は2つだ。1つ、このまま放置する。2つ、遊が自分の苦手なものを正直に告白し、誤解を解くこと。遊はどっちを選ぶ?』


 俺が自分の苦手なものを話して誤解が解けるなら俺は2つ目の選択肢を選ぶ


「俺は2つ目の選択を選ぶ」

『そうか。明美さんには俺から上手い事言っておくから誤解が広まらないうちに正直に話せよ?』

「わかっているさ」

『頑張れよ。じゃあな』

「ああ、じゃあな」


 浩太との通話を終了させ、これからの事を考える。が、その前に、遊華達が広めた誤解がどれだけ拡散され、俺の元へ連絡が来ているかを確かめる。電話でもメールでもどちらにしろ俺は誤解を解かなきゃいけないし


「メールは親父だけで後は電話か……」


 電話は長くなりそうなので先にメールを開封する。不思議な事に母さんや羽月さんからの連絡は来ていないようだが、親父が上手く言いくるめたのか?


『やぁ、遊。なんか遊華達が誤解しているみたいだけど(笑)遊は昔からトマトジュース苦手な事を僕と母さんは知ってるから安心していいよ(爆笑)心配しなくても羽月達には上手く言っておくから』


 何だろう?親父が誤解していないのは助かったけど、(笑)と(爆笑)の部分がもの凄く腹立つ!目の前にいたらぶん殴りたいくらいだ


「親父め……次会った時には覚えてろよ……」


 俺は親父への殺意を抑えて『そうしてくれると助かる』とメールを出す。親父への連絡は完了したから次は敬か……


「敬はどうやって知ったんだ?」


 どうやって知ったかは今はいいとして、とりあえず電話してみるか


「もしもし?敬?」

『あ、遊……望海ちゃんから聞いたよ……遊、死んじゃうんだって?』


 浩太と違って敬は一筋縄ではいかなさそうだ。さて、どうしたものか……


「その事なんだが、実はな─────」


 面倒だとは思いつつも俺は敬に浩太にしたのと同じ説明をし、加えて自分がいた施設に行ったことも説明した。まぁ、頭のいい敬ならここから導き出される答えはわかるとは思うが……


『なるほど、遊は施設に行って誕生日が昨日だし、1つ歳を重ねたから苦手なものを克服しようとしてトマトジュースを飲んでいたところに遊華ちゃんから声を掛けられて吹き出してしまった。そういう事でいいの?』

「あ、ああ……」


 誕生日の事を話しただけなのにどうして敬はここまで読めるのか不思議なものだ。浩太といい敬といい、俺の行動パターンがどうして簡単にわかるんだ?


『はぁ……ちゃんと説明しない遊が悪いと思うよ?』


 敬の言う事に対し、反論できない。ついでだから俺の行動がどうして読めるのか聞いておくか


「耳が痛い話だな……ところで聞きたい事があるんだが」

『ん?何?』

「どうして浩太も敬も俺の行動が読めるんだ?」

『どうしてって、長い付き合いだからね。僕も浩太も。だからじゃないかな?遊だって僕や浩太の行動パターンはある程度なら読めるでしょ?』

「まぁな」

『それと同じだよ。他に聞きたい事はあるかな?』

「いや、特にはないな」

『そう。ま、がんばりなよ』


 俺は敬との通話を終了し、遊華達の誤解を早めに解く事にした。大元を正せば俺が悪いわけだが、どうやって話をしたものか……





今回は誤解が生まれる話でした

トマトジュースによる誤解は一回やってみたかった!次回で誤解が解けるといいなぁ・・・・

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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