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俺が涙を流す件について

今回は遊の本当の名前と誕生日についてです

さて、遊の本当の名前は何なんでしょう?

では、どうぞ

 自分の出生や名前の由来を聞くのって結構恥ずかしいと思う。幼い頃だったら別に恥ずかしがるとかそんな事はないんだが、さすがに高校生ともなると気恥ずかしいものがある。が、俺は自分の本当の名前や本当の誕生日、本当の母の容姿等、知らなければならない事がある。


「雨宮さん、俺の本当の名前から聞いていいでしょうか?」


 聞いていて思うが、行く宛てのない子供を引き取る施設の長が俺の本当の名前なんて知っているのか?なんて思うが、手掛かりがない以上はこの人に聞くしかないんだがな


「遊さんの本当の名前ですか?」

「はい、俺って本当は何て名前なんでしょうか?」


 この人にこんな事を聞くのは間違っているし、知るわけないよな……


「遊さんの本当の名前“ゆう”ですよ。まぁ、漢字は違いますが……」

「つまり、俺の名前は元々“ゆう”って名前だったけど、漢字の方が遊ぶではなく、別の字だった。そういう事ですか?」

「そうですね。今は遊ぶ方の“遊”ですが、貴方の本当のご両親は優しい子になってほしいという願いを込めて“優”という文字にしたみたいですけどね」


 俺は内心ホッとしていた。だってそうだろ?俺の名前が全く別のものだったらやりづらい。住民票や保険証では藤堂遊という名前が記載されているのに本当は別の名前でしたなんて


「読みが同じで助かりました……別の名前だったらどうなっていた事やら……あ、俺って本当の母親になんて言われて預けられたんですか?」


 借金が原因で預けられたとは聞いたが、俺をここに預ける際になんて言われたかを聞いてなかった


「“私達にこの子を育ててくのは無理なのでここに入れてください”って言われましたよ。で、詳しい事を聞いたら借金がある事が判明したんですよ」


 俺の本当の母親は最初から借金の事を伝えたのではなく、借金の事を隠して俺を預けようとした。が、それを不審に思った雨宮さんが詳しい事を聞いたからこの人は俺がここに入れられた経緯を知っているのか……


「俺がここに入れられた経緯と本当の名前はわかりましたが、どうして俺の本当の名前まで……」


 質問しておいてなんだが、この人は俺の事を知り過ぎじゃね?と思う事もある


「それは遊さんの本当のお母さんが貴方をここに預ける時に言っていたんです。“この子の名前は優といいます。優しい子に育ってほしくてそう名付けました。どうか優しい子に育ててあげてください”ってね」


 俺の本当の母親は律儀な人だ。わざわざ名前の由来を教えなくても名前だけ教えてそれでお終いでいいだろうに……この分だと漢字で名前を書いて教えていてもおかしくないだろうなぁ


「そ、そうですか、その人は漢字で名前を書いて雨宮さんに教えたりとかは……」

「しましたよ?」


 ですよねー、予想はしていたが、口頭で名前の解説するくらいだ。名前を何かに書いて解説くらいするよな……


「あ、あの~」


 美月がオズオズと手を挙げていた。別に討論会でもなければ俺は雨宮さんと喧嘩しているわけでもないんだから別に気まずそうにしたりする必要はないんだが……


「美月さんでしたっけ?」

「は、はい」

「どうしました?」

「遊ちゃんがこの施設に入れる時のお金ってどうしたのかな~と思いまして」


 言われてみればそうだ。この建物もそうだが、子供を育てるという事は場合によっては莫大な金がかかる。俺がこの施設に入る時だってそれなりに金が必要なはず


「それは企業からの支援とかがありますから問題なかったですよ?それに、ここには拾われてきた子もいますから」

「あ、そうか、そうですよね」


 俺達が知らないだけで世の中には置き去りにされる子もいる。そんな子達からどうやって金を支払ってもらえるというのだろうか?払えるわけがない


「雨宮さん、俺の本当の誕生日って知ってますか?」


 金銭的な話はこれ以上したくない。ここに入れられた原因も金絡みだったし


「遊さんの本当の誕生日は9月3日です。つまり、今日です」


 今日が俺の本当の誕生日……未来に飛ばされてから俺は日付の事なんて考えずに生きてきた。だが、今日が俺の誕生日なのかと思うと感慨深いものがある


「そうですか……じゃあ、俺の年齢は……」

「16歳になりますね」


 雨宮さんのこの一言で俺は今日を除いて14年前、今日を入れれば15年前にこの施設に入れられたという解釈で間違いなさそうだ


「今までの誕生日は何の間違いもなかったのか……」


 親父も母さんも俺はもちろん、遊華の誕生日も毎年欠かさずに祝ってくれた。未来に飛ばされなきゃ俺は毎年何も考えずに誕生日を迎えてた事だろう


「お、お兄ちゃん……?」

「どうした?遊華?」

「それ……」


 遊華に指差され、自分の頬に触れてみた。すると────────


「涙?どうして……?」


 涙を流していたみたいだ。どうして俺は涙なんて流してるんだ?


「遊……」

「香月……?」


 俺は香月に抱きしめられていた。別に悲しいわけでも何でもないんだが、どうして涙なんて流してるんだ?


「遊さん、悲しい時は泣いてもいいんじゃないですか?」

「由紀……」


 俺は悲しいわけじゃない。そうか、俺は──────


「目が乾燥していたから涙を流していたんだ……」

「「「「「は?」」」」」


 俺の発言により空気が凍った。あれ?俺は何か変なこと言ったか?


「遊さん……」


 雨宮さんが飽きれた表情をしているのは何故だ?


「お兄ちゃん……」

「ん?何だ?」

「お兄ちゃんは悲しくないの?」

「何が?」

「実の親に借金を理由に捨てられたんだよ?悲しくないの?」


 何だ、そんな事か。覚えてないのに悲しむも何もないと思うのだが?


「俺には本当の両親の記憶なんてないから悲しむとかは全くない。そもそも、覚えてない人間に捨てられたのをどうやって悲しむんだ?」

「それもそうですね」

「「あっはっは」」


 俺と雨宮さんは2人で笑いあう。記憶にないものをどうやって悲しめばいいんだか……だが、遊華達はそうではないようで……


「「「「「紛らわしい事すんな!!」」」」」

「ご、ごめんなさい!」


 遊華達には怒られてしまった。タイミング悪く涙を流した俺にも非はあるが……


「遊くんは本当に悲しくないの?」

「美優、確認しなくても俺は本当の両親なんかいなくても美優達がいる。俺はそれだけで十分幸せだ」


 今の言葉には嘘偽りなんてない。紛れもない俺の本心だ


「遊ちゃん、今の言葉に嘘はない?」

「ない」


 ここで嘘を吐いたところで俺には何のメリットもないし、嘘を吐く意味もない


「お兄ちゃん……」


 シリアスな場面でこんな事を思うのもなんだが、さすがヤンデレ。愛が重い……どこぞのガキ大将じゃないけど『お前の物は俺の物、俺の物は俺の物』なんて言葉があるが、俺はこの場面でその言葉を使いたい


「いや、本当に大丈夫だからな?雨宮さんには悪いが、親父に聞くまで俺はこの施設の存在すら知らなかったんだし、手紙を見つけてなかったら俺は本当の母親の存在を気にも留めなかったんだからな」

「「「「「それもそっか!」」」」」


 普通ならもっと気にするところなんだろうけど、遊華達は俺の性格を知っているので軽く済ませている。別に俺もそれをどうこう言うつもりもないしな


「では、雨宮さん、俺達はこれで失礼しますね」

「ええ、また来てくださいね?」

「はい、次は俺の過去の話は無しで純粋に遊びに来ます」


 玄関先で雨宮さんと別れる。今回の収穫としては満足できるものだった。気が付けばもう夕方だし


「お兄ちゃん、今日は外食にしようっか?」


 遊華が突然外食にしようだなんて言い出したが、どうしたんだ?


「俺としては構わないんだが、突然だな」

「たまには外食してもいいかな?って思って」


 普段、遊華達は無駄遣いしないし、大食いじゃないから食費も大してかからない。1日ぐらい外食してもいいかかなとは思う


「俺はいいんだが、香月達はそれでもいいのか?」

「「「「うん」」」」


 満場一致で外食に決定した。しかし、どうしたというんだ?俺に気を使っているとかそんな事はないよな?まぁ、何にせによ晩飯を作る事と片付ける事を考えると今日くらいは楽してもいいか


「さて、俺の本当の母についてはある程度の情報を得たが、特にこれといって対策を考える必要はないか」


 深夜、1人で雨宮さんとの話し合いを思い出す。俺の本当の母は意外と律儀な性格をしているという事や借金が原因で俺を施設に入れる事になったのはいい。が、どうして今更になって俺を迎えに来るという旨の手紙をよこしたんだ?


「こんな事なら雨宮さんに聞いておけばよかった……」


 名前や誕生日、施設に入れた理由は聞いたが、俺を迎えに来る事については聞きそびれてしまった。まぁ、何でもかんでもわかっているというよりは多少知らない事があった方が対面した時の楽しみがあるから俺にとってはいいんだろうけど


「迎えに来る事についてはお父さんに聞いてもいいんじゃないかな?」

「遊華、まだ起きてたのか?」

「うん、でも起きてるのは私だけじゃないよ?」


 振り返ると遊華だけじゃなく香月達もいた。というか、普通にお菓子を広げてお菓子パーティーを開いていた


「深夜の間食は身体に悪いぞ?」


 俺はここで“太るぞ?”なんて言う度胸はなく、オブラートに包んで控えめに注意した。伝わってるかどうかは知らんけど


「大丈夫だよ!遊ちゃん!私はいくら食べても太らないから!」


 美月、相手が俺だからいいものの、同性に言ったら確実に大変な事になっているぞ?俺は体系なんて気にしない。いや、むしろ少しくらいポッチャリしていてくれた方が嬉しいんだがな!


「そうかい。だが、ちゃんと歯磨きはするように」

「「「「「うん!」」」」」


 遊華達がお菓子パーティーしてるし、俺は隠し財産の干物でも持ってくるかね。あとコーラも


「あれ?お兄ちゃんどこ行くの?」

「飲み物持ってくる」


 遊華に一言伝えて部屋を出る。干物といっても焼き魚の方じゃなく、酒のつまみになる方だけどな


「ここらにあたりめか鱈の干物があったはずなんだが……おっ!あったあった!鱈の干物!あとはお盆とコップとコーラだな」


 俺は懐に鱈の干物を忍ばせ、人数分のコップとコーラをお盆に乗せて部屋に戻る。まぁ、懐に隠したところで結局独特の匂いで遊華達にバレてしまうんだがな!こうして俺達の1日が終わる。今日ほど1日が長いと感じた事はない

今回は遊の本当の名前と誕生日についてでした

遊の名前はそのままでしたが、漢字が違ってました。誕生日は施設を訪れた日でした

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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