表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/165

俺が施設に入れられた経緯を知る件について

今回は遊の施設に入れられた理由を知る話です

どんな理由かは本編で

では、どうぞ

 俺達が風邪を引き学校を休んでから数日が経ち、今日は休日。いつもなら休日をのんべんだらりと過ごしているが、今日は違う。俺が親父に引き取られた施設へと足を運んでいた。別に俺1人で来てもよかったんだが、浮気だなんだと騒がれると嫌だし、遊華達に隠し事をしているようで気が引けるので結局は遊華達を連れて来ているわけだが……


「こんな事なら親父に車出してもらうんだったな」

「そうだねぇ~さすがに疲れたねぇ~」


 キツイ坂道を歩いて上る。まだ暑さが残る9月の休日。俺達はひたすら坂道を上る。俺と美月は喋る気力が残っているが、遊華達は違う


「「「「…………」」」」


 このキツイ坂道のせいで喋る気力をなくし、この暑さのせいでゾンビみたいになっている。まさに地獄絵図だ。こんな坂道を毎日上っていたら嫌でも痩せるだろうと思う


「遊華達はもう喋る気力すらなく、ゾンビみたいになっているが、どうしたものか……」

「そ、そうだね……」


 引きつった顔の美月はどうにかして笑顔を保とうとしているが、正直、笑顔になりきれていない。帰りは親父に迎えに来てもらうかタクシーを呼ぼう


「おーい、遊華ー?大丈夫かー?」


 物は試しと遊華に声を掛けてみた。どこぞの某宇宙人じゃないが、やらないで後悔するよりもやって後悔だ


「も、もうダメ……し、しぬ……」


 残りの体力をフルに使い出てきた言葉がこれだ。施設に着いたら水をもらおう。じゃないと全員が干物かミイラだ


「そうか、もう少しだから頑張れ」


 薄情だと思うが、この場にいる全員が同じ事を思っている。1人だけ贔屓するわけにもいかないだろう


「う、うん……頑張ったご褒美にキスしてね。お兄ちゃん」


 何を言い出しますか、この妹は。おっと、今は妹じゃなくて彼女だったな


「「「「私達にもね……」」」」


 いつもなら飛びついてくる香月達だが、この暑さと坂道で香月達の元気がない。それに、俺も俺でツッコむ気力すら残っていない


「わかった……」


 施設に着くまであと数メートル。人里離れた山道でも何でもないのに俺はヒッチハイクなんていう案を思い浮かべているなんて末期だと思う


「なぁ、みんなに提案なんだが」

「「「「「なに……」」」」」

「ヒッチハイクしないか?」

「「「「「…………」」」」」


 遊華達の俺を見る目に生気を感じられない。暑さとキツイ上り坂は人の生気と気力をここまで奪うものだなんて初めて知った


「ごめん、今のは忘れてくれ」


 反応がなかった事に耐えきれなくなった俺は思わず謝ってしまった。だって、仕方ないだろ?ヤンデレだったら何とかなるが、マジで生気を感じられなかったんだぞ!?ヤンデレより怖い!!


「遊ちゃん……着いたみたいだよ?」

「あ、本当だ」


 気が付けば俺は施設の前にまで来ていた。この暑さと坂道で気が付かなかった……


「ゆ、遊……着いたの?」

「ああ、着いたぞ」


 生気を感じられない香月の目に生気が宿り始めた。香月だけじゃなく遊華達の目にも生気が宿り始めたが、その前に施設の人にあいさつが先だ


「遊くん、み、みず……」


 美優、俺はミミズでも水でもないぞ。暑さとキツイ坂道のせいで語彙力が少なくなっているのは無理ないけど


「ゆ、遊さん……私はもう一歩も歩けません」


 そうだね、うん、頑張ったね。由紀。そこで休んでていいからちょっと待ってようね


「みんな少し休んでいてくれ。俺は施設の人にあいさつしてくるから」

「「「「「りょ~か~い」」」」」


 ゆうかたち は ぐったりしている。ないな。どんなRPGだ。これはさすがにないわ


「さて、職員室はどこかな?」


 俺は施設の人を探して施設を探索している。それにしてもさっきから子供に遭遇しないが、今は子供がいないのか?考えてみれば少子高齢化と言われるくらい子供が少なくなりつつあるし、そもそも、捨て子とかこの時代にいるのかどうかすら俺にはわからない


「お、ここか」


『しょくいんいしつ』と書かれた札を見つけた。この施設には幼い子供もいるのだろうか、誰でも読めるようにという施設側の配慮だろう


「失礼しまーす」


 何せアポなしで来ているからな。俺が引き取られた時の事を知らない職員に当たっても仕方のない事だ


「はい?どうされました?」


 応対してくれたのは若い職員だった。見た目からして20代から30代くらいの女性だが、この人に俺がこの施設にいた当時の事を聞いても覚えてる覚えてない以前に俺の事を知っているかどうか……


「あ、俺は14年前か15年前にいたんですけど……」

「は、はぁ、その頃は私はまだここに勤めていなかったのですが……あ、引き取った人の名前がわかれば知っている職員に聞く事も可能ですが、生憎、今日はほとんどの職員が子供達を連れて遊びに行っているので施設長しかいないんですけど……」


 施設長がいれば多分俺の事を知っていると思うが……とりあえず引き取った人の名前を言ってみるか


「引き取った人の名前を言えばいいんですよね?」

「ええ、お願いできますか?」

「引き取り人は藤堂遊斗です」

「藤堂遊斗さんですか……ええ!?あの藤堂遊斗さんですか!?」


 どの藤堂遊斗かは知らないが、藤堂遊斗なんて名前がそうそうあってたまるか


「どんな想像しているかは知りませんが、その藤堂遊斗です」

「あ、あの、私、遊斗さんの大ファンなんです!」


 いや、大ファンなんですって言われましても俺は本人じゃないからサインとかできないんですけど……


「は、はぁ、そうですか、それは父も喜ぶと思いますよ。貴女のような美しい女性がファンなんですから」


 親父は素なのか演技なのかは知らんが、女性には滅法弱い


「あ、あの、話を戻していいですか?」

「あ、はい、失礼しました!只今施設長に確認してまいります」


 女性職員はそのまま奥の部屋に入って行った。アポなしで来てしまった俺に非があるとはいえいい加減水分がほしい。


「遊華達、干からびてなきゃいいが……」


 この施設には自販機なんてあるはずがないし、ここは施設長が来るのを待つか


「お待たせしました。私がこの施設の長の雨宮(あまみや)です」


 雨宮と名乗った女性は見た目からして40代から50代の間といったところか。老けていないところを見ると30代でも通用する気もするが……見た目と年齢を今は気にしている場合じゃない


「初めまして、藤堂遊です。本題に入る前にお願いがあるのですが……」

「はい?何でしょうか?」

「実は────」


 俺は外でグッタリしている遊華達の事とこの暑さとキツイ坂道で喉がカラカラな事を伝えた。


「「「「「生き返る~」」」」」


 砂漠でオアシスを見つけた時の冒険者みたいになっている遊華達。俺も人の事を言えた立場じゃないが、本当にうまいお茶だと思う。さて、一息ついたところで本題に入らせてもらうか


「おいしいお茶をありがとうございます。それで、本題なんですが……」

「はい、何でしょうか?」

「雨宮さんは俺がこの施設にいた時ってここで職員をされてましたか?」

「ええ、私は遊さんが赤ちゃんの頃からここに勤めていました」


 この人なら俺の本当の母を知っているかもしれない。それどころか、俺がどうして施設に入れられたかを知っているかもしれない


「じゃあ、俺の本当の母の事や俺が施設に入れられた経緯もご存じでしょうか?」

「ええ、知ってますよ。貴方が1歳の時にこの施設に来た事は昨日の事のように感じますから」

「そうですか……それで俺がこの施設に来た経緯を聞かせてもらえると嬉しいのですが……」


 俺がどういった経緯でこの施設に入れられたか、俺の本当の母はどんな人間だったのか、俺の本当の誕生日はいつなのかはもちろんの事だが、俺の本当の名前も気になるところだ


「そうですね、貴方がここに来た経緯は貴方の生みの親が多額の借金をし、貴方を育てる事が不可能になったためです」


 多額の借金か……額がどれだけのものかは俺にはわからない。が、俺を生む段階で多額の借金を背負っているのならどうして俺を生んだんだ?


「多額の借金ですか……それってどれくらいの額だったかとかは?」

「残念ながらそこまでは……」


 施設の人間が具体的な額を知るわけがない。そんな事は誰だって簡単に予想できる


「そうですよね……」


 この人が借金の額を知っていたら親父に伝えるだろうし、俺が知っていてもおかしくはない


「酷い……」

「遊華?」


 隣りに座っていた遊華がポツリと言った。俺本人は別に思うところはない。俺の本当の両親には俺を育てていく覚悟がなかった。それだけの話だ


「酷い!!自分達がした借金が原因なのにお兄ちゃんを施設に入れちゃうなんてあんまりだよ!!」

「そうだね~、私もちょっと怒っちゃうかな?」

「私もだよ!これじゃ遊くんが可哀そすぎるよ!」

「全くですね。そんな人達に親を名乗る資格なんてありません」

「遊、今夜は私達が傷ついた心を癒してあげる」


 本人じゃないし、俺はちっとも傷ついてない。顔も知らない人間に今更親だと言われても覚えていないから本人としては困る


「落ち着け。俺は別に傷ついていないし、顔も知らない人間に親だなんて言われても困る。家を建てるとか、車を買うとかなら理解できるが、それ以外の理由で借金して自分の子供を施設に入れたような人間に迎えに来られてもなぁ……」

「「「「「でも……」」」」」


 本当の母親に迎えに来られても困る。俺には俺の生活があるし、それに本当の両親の元で暮らしたとしてもギスギスした感じになり、居づらくなって家出するのが関の山だ


「俺の為に怒ってくれてありがとな。でも、俺本人は全く気にしてないから大丈夫だ」

「「「「「うん……」」」」」


 遊華達を落ち着かせる事に成功した。今度は施設長から俺の本当の母がどんな見た目なのかと俺の本当の誕生日、それから本当の名前でも聞くか。今になって思う。俺の本当の名前が遊じゃなかったらどうしよう……いや、割とマジで

今回は遊の施設に入れられた理由を知る話でした

次回は年齢とか誕生日とかの話を出そうと思います

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ