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遊華達が燃え尽きた件について

今回は遊華達が燃え尽きる話です

人の趣味とは時々理解できないと思う。今回はそんな話です

では、どうぞ

 人の趣味って意外なところで出ると俺は思う。例えば、そうだな……持ち物になんかは割とわかりやすく出る。アニメが趣味の人は財布なりカバンなりにアニメ関係の何かを入れたり取り付けたりするし、携帯の待ち受けなんかは自分の好きなものの画像だったりするし。だが、俺には理解できないことが1つだけある。それは部屋の趣味だ。どうして俺の親父はこうも家具の配置等が全く同じ部屋をもう1つ作ったんだ?


「お兄ちゃん、私達のお父さんって何を思ってこの部屋作ったんだろう?」

「さぁな。親父の趣味は俺には理解できない」


 俺は未来で遊亜から言われた失踪する時に向けて遊華に現在いる部屋の入り方とザッと部屋の中を案内した。この部屋は俺が初めて未来に飛ばされた時に遊華の想いを知るキッカケを作った部屋であり、俺が遊華に告白しようと決心した部屋でもある


「お兄ちゃん……」

「何も言うな遊華。お前の言いたい事はわかっている」


 俺も遊華と同じ気持ちだ。この家を建てる時に母さんは何も言わなかったのか?特に同じ部屋があるという部分に対して


「お兄ちゃん」

「何だ?」

「どうしてお母さんは何も言わなかったのかな?」

「わからん。どうせ親父のことだから上手い具合に母さんを丸め込んだんだろ」


 息子の俺と娘の遊華が変だと思うんだ。きっと業者の方もさぞ戸惑っただろう。が、あっちも仕事だ。違和感があったとしても注文された以上は建てなければならない


「で、この部屋がお兄ちゃんが失踪した時に使う予定の部屋なの?」

「ああ、家から近くて遊華達も気軽に来れて且つ見つからない。最高の条件だろ?」


 俺の家はいつからカラクリ屋敷になったんだ?俺は時々そう思う。一般の家庭には隠し部屋なんてないだろうし


「ま、まぁ、私としてはお兄ちゃんが黙って遠くに行くよりも違和感はあっても近くにいてくれた方がいいからいいんだけどね」


 引きつった笑顔の遊華から出てきた台詞は彼氏、兄としては嬉しいんだが、同じ部屋がもう1つあるという事と部屋の家具等の配置が全て同じという衝撃的で理解に苦しむ状況じゃなければ俺は遊華を抱きしめて愛の言葉の1つでも囁いていた


「お、おう、俺としても失踪しても気軽に遊華に会えると思うと安心するぞ」

「う、うん……」


 本来は感動的だったり第三者から見れば甘い空気が漂っているなんて言われてもおかしくはないが、親父か作った部屋のせいで何とも言えない微妙な空気になってしまった


「遊華、戻るか?」

「うん」


 この部屋は香月達を連れてまた来よう。ある意味、香月達を連れて来なくてよかった。遊華でこれだ。香月達を連れてきた時には──────


「か、考えたくねぇ……」


 遊華でさえコレだ。香月達をここへ連れてきた時にはきっとキャラを忘れて大騒ぎするに違いない


「え?何が?」

「香月達をこの部屋に連れてきた時の事」

「あ~、あ、あはは……だ、大丈夫だよ!香月さん達の時は私も一緒に説明するから!」

「ああ、頼むわ」

「「はぁ~」」


 俺と遊華は深い溜息を吐いた。これが溜息を吐かずにいられるか!どうして親父はこんな部屋作ったんだよ?


「「…………」」


 いつもの部屋に戻ってきた俺と遊華は燃え尽きていた。遊華はどうか知らないけど、俺は未来じゃ全く気にならなかったが、今更になって同じ配置の部屋がどうして2つもあるんだという当たり前の疑問に行き着いた


「ただいま。って、遊!?遊華ちゃん!?」


 帰宅した香月に驚かれるくらいに俺と遊華は酷い有様みたいだ。香月もあの部屋に入ったら俺達と同じ気持ちになるぞ


「香月さん、おかえりなさい」


 今の遊華は異世界に迷い込んだ小説の主人公みたいだ。なんて言うか、家に同じ部屋があるのが信じられないみたいだ


「遊、遊華ちゃんどうしたの?」


 何も知らない香月は遊華を純粋に心配しているみたいだが、それも今のうちだけだ


「遊華がああなった理由を教えてやるよ」

「え?あ、ちょ、ちょっと!遊!?」


 俺は戸惑っている香月の手を引き有無を言わさずに遊華を連れて行った部屋に連れ込んだ


「「…………」」

「香月もこうなったか」


 戻ってきた香月も遊華と同じ状態になってしまった。恐るべし同じ部屋の威力!まぁ、間取りとかが同じならまだいいが、家具の配置まで同じとか……我が父ながら頭が痛い


 そして、この後は美月、由紀、美優の順に帰宅したので香月と遊華にしたのと同じ事をしたが、やはりというか、なんというか……まぁ、結果は言わずとも解るだろ?案の定────────


「「「…………」」」


 こうなった。例えるなら廃人寸前の状態だ。


「うん、遊華達にはいろんな意味でダメージが大きかったか」


 真っ白に燃え尽きた─────と、言うよりは理解が追い付いてないと言った方が正しいのだろうか?親父の趣味に頭が追い付いていない状態だった。そりゃ、普段自分達が生活しているのと家具と部屋の配置が全く同じ部屋が隣りにあり、どうしてそんな部屋が存在しているか理解できない状態だったら無理もないだろうとは思う。


「お兄ちゃん……お父さんってどんな趣味してるの?」

「親父の─────変態の趣味なんて俺に理解できるはずないだろ?」


 大体、俺の親父は母さんをからかう為だけにキャバクラの名刺を用意し、ヤンデレという対処法を間違えたら命に関わる属性を持った母さんに女性の影をチラつかせるような奴の趣味なんて俺に理解できるわけがない。理解できる奴いたら連れて来てほしいくらいだ


「それもそうだね……」


 グテッとした遊華はそれはそれは可愛いが、その原因が親父の理解し難い家の設計だというのだから喜べない


「はぁ……晩飯の用意をしようと思うが、何にする?」


 今の遊華達に答える気力があるかは知らんが、一応聞いておこう。俺の独断と偏見で決めて後で嫌だとか言われたら困るし


「「「「「サッパリしたもの!!!」」」」」

「了解」


 遊華達は全員一致でサッパリしたものを所望してきた。アレだな。胃袋が食べ物を受け付けないんだな。主に考えすぎで


「サッパリしたものか……何にするかな?」


 サッパリしたものと言われても具体的なリクエストがないので献立に困る。うーん……何にしよう?安直な考えとして蕎麦かうどんにするか


「蕎麦かうどんにしよう。うん、そうしよう」


 一先ずは蕎麦かうどんを求めて食器棚を漁ってみる。最近は乾麺を食べてないからあるはずだ


「おっ、蕎麦があった。今日は蕎麦にするか」


 キッチンに乾麺の蕎麦を置き、1度遊華達がいるリビングに戻る。


「…………今日の晩飯は蕎麦でいいか?」


 未だにグッタリしている遊華達を見て一瞬、言葉を失うが、何とか持ち直し晩飯の確認をする


「「「「「おっけー」」」」」


 ダメだ。完全にショートしてる……ん?ショートしているって事は今の遊華達って俺の言葉は届かないんじゃね?


「俺は遊華達を愛している」


 悪戯心が働き、俺はつい“愛している”と言ったが、遊華達は……反応するはずないか


「「「「「私も愛してる!!」」」」」


 バッチリ聞こえてるんじゃねーかよ。っていうか、愛の言葉を口にしただけで一気に元気になったな


「そうかそうか、俺はこんな可愛い彼女達に愛されて幸せだ。テーブルを片付けておいてくれると遊華達をより一層愛せるんだが、今の状態じゃ……無理そうだな」


 俺の一言に遊華達は素早く起き上がり、テキパキとテーブルを片付け始めた


「じゃあ、その調子でテーブルを拭くところまでよろしく」


 聞こえてるか聞こえてないのかは定かではないが、とりあえず一声掛け、俺はキッチンに戻った


「さて、遊華達がテーブルに片付けている間に俺は蕎麦を茹でるか」


 鍋を火にかけてからそんなに時間は経ってないのでまだ沸騰してないが、乾麺を用意しておいて損はないだろう。あ、冷たいのか温かいのか聞くの忘れた


「おーい、冷たいのと温かいのだったらどっちが─────」


 いい?という言葉が俺の口から発せられる事はなかった。なぜなら───────


「「「「「燃え尽きた……」」」」」


 遊華達が真っ白に燃え尽きていたからだ。


「全員、冷たい蕎麦でいいか」


 俺は遊華達に冷たい蕎麦か温かい蕎麦かを聞く前に自己完結し、燃え尽きた遊華達を見なかった事にしてその場を後にした


「部屋の開け方だけ教えればよかった」


 部屋に招き入れずに開け方を遊華に教えて終わっとけばよかったと今更になって後悔した。


 晩飯ができあがってからは早かった。晩飯を済ませた後、遊華達は風呂にも入らずベッドイン。さすがに湯船に浸かるだけでもと思い、提案してみたが、遊華達曰く“明日シャワー浴びるからいい……今日は寝かせて”との事。手紙の事はとてもじゃないけど話せる状態にはない


「こりゃ手紙の件は明日に持越しだな。まぁ、遊華にだけでも話せたのはよかった」


 全員が知らないより遊華だけにでも話せてよかった。今の香月達は不安よりも疲労の方が酷そうだし


「はぁ……それにしても今更どうしろっていうんだよ」


 俺の本当の母に迎えに来られても困る。今更になって一緒に暮らしましょう?無理だろ。俺には藤堂家の人達と一緒にいた記憶はあるが、本当の母の記憶なんてないんだから


「親父に聞くか施設に行ってみるか」


 施設に行くなら遊華達に手紙の事は話さなくてよかったんじゃないか?と思う。


「とりあえず、場所の確認だな」


 俺は携帯を取り出し、親父に電話を掛ける。現在の時刻は11時だから親父はさすがに起きてるだろ


 コール音の後、少ししてから親父が出た。


『もしもし?遊?どうしたの?』

「俺が親父に引き取られる前にいた施設の場所を聞きたくてな」

『その施設の場所は─────』

「そうか、わかった」

『それにしてもどうしたの?いきなり施設の場所を聞いてきて』

「実はな─────」


 親父も無関係ではないので俺は手紙の件を話した。巻き込んでやろうとかそんなんじゃなくて、遅かれ早かれ親父にも相談するつもりだったし、ちょうどいい


『そう、そんな事がね……』

「どうしたらいいと思う?」

『遊の好きにすればいいと思うよ』


 一見薄情とも取れる意見だが、俺にとってはありがたいものだった。俺の好きにすればいい。つまり、俺が藤堂家に残ろうが本当の母と暮らそうがそれは俺の自由だという事だからだ


今回は遊華達が燃え尽きる話でした

旅館とかなら同じ部屋でものの配置が同じでも理解できるけど、一般の家で同じ部屋、配置も同じなのが理解できない遊華達の話でした

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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