浩太の観察眼が意外と凄かった件について
今回の話は浩太と駄弁るだけの話です
お騒がせキャラから一転した浩太は意外と気が付いてる事が多い模様
では、どうぞ
旅行的行事って不思議なものだ。どこが不思議なものかって、普段は朝から夕方くらいまでしか同級生と接する事はない。幼馴染で家が隣りじゃない場合を除いて。だが、旅行的行事ともなれば朝から夜までずっと同級生と一緒だ。当然、寝食を共にするから当たり前の事といえば当たり前の事だ。そして、これまたどうしてかは知らんが、普段はあまり話をしない同級生と気が付けば親しくなっていたなんて事もある。親しい同級生とはより踏み込んだ話をする事だってあると俺は思う
「さて、これからどうする?」
俺は今も尚、読書を続ける浩太にどうするかを聞いてみる。どうすると言っても後は寝るだけなんだがな
「どうするって言っても後は寝るだけだろ?それとも、これからの対策でも立てるか?」
これからの対策って言うのは俺の本当の母を名乗る人物が現れるまでどう過ごすか?とか、本当の母が現れた時にどうするか?だろうが、俺が高2に進級するまでにはまだ時間はあるし、それに俺には確認しておく事がある。
「そうは言ってもな……俺の本当の母を名乗る人物が現れるのは俺が高2に進級してからだ。それに俺には確かめたい事もある」
「確かめたい事?何だ?」
「前にも話したと思うが、俺は藤堂家の人達に引き取られた身だ。じゃあ、俺は藤堂家に引き取られるまでどこにいたのか?親父からは施設から引き取ったって聞いている。俺はその施設に行ってみようと思う」
「行って何を確かめる?」
「俺の本当の母親を知っているかどうか」
施設の前に赤ん坊の俺を置き去りにしていようが、俺を施設に預けようがどっちでもいい。その施設の人が俺の本当の母親を見ているかもしれない。いや、知っているかもしれない
「対面できなくてもせめて姿くらいは知っておきたいというわけか」
「まぁな。あっちが俺を知っていて俺があっちを知らないのは気持ち悪い」
浩太には一方的に知られているのは気持ち悪いと言ったが、俺にはもう1つ気になる事がある。それはどうやって本当の母は俺の通う高校を知った?置き去りにしろ預けたにしろ生まれて間もないであろう俺はまだ名前すらなかったはずだ。それをどうやって知った?
「気持ちはわからなくもないな。今のお前はストーカーにつけ回されているようないるようなものだしな」
浩太に言われて初めて自分の状況を客観視してみる。言われてみれば確かにそうだな……確かに俺はストーカー被害に遭っているようなものだな
「そういえば俺って今、ストーカー被害に遭っていたのか……」
「お前、気づいてなかったのか?」
小説から目を離し、呆れた表情で俺を見る浩太。浩太に指摘されるっていうのも変な感じだな
「美優じゃあるまいし、俺なんかのストーカーなんてしても何の得もないだろうに」
美優は彼氏の目から見ても贔屓目なしに可愛い。だが、俺は未来に飛ばされた経験を持つ事と本人達公認で彼女が5人もいる事以外は普通の男子高校生だ。ストーカーなんてしても何の得もない
「俺に言うなよ。そもそも、俺がストーカーの心理を知るはずがないだろ?」
そりゃそうだ。ストーカーの心理を知っているとしたらソイツは相当の読書家で犯罪心理学の本を読んで勉強しているか、本物のストーカーだ
「浩太は犯罪心理学の本とか読まないのか?」
たった数分だけだが、浩太は相当の読書家である事は事実だ。だから浩太が犯罪心理学の本を読んでいるんだろうなっていう予想をされても無理はない
「その心理学の本はまだ読んでいないんだ」
まだ読んでいないって事はそのうち読むのかよ……読書家ってスゲーな。俺も読書は好きだが、浩太も相当の読書家だな
「そうか。家に何冊かあるけど、貸そうか?」
親父の職業が作家なので本には苦労していない。最近はネット小説を読む事が俺の密かなマイブームになっているが、未来に飛ばされて、遊華に告白して恋人になって、未来に飛ばされて、未来と現在の矛盾を調べたりとあったので俺の趣味に使う時間が減ってきている
「いいのか!?後で止めるとかなしだからな!?」
「お、おう、そんな事言わないから大丈夫だ」
本の事となると食いつきいいなコイツ。思わず引いてしまった……いつもの浩太からは想像できない
「本当か?」
「本当だよ。明日好きな本を持って行け」
「わかった!ありがとな!遊!」
今、一瞬、いつもの浩太が出なかったか?気のせいか?やっぱり好きなものとか好きな事とかだったらテンションが上がるのかな?
「別にいいって。家には掃いて捨てる程あるから。ところで浩太」
「なんだよ」
「お前のこの一面を明美さんは知ってるのか?」
中学の頃からの付き合いである俺だって今日初めて知った一面だ。だが、俺より同じ時間を過ごす事が多い明美さんは知っていると思う。その辺はどうなんだ?
「いや、明美は知らないな。そもそも、俺の家で同棲してるが、今までは何て言うか、まぁ、何だ?俺の読む本はスポーツ雑誌、マンガ等で小説の類は部屋の奥に隠してたし、明美の前でメガネを掛ける事もなかったしな」
明美さんが知ってるかどうかを聞いたのにサラッととんでもない事を聞いたぞ。もうどこからツッコめばいいかわからない
「とりあえず同棲とか明美さんの呼び方とかにツッコミたいが、とりあえずだ。明美さんには隠し通せるものでもないだろ?それに、明美さんの事を呼び捨てで呼んだら本人喜ぶと思うぞ?」
香月と美月から直接聞いた事はない。だが、最初に飛ばされた未来じゃ本人達から呼び捨てで呼べって言ってきたくらいだ。好きな人から呼び捨てで呼ばれるのは嬉しい事だと思う
「機会があればやってみるさ。さて、寝ようぜ?」
時計がないので時間は確認できないが、多分、いい時間だと思う。それに、早めに寝ないと明日に関わる。同棲の話は機会があれば聞いてみよう
「だな。あんまり夜更かしして明日に影響が出ても困るしな」
俺と浩太はこの後、一言も言葉を発する事なく眠りについた。本来なら今日は敬と早川がなぜ人目を気にすることなくイチャついていたかを聞きたかったのだが、突然の停電により敬を呼び出しても家に辿り着けないと感じた俺は敬を呼ぶ事なく浩太と明美さん、遊華達と過ごした。本当なら俺の本当の母の事は黙っているつもりだったんだが、まさか浩太に気付かれているとは思わなかった
「本当の母か……」
嫌でも頭の中に過ぎってしまう。こんな霧がかかったような感じを俺は高2に進級するまで続くのか?手がかりがない。あるのは俺が施設から引き取られたという事のみ。俺を引き取ったのは親父だ。俺がいた施設の事の場所を聞くのなら親父に聞くのが1番いいだろう
「こればかりは遊華達や浩太と敬には言えないな」
遊華達にはもちろん、浩太と敬にも言うわけにはいかない。というか、俺の赤ん坊の頃の話を恋人や友人達に聞かれるのは記憶になくても恥ずかしい。1人で抱え込むとかそういうんじゃなくて、ただ単純に恥ずかしいだけだった
「親父にでも聞いて1人施設に向かおう」
俺は1人、時間を見つけて施設に行こうと決意する。遊華達や浩太と敬を連れて行く事もあるまい。
「さて、寝るか」
施設には俺1人で行く。そう決意した俺は明日に備えて早めに寝る事にした。
「朝か……さて、朝食でも作るか。っと先に電気の確認からだな」
忘れていたが、昨日から停電している為、電気が使えない状態だった。幸いなのが俺の住んでいる区域だけだって事と昨日の晩飯はカップ麺でガスコンロを使った為、電気系統の物は一切使ってないというところだけだった
「ブレーカーは弄ってないから1階のトイレの電気を試しに点けてみるか」
俺はまだ寝ている浩太を起こさないように移動する。別に疚しい事とか家から出て行くとか考えてないが、どことなくこれが永遠の別れみたいに感じるのはどうしてだろうか?
「アホな事考えてないで確認しに行こう」
バトル漫画じゃあるまいし、俺が彼女達を置いてどこかに行くなんてするわけがない。仮に失踪を決意しても遊華達にはどこに行くかを言う
「さて、電気は点くかな?」
1階のトイレに着いた俺は早速電気を点けてみる事にした。これで点いたなら冷蔵庫も動いている事になる
「おっ!電気が点いた!」
俺はトイレの電気が点いた事を確認し、再び電気を消してから地下に戻る。さて、電気を確認した事だし、朝飯でも作るか
「電気も回復したし、冷蔵庫も昨日は誰も開けてないから食材は腐ってないはず。念のために匂いを確認しておくか」
もうそろそろ秋になるとはいえ、暑さはまだ続いている。食材が腐ってないかという不安は残る。
「奇跡的に食材は大丈夫みたいだな」
冷蔵庫を空けなかったとはいえ、奇跡的に食材は全て無事だった。それにしても、1日で電気が復旧するなんてな。発電所の方々、ご苦労様です
「さて、今日は何にするかな?」
学校もあるし、軽いものでいいか。昨日の浩太の様子からして休むとか言わないだろうし。だが、念のために今日どうするか聞いておくか
「浩太、起きろ」
俺はいつもの調子で浩太を起こす。昨日のメガネを掛け、知的な文学少年の浩太が特別だっただけで起きたらいつもの浩太に戻っているはずだ
「何だよ?遊?起こすならもう少し静かに起こしてくれないか?」
「あ、ごめん。じゃなくて、え?クールな浩太は昨日の一夜限りのものじゃなかったのか!?」
「は?何だよ?それ?確かに普段の俺と大きく違うかもしれないけどよ、別に満月の夜限定とかじゃないぞ?」
「あ、はい」
本当の母親の事もだが、別の意味で俺の悩みが増えた。それは、俺の周囲の人間はどうしてこうも裏表の激しい奴が集るんだ?美月を筆頭に浩太、香月、あとは明美さんか。遊華や美優、由紀にも裏の顔が存在するんじゃないか?って心配になるレベルだ
「美月さんも表じゃ天然キャラ演じて裏ではクールキャラなんだから俺のギャップにも早く慣れてくれよな」
え?浩太は今、なんて言った?美月も表じゃ天然を演じて裏ではクールって言わなかったか?この事を知っているのは俺と遊華達と多分だが、羽月さんと一月さんだけだ。だが、浩太はどうして知っている?っていうか、いつから気づいてたの!?
「…………」
「どうしたんだ?遊?急に黙り込んで」
「いや、美月の事を言ったのは遊華達だけなのにどうして知っているのかなと思っただけだ」
「見てればわかる。美月さんの外面は作られたものだってな。まぁ、俺の場合は初めてあった時に同じ匂いがしたから気が付いただけだけどな。俺は表では熱血少年で美月さんは天然少女。で、裏では互いにクール。違うのは熱血系か天然系かだけだ」
なるほど、浩太も美月も裏ではクールっていうか、口数は少ない方だしな。なんて言うんだろう……あれだな。同類だから見ていたらわかるって事か
「俺はもう何もツッコまない。浩太と美月は演じているキャラは違えど裏では口数が少ないところは同じで同類だからって事でいいか?」
「どこか釈然としないが、そう捉えてもらって構わない」
俺1人で未来に飛ばされた時も遊華の発言にツッコミを入れる余裕がないくらいには動揺した。だが、俺は未来に飛ばされたからこそ遊華と早めに恋人同士になったし、香月と美月にも早めに会っておきたいと思った。そして、浩太と敬に対しても同じだ。それが、浩太の意外な一面を見る羽目になるとはな
今回は浩太と駄弁るだけの話でした
まさか浩太が美月の裏の顔に気付いているとは・・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました