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俺が夜の学校に忍び込む件について(後篇)

今回の話は前回の話の後篇です

この小説を書いてて時々この小説がミステリー小説なんじゃないか?と錯覚してしまいそうになりますが、ミステリー要素が皆無なんだよなぁ・・・・

では、どうぞ

 昼と夜の見え方とは不思議なものだと俺は思う。今回はいつもの例えはなしにして率直に言うが、昼の学校は多くの生徒達や教師で賑わっている。賑わっているという表現が正しいかどうかは置いといて、で、次は夜の学校だが、夜の学校はなんだか怖い雰囲気がある。ホラー映画とかだと夜の学校を舞台にしたものがあるが、それだけ夜の学校というのは怖い雰囲気なんだろうな


「で?侵入する順番は敬が最初で間に女性陣で次に俺、最後に浩太の順でいいか?」


 臆病な敬を最初にし、誰がどう見たって怖がっている女性陣を次に、俺が女性陣の次に侵入して恐怖を少しでも和らげておく。そして最後に誰かに見つかってもいい浩太を侵入させる


「ぼ、僕はそれでいいけど、望海ちゃん達はそれでいいの?」


 ここには女性が7人、男が3人いる。だが、認識を改めよう。ビビりきっている敬を俺達男性陣ではなく女性陣の側に入れよう。敬も女性陣と同じくらいビビッている


「あ、アタシはそれでいいよ」


 敬の確認にいち早く同意したのは早川だった。遊華達や明美さんはそれでいいのだろうか?


「わ、私もそれでいい」


 続いて同意したのは明美さんだったが、恐怖のあまり口調が香月みたいになっているぞ?紛らわしい事この上ない


「お、お兄ちゃんがすぐに来てくれるなら私達もそれでいいよ」


 食堂の窓から侵入するだけなのにどうやって遅れるというんだ?窓から侵入するのに手間取る奴は相当鈍くさい奴だけだ


「心配しなくてもすぐに入るから心配するな」


 俺は自分の彼女達に言い聞かせるようにすぐ入ると言った。会話だけ聞いているとSF映画とかの一コマのようにも思える。いつまでも話し込んでいて誰かに見つかったらマズイ。さっさと侵入してしまおう


「これで全員だな?浩太はちゃんといるか?」


 一応、浩太がいるかを確認する。浩太が言い出したんだから逃走する事はないとは思うが、念には念を入れて置いて損はない


「いるよ!って、この確認いるか!?」

「一応な。それに、女性陣と敬を見てみろ」


 俺は女性陣と敬の方へ顔を向け、浩太もそれに倣い顔を向ける。そこには───────────


「浩太……」

「遊……」

「「先行きが不安だな」」


 女性陣と敬が恐怖のあまりガタガタと震えてる光景があった。そして俺と浩太は声を揃えて先行きが不安だとつい言葉に出してしまった


「とりあえず、職員室を目指すか」

「だな」


 振るえている女性陣と敬をこのままにしておくわけにもいかず、だからといって食堂に留まり続けるわけにもいかない。職員室に行って用を済ませるか……この状況で特に恐怖を感じていない俺と浩太でこれからを決める


「お、お兄ちゃん……」


 怯えた様子の遊華が涙目で俺に訴えてくる。言葉に出していなくても遊華が言いたい事はわかる


「怖いなら俺の服の袖を掴んでいていいんだぞ?」

「うん!」


 遊華の顔には恐怖ではなく、安心の色が浮かんでいた。だが、遊華だけじゃ不公平だ。香月達も同じようにするか


「香月達も怖いなら袖を掴むなりしていいぞ?」

「「「「うん!」」」」


 と、いう事で俺は遊華達に、敬は早川に、浩太は明美さんに袖を掴まれるなり腕を組むなりで密着しながらの移動となった


「この学校に妙な噂なんて1つもないよな。浩太はどうして学校を今回の肝試しの会場にしたんだ?」


 俺達の学校に妙な噂があるだなんて話を聞いた事がない。にもかかわらず肝試しの会場に選んだ。何かあるのか?


「ああ、それは何となく。町はずれの廃校は敬と明美さん達に却下されたからな」


 俺なりに解釈するまでもない。浩太が当初予定していた場所がダメだったからこの学校を選んだ。それだけの話だった


「しかし、あれだな……こんな大勢で移動していて肝試しになるのか?」


 肝試しの定義はわからないが、こんな大勢で移動していて肝試しになるのか疑問に思う。


「さぁ?どれだけ肝っ玉が据わっているかさえ試せればいいわけだから肝試しにはなるだろ」


 浩太よ、特にこれといった噂がない場所で肝を試すもへったくれもないだろ


「なんでもいいが、女性陣と敬にはこれといった噂がなく、暗いだけの学校でも肝試しにはちょうどいいみたいだしいいか」


 俺と浩太にとっては暗いだけの学校だが、敬と女性陣は暗いだけの学校でも十分に怖いらしい


「ゆ、遊ちゃぁん……」


 恐怖で涙目になっている美月は俺の腕にこれでもかというくらいしがみ付いている。クールな美月はどうした?


「この学校におかしな噂なんてないし、俺にしがみ付いていれば大丈夫だから安心しろ」

「うん……」


 俺はこの状態で美月は家の中ではクールな時もあるんですよ。だなんて言われても信用できないだろうなぁ……スッゲー震えてるし


「ゆ、ゆう……こわい」

「俺が側にいるからな」

「うん……」


 香月も香月で恐怖で幼児化している。俺の彼女の年上組は本当に怖いのはダメみたいだが、未来じゃ美月とホラー映画を観た記憶があるんだが、その辺はどうなんだろうか?


「遊華達は怖くないか?」


 美月と香月が怖がっているが、遊華達はどうなんだ?入る前は恐怖で震えていたみたいだが?


「うん、入る前は怖かったけど今は平気だよ」

「私もです」

「私もだよ~」


 年下組の遊華達は入る前は怖かったが、入ってしまえばなんて事ない。表情からも恐怖の色は消えていた


「そうか。ならよかった」


 遊華達の恐怖が消えて何よりだが、俺には1つ疑問に思う事がある。そう、美月の事だ


「美月ってホラー映画とか平気なのにどうして夜の学校はダメなんだ?」


 俺が飛ばされた未来じゃ美月とホラー映画を2人きりで観た記憶があるが、その時は涙目になったりしてなかったと思う


「映画とかドラマとかの作りものはいいけど、こういう何が出てくるかわからないのはダメなんだよぉ~」


 なるほど、ホラー映画とかは最初から怖いものだって解っているから平気だけど、今回みたいないつ、どこで、何が出てくるかわからないから怖いというわけか。


「そうだったのか……」


 俺からしてみればお化け屋敷もホラー作品も夜の学校も似たようなものだと思うが……


「の、望海ちゃんは怖くない?」


 俺は自分の彼女達との会話が終わったので敬と浩太の会話の内容に耳を傾けてみた。こんな状況で何を話す?


「あ、アタシは平気だけど、敬は大丈夫?」

「う、うん、か、彼女の前でいつまでも怖がっていられないから」

「敬……」


 敬と早川の会話を聞いて思ったのは敬も意外と男らしいところがあるだなと思ったね。俺は。普段は大人しい敬と普段は派手でどこか高圧的な早川が初デートでお化け屋敷に入ったカップルみたいな会話をしているだなんて驚きもしたが。さて、次は浩太だが……


「明美さん、俺から離れるな」

「浩太君……」


 甘ーい!甘いよ!甘すぎるよ!浩太と明美さんってこんな甘い会話できるたの!?普段は浩太が明美さんの尻に敷かれるタイプなのに!?


「これは肝試しじゃなくて学校の暗がりを利用したイチャつき大会だと思う」


 もう肝試しじゃなくなっている。ただ3組のカップルがイチャつくために学校に侵入したとしか思えない


「遊、ちゃんとした肝試しだぞ?」


 俺はこれが肝試しとは認めないぞ。浩太


「ならいいが……ところで、職員室ってこんなに遠かったか?」


 昼と夜とじゃ景色もそうだが、距離感も違って感じる。昼は近いと感じている職員室も夜である現在は遠く感じる


「いや、そんなに遠くはないが、昼と夜とじゃ景色や距離感が違うからそう感じるだけなんじゃないのか?」


 浩太も俺と同意見だった。遠いと感じたのは俺の気のせいであり、決して怪談めいた何かの仕業ではないようだな


「遊、職員室に着いたよ?」


 敬が指差しているのは職員室のプレートだった。この学校はどうして1階にあるんだ?なんて疑問は置いておいて、職員室に着いたのでさっさと目的を果たして帰りたい


「お、本当だ。じゃあ、用事を済ませてさっさと帰るか」

「だな。問題は誰の机に置くかだ」


 俺達は肝試しをしている。そして、その肝試しを終わらせる条件は職員室で先生の机にグラビアアイドルのプロマイドを置く事だ。しかし、それを誰の机に置くかが問題だ


「1人1人プロマイドを受け取って各々が好きな先生の机に置く。それでいいだろ」


 1人の先生の机に置いても面白味がない。それぞれが違った先生の机に置くのがいい


「そうするか」


 俺達は浩太からプロマイドを受け取りそれぞれ選んだ先生の机に置く事になった


「はぁ、どうして俺が浩太のコレクションの処分に付き合わなきゃならんのやら……」


 職員室を散策中に1人愚痴る。集めていたのは浩太1人だ。じゃあ、捨てるのも浩太1人でやればいいと思うのは当然の事だろ


「この先生でいいか」


 俺は特に誰と決めたわけじゃない。前を通りかかった机の上にプロマイドを置く事にした


「ん?何だ?手紙か?」


 プロマイドを置くと決めた机の上には1通の手紙が置いてあった。俺はいけない事だとわかっていたが、なぜかその手紙を手に取ってしまった


「いけない事ってわかってはいるけど、やるなって言われたら余計にやりたくなるのが人間なんだよなぁ……」


 人間、やるなと言われたら余計にやりたくなる生き物だ。俺だって人間だし、読んだ後で戻しておけば問題ない


「ん?俺宛て?ここは職員室だぞ?宛てるならこの机の主宛てだろ?」


 俺が手に取った手紙には“遊へ”と書かれていた。この机の主に宛てた手紙なら置いてある事に納得できるが、俺に宛てた手紙が置いてある意味がわからない。ひょっとして昼間に届いて明日俺に渡すつもりだったとか?まぁ、俺宛てなら俺が見ても問題ないだろ


「俺に手紙を出すなら直接家に届ければいいのに……」


 今まではライトなしにここまでやって来た。そもそもが学校の敷地内が暗かったし、懐中電灯で照らして誰かに見つかったら厄介だ。よって俺達は懐中電灯を持ってきていない


「携帯の明かりくらいは許されるだろ」


 携帯のライトで手元を照らし、手紙を読む。どんな内容が書いてある事やら……


 “遊へ、高校2年に進学したら貴方を迎えに行きます。私と貴方の本当の妹と父と一緒に暮らしましょうね。本当の母”


「俺の本当の妹?」


 俺はどうしてここに俺に宛てた手紙があるのか、俺の本当の父と母とは誰なのかよりも俺の本当の妹という一文が気になった。俺の妹という事は女の子で俺よりも後に生まれてきたという事になる。妹の年齢がいくつ下なのかはわからないが、どうして俺は本当の親じゃなく、藤堂家に引き取られる事になった?どうして俺の本当の妹は両親と一緒に生活しているんだ?そして、どうして高2なんだ?わからない……


「遊亜、お前が言っていた高2で起こる一大イベントってこの事なのか?」


 答えが返ってこない質問をこの場にいない息子へしたが、答えは当然、返ってこない。


「遊!遅いぞ!」


 職員室から出た俺にかけられた言葉は浩太の文句だった。今回ばかりは返す余裕もない


「ああ、悪いな」


 俺は悪いと一言返すだけだった。最初は浩太のコレクションを処分する為と夏の思い出作りだったはずなのに、目的を果たそうとしたら本当の母を名乗る人物から俺宛ての手紙があった


「遊、どうしたの?」


 心配した香月が声を掛けてくれた。だが、今の俺は手紙の事を香月に話す気にはなれなかった。


「何でもない」


 俺は手紙の事を話すわけにいかず、誤魔化すしかないかった。俺の高1の夏休みは本当の母を名乗る人物からの手紙により謎を残したまま終わった。




今回は前回の話の後篇でした

どうして遊の母を名乗る人物からの手紙があったのか、どうして遊が高2になってから迎えに来るのかという部分は今は謎のままで。というか、これは肝試しにならないと思う

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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