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俺が夜の学校に忍び込む件について(前篇)

今回は遊達が夜の学校へ忍び込む話の前篇です

夜の学校というのはいくつになってもドキドキします

では、どうぞ

 そろそろ夏も終わり秋を迎える時がやって来た。同時に俺達の夏休みも終わりに近い事を知らせている事になるんだが……夏の風物詩と言えば何を浮かべる?夏祭り?海水浴?流しそうめんなんていうのもいいよな!まぁ、俺は今、浩太達に誘われて肝試しに来ているわけなんだが……


「浩太、本当に行くのか?」


 肝試しをするのはいいが、俺には不安しかない。森の中で決められた一定の場所まで行って物を持って戻ってくるとかそんな生易しいものじゃない。行くのは俺達が通っている学校の職員室に忍び込んで先生の机にグラビアアイドルのプロマイドを置いてくるという見つかったら説教じゃ済まない内容だったからだ


「当たり前だろ!それで明日の先生達の反応を楽しむんだからよ!」


 やる事が悪質過ぎる!別に先生達が気まずくなろうと知った事ではない。だが、見つかったら俺達──────特に高校生組は反省文を書かされるに違いない。遊華達は中学生組だからそんなにダメージはないだろうけど


「浩太、今からでもいいから肝試しの内容変えない?僕は先生に怒られる事はしたくないよ」


 敬の言う通りだ。今からならまだ内容は変えられる。ここは敬の言う通りに内容を変えた方がいいと思うぞ


「別にいいけどよぉ……敬と女性陣は町はずれの廃校に入る度胸があるか?」


 浩太が最初に提案したのは町はずれの廃校に入って戻ってくるというものだ。だが、それは女性陣によって却下されてしまった。それで仕方なく俺達が通う高校の職員室にグラビアアイドルのプロマイドを先生の机に置いてくるというものに変更になったんだが……


「い、いや、ないけど……」


 浩太は敬が怖いものが苦手と知っていてあえて廃校に入れるかどうかを聞いているんだろうが、敬の性格上それは無理だとわかりきっている


「だよなぁ……で、女性陣は?」


 厭らしい笑みを敬から女性陣に移す浩太。女性陣は女性陣で首が取れるんじゃないかというくらいの勢いで首を横に振っている


「はぁ、それくらいにしておけ浩太」


 敬も女性陣も見ていられなくなった俺は浩太を止める。学校に忍び込むとしてもどこから侵入するというんだ?


「ありがとう……遊」


 涙目の香月に礼を言われた。涙目の香月が可愛く見える俺は病気だろうな……でも仕方ない!誰だって自分の彼女が1番可愛く見えるだろ!?俺は何も間違っていない!


「別に、肝試しとはいえ怖いと思うところに無理して入る必要はないと思っただけだ。それに、廃校って事は誰も手入れをしてない場所だろ。そんなところに自分の彼女を入れるわけにもいかないしな」

「遊……」


 香月以外は恐怖のあまり声が出ないせいか、ウルウルとした目をして無言で俺を見つめる。


「おうおう、遊さんよぉ相変わらずお熱いねぇ~」


 今日の浩太はなぜか俺を冷やかしたり敬をおちょくったりするのが多い気がする。あれか?グラビアアイドルのプロマイドってもしかして……


「グラビアアイドルのプロマイドを明美さんに処分するように言われてヘソを曲げてるのはいいが、それを俺や敬にぶつけるな」


 当たっているかどうかは知らんが、当てずっぽうで適当に言ってみる。俺は親父に弄られた時にいつも当てずっぽうで女性関係の事を言っているが、それが本当だって事が結構多い


「…………」


 さっきまで威勢よく絡んできた浩太が急に静かになった。え?マジだったの?それはそれで何か悪い事をしたな……


「図星か……まぁ、いい。それで?学校に入るのはいいとして、どこから侵入するんだ?」


 浩太が俺や敬に八つ当たりしていたのがわかったところで学校への侵入経路を浩太に聞く。言い出したのはコイツだからきっと考えているに違いない


「───えてない」

「え?何?もう1回言ってくれ」

「考えてない……」


 コイツは真正で新生のアホじゃないだろうか?そう言うのは言い出す前に考えておくべきだろ?


「じゃ、じゃあ、どうするの?」


 オドオドした様子の敬が浩太に尋ねる。俺に尋ねられても困るからこの場合は浩太に尋ねるのが正解なんだがな!


「遊ぅ~」


 何も考えてなかった浩太は俺に話を振ってきた。知らん!知らんぞ俺は!そもそも、そういう事は侵入する前に考えておけよ!


「俺は知らん!自分で考えろ!」

「そんなぁ~、ゆ~う~」


 当たり前だ。どうやって侵入するかは言い出す前に考えておけよ……


「お兄ちゃん……何とかならないかな?」

「ならないな」


 遊華、策がないわけじゃないが、ここで浩太を助けたら本人の為にならない。今回ばかりは見捨てる事を許してくれ


「ゆ~う~」


 涙目で俺を見るな!浩太の涙目なら明美さんにでも向けていろ。俺は知らん!知らんぞ!


「遊、夜の学校に忍び込むのはいけない事だけど、私と明美にとっては高校生活最後の思い出にしたい……何とかならないかな?」


 香月……それに、明美さん……こんな碌でもない事を高校生活最後の思い出にしたいんですかね……だが、まぁ、彼女のお願いだから仕方ないか


「はぁ~、仕方ない。今回は特別だぞ?」

「「「「遊!」」」」

「お兄ちゃん!」

「遊さん!」

「遊ちゃん!」

「「遊くん!」」


 全員が俺をキラキラした目で見つめている。学校へ侵入する事は本来ならいけない事だが、みんな夜のテンションで頭のネジが何本か緩んでいるみたいだな……


「それで?どうやって侵入するのかな?お兄ちゃん」

「遊ちゃん、物騒なやり方じゃないよね?」


 遊華には侵入経路を聞かれ、美月には物騒なやり方を止められてしまった。だが、今回は物騒なやり方はしないし、ちゃんと侵入経路も考えてある


「物騒なやり方じゃないし、ちゃんと安全に侵入できるから安心しろ」

「「ならよし!」」


 遊華と美月は満足といった顔をしている。この際だから学校への侵入についてはスル―しておくか……


「じゃあ、みんな俺について来てくれ」


 俺はとある場所に向かう。あそこなら確実で安全に侵入できる確証がある


「遊さん、私達はどこへ向かっているんですか?」


 敷地内を歩いている途中で香月が尋ねてきた。そりゃ何も聞かされずについて来いって言われてそれについて来ているだけじゃ気になるか


「食堂だよ」

「しょ、食堂ですか?」

「ああ、食堂なら確実で安全に侵入できるからな」


 そう、食堂なら確実で安全に侵入できる。あそこなら冗談抜きで確実で安全だからこの中にいる誰かがケガをする心配はない


「そ、そうなんですか……ところで遊さん」

「ん?何だ?」

「どうして食堂からなら確実で安全に侵入できる事を知っているんですか?」


 由紀の質問はこの場にいる誰もが思い浮かぶものだろうな。俺も逆の立場ならどうしてと思う


「前に忘れ物をして侵入したからだ」


 迷わず俺は自分が過去に同じ事をしたという事を話す。別に隠す事じゃないからな


「そうだったんですか。道理で」


 納得した様子の由紀。納得してもらえて何よりだ


「お兄ちゃん!私その話初耳なんだけど!」


 納得した由紀とは反対に納得してない様子の遊華。どこが納得できないんだ?俺だって忘れものくらいする。場合によっては夜の学校に忍び込んだりもする


「そりゃ今初めて話したからな。それより、遊華は納得してないようだが?」

「そりゃそうだよ!」


 何が不満なんだ?俺が忘れ物した事か?それとも今まで言わなかったことか?


「何が不満なんだ?」

「お兄ちゃんが夜の学校に忍び込むときに私を誘わなかったことだよ!」


 俺が忘れ物した事でも今まで言わなかったことでもなく、自分が誘われなかったことが不満だったらしい遊華だが、遊華さん?俺達が碌に会話すらしてなかったことを忘れてませんか?


「碌に会話をしていない状態の俺から忘れ物を取りに行きたいからついて来てくれって誘われたら遊華はついて来てくれたのか?」


 俺は遊華に過去の俺達がどういう状態にあったかを突きつけた。会話もしてない兄から忘れ物を取りに行くからついて来てくれと言われたら誰だって断る


「もちろん!ついて行くよ!そして夜の闇に紛れて……グヘへ」


 夜の闇に紛れて俺に何をする気だ?しかも、女子がしちゃいけない笑い方してるし……1番の謎はどうして浩太も敬も遊華の笑い方や言葉にツッコミを入れないんだ?で、香月達は遊華の意見に同意と言わんばかりに頷いてるし


「香月達はこの際いい。だが、浩太と敬はどうしてツッコミを入れないんだ?明美さんと早川は2人で盛り上がってるし……」


 この状況は俺1人では対処しきれない!誰か!俺の他にツッコミをもう1人連れてこい!


「俺は明美さんで慣れた」

「僕も望海ちゃんで慣れた」

「そうか、慣れたなら仕方ないな」


 慣れって恐ろしいもので、最初は気になっていたものでも気にならなくなってくる。そして、次第にそれが当たり前の事になってくるのは本当に恐ろしい


「遊ちゃん、まだつかないのかな?」


 歩くのに飽きた美月が俺の隣りに来て聞いてくる。あれ?もうついてもいい頃なんだけどな……昼と夜じゃ距離感が違ってくるのか?


「もうすぐ着く」

「ならいいけど、夜の学校ってなんだか怖くて……」

「じゃあ、俺から離れるな」

「うん」


 美月は満面の笑みを浮かべていた。その後、遊華達も美月と同じ事を言って来たので俺は美月と同じ事を言い返した。同じ事を言い返しているだけなのに遊華達は満足したように満面の笑みを浮かべていた。明美さんと早川は浩太と敬に同じ事を言って浩太と敬は俺と同じように返していた


「さて、着いたぞ。誰から最初に入るんだ?」


 食堂の窓の前について最初に決める事は誰から校内に侵入するかだ。さすがに女性陣を最初に入れるわけにもいかないから俺達男性陣から最初だと思う。そして、女性陣を最後にするわけにもいかないから結局は俺達男性陣が最後に侵入する事になると思う


「ここは遊が最初だろ?」


 浩太は俺を最初に入る役に指名してきた。別に俺としては構わないが……



「俺は別に構わないが、敬はどうする?」


 俺は最初でもいいが、問題は敬だ。敬は怖いのは苦手だからなぁ……


「ぼ、僕は最後じゃなきゃいいよ」

「そうか。で、浩太は?」


 敬が1番最後を嫌がる以上は浩太が1番最後になる事は確定事項だ。まぁ、言いだしっぺだから侵入する順番に文句を言える立場じゃないんだけどな。肝試しの前に順番を決めておくとしますか……


今回は遊達が夜の学校に忍び込む話の前篇でした

最近は新作の候補を思いついては納得がいかないんじゃなくてツッコミを自分に入れる毎日

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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