俺が風邪を引いた件ついて
今回は遊が風邪を引く話です
遊の願望が叶ってある意味ではラッキーかもしれないです
では、どうぞ
昨日遊華に隠し部屋の存在を話し、今朝は香月達にも同じ話をしたが、遊華と同じ質問あった。遊華にも言ったが、隠し部屋がある理由を俺に聞かずに親父に聞いてほしいんだが……親父が隠し部屋を作った理由は何となくは理解できる。遊華達同様に母さんもヤンデレだからなぁ……逃げ出したくなる気持ちも理解できなくもないが……ヤンデレの愛情くらい受け止めてくれよ
「お兄ちゃん、何考えてるか大体わかるけど、私達もいずれはお父さんとお母さんみたいになるんだよ?」
遊華、飛ばされた未来じゃ子供がいたから結婚する事は間違いないんだろうけど親父と母さんみたいになるっていうのはお断りなんだけど
「俺は親父達と同じになるのは嫌だぞ?」
「え?お兄ちゃん嫌なの?」
「当たり前だ。嫌に決まってるだろ」
俺は親父達と同じは絶対に嫌だ。自分の妻をからかう為にキャバクラの名刺をわざと持っていたり、他の女の影をチラつかせたりするなんて絶対に嫌だ
「遊……嫌なの?」
「何が?」
香月にしては珍しく容量を得ないな……何が嫌なのかが知らないが、親父達と同じなのはものすっごく嫌だ
「私達と結婚するの嫌なの?」
「それは嫌じゃない」
俺が嫌なのは親父達────親父と同じになるのが嫌なだけで結婚自体は嫌じゃない
「そう、お兄ちゃんは私達と結婚するのは嫌じゃないんだ……」
遊華達の思考回路は不思議なものだ。親父達と同じになるのが嫌=俺が遊華達と結婚するのが嫌になるのか教えてほしい
「遊ちゃん、そんなに知りたいなら教えてあげようか?」
遊華と香月から一旦離れた俺の元へ美月がやって来た。遊華達には朝飯を作ってくると言って離れたが、美月がやってくるとは思わなかった
「何を?」
「私達の思考回路」
口に出してないはずなんだが、遊華といい、美月といい、どうして俺の考えている事がわかるんだ?
「遊華もそうだが、どうして俺の考えている事がわかるんだ?」
「知りたい?」
「そうだな、是非とも教えてほしい」
ヤンデレの思考回路がどんなのか是非とも知ってみたい。日頃はヤンデレ達の唐突な行動に戸惑うばかりだし、この機会にヤンデレの考えの一握りを知るのも悪くない
「遊ちゃんのお願いだから特別に教えちゃうけど、遊斗さんと華さんは私達にとって理想の夫婦だからね~、私達もあんな夫婦になりたいな~って思ってるんだよ。それを遊ちゃんが嫌がってるとなると遊ちゃんは私達と結婚するの嫌なのかな?って思っちゃうよ」
親父と母さんを理想の夫婦にして真似したら俺は飲み屋の女の名刺を常に持ち歩き、女の影を常にチラつかせなければならないんだが……
「結婚する事自体は嫌じゃないんだが、親父達を理想の夫婦にするのは止めといた方がいい」
「どうして?遊斗さんと華さんって理想の夫婦だと思うけど?」
「美月は俺が飲み屋の女の名刺や女の影をチラつかせてたら嫌じゃないか?」
「遊、浮気したら……殺すわよ?」
急にクールになるのは止めてほしいんですけど?しかも、俺が浮気する前提で話を進めないで
「5人も恋人がいて浮気するってのはなかなかにチャレンジャーだと思うんだけど?」
俺は女性に対してそんなに貪欲じゃないし、器用でもない。5人も恋人がいて浮気できる度胸もない
「それはそうだけど、遊って誰にでも優しいじゃない。私達はそれが心配なのよ?」
あ、クールな美月さんはまだいらしたんですね……
「別に俺は誰にでも優しくしているわけじゃない。前に言ったかどうか忘れたが、俺は神様でも聖徳太子でもないんだ。周囲の意見を全部聞き入れてそれを実行する事なんて俺にはできやしないさ」
「そう……ならいいわ」
納得したようだが、俺にはまだ美月に用がある。結婚するしない以前に美月はクールキャラを表に出さないのか?
「美月」
「何かしら?」
「そのキャラをみんなの前で出さないのか?」
最初に飛ばされた未来でも思ったが、クールキャラを表に出してもいいと思うが……
「バカね、遊の前だから本当の私でいられるの。他の人の前では適当に天然でいて適当にやり過ごすの」
「他人ならそれでいいかもしれないが遊華達は……」
旅行中に飛ばされた未来では美月との間に子供がいた。言うまでもなく10年後には結婚しているはずだ。
「遊華達には近いうちに話すわ。もっとも、香月は気づいてると思うけどね」
「そりゃ姉妹だし、気づいていてもおかしくないとは思うけどよ」
「そうじゃないわ。私が香月の子供染みた一面に気づいているように香月も私のこの一面には確実に気づいてる。そういう事を言いたいの」
よくわからないが、姉妹なら見てなくても言われなくても互いの事は理解してるって事か?
「美月と香月がいいなら俺は何も言わない」
本人達の間で解決している事を第三者がどうこう言う問題じゃない。まぁ、香月とはそれでいいかもしれないが、遊華達とはどうしたものか……
「そう。香月とはそれでいいかもしれないけど、遊華達とはそうもいかないかもしれないわね」
「遊華達には俺からそれとなく聞いておく。だからあまり深く考えるな」
「わかったわ」
美月との話を終え、俺はキッチンに、美月は遊華達の元へ行った。
「あ、朝飯のリクエスト聞いてなかった」
白米と味噌汁と漬物と……納豆があればいいか。余程の事がない限り納豆が嫌いな奴はいないだろう。多分
「たまには彼女の手料理とか食ってみたいよなぁ……」
初めて飛ばされた未来では炊事家事は俺の担当だった。あの時は仕事なんてしてなかったから当たり前だったが、現在は違う。遊華達と付き合ってるんだ。こういう願望が出てきてもおかしくない
「そんな願望を抱いたところで本人達に言ったら催促しているみたいでちょっと……」
俺が風邪でも引いたら遊華達の誰かが料理作ってくれるんだろうけど、都合よく風邪を引くだなんて事あるわけないか
「ぶぇぇっくしょん!!」
風邪引きたいと思ってたところに盛大なくしゃみ。心なしか寒気もする。念のために体温も計っておくか
「お兄ちゃん!?」
やけに慌てた様子の遊華が入ってきた。くしゃみくらいで大げさだな……
「お、おう、どうした?」
「どうした?はお兄ちゃんの方でしょ!?何!?今の大きなくしゃみ?」
「いや、ちょっと寒気がしてな。遊華が気にする事は───────」
ない。そう言おうとした瞬間、意識が遠のいた。どうやら風邪引かないかな?って思ってたら本当に風邪を引いたらしい
「お兄ちゃん!?ねぇ!お兄ちゃん!!しっかりして!!」
薄れゆく意識の中で泣きそうになった遊華の顔が視界に入る。遊華に心配掛けないようにしてたんだけどな……やっぱ俺ダメだな。自分の体調管理すらできないとは……
「あれ……?ここは……?」
気が付けば俺はベッドにいた。どうやら俺が倒れた後で誰かがここまで運んできたらしいな……
「あ、気が付きましたか?遊さん?」
俺が目を覚ますまで診ていてくれたであろう由紀が声を掛けてきた。遊華達はどうしたんだろう?
「あ、ああ……由紀がずっと俺の事を診ていてくれたのか?」
「いえ、遊華達と交代ですよ。私の番が回ってきてすぐに目を覚ましたのは内心驚いてますが」
「そうか……ありがとな。だが、もう大丈夫だ」
このまま寝ているわけにもいかないので身体を起こそうとした。しかし────────
「病人は寝ていてください!」
由紀に止められてしまった。寒気はするし、身体は怠いが、動けないわけじゃないぞ?だが、無理にでも身体を動かそうものなら由紀に怒られそうだからここは大人しくしておくか
「はい」
情けない事に年下の彼女に威圧されて大人しく従ってしまう俺。こういうのを尻に敷かれるっていうんだっけ?
「私は遊華達に遊さんが起きた事を知らせてきますが、大人しく寝ていてくださいね?」
「はい、わかりました」
さっきの威圧に恐れてしまい、敬語になってしまった……こういう時に弱いな俺
「私は行きますけど、本当に大人しくしていてくださいね?」
「わかってるって」
由紀は俺に念押しして部屋を出た。俺の体調関係において俺って信用ないのか?この時代で体調を崩すのは初めてだし、由紀と美優の前では寝込んだりした事ないのに?あれかな?未来で美優のストーカーを退治した時の話が糸を引いてるのか?
「たった数分でも1人になると暇だな」
普段、何でもない時は数分の間1人になっても何も感じないのに風邪の時の1人きりの時間というのは長く感じるし、暇になるのは不思議だ。やる事がないから暇に感じたり、時間が長く感じたりするのかな?
「お兄ちゃん!!」
「遊!!」
「遊ちゃん!!」
「遊くん!!」
遊華達が一斉に部屋に入ってきた。俺は病人なわけだからもう少し静かにしていてほしいんだが……
「声のボリュームを落としてくれ……頭に響く」
普段は何も感じない遊華達の声が今はやたらと頭に響く。こりゃ、風邪引いたな。
「あ、ごめん。でも、お兄ちゃんがいきなり倒れたからビックリしたよ」
「ごめんな、遊華」
遊華は俺が倒れた時にその場にいたからビックリするのも無理はない。初めて飛ばされた未来でも倒れたのは遊華の前だった。俺が体調を崩す時には毎回遊華が側にいる気がするが、偶然だよな?
「遊、風邪引いたんだよね?」
「多分な。まだ熱も測ってないからよくわからないが」
倒れて何もしないのはおかしいだろ?とは思うが、俺が倒れた原因が単なる風邪なのか、それとも別の何かなのかはわからない
「はい、遊ちゃん。体温計」
「ありがとな、美月」
美月から体温計を受け取り、それを脇に挟む。これで平熱だったら俺は風邪を引いたわけではなく寝不足とかで倒れた事になる
「おっ、鳴ったな」
ピピピという電子音がして俺は体温計を脇から出す。さて、体温は何度かな?平熱であってほしいが……
「遊くん、見せて?」
「ああ、ほら」
俺は自分で見る前に美優に体温計を渡した。自分で見てもよかったんだけど、さっきの由紀の反応からして遊華達は俺の体調関係では俺の言う事なんて信用しないだろう
「げっ!遊くん!37.8度もあるよ!」
「完全に風邪だな」
美優に言われた体温から俺は風邪を引いたという事が確定した。彼女の手料理を食べたいとは思ったが、それが病人食になるとは……できれば普通の飯がよかった……
今回は遊が風邪を引く話でした
彼女の手料理を食べたいと思ったその日に風邪を引いた遊はある意味ではラッキーかもしれないです
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました