海に行く日取りが決まった件について
今回は海に行く日取りが決まる話です
後半は久々のヤンデレ遊華が登場します
では、どうぞ
惚れた弱みって恐ろしいものだ。例えば、鬼嫁がいたとしよう。いつもは怖い鬼嫁でも不意に見せる笑顔とか、怖いものを見た時の泣き顔が可愛いって思うのは惚れた弱みだと思う。だが、俺の場合は違うし、彼女達が鬼嫁だなんて言うつもりはない。彼女達はヤンデレだからな!何で俺がこんな話をしているかと言うとだな……
「お兄ちゃん、海に行っても他の女を見ないでね?」
「遊は私達を捨てるなんて事をするわけないよね?」
「遊ちゃんは他の女のところに行くなんてしないよね?」
「遊さん、私は遊さんの為だったら何だってします。だから、他の女のところになんて行かないでくださいね?」
「遊君は他の女のところになんて行かないよね?ずっと私達が側にいるから他の女になんか興味ないよね?」
現在、遊華達はヤンデレ全開で俺に迫ってきている。大体、俺がそんなにモテるわけがないだろ?学校でも女子とは縁がないし、喋る相手は浩太と敬とまぁ、早川くらいでそれ以外いない。する気はないが、浮気しようにも出会いとご縁がない
「5人も恋人がいるのにこれ以上何を求めるんだよ?」
恋人が5人もいるなんてありえない状況でこれ以上恋人を増やす気はサラサラない。それに、これ以上増やすといろいろと大変だ。増やす気もないが
「遊ちゃんは年上、年下を恋人にしているけどさ、同じ年の恋人はいないでしょ?」
「言われてみればそうだけど、俺は遊華達がいるから恋人はもういらない」
「お兄ちゃん……」
「遊……」
「遊さん……」
「遊君……」
いや、感動しているところ悪いけど、これ以上増えてたら俺1人だけじゃ身が持たないってだけなんだけどね?
「感動しているところ悪いけど、俺は遊華達以外にいらないだけだからな?」
遊華達以外にいらないのは本当だが、身が持たないというところはあえて隠した。身が持たないなんて言ったら何をされたものかわからない
「お兄ちゃん、海に行く日なんだけどさ」
「ああ、日取りが決まったか?」
海に行くって電話を母さんにしたのがつい1時間前だ。で、戻ってから遊華達は女子会をしていた。ここまではいいが、海に行く日取りと泊まりか日帰りかが決まってなかった
「うん、今週の週末に泊りがけで行こうと思うんだけど、お兄ちゃん予定ある?」
「これと言った予定はないな、大丈夫だぞ。母さんには俺から電話しておくから」
「その電話なんだけど、ここでして。お兄ちゃんがお母さんに何て言ってるか気になるし」
遊華が母さんにこの場で電話しろと言い出した。別に困る事はないが、どうしてこの場で電話しろだなんて言い出したんだ?
「別に構わないが、どうしたんだ?ここで電話しろだなんて」
「遊華ちゃんは遊が華さんとどんな話をするか気になるんだよ。当然、私達もね」
「聞かれて困る事はないからいいが、静かにしてろよ?」
「「「「「うん!」」」」」
遊華達の意見がぴったり一致したところで俺は携帯を取り出す。珍しい事もあるもんだな。俺が電話するところが気になるなんて
「あ、通話が聞こえるようにスピーカーにしてね?お兄ちゃん」
遊華の頼みでスピーカーで母さんに電話を掛ける。俺には疚しい事がないが、遊華達はどう思っているかわからない。ひょっとしたら遊華達は俺が母親を口説く奴だと思っているかもしれない
『もしもし、どうしたの?遊?あ、遊華達と喧嘩でもした?それとも遊華達の誰かと別れ話にでもなった?』
「「「「「…………」」」」」
「母さん、それさっきもやったよね?別に喧嘩してないし、別れ話にもなっていない。海に日取りが決まったから電話したんだよ」
『あら、そうだったの?で、いつになったの?』
「今週末で泊りがけ」
『今週末かぁ……ちょっと難しいかなぁ……』
母さんは今週末と聞くと渋った。まぁ、仕事してる親父もいる事だし仕方ないっちゃ仕方ない。手はあるけど
「そうか、難しいか。まぁ、そうだよな。いきなり今週末の予定を空けろって言われても難しいよな……せっかく父さんを誘惑するチャンスだったのに」
母さんがいくら渋っても親父の誘惑をエサにすれば簡単に釣れる。自分の母親だから性格くらい簡単にわかる。無論、意中の異性を誘惑するのに手段を選ばない事もな
『誘惑……』
ほら、簡単に釣れた。さすが遊華の母親だ。親子揃って単純だなぁ……遊華本人には言えないけど
「まぁ、遊華達は俺を水着で誘惑するとか言ってたけど、母さんは無理だよなぁ……仕事あるし」
遊華達が俺を水着で誘惑するなんて言うのは口から出任せだが、母さんを釣るのには十分だ。しかし────
「「「「「ゆ、誘惑……」」」」」
俺が言った誘惑という言葉に反応した遊華達。できれば反応してほしくなかったぞ俺は
『ん?遊華達の声が聞こえたけど近くにいるの?』
「いや、いないけど?」
咄嗟に嘘を吐いたが、遊華達が聞いてるのを感づかれたか?それとも遊華達の声が聞こえてたか?
『そう?遊華達が近くにいる気配を感じたんだけど?』
何?気配って?それって世間の母親はみんな持ってるのか?それとも母さんだけに存在するスキルなのか?
「き、気のせいだろ?第一に俺が遊華達の前で母さんに電話するわけないだろ?冷やかされるの目に見えてるんだから」
『それもそうね。ごめんなさい、勘違いしてたわ。で、海に行く日取りなんだけど』
「ああ、今週の週末……正確には金曜日から日曜日なんだが、大丈夫か?」
『ええ、なんとかするわ。遊斗を誘惑するためにね』
もはや母さんは海に行く事よりも親父を誘惑する事の方が重要になってないか?
「そ、そうか……とにかく、海に行くのは金曜から日曜で泊りがけな」
『わかったわ。遊斗にも伝えておくから』
「よ、よろしく……」
完璧に目的が海に行く事じゃなく、親父を誘惑する事になっているが、そこはもうツッコまない。
「電話終わったぞ」
電話を切り、目の前の遊華達に目を向ける。すると────
「お兄ちゃん!水着楽しみにしててね!」
「遊、私のも楽しみにしていてね」
「遊ちゃん、私の水着もね」
「私の水着姿でメロメロにしますから覚悟してくださいね!遊さん!」
「遊君!私、頑張るね!」
水着ぐらいで何をそんなに張り切っているかは知らんけど、俺は遊華達以外の女には興味がないからどんな水着でも構わないが、当の遊華達はそうじゃないらしい
「俺は遊華達がどんな水着でも喜ぶぞ」
どんな水着でも俺は遊華達の魅力には勝てない。それだけは伝えておく事にしよう
「お兄ちゃん……」
「遊……」
「遊ちゃん……」
「遊さん……」
「遊君……」
顔を真っ赤にして俺の名前を呟く遊華達だが、ヤンデレでもこういう光景を見てると可愛いと思う。鬼嫁の不意に見せる笑顔とか泣き顔とか見て可愛いと思うのと同じだ。
「恋は盲目とはよく言ったものだな……未来に行く前は遊華に微塵も興味なかったのに」
恋って人を変えるって言うけど本当に恋って人を変えるなぁ……未来で遊華がヤンデレになるのもわかる気がする。って遊華のヤンデレは母親譲りか
「へぇ~、お兄ちゃんは未来に行く前は私に微塵も興味なかったんだ~」
「あ、いや、そ、そんな事はないぞ?ちゃ、ちゃんと興味あったぞ?」
この部屋に遊華がいる事を忘れてた……ついうっかり遊華に微塵も興味なかったって言っちゃった
「遊、今のはさすがに酷いよ」
「そうだね~、さすがに過去の話とはいえ微塵も興味ないなんて酷すぎるね~」
マズイ、香月と美月は遊華側に回ってしまった……残る希望は美優と由紀だけだが……
「遊さん、今のは酷過ぎると思います」
「そうですよ!遊君!好きな人に微塵も興味ないとか言われたら女の子は傷つきます!」
美優と由紀も遊華側か。まぁ、当たり前だと思う。俺の味方がいないのも無理はないか……好きな人に微塵も興味ないとか言われたら傷つくよな
「お兄ちゃんが未来に行く前から好きだったのに……お兄ちゃんは私に興味なかったんだね?そりゃ私は無愛想だったしお兄ちゃんに冷たい態度取ってきたから興味なくてもしょうがないけどさ、でも私はお兄ちゃんが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらなかったのにお兄ちゃんは私の事なんて意識してなかったんだね」
遊華の目に光はない。遊華の目に光がないのは俺が悪いから仕方ないが、遊華の周りにいる香月達の目にも光がないのはどうしてだ?
「い、いや、俺だって遊華の事を意識してたぞ?」
遊華の事を意識していたのは確かだ。ただし、無愛想な妹くらいにしか思ってなかったが……
「嘘だ!!お兄ちゃんは私の事を意識してなかったんだ!!ねぇ?どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてお兄ちゃんは私を意識してなかったの?」
さっきは好きのオンパレードで今はどうしてのオンパレードだ。自分で蒔いた種とはいえ様々な意味で怖い
「い、いや、普通の兄は妹を恋愛対象として意識しないぞ?」
普通の兄は妹を恋愛対象としては意識しない。意識しても精々妹が最近生意気だなくらいだ。下手したら無視し合ってるところもあるぞ?
「私はお兄ちゃんを恋愛対象として意識してたよ?それこそ小さい頃からずっとお兄ちゃんだけを見てきたし見ていた。それでもお兄ちゃんは私に興味なかった?私ってそんなに魅力ない?ねぇ、答えて!答えて!!」
目に光がない遊華は俺に詰め寄ってきた。コイツは本当に俺が好きなんだと実感させられる。未来でも遊華は俺が自分の身を危険に晒したりすると俺を拘束してまで説教する奴だからな。こうなるのは目に見えてるし、目に見えていた。全面的に俺が悪いな
「遊華、俺の不用意な発言で傷つけたな。ごめんな。だが、過去の俺が遊華に興味なかったとしても今の俺は遊華の恋人だし、遊華を愛してる。だから何も不安を感じる事なんてない」
「本当?本当にお兄ちゃんは私の事愛してる?」
「もちろんだ」
俺は遊華を抱きしめて軽くキスをした。今回は全面的に俺が悪いし、何をされても文句は言えない。だが、遊華の要求は自分を甘やかすだけで止まった。何でも“恋人になる前の私は無愛想だったし嫌われていてもおかしくなかった”との事だった。
今回は海に行く日取りが決まりました
後半はヤンデレ遊華が久々に出てきました。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました