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【本当の母襲来編未来D渡航3】俺が洋服で困る件について

この作品の投稿は新年一発目です

 人間の回復力というのは時として目を見張るものがある。特に絶対に治らないだろうというケガをした時なんかそうだ。時間は掛かるものの、完治した時はそりゃもう驚く。風邪も同じだ。高熱が出た次の日に完治してるとビックリする。何が言いたいのかと言うとだ、昨日までの風邪がすっかり良くなり、買い物に行けるまで回復した。したのだが……


「今着てる服しかないんだよなぁ……」


 服が今着てるスエットとTシャツしかない。それに気が付いたのは今朝だった。リビングのソファーでガックリと項垂れる俺。遊華達に買ってきてもらうという選択肢はもちろんあるし、頼めば彼女達だって嫌だとは言わないだろうとは思う。ただ、おつかいを頼めば今度は別の問題が出てくる。そう、誰がおつかいをし、誰がこの家に残るかだ。この世界線の俺は生きてるらしいから1度離れたら2度と会えないというわけではない。アイツらの性格を考えると絶対全員が残ると言って聞かないのは目に見えている。ハッキリ言って俺も同行するのが最善策なのだが、いかんせんスエットとTシャツでショッピングモールに行くのは抵抗しかない


「俺が昔着ていた服なんて残ってるわけないよなぁ……」


 高校の時の制服はワンチャン思い出の品として今でも保管してる人はいる。だが、私服の類が残っているかと聞かれると必ずしも残ってるとは言い切れない。当たり前だ。大人になったら高校生の時に着てた服なんて捨てたり、売ったりすると思う。この家に俺の身体に合う服が残っていれば買い出しに行く必要も買い出し班を誰にしようか悩むこともない。あればな


「はぁ……遊華達が帰って来てから聞いてみっか」


 幸か不幸か遊華達は現在、仕事で家を空けている。残っているのは俺1人。病人を家に1人で残すなと言う奴もいるだろう。幼い子供ならともかく、俺は一応、高校生。ある程度は1人でできる。保護者が必要な年齢ではないのだが……必要なものが全てない今となっては若干不安がある。起きた時にはもう遊華達は仕事に行った後で枕元に『私達はお仕事に行ってきます。オトナシクシテテネ』と不安と圧しかない書置きがあった。このオトナシクが何を意味するかは気にしないでおくとして、着る物がないというのは困る


「まさか洋服でここまで困ることになろうとは……」


 いつも未来に飛ばされた時は自分が何年先の未来にいるか分からず、住む場所をどうしようかと頭を抱えたが、まさか洋服で悩む日が来ることになろうとは……1つの勉強だと思って割り切るべきか……不幸だと嘆くべきか……未来に飛ばされること自体が非現実的過ぎてどこからツッコめばいいか分からん


「はぁ……今度は誰が俺をここに呼んだんだか……」


 遊華達曰くこの未来での俺は社長をやってるらしい。気軽に会えるかは分からんが、電話を使えばいくらでも声を聴ける。死別したわけじゃあるまい、高校生の俺をここに呼ぶ意味はないに等しいと思う


「この時代で俺に会いたい奴ねぇ……」


 天井を見上げ、ない頭で考える。この時代の俺が生きている以上、会おうと思えばいくらでも会える。さすがにいつでもは無理だろうけど、スケジュールを調整すれば何とかなりそうなものだ。遊華達の話が本当ならな


「一体誰なんだ……」


 今気にすべくはこの時代が何年後の未来で誰が呼んだかだ。遊亜達の話をすると俺が捕食されかねん。遊華達の話が真実と仮定した上で誰がこの未来に呼んだのか考えると……めんどくさい


「考えても仕方ないか……」


 俺は考えるのを止め、テレビを点けた。情報がないのに考えを巡らせても意味はない。ニュースでも見て何年後の未来なのかだけでも把握しておいた方がマシだ







 テレビを点けてからしばらく。俺はとあることに気が付いた。やってない家もあるからあって当たり前とは言わんが、この時代の俺が本当に社長をやってるならあってもいいようなものがない。それは……


「新聞が見当たらない……」


 新聞だ。新聞をとってない家もあるから絶対になきゃダメだとは言わんし、社長の家だからと言ってあるとは限らない。しかし、社長業ともなれば世界の動きは把握しておきたいはず。特に株価の動きとかな。元の時代でも電子新聞があったから紙のものがなくても違和感はないのだが、社長の家=新聞があるという考えは些か安直な気もしなくはないが……何かモヤモヤする


「何年後の未来に来たか分かっただけでも収穫モンか……」


 ニュース番組のキャスターが“2027年5月2日のニュースをお伝えします”と言っていた。俺がいた時代は2017年。ここは10年後の未来ってわけだ。ここから導き出される答えは遊華達の年齢は20代。これ以上は何も言うまい……というか、考えたくない。身のために


「10年後の未来で前にいた未来と違うのは季節だけか……温度差で風邪引きそう……」


 前にいた未来じゃ夏。この未来じゃ春。温度差で風邪引きそうだ。夏は場所によるが、大抵は一日中暑い。対して春は日中は温かく夜は寒い。普通なら昼夜の温度差だけ気にしてればいいのだが、俺は未来に飛ばされてきた人間。温度差の他に10年分の反動を気にしなきゃならんのだ。風邪引きやすい季節で何かしらの反動が来たら目も当てられない


「最初は全身に激痛、ここに来る前の未来じゃ風邪にも似た気怠さ……この未来じゃどんな反動が来るのやら……」


 激痛だったら病院に放り込まれるのは確実。気怠さだったら1日安静にしてればどうにかなる。それ以外だったら……どうなるんだ?


「血反吐なんか吐いた日にゃ大変な……こ……と……に……」


 何だか意識が遠のいていく……


「この未来ではこうなるのか……」


 俺の意識はここで途切れた。これが単なる眠気なのか、何かしらの病気なのかは分からない。1つ言えるのはリビングじゃなくて寝室で意識を失いたかった……






「…………」

「あっ、遊ちゃん起きた?」

「あ、ああ……」


 ちょうど目が覚めたタイミングで美月が入ってきた。どうやら俺は誰かの手によってリビングから寝室に運ばれたらしい


「リビングで寝てたら風邪引いちゃうよ~?」


 いつもと変わらない笑顔で言う美月。どうやら俺は寝てたらしい。まぁ、第三者が言うならそうなんだろうとは思うのだが……とにかく、何事もなくて一安心だ


「わ、悪い……ちょっと疲れてたみたいだ」


 未来に飛ばされた反動とか言うと面倒なのでここは適当にお茶を濁す。この未来に来る前、別の未来にいましたとか言って余計な心配させることもあるまい


「病み上がりなんだから無理しちゃダメだよ~?」

「無理はしてないんだがなぁ……」

「無理してないと思っても案外身体は疲れてるものなんだよ。せっかく遊ちゃんのお洋服や生活に必要なもの買いそろえてきたんだから早く元気になって遊びに行こうよ~」

「そ、そうだな……つか、俺の服や生活用品買って来たのか……」

「うん。高校生の頃のお洋服は捨てずにあるんだけど、アレは……ね?」

「あ、はい、そうですね。その顔で全て察しました」


 俺は美月のウィンクで服が現在どこでどうなってるのか察した。察してしまった……人の癖に口は出さんが……多分きっと予想が当たっていれば人気声優が揃いも揃って俺の服でナニかをしている。想像しただけで気が滅入るんだが……考えたくねぇや


「察しが早くて助かるよ~遊ちゃんにやれって言われたら何でもしてあげられるけど、さすがに本人にバレたら恥ずかしいしね~」

「あー、そうだなー、バレたら恥ずかしいなー」


 察されてる時点でバレてるんだが……本人気付いてないみたいだから言わんくていいか


「恥ずかしいよ~これでも一応人気声優なんだから~」

「そうだなー、恥ずかしいなー……世間にバレたら」


 顔を赤くして身体をクネらす美月を俺は冷めた目で見つめる。人気声優とはいえ、彼女達だって人間。何とは言わんが、厄介なクセの1つや2つあってもいい。聞かされた方としては複雑だけどな。過激なモンじゃなかったら多分どっかのラジオかイベントで喋ってるんだろうなぁ……


「恥ずかしいよ~、まだお友達にしかバレてないからいいけど~」

「ソウナノカー」


 詳細は不明だが、友達にバレても恥ずかしいと思う。はぁ、俺は一体何を聞かされてるのだろう……人気声優────もとい、自分の恋人達の癖を聞かされるとかどんな拷問だよ……どうせだったらこの時代の情報がよかった……


「ユウチャン、ヘンジガテキトウダヨ?ワタシタチノコトキライナノカナ?」


 ツッコミが追い付かねぇ……自分の洋服がそういうコトに使われてるって知ったらそりゃ返事だって適当になるだろ。なのに何故美月は目のハイライトさんが消えてるんですかねぇ…………女ってわけ分かんねぇよ……


「嫌いとは一言も言ってないんだが……」


 俺は頭のネジ数本無くなった美月をどうしたものかと考えながらそっと溜息を吐いた

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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