【本当の母襲来編未来D渡航2】俺が社長をやってる件について
遊、マジか
人間未来に行けたら誰しも1度は考える。その世界の自分に会ってみたいと。だが、未来へ行くだなんて夢のまた夢。考えはするが、実行しようとは誰も思わないのが普通だ。しかし、俺は実際未来へ来ている。長年の夢ではないが、未来の自分に会ってみたいと思う。思うんだけどよ……その前にやることがある。それは……
「さっさと風邪治さないとな……」
そう。風邪を治すことだ。今回はスマホを始め、必要なものを揃える前に風邪を治すところから始めないといけない。今日ほど体調不良が憎いと思ったことはなく、その後に情報と生活必需品の収集……終わりだ……
「私達の肉布団が必要だって?」
「それならそうと早く言って」
「遊ちゃんも好きだね~」
「遊さん……そこまで私達を……」
「嬉しくて発狂しそうです~」
前言撤回。まずは遊華達の頭を修理するところから始めよう。うん、そうしよう。美優に至っては嬉しくて発狂しそうとか意味不明なこと言ってるし、由紀は妄想始めてるし、美月は何を言ってるか分からない。香月と遊華は幻聴が聞こえているご様子。これじゃ治る風邪も治らんて……悪化の一途を辿るばかりだって……つか、恍惚のポーズ止めろ。身の危険感じちゃうから
「誰も肉布団が必要だとも好きだとも言っとらんだろうに……」
ただでさえ熱で頭がボーっとするのに遊華達のボケ1つ1つにツッコミを入れてられない。どこかに身の安全が約束された安息の場所はないものだろうか……ないんだろうなぁ……俺の周りって頭のネジ外れた人間が多いし
「お兄ちゃんは私達が必要ないと……そういうこと?」
「遊は私達のこと嫌いなんだね?
「遊ちゃんに嫌われたら生きていけない……」
「そういうこと言う遊さんの口は塞がないと~」
「ユウサン、イマスグラクニシテアゲマスネ」
必要ないとも嫌いとも言ってないんだが……ヤンデレのお約束だよな。断ると妄想を肥大化させ、どんどん考えが後ろ向きになる。ハイライトの消えた目で睨まれても全く恐怖を感じてないのは彼女達のこの目に慣れてしまったのか……慣れた……ではないんだよなぁ……未来Aの時からヤンデレに恐怖など微塵も感じなかったし。多分、本能的な部分なんだろ。ヤンデレ系ラブコメの主人公だったらこの目で悲鳴を上げてるところだろう場面だから俺はラブコメの主人公にゃ向かねぇな
「勘弁してくれ……看病するなら普通の看病をしてくれ。もちろん、水着以外の服を着て」
遊華達=水着って構図が頭の中に出来つつある俺。幼き頃の彼女達はこんなこと……多分してるわ。過去があって未来があるんだからしてても不思議じゃなかったわ
「「「「「むぅ~!」」」」」
いつも通りの顔に戻ったかと思えばすぐに頬を膨らませる遊華達。相変わらず表情を変えるのがお早いことで……
「何でだよ……」
遊華達の怒りポイントがよく分らん。普通は家の中で水着姿の方が変なんだぞ?
「「「「「けち!」」」」」
「けちで結構」
俺は遊華達の不満に満ちた声をBGMにしながら目を閉じた
あれから2日。風邪は全快し、早速情報収集を開始……
「風邪治ったんだから構ってよね。お兄ちゃん」
「彼女達を放置したらダメだよ~遊ちゃん」
「遊さん、キスしてください」
「遊、抱きしめて」
「一緒に寝てください!」
してないんだなぁ。これが。俺は風邪が治ったにも関わらず未だ寝室に缶詰め。ハッキリ言おう。ここから出してくれ
「構うし、放置したのは悪かった。キスもするし、一緒に寝てもやるから俺の質問に答えてくれ」
大学で交渉術とか勉強してないのになぜか交渉する術を身に付けつつあると感じてしまう。あって邪魔になるものじゃないからいいんだが、身に付けた経緯が自分の彼女達がすぐ病むからだとは口が裂けても言えない今日この頃。ヤンデレと一緒にいると交渉術が身に付くのか?
「「「「「何でも聞いて!」」」」」
チョロい……コイツらは子供か?おっと、バカなこと考えてる場合じゃなかった。さっさと情報収集しないとな。時間的な余裕がないわけじゃないが、こういうのは早いに越したことはない
「んじゃ、遠慮なく。この時代の俺って今何してるんだ?」
我ながらド直球だとは思う。遊華達にとっては思い出したくないことなのかもしれない。どの未来でもこれを聞くのは心が痛むが、聞かないと前に進めないのも事実。出来れば命を落としたとか、失踪したとか以外の回答ならいいんだが……こればかりは変に期待しない方がいいよな……
「この時代のお兄ちゃん?今海外出張中だけど?」
「何でもお偉いさんに呼ばれたとか言ってた」
「遊ちゃん社長さんなんだよ~」
「よく私達も遊さんの仕事関係でパーティーに呼ばれてます」
「ですです」
待って、ツッコミが追い付かない。俺が社長……だと?マジ?
「えっと……俺が社長ってマジ?」
「「「「「マジ」」」」」
「冗談とかじゃなくて?」
「「「「「マジ」」」」」
「マジかぁ……」
何と言うか、命を落としたり失踪してないだけマシだが、社長やってるって言われてもあんまり実感が湧かない。俺は何の会社で社長をやってるんだ?と疑問に思ってしまう。現状の俺には経営の才能も人心掌握の才能もないと思う。多分、これから身に付けていくんだろうが……全く想像がつかない。何をどう選択したら社長をやろうだなんて思うのやら……
「マジだよ。お兄ちゃん。ちなみに私達のお仕事は声優。どこの事務所に所属してるかは言わなくても解かるよね?」
「ああ、羽月さんのところだろ?」
「さすが遊。大正解」
「今まで散々イベントとか、ラジオに拉致られたからな。それくらい解かる」
香月は高校卒業後の進路を知ってるから考えるまでもないのだが、遊華や美月、由紀や美優は意外だ。とりあえず仮設として遊華達はどの未来でも声優業をしているというのは確定した。問題は俺。選択次第じゃ遊華達にとって最悪の事態を避けられるということか……
「「「「「…………」」」」」
なんで黙る?
「なんで黙るんだよ?」
「いやぁ……その……ね?お兄ちゃん」
「えっと、えっと……ごめん、遊」
「遊ちゃん、ごめんね~」
「遊さん、すみませんでした」
「遊さん、ごめんなさい」
突如頭を下げる遊華達。なぜだろう……背中に嫌な汗が伝うんだが……
「謝る理由を聞かせてくれ」
「え~っと……香月さんパス!」
「わ、私?えっと……その……美月!」
「ええっ!?い、いきなり困るよ~!由紀ちゃん!」
「わ、私ですか?えっとですね……美優、よろしく」
「ゆ、由紀ちゃん~!」
説明の押し付け合いをする遊華達を見て何となく察した。詳しい内容は分からんけど、俺に知られたら都合の悪すぎることらしい。彼女達が隠す俺に知られたらマズいことなんて相場は決まっている
「はぁ……俺は誰の何に付き合わされるんだ?」
「「「「「────!?」」」」」
俺の言葉に遊華達は目を見開く。どうやら俺の予感は当たっていたようだ
「な、なんの話かな?お兄ちゃん?」
「わ、私達がゆ、遊を仕事に付き合わせるわけない」
「そ、そうだよ、遊ちゃん。私達が嫌がる遊ちゃんを無理矢理拉致しようだなんてそんな……」
「遊さん、私達を信用してください」
「遊さんに疑われたら悲しいです~」
全力で目を逸らす遊華と香月と美月。ジト目を向ける由紀。明らかにウソ泣きをしてる美優。反応は様々だが、俺が遊華達の仕事に付き合わされるというのは理解した。明確な内容は知らんが、また俺は動物園の客寄せパンダみたいな感じになるんだろうなってのは分かった
「はいはい、疑って悪かった。まぁ、遊華達の仕事関係なしに生活に必要なものは買いたいから遊華達には買い物に付き合ってもらう予定だから別にいいんだけどよ」
未来Aで遊華達の仕事に付き合わされるのには慣れた。語彙力がなくて申し訳ないが、これしか言えんのよ。とりあえずこの時代の俺が健在だと分かっただけでも良しとしよう。この時代に呼ばれた理由は後々聞き出しても遅くはない
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました