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【本当の母襲来編未来渡航10】親父に売り飛ばされたことを知っても本当に何も思わない件について

まぁ……うん。最初の時点でお察しな部分ってあると思う

「事務所の社長室がこれでいいのか……?」


 遊華達に連れられ俺は今、彼女達が所属している事務所────その社長室に来ているのだが……目の前の光景に俺は戸惑っていた。特に机の周り


「いいのよ。来客には事前に連絡入れてもらうようにしているし、アポなしの来客は応接室に通してるから」

「そういう問題じゃないだろうに……はぁ、少しは大量にあるお菓子を隠そうとは思わないんですか?」

「思わないわね。ゴミを散乱させてるわけじゃないのだから私は恥ずかしくないわ」


 俺が戸惑っていた理由は他でもない。羽月さんが使っている机の上にある大量のお菓子だ。パソコンが置かれているだけで書類の類は見当たらない。社長が普段どんな仕事をしているかは分からんけど、この机は絶対に社長の机ではないことだけは解かる


「なぁ、遊華……」

「ごめん、何も言わないで」

「なぁ、香月……」

「遊、ゴメン」

「なぁ、美月……」

「遊ちゃんゴメン」


 遊華達に説明を求めるも秒で目を逸らされた。彼女達は羽月さんの机がお菓子で埋め尽くされているのを知っていたのだ。知っていて当然だとも言える。聞かなかった俺も悪いんだけどよ……


「はぁ……」


 もう何から突っ込んでいいか分からない。とてもじゃないが、社長の机というにはちょっと……ドラマの上でしか知らんが、社長の机というのは整頓されているものなんじゃ……まぁいいか。汚くて困るの俺じゃないし


「ちょっと、溜息吐かなくてもいいでしょ?これでも私は忙しいのよ」


 昔みたいに凛とした感じを出す羽月さんだが、体型が体型なだけに……うん。何も言うまい。世の中には言っちゃいけないことってあると思う


「そうですね。羽月さん忙しいですね。分かってる分かってる」

「分かってないじゃない……」


 シュンとする羽月さんだが、昔だったら可愛いなと思ったところだが今は……ノーコメント。どうコメントしていいか分からん。遊華達も苦笑を浮かべるばかりで否定しないところを見ると思っていることは俺と同じだろう


「分かってますって。それより、どうして俺は呼ばれたんでしょう?」


 俺的には呼ばれる心当たりなんて親父の真実しかない。だが、忘れちゃいけない。俺の周りにいる大人は身体年齢に対し、精神年齢が著しく低いことを。現状、羽月さんが俺を呼んだ理由が全く分からん


「遊君の知りたいことを話すために決まっているじゃない。なんて言っても君が売り飛ばされたのは本当で理由が遊華ちゃんや香月、美月やそのお友達の生活を守るためってそれだけの話なのだけど」


 今ので大体察した。いや、察してしまった。遊華達の生活を守るためという理由の裏は2通り考えられる。一つは日常生活。もう一つは学校生活。どちらにしても無関係な人を巻き込む辺り実母はロクな人間じゃない。とはいえ、実感が湧かないのも事実。俺に他人の生活を脅かしてまで手に入れる価値はないと思うが……


「はあ、そうですか……」

「あら、怒らないのね」

「この世界は一つの分岐点が生み出した結果でしかありませんから。怒る理由がありません」


 美月から親父が俺を売り飛ばしたと言われた時、怒らなかった理由がこれだ。最初に飛ばされた未来も遊亜に呼ばれた未来もそうだが、この未来だって選択をした結果が生み出したもの。一つの分岐点の先でしかない。怒る理由がない


「遊君って意外と冷たいのね」


 蔑むような視線をこちらへ向ける羽月さん。そんな目で見られても困る。実母に俺を寄越せと言われた時、親父には渡さないという選択もできた。そうしなかったってことはだ、多分、えぐい脅しでもされたってところだろう


「別に冷たくありませんよ。その場に居合わせたわけじゃないですし」


 俺は親父が売り飛ばした場面に居合わせたわけじゃない。そもそもの話、居場所というのは自分がそこにいたいかどうかで決まる。つまりだ、俺が実母のところにいたいと思ったらそこが居場所になる。要するに気の持ちようだ


「そう。まぁいいわ。それで遊君はこれからどうするの?」

「どうするって?」

「自分を売り飛ばした父親に復讐でもする?」

「しませんよ。と言いたいところですが、そうですね……しましょうか」

「お兄ちゃん!?」

「遊!?」

「遊ちゃん!?」


 復讐からは何も生まれないのは十分理解している。親父に復讐してやろうって気は毛頭ない。ただ、ちょっと暇つぶしに嫌がらせしたくなっただけで。俺の目的を知らない遊華達は驚愕の声を上げる。俺がガチで復讐するわけがなかろうて……


「やっぱりそうよね……子供からしたら自分を売り飛ばした父親なんて許せないわよね……」


 悲しそうに目を伏せる羽月さん。この人もだったか……


「親父の事が許せないわけではありません。実際殺したいほど憎いってわけじゃありませんし。ちょっと嫌がらせをしたくなっただけですよ」

「「「「え?」」」」


 目を丸くして俺を見る女性陣。この連中は俺を何だと思っているのだろうか?


「俺を何だと思っているのやら……はぁ……」

「「「「復讐の鬼」」」」


 この人達とは1度人の印象についてよく話し合う必要があるようだ。だが、否定はできないんだよなぁ……ガチの復讐ではないが、しょーもない復讐する時は鬼みたいな感じになるしよ


「もうそれでいいよ……はぁ……」


 遊華達から持たれてるイメージに若干ショックを受けつつ俺は彼女達に計画の全てを話した


「なるほどね。確かに復讐といえば復讐だわ」


 話しを聞き終え、いの一番に口を開いたのは羽月さん。心なしか彼女の俺を見る目がゴミを見るような目になってるのは気のせいか?


「でしょ?」

「ええ。これ以上ないってくらいえげつないわ。さすが鬼畜の遊君ね」


 鬼も鬼畜も同じようなものだろうが……


「誉め言葉として受け取っておきます」

「そうして頂戴。それより、遊華ちゃん達を何とかした方がいいわよ」

「え?」


 羽月さんに言われ、遊華達の方を向くと────


「お兄ちゃん……そんなにまでお父さんを恨んでたんだね……」

「遊……ずっと側にいるから……憎しみに囚われないで……」

「遊ちゃん、私達がずっと側で癒してあげる……」


 目に涙を溜め、こちらを見つめていた。可哀想なものを見るような目で見られているのはどうしてだろうか?


「恨んでないし、憎しみに囚われてもいないんだが……ついでに、今のところ特に疲れたとかもないぞ?」

「「「本当?」」」

「本当だ。というか、さっきの話をどう曲解したら俺が親父を恨んでるとか、憎んでるって発想が出てくるんだよ」

「「「だって……」」」

「だってもへったくれもあるか。はぁ……」


 俺は今日何度目かになる溜息を吐く。不安要素なんてなかろうに……


「遊君、大人にとってね、お酒に細工されるのは身を引き裂かれるのと同義なのよ?」

「そうだよ!お兄ちゃん!」

「遊にそんなことされたら私泣く」

「私なんて1か月寝込むもんね!」

「あのなぁ……」


 俺が話した復讐計画────いや、復讐だなんて大層なものじゃないからイタズラと言わせてもらおう。俺の計画ってのは単純明快。親父の酒にからしでも入れておいてくれってだけの話。万が一高級な酒を隠し持っていたら安酒とすり替えておいてくれって話だ。こんなのは子供イタズラで復讐じゃない。たが、大人にとって酒へ細工されるとか、酒をすり替えられるというのはかなりキツイらしい。理由は分からんがな





 あの後、適当な話をして事務所出た俺達は特に行くところもなく、真っ直ぐ帰宅。遊華達の仕事だが、何でも出勤時は俺同伴が強制となったらしい。それを事務所を出た後に聞かされたからビックリだ。そんなこんなで帰宅してきたのだが……


「飯作るのめんどくね?」

「「「分かる……」」」


 リビングに入るや否や俺達はすぐにごろ寝。俺も彼女達も妙にやる気が起きない。しかし────


「飯作るのめんどくても腹は減るよな」

「「「うん……」」」


 腹は減る。作るのは面倒だが、腹は減るとは人間の身体ってめんどくさい


「出前でいいか?」

「「「うん」」」


 満場一致で出前をとることになった。諸々が面倒で寿司になったとだけ言っておこう。今日は疲れた……主に羽月さんの仕事机を見て。親父が俺を売り飛ばしたことは……別に理由を知ったところで怒る気は全くしない。嫌がらせする気なら起きたけど。事務所で言った通りこの時代は所詮分岐点の一つでそうなった場合の未来だ。元の時代に戻って親父が俺を売り飛ばさずに済むようにすればいい。怒るだけ時間と体力の無駄なのだ













今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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