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【本当の母襲来編未来渡航5】実は香月達が打ち合わせしていた件について

デジャヴだと思った?

 遊華の仕事に付き添った翌日。俺は────


「遊、今日は私の日」


 香月の仕事に付き添っていた。隣を歩く彼女の姿を見ると昔と違って大人の女性になったなと思う反面、10年経ってもクールなままでどこか安心する。遊華の時と同じくメガネと帽子で軽く変装はしているし、知り合いに会うことなんて早々ないから平気だとは思う。しかし、一番最初に飛ばされた未来じゃ由紀と美優も声優だったから油断はできない。遊華、香月、美月の3人と由紀、美優が共演NGだって言うならワンチャン。だが、この時代においては由紀と美優の職業を確認する術はない。万が一共演でもされてみろ。俺はその場からダッシュで逃げ出すぞ


「解かってるよ……」


 遊華の時と同じく俺が連れて来られたのはアフレコスタジオ。一番最初に連れて来られた時はほんの少しだけワクワクしたが、今となっては全くワクワクしない。あれだ。慣れてくると新鮮味がなくなってくるんだ。解かるだろ?


「ならいいんだけど……もしかして嫌だった?」

「嫌ではないんだが……慣れてくると新鮮味に欠けるなと思っただけだ」

「そう言えば遊は遊華ちゃんのアフレコにも付き添ったんだっけ?」


 香月は「そりゃ新鮮味ないよね……」と続けたが、この時代に限って言えばそうじゃない。香月達と一緒に飛ばされた未来は別として、最初と今回で何回香月達に振り回されたか……嫌でも慣れる


「昨日な。考え事してたからほとんど内容は覚えてないがな」

「そう……」

「ああ。別に香月達の仕事に興味がないわけじゃないぞ?」

「うん……」


 なぜか先程から悲しそうな顔をしている香月。過去の時代から来た俺がアニメだとはいえ、未来のことを知るわけにはいかない。誰にもバラす気はないが、やはり知るわけにはいかないだろ。この時代じゃ大人気でも俺の時代じゃ書籍として売られてすらいないなんてザラだ。WEB小説が元だったらな尚更な。だから俺が香月達のアフレコしている様子を凝視するわけにはいかない。未来を変えないために


「悲しそうな顔すんな。仕事している姿見て色々考えてるだけだ」

「うん……ところでさ、遊」

「何だよ?」

「色々考えてたって言ったけど、何考えてたの?」

「何って、色々だ。この時代のこととかな」


 今の香月に元の時代へ戻る方法を模索してましたとか、香月達が変態と化してしまった事実を嘆いてましたとかは口が裂けても言えない。言ったら最後だ


「色々……遊のエッチ……」


 何を想像したのやら……ポッと顔を赤らめる香月は何も知らない人間が見たら美人の部類に入るのだろうが、中身を知ってる身からするとこの顔から何を想像しているか大体予想はつく。大方エロい想像でもしたんだろう。全く、これで三十路……いや、何でもない。本人に言うと俺の身が危ないから黙っておこう


「はいはい。男子高校生はみんなエッチですよー」

「遊のバカ……少しくらい欲情してくれたっていいじゃん……」


 俺の返事に不服だったらしい。香月は頬を膨らませてこちらを睨んできた。これでも我慢してる部分あるんだがな……


「俺が香月達に欲情したら絶対にロクなことにならないだろ……」

「当たり前でしょ」

「否定しろよ……」

「しないよ。遊の想像している通りだから。私達が何デレなのか知ってるでしょ?」

「自覚あるのかよ……」

「もちろん。私も美月も遊華ちゃんもヤンデレだって自覚してる」


 未来に飛ばされた時点で香月達のヤンデレには慣れ────てないよな……最初の未来、元の時代、今いる時代で比較すると今いる時代が過激だ


「はぁ……」


 過激な香月達が嫌いになれない俺は溜息を吐くしかない。どんなに変わってしまっても香月達は香月達。嫌いになるのは無理だ


「溜息吐かなくたって……」

「吐きたくもなる。どんなに変わってしまっても香月達を嫌いになれないんだからな」


 痴女化した程度で彼女達を嫌いになる俺ではないが、突然の変貌ぶりには驚くものがある。中にはこの程度で大切だった彼女をゴミみたいに捨てる男もいるくらいだが、俺にとっては今更だ。最初の未来で周囲にいた人間の変貌ぶりを目の当たりにしたからな


「遊……」

「全く……何がどうなったらこうなるのやら……」


 10年という長い年月の恐ろしさを痛感しつつ、俺達はアフレコ現場へ向かった








 香月のアフレコ現場へ着くと俺は遊華の時と同様にスタッフがいる場所へと通された。邪魔にならない場所に腰かけると昨日と同じく天井をぼんやり眺めながら物思いに耽る。今日考えるのはどうやったら香月達が満足するかだ。俺に会えた時点で香月達の願いは叶ってることになる。普通に考えたらとっくに元の時代に帰れてるはずなのだが、現状この有様。他に願いがあるのか?


「香月達の願いか……」


 願いは何だと本人達に聞いても教えてくれないのは明らか。すぐにでも叶えられそうな願いか、年齢制限に引っかかる願望を言われて終わりだ。となると、一人ずつ順番に攻略するしかない。だが……


「一筋縄じゃいかないよな……」


 ヤンデレとメンヘラは一筋縄じゃいかない。どちらも好きな人や気に入った人が自分以外の第三者と話をしているだけで暴走する人種だ。今のところないから安心だが、遊華達とて例外じゃない。元の時代に帰りたいって言ったら何をされるか……ベッドに括り付けられてガチ監禁コースまっしぐらだ


「監禁されんのはいいが、ベッドに拘束は勘弁だよな……」


 監禁されるのは構わない。この時代にいる敬達に見つかったら絶対に面倒事になりそうだしな。だったら監禁されてた方がマシだ。婚約者と実母に見つかったら目も当てられん


「願いか……」


 今のところ遊華達の要求には無理のない範囲で全て応えている。一緒に寝たいと言われればそうしてるし、その……なんだ……一緒に風呂にも入ってる。彼女達は俺にこれ以上何を望むんだ……


「何を望むのやら……」


 痴女化して何を考えているのか分からないのに本当の考えが読めるわけがない。遊華達から本当の願いを聞き出すには2人きりになるか本心を引き出すしかなく、振り回されっぱなしの俺にその術はない。終わりだ……








「遊亜、終わったよ」


 絶望に打ちひしがれていると声がかかり、顔を上げると柔和な笑みを浮かべた香月が立っていた


「おう。この後の仕事は?」

「ラジオ収録が一つ」

「そうか」


 デジャヴ。昨日も考え事してるところに声がかかって今後のスケジュールを確認するとラジオ収録があるって言われたっけ……ということはだ、この後の流れは────


「うん。だから休憩にホテル行かない?」

「ホテルって……」

「ビジネスホテル」

「だよなぁ……」


 またもデジャヴ。昨日と全く同じ流れだ。打ち合わせでもしてんのかってくらい同じなんだが……偶然だよな?


「当たり前でしょ。昨日遊華ちゃんと打ち合わせしたし」

「打ち合わせしたのかよ……」

「うん。ちなみに明日は美月と同じ流れだから」

「マジかよ……」

「マジだよ。3人共アフレコの次にラジオ収録ある日を狙って遊亜を付き添わせているから」


 聞きたくなかった……


「好きにしてくれ……」


 もはや何も言い返せず、俺はガックリと項垂れた






 香月に連れられ、やって来たのは言うまでもなくビジネスホテルの一室。さすがに2回も同じ流れだと何も言う気がしない。違うのは香月の恰好と俺がさせられていること。遊華は下着姿で迫ったきたが、香月はちゃんと服を着ている。問題なのは俺がさせられていることだ


「何で俺は香月を膝枕してるんだ?」

「私がしてほしかったから。本当は同じ事したかったけど、この後とっておきのお楽しみがあるから今はこれで許す」

「さいですか。ところでとってのお楽しみっていうのは────」

「内緒。遊にとっても私にとってもいいこと」

「さいですか……」


 香月にとってのいいことは俺にとってのいいことじゃないと思う。捕食されはしないだろうが、そこはかとなく嫌な予感がする


「うん。これでユウハワタシタチカラハナレラレナクナルヨ……ふ、ふふふふふふふふふふふ……」


 そう言って俺を見上げてくる香月の目には光がなかった。これは食われるやつだ。俺捕食されるやつだわ


「何考えてんのか知らんが、俺は香月達の側にずっといるんだがなぁ……」

「ソウダネ。デモ、ワタシタチハユウヲエイエンニジブンタチノモノニシタイ。ワカッテクレルヨネ?」


 好きな人を独占したい気持ちは解からんでもない。だが、何をされるか分からんから何とも言えん


「気持ちは解からんでもないな。何をされるか分からんから何とも言えんけど」

「それは秘密。言ったら遊逃げちゃうでしょ」

「知らされてない方が怖くて逃げだしそうなんだが……」


 この後、俺は香月の言うお楽しみとやらに付き合わされたのだが、何をされたかは内緒だ。ホテルを出た俺の首筋にはくっきりと歯形が残ってるとだけ言っておこう。むしろこれしか言えん



今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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