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【本当の母襲来編未来渡航2】遊華の変化について行けない件について

悪い方向に変わっているようなそうでもないような……どうなんでしょうかね?

 人は変わる。例えば、昔はベッタリ甘えん坊だった奴が態度を翻し、冷たくなった。ラブコメなんかじゃよくある話だ。だけど、こういう場合、変わって見えるのは目に見える部分────つまり、態度や立ち振る舞いだけだ。根本的な部分は変わってない。どれだけ態度を変えたところで根っこの部分が変わってないからいくら取り繕ったところで無意味なのだ。え?どうしてこんな話してるかって?それは……


「お兄ちゃん今度は絶対に逃がさないから……」


 ハイライトの消えた遊華によって俺がベッドに拘束され、見下ろされてるからだ。この拘束のミソは俺の両手両足を繋いでるのが手錠じゃなくてタオルだってところだ。無理に動こうとすれば出血はせずとも皮膚が赤くなる可能性がある。最初は二人寄り添って寝てたのに……どうしてこうなったかなぁ……


「逃げる気ないんですが……この未来じゃ行く当てもないですしお寿司」


 先に弁明だけさせてくれ。俺は一言もいなくなるのを匂わせる発言はしてない。単に遊華のヤンデレが発動しただけだ


「うん、知ってる。だけど、好きな人は首輪付けてでも捕まえとけって昔からよく言うじゃん?」

「言わないんだが……」


 ヤンデレは精神医学理論の背景が存在するわけでも主として医療知識に基づくわけでもない。ゲーム評論のヒロイン分析法によって作られたキャラクター類型らしい。描写的には性的倒錯(せいてきとうさく)躁病(そうびょう)、共依存状態に陥った状態────早い話が作中の人物が狂った状態といったという鬱展開なのだが、この話は置いとくとしてだ、遊華が何を言っているのか理解できない。暴論過ぎるだろ


「私が今言ったよ」

「お前はいつから昔の人になったんだ?」

「お兄ちゃんからすると私って昔の人でしょ?」

「何言ってんだ?」


 今の遊華は俺視点で見ると未来の人。中身は変わってないが、俺の知らない先の事を知ってるんだ、未来人と言っても過言じゃない。というか、本格的に彼女が何を言っているか理解できんのだが……


「何って……事実?」

「捏造だろ……はぁ、もうこのままの状態でいい。とりあえず俺が消えた後の事を質問させてくれ」


 拘束され、見下ろされながら俺が失踪した後の話を聞くのはなかなかにシュールだが、外せと言ったところで聞き入れはしないだろう。遊華の中じゃ捕まえとかないとまたいなくなるんじゃないかって不安もあるだろうしな。だったら簡単だ。このまま質問する他ない


「いいけど、何が聞きたいの?私のスリーサイズ?それとも、生理の周期?」

「俺の消えた後の事って言っただろ……遊華のスリーサイズと生理の周期がこの未来の現状と何の関係があるんだよ」

「え?あるでしょ?」

「どんな?」

「お兄ちゃんが私を抱く時に知らないと困るでしょ?特に生理の周期」

「困るは困るが、それは元の時代に戻ってから聞く。今はそうだな……俺がいなくなった後、遊華達がどうなったか簡単に教えてくれ」


 色々デリカシーに欠ける事を言ったような気しかしないが、今は気にしない。それよりもずっと大切なことがあるからな


「私は高校卒業後、声優の専門学校に行って卒業して今は声優やってる。香月さんと美月さんも同じ。お兄ちゃんがいなくなった時はたくさん泣いたし、警察に捜索願を出してまで探したよ。結果は……言わなくても解かるよね?」

「ああ……現状が物語ってる。んじゃ次、親父達はどうなった?」

「そ、それは……」


 先程とは打って変わり遊華が分かりやすく狼狽える。遊華、香月、美月の3人が声優になるってのは今のところどの未来でも変わってない。問題は彼女達以外の人間がどうなったかなのだが、狼狽えてるってことはだ、親父達の中で誰かが命を落としたか?考えたくはないが……


「それは?」

「え、えっと……じ、実は……さ、私達、お兄ちゃんがいなくなったすぐ後にお家を飛び出してるんだよね……」

「家出……したのか?」

「うん……」


 俺は予想だにしなかった衝撃的な事実に言葉を失った。彼女達と親父達の間に何があったんだ?


「理由聞いてもいいか?」


 最初に飛ばされた未来じゃ母さんが亡くなってた。次に飛ばされた未来じゃ俺の周囲にいた人間は全員無病息災。で、この未来じゃ生きてはいるだろうが、彼女達と親父達の関係は良好と呼べるものじゃないらしい


「大した理由じゃないよ。ただ、お父さん達がお金に目が眩んでお兄ちゃんを売り飛ばそうとしたのが納得いかなくて私、香月さん、美月さんの3人は家を出た。家出する時にそれまでの人間関係全て断ち切ったから他の人達が今どこでどうしてるかは知らない」

「マジで?」

「うん、マジで」

「ドッキリとかじゃなく?」

「うん。ドッキリじゃないよ」


 開いた口が塞がらない。遊華達が繋がりを絶つという選択をしたのは当然、驚いた。だが、それ以上に驚いたのは親父達が金に目が眩み俺を売り飛ばしたということだ。遊華の真剣な眼差しを見るに冗談じゃないらしい。親父達が俺を売り飛ばした相手は多分、美沙里の母親だろう


「できればドッキリや冗談であってほしかったんだが……」

「私が冗談やドッキリで家出したって言うと思う?」

「思わん」

「でしょ?」

「ああ」


 遊華が冗談で人間関係を全て断ち切ったって言うとは思えない。おそらく彼女の言ってることは本当だ。そうなると遊華達が声優やっているのにも違和感が生まれる。俺の記憶が正しければ羽月は声優。最初の未来じゃ声優事務所の社長やってたし、実際事務所に行ったこともある。だからこそ遊華達が声優をやっていることに違和感しかない


「繋がりがあるとすれば羽月さんだけ。他の人は全員切り捨てたから」


 そう言って儚げに目を伏せる遊華。だが、違和感は拭えた。同時に謎が一つ生まれたけどな


「なるほどな。遊華達が声優やってられるのは羽月さんとだけ繋がりがあるからか」

「そういう事。さて、お兄ちゃん」

「何だよ」

「私服脱いでいい?」

「ダメに決まってるだろ。痴女」

「えー!ケチ!」

「ケチじゃない。普通に考えて男子高校生とはいえ、男の前で服を脱ごうとするな」

「いいじゃん!ここは私の部屋でお兄ちゃんには生まれたままの姿を見てほしいし」

「何もよくないんだが……」


 人は変わる。良くも悪くも人間は変わる生き物なのだが……遊華の変化を俺は喜んだらいいのか、泣いたらいいのかわからない。人って10年でここまで変化するものなのか?最初に飛ばされた未来じゃ彼女は痴女ではなかったと思うんだが……







 痴女遊華をどうにか抑え込み、事なきを得た。得たのだが……


「お兄ちゃん……離さないし離れないよ……」


 その代わり彼女の抱き枕になってしまった。両手両足が自由になる代わりに身体の自由を奪われるだなんて状況が悪化してる。いや、年上の女性に抱き着かれるの嫌いじゃないからいいんだけどよ


「トイレと風呂の時は離れてほしいんだが……」

「嫌」

「嫌って……遊華は俺の排泄シーンや入浴シーンを見たいのか?」

「うん。逆に私の排泄シーンや入浴シーンを見てほしいくらい」

「いつからお前は変態になったんだよ……」

「お兄ちゃんがいなくなった後から。いや、お兄ちゃんがいる時からかな?」

「嘘だろ……」


 我が妹の見たくもない一面を垣間見た。正直見たくなかった。頭を抱えていると玄関のドアが開く音がした


「あっ、帰って来たみたい」

「帰って来た?誰が?」

「香月さんと美月さん」

「同居してたのか?」

「うん。ビックリさせようと思って黙ってたんだけど……ビックリした?」


 遊華はイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべる。家出の話が出た時点で3人は一緒に住んでるんだろうなとは思ってたから大してビックリしてない。どちらかと言えば遊華が痴女の変態になってる方が驚きだ


「家出の話が出た時から何となく二人と同居してるような気はしてた」

「ぶー!お兄ちゃんノリ悪い!あんまり聞き分けないと犯すよ?3人で」

「どんな脅しだよ……それより、出迎えに行こうぜ?10年経った2人にも会ってみたいしな」

「ダメ。お兄ちゃんはここにいて。私が呼んでくるから」


 そう言って遊華は遊華は出て行った。一人残された俺は……


「はぁ……」


 深い溜息を吐いた。遊華の痴女化には……ごめん、そそられた。というか、ここが未来じゃなかったら誘惑に負けてた。痴女華のことは置いとくとしてだ、この未来で俺は何をすべきなんだ?


「遊華達と親父達の仲を取り持つ……のは多分違うよな……」


 遊華のあの口振りだと親父達と仲直りするのは望んでないように見える


「誰が俺をこの未来に呼んだんだ?」


 この未来に俺を呼んだ奴が誰なのか、何の目的で呼ばれたのかわからない。最初の未来は遊華が俺に会いたかったからだろ?次の未来は遊亜が俺に会いたかったからだろ?じゃあ、この未来は?誰が俺に会いたいと願ったんだ?


「俺に会いたがってる奴か……」


 心当たりならたくさんあるんだが……居場所が特定不可能な上に遊華達が羽月さん以外の繋がりを絶っているとなると見つけ出すまでに時間が掛かりそうだ。俺は天井を見ながら今日何度目になるかわからない溜息を吐いた







今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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