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【本当の母襲来編3日目後編】突然未来に飛ばされた件について

約2年ぶりの投稿です。お待たせいたしました。変なところないか不安ではありますが、どうぞ

 本当の母の情報と遊華達……これらを比べるのはおかしいが、目の前にいる担任兼自称婚約者の山岸佳乃のせいでそうせざる得なくなってしまった


「どうした?遊。私に愛してると言うだけで君の実母について知る事が出来るのだぞ?何を迷う事がある?」


 山岸の言う通り俺が呼び捨てで愛していると言えば本当の母を簡単に知る事が出来る。同時に遊華達を裏切る事にもなる


「俺は……」


 本当の母が迎えに来るまで残り2日。山岸に聞かずとも本当の母には会える。会えるのなら好意を寄せているわけでもなんでもない山岸に愛していると言う必要はどこにもない


「私の名前を呼んで愛してると言えば君のお母様の事は何でも話してやれるんだぞ?君の知りたい事なら何でもな」


 俺の知りたい事を何でも教えてくれるという山岸の提案は本当の母と対峙する前である現状では甘美な提案だ。愛を囁いただけで本当の母について教えてくれるのならこれほど楽な事などない。それでも俺は……


「俺は……彼女を裏切れません……」


 遊華達を裏切る事なんて出来ない……本当の母の事は知りたいとは思う。だが、遊華達を裏切ってまで知りたいとは思わない


「そうか……残念だ。しかし、遊。君は私と結婚するという未来からは逃れなれない。その事をよく覚えておきたまえ」


 俺は山岸に返事を返さず生徒指導室を出た


「未来からは逃れられない……か」


 生徒指導室の前で山岸に言われた事を反復するも俺は去年の夏休みに遊亜のいる未来に飛ばされている。その後も度々飛ばされた事があるが、遊亜との話で山岸、邑田の名前は出てきていない。美沙里の名前だって俺の妹としてなら出てきてはいるが、美沙里という名前では出てきていない


「遊亜がいる以上山岸との結婚はあり得ないんだよなぁ……」


 遊亜がいる。遊亜だけじゃない遊理達もいる以上、俺は何等かの方法で山岸も美沙里も本当の母も退けたはずだ。その方法がわからない以上、打つ手はない


「未来の俺はどうやって本当の母や美沙里、山岸を退けたってんだ?」


 遊亜が何か知っているかもしれない。出来る事ならもう1度未来に行きたいが、未来にいる人間が会いたいと強く願わなければ未来に行く事は出来ない。


「遊亜達に会えない以上俺1人で考えるしかないのか……しゃーない、早退すっか」


 本当なら次の授業の準備に取り掛からなきゃいけないのだが、山岸が婚約者だと発覚し、強引に愛を囁けと言われてからどうも授業を受ける気分になれなかった俺は早退を決意した。


「先生には浩太か敬、邑田にでも適当に言ってもらうように頼んでおくか」


 早退すると決めてからの行動は早かった。教室に戻った俺は自分のカバンを持ち、たまたま声を掛けてきた邑田に『体調が悪い』と適当な嘘を吐き、そのまま教室を出た。そして、下駄箱に行き、靴を履き替え、校舎を出る。で、今は家への道中


「山岸が婚約者だとは思わなかった……」


 家への帰り道で俺は1人、生徒指導室で聞いた山岸が婚約者だという話を思い出し、その事実を受け止めきれずにいた。


「邑田も美沙里も何で教えてくれなかったんだよ……」


 人のせいにするわけじゃない。だが、こればかりは人のせいにせざる得ない。婚約者の事を知っているのは邑田と美沙里。その2人が教えてくれなかったんだからな


「はぁ……嘆いていても仕方ないか……」


 邑田と美沙里にあれこれ愚痴っても仕方ない。最終的には全て俺の問題になるんだからな



 その後、俺は何も考えずただ家を目指して歩いた



「ただいま」


 誰もいないとは理解してる。それでも、“ただいま”と言ってしまうのはいつものクセだ


「誰もいないと理解しているはずなのに“ただいま”か……」


 別に誰かに“おかえり”と返事をしてほしいわけじゃない。ただ、自分でも不思議な事にそう言ってしまうってだけだ


「とりあえず着替えるか」


 山岸の件について思うところはあったが、とりあえず着替えるため寝室へ向かった




「はぁ……」


 寝室に入って早々俺は溜息を吐く。担任が婚約者だった事実、本当の母襲来。立て続けに押し寄せるイベント。未来に行った時以上に疲れる……疲労の原因など考えるまでもない。未来へ飛ばされた時は劇的な変化を遂げた環境に慣れるのに精一杯だったからアレコレ考える暇がなかったが、今は違う。リアルタイムで婚約者登場と実母襲来。何をどうしていいかわからない


「勘弁してくれよ……」


 本当の母に引き取られても未来は変わらないだろう。しかしだ、婚約者は違う。事と次第によっちゃ俺が見てきた未来とは大きくかけ離れたものになってしまう。遊華達が声優として働いていた未来じゃ俺は死んだことになっていたから気にも留めてなかった。だが、今は違う。子供がいる以上、遊華達との結婚は絶対条件。何としてでも成し遂げなければならない


「めんどくさいことになった……」


 アニメとかだと駆け落ち展開で面白くなるが、現実────特に自分が当事者の立場だとこれほどまでにめんどくさいとは……


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 俺は深い溜息を吐き、ドアを開けると……


「またこのパターンかよ……」


 目の前が真っ白になった




「…………またここか」


 目を開けると俺は最初に未来へ飛ばされた時と同じく駅前にいた。空は夕日で真っ赤に染まり、道行く人は帰宅の時間帯だろうなのか、スーツ姿あるいは制服姿の人が多い


「何年先に飛ばされたんだ……?」


 慣れとは恐ろしいもので幾度となく未来に飛ばされ続けていると最初に考えるのは今後の事ではなく、今が何年後の未来なのか。最初はちょっと慌てたが、慣れてしまえば何てことない。コンビニの情報誌を適当に立ち読みして情報を得ればいいんだからな


「何年先でもいいか……」


 考えるのを止めた俺はコンビニを目指した。幸いスマホと財布はある。飲み物と雑誌くらいは買えるくらいの金は持っているのだ。宿泊は……多分無理だろうけどな




 コンビニに入り、店員の怠そうな「らっしゃいませー」と適当な挨拶を聞き流すと速足で雑誌コーナーへ向かった


「えーっと……テレビ系のやつでいいか」


 陳列されている雑誌の中から適当にテレビ情報誌を手に取りパラパラとページをめくる。俺が見たいのは芸能人のどうでもいいインタビュー記事ではなくテレビ欄。寒さは感じなかったから冬じゃないのは明白だ。暑くもないから夏でもなさそうだけどな。今が何年の何月か知れればそれでいい


「2031年か……」


 明確な月日は分からなかったが、雑誌から現在の西暦が2031年であることは分かった。日付はスマホ見ればいいから問題なし。テレビ欄の掲載が5月10日までで終わってるのが気になるが……別にどうでもいい。俺はコンビニを後にし、駅前に戻った




「5月9日か……」


 駅前に戻った俺はスマホ取り出し日付を確認。今が5月9日だというのを知った。知ったところで知り合いに遭遇しなければ意味がないのだが……


「現実そんな甘くないよな……」


 物語と違って現実は甘くない。偶然通りかかり、声を掛けてきたのが知り合いでしたーなんてのはそうあることじゃない。何が言いたいのかと言うとだ……


「野宿決定……」


 俺の野宿が決まりかけているという事に他ならない。やろうと思えばできなくはない季節ではあるが、寝袋なしの野宿はキツイ。飯も確保しなきゃならないからな


「家に帰る……のはリスクが伴うよな……」


 俺が未来にいるということはだ、過去の俺が失踪したことを意味する。つまりだ、前回同様10年も……いや、10年以上失踪してた奴がいきなりフラリと現れたら大騒ぎになるのは必至。初めて飛ばされた時は遊華に見つかったから仕方なく家に帰ったが、さすがに今回はそうもいかない


「公園探しから始めなきゃならんのか……」


 できるなら駅構内で寝泊まりできたら最高だが、今の俺は制服姿。間違いなく駅員に声を掛けられ、補導される。学生証は財布の中に入っているから身分は証明できるが……面倒な事になる未来しか見えない


「ったく、この歳で野宿とか笑えねぇよ……」


 溜息を一つ漏らし、俺は歩き出した


「お兄……ちゃん……?」


 デジャブ……歩き出したら誰かに声を掛けられた。初めて未来に飛ばされた時もこんな感じで遊華に捕まったっけ……


「…………」


 俺は無言でその場を後にしようとした。その時


「お兄ちゃん!!」


 腕を強く掴まれ、無理矢理振り向かされた


「ゆ、遊華……」


 相手は遊華。やはりと言うか、案の定というか……前回もだったが、俺が1人で未来に飛ばされると決まって彼女と遭遇する。俺が未来に飛ばされた時、駅前に放り出され、途方に暮れていると高確率で遊華と鉢合わせ。ザックリ説明するとこんな感じだ。突っ込みどころはあるだろうけど、納得してくれ


「うん、うん……遊華だよ……お兄ちゃん!」


 そう言って遊華は涙を流しながら俺に抱き着いてきた。彼女にとっては久々の再会だ。思い切り甘えさせてやろう。聞きたい事は色々あっけどな!









今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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