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【本当の母襲来編3日目前編】俺の婚約者が判明した件について

婚約者判明!

 昨日の夜、遊華に購買で美沙里と喧嘩していた事をそれとなく聞いてみたが、結局原因は掴めず。まぁ、こう言ったらなんだが、男絡みで女が喧嘩する原因なんて意中の男を独占したいが故に起こるものだ。加えて遊華も美沙里も共通して“妹”だから兄を独占したいという欲が原因なんだろう。


 そんな事を思いながら俺は授業を受けていた


「婚約者か……」


 遊華と美沙里が喧嘩した原因は俺の婚約者関係だろう。兄を独占したいというのも大なり小なりあったとは思う。しかし、それはあくまでも妹としての感情だ。遊華とは血の繋がりがないから本当の妹じゃない。


「邑田も美沙里も俺の婚約者に関しては何も教えてくれないから探しようがないんだよなぁ……」


 俺のする事を止めないと言ったイエスマン邑田も俺自身が今の今まで存在すら認識してなかった本当の妹である美沙里も婚約者や本当の母に関してだけは口を閉ざしてしまう。本当の母は別にいい。適当に追い返せばいいだけだ。ただ、婚約者に関しては会った事すらないからこれが中々厄介だ


「ほう、婚約者か……」


 邑田と美沙里が教えてくれない婚約者の事を考えているところに第三者の声がし、俺はゆっくりと顔を上げた。そこには……


「山岸先生……」


 我がクラスの担任山岸がいた。


「私の授業中に別の事を考えるとはいい度胸だな。藤堂」

「……………………すみませんでした」


 考えてる事が口に出ていたのは俺の落ち度だから仕方ないとしてだ、この人はどうして俺の目の前にいるんだ?


「婚約者の事を考えてられるほどの余裕が藤堂にはあるというはあの問題の答えは解かるんだな?」


 山岸が指さしたのは黒板。その黒板には数式が書かれていたのだが、俺は数学が得意じゃない上に授業そっちのけで婚約者の事を考えていたので解かるわけがない


「すみません、解かりません」

「馬鹿者!!休み時間になったら生徒指導室へ来い!!」

「はい……」


 クラスメイト達の前だった事もあり、怒られた俺は盛大に笑われた。笑われはしたものの、授業は滞りなく行われた


 授業が終わり、休み時間


「藤堂、生徒指導室まで付いて来い!」

「はい」


 授業が終わり、教室から出ようとしていた山岸に呼ばれ、一緒に生徒指導室へ


「座れ」

「はい」


 生徒指導室へ入った俺はソファーに座る。山岸は俺の正面に座ったのだが、何故か神妙な面持ちだ


「さて、藤堂。君は私の授業中に婚約者の事について考えていたようだが……」

「はい……すみませんでした」


 いくら気になるとはいえ授業に集中できなかったのは俺の落ち度だ。それについて山岸から課題を渡されても文句を言える立場ではない


「謝らなくていい。私は別に怒っているわけじゃないんだ。ただ、君は婚約者の事についてどう思っているのかを知りたいんだ」

「婚約者についてどう思っているかですか?」

「あ、ああ……」


 婚約者についてどう思っているか……俺が婚約者をどう思っていようが山岸には関係ないと思う。なのに何でだ?心なしか山岸の顔が赤くないか?


「婚約者についてどう思ってるも何も第三者から言われただけなので別にどうとも思ってません。俺はアイドルみたいな雲の上の人や顔も知らない婚約者といった自分には絶対に手に入れられない人や見た事ない人には靡かない主義なので」


 アイドルに関してはあくまでもファンの範囲でなら好きか嫌いか聞かれれば答える。それが恋愛対象となれば話は別だ。俺は絶対に自分が届かない人を恋愛対象に選んだりはしない。婚約者は今回のケースで言えば俺は会った事もなければ顔を見た事すらない。そんな人に好意を寄せるだけバカバカしい


「そ、そうか……」


 俺の答えを聞いた山岸は解かりやすく落ち込んでいるが、山岸が落ち込む意味が理解出来ない


「ええ。それよりも先生はどうして俺が婚約者をどう思ってるのかを聞いてきたんですか?」


 普通の教師なら『授業に集中しろ!』で終わりそうなものだ。それが山岸は婚約者をどう思っているのか聞いてきた。生徒の婚約事情に教師は関係ないのにどうして……


「そ、それは……その……えっと……」


 婚約者の事について聞いてきた理由を尋ねた途端に顔を赤くしモジモジする山岸。そんな山岸を見て俺はとある仮説を立ててみた。その仮説は“山岸に現在好きな人がいる”というものと“婚約者が山岸である”というものだ。俺的には前者の方が嬉しいのだが……


「先生、今この学校にいる人の中に好きな人がいるんですか?」


 生徒が教師に恋バナを持ち掛けるのはあまりいい事ではない。ただ、山岸のこの反応は気になる


「す、好きな人は、い、いないぞ?」


 好きな人はいないと言う割にはモジモジしてるんですけど……


「そうですか。じゃあ、風邪でも引きましたか?顔が赤いですよ?」


 好きな人がいないとわかった俺は顔が赤い理由を聞く。間違っても“先生が俺の婚約者ですか?”とは聞けない……


「か、風邪は引いてない!」


 風邪引いてないのに何で顔が赤いんだよ……


「そうですか。それにしては顔が赤いですよ?」

「ゆ、夕日のせいだ!夕日の!」


 先生、夕日のせいだって言ってますが、今は昼なんで夕日なんて出てないんですけど……


「先生、今は昼です」

「────!?」


 夕日のせいだと言って本気で通用すると思っていた節がある山岸は昼だと指摘した俺を見て驚いた顔をする。そんな言い訳通用するのはアホか本当に夕日が差してる時だけですよ?


「いや、驚いた顔されても……っていうか、さっきの言い訳で誤魔化しきれると思ってたんですか?」

「…………いや、別に誤魔化しきれるとは思ってない」


 誤魔化しきれるとは思ってないのならさっきの間は何なんですかね?


「誤魔化しきれると思ってないのなら学園ドラマの見過ぎですか?」

「う、うるさい!それよりも今は君の婚約者の話だ!さっきの言い分だと婚約者に会って顔さえ見れれば考えない事もないと言っているようにも思える!その辺はどうなんだ?」


 山岸の言ってる事にも一理ある。さっきの言い方じゃ婚約者に会って顔さえ見ればない事もないと言ってるようにも捉えられる


「ま、まぁ、実際に会って顔を見て話しをすれば考えない事もないですが……さっきから先生は俺の婚約者についてやたらと聞きたがってきますよね?」


 出来れば俺の2つ目の山岸婚約者説は外れてほしい


「そ、それは藤堂が言っていた婚約者というのは私の事だからな!」


 出来れば外れてほしかった山岸婚約者説。マジで外れてほしかった……山岸が?俺の?婚約者?マジか……


「マジですか……」

「ああ!マジだ!藤堂────いや!遊!君の婚約者は私だ!」


 本当の母が襲来する前に担任である山岸佳乃が俺の婚約者だと発覚してしまった。邑田も美沙里も教えてくれなかったのに


「えーっと、山岸先生?」

「佳乃だ!他の生徒の前だと困るが、2人きりの時は佳乃と呼べ!」


 山岸は自分が婚約者だと開き直って暴露したからなのか、佳乃呼びを推してきた。開き直った女は強しってか?


「いや、そう言われましても……貴女は先生ですし……先生を呼び捨てにするだなんて……」


 山岸が婚約者だとわかっただけでも対応に困るのにその上呼び捨てで呼ぶだなんて俺には出来ない


「今は他の生徒はいないんだ。だから遊!佳乃と呼び捨てで呼ぶのだ!それとも……私の名前呼ぶのは嫌……かな?」


 さっきまで男のような振る舞いを見せていたのに急に女性らしいというか、女の子っぽい振る舞いをしないでほしい。マジで対応に困るから


「い、嫌じゃないです……よ、佳乃……さん」

「佳乃!」

「いや、無理ですって!年上の女性をいきなり呼び捨てだなんて!」


 心の中では山岸と呼び捨てにしている俺だが、あくまでも苗字だ。だからというわけではないが、苗字なら呼び捨てで呼ぶのも抵抗感はない。それが下の名前となると話は別。香月や美月の事は例外だ。あの2人は最初の未来じゃ義理とはいえ家族でそれもあってか抵抗はなかったわけじゃないが……まぁ、呼べた。


「結婚したら私も同じ苗字になるんだ。今から練習として呼び捨てで呼べ!」


 山岸は俺と結婚する気満々のようだが、俺は婚約に了承してないし、第一、結婚するだなんて一言も言ってない!


「待って!俺は婚約する事に了承してないし、結婚するとも言ってない!大体!俺と先生の婚約って誰が決めたんですか?」


 教師と婚約するだなんて普通に考えてあり得ない。それこそ親同士が決めた事でもない限りは俺の中ではあり得ない事だと思っている


「そんな事、遊の本当のお母様に決まってるだろ。もしかして君は実母の事を何も知らないのか?」


 信じられないと言った感じで俺を見る山岸。実際その通りだ。俺は実母の事は何も知らない。遊亜から本当の母と美沙里がヤベー奴だと話には聞いていたが、美沙里はその片鱗すら見せない。こうなってくると本当の母はともかくとして、美沙里の方は疑わしくなってくる


「残念ながら知りません。俺は本当の母については借金を理由に俺を施設に預けた事や欲しいものはどんな手段を使っても手に入れる事以外は何も知らないんです」


 まだ見ぬ本当の母。本当の母を知っている美沙里と邑田は何も話してはくれない。本当の母どころか婚約者の事すら


「そうか……実母の事を何も知らないのか……」

「ええ、なので先生が教えてくれたら助かるんですけど……」


 邑田と美沙里が教えてくれない以上は山岸が頼りだ


「私が教えてもいい。しかし、それには条件がある」

「条件?それさえクリアすれば教えてくれるんですか?」

「ああ、教えてやるぞ。君の実母の事は何でもな」


 条件さえクリアすれば本当の母について教えてくれる。問題はその条件だな


「わかりました。どんな条件でも構いません!本当の母の事を教えてください!」


 俺は山岸に頭を下げた。どんな条件を出されたとしても本当の母について情報がない以上、俺が頼れるのは山岸しかいない


「その言葉に嘘はないな?」

「ありません!本当の母について知る事が出来るのなら」


 俺の言葉を聞いた山岸は何も言わず一瞬顎に手をやり何かを考える素振りを見せた。そして──────


「君の熱意は解かった。ならば“佳乃、愛している。世界中の誰よりも”って言ってくれ」


 とんでもない要求を突き付けてきた


「えっ?」


 山岸が何を言っているのか理解出来ない。どんな条件でも構わないとは言ったが、どうして俺が山岸にプロポーズ染みた事を言わなきゃならないんだ?


「えっ?じゃない。“佳乃、愛している。世界中の誰よりも”って言ってくれたら君の実母について私が知っている事を教えると言っているんだ」


 本当の母について情報をくれるのはいい。その代償として条件を突きつけられるのも仕方のない事だ。情報を貰う側として何等かの条件を突きつけられるのは予測してなかったわけじゃない。問題なのはその条件だ


「本当の母について情報をくれるのは有難いです。条件を突きつけられるのも納得してます。ですが、その条件がどうして先生にプロポーズ染みた言葉を言う事なのかは全く理解出来ないです」


 俺と山岸は生徒と教師。だったら生徒である俺に突きつける条件は1週間トイレ掃除とか、先生の手伝いとかでいいはずだ


「そんなの簡単だよ。私が君の婚約者だからに決まっているじゃないか」


 恋愛に対して絶対にこうあるべきだっていう考えは持ってない俺でも愛してない相手、好きでもない相手に“愛してる”や“好き”とは言えない


「先生はご存じかどうかは知りませんが、俺には彼女がいます」

「知ってるよ。3年の小山だろ?」

「はい」


 山岸の情報源がどこかは不明だが、俺に彼女がいる事は知っていた。今のところは美月の事しか知らないようで何よりだがな


「彼女は裏切れないか……」

「ええ、俺は彼女を裏切る事は出来ません」


 本当の母について情報は欲しいが、だからと言って遊華達は裏切れない


「じゃあ、君の実母についての情報はなしだ」


 遊華達は裏切れない。でも、本当の母について情報は欲しい


「さっきの事以外なら何でもします!俺には本当の母の情報が必要なんです。何とかなりませんか?」


 山岸に愛していると言うのは無理だ。彼女達は裏切れないからな。しかしだ。本当の母情報は欲しい


「私の名前を呼んで愛していると言う。これ以外は認めない」


 山岸の名前を呼んで愛してると言う事以外認めない。本当の母の情報と遊華達……俺はどうしたらいいんだ……









今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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