【本当の母襲来編1日目前編】俺が自分の彼女に吸い殺されそうになった件について
今回は本当の母襲来編の1日目前編です
この作品は久々なので多少口調が迷子だったりします。
では、どうぞ
俺を兄と呼ぶ女性と遭遇したのが昨日。正確には月曜日の事だ。そして、今日は火曜日。で、迎えに来るのが週末……多分、金曜日だ。勝手にそう決めた俺は今日も普段と変わらぬ朝を過ごしていた
「本当の母が週末に迎えに来るってのに俺の朝は何も変わんねーな」
俺はいつも通り遊華達よりも早く起き、シャワーを浴び、歯を磨き、制服に着替えた後で朝食を作る。で、ある程度できたところで遊華達が起きてきて各々が支度をする。本当の母が迎えに来る事を知ろうと俺のする事は何ら変わらなかった。そんな中1つだけ思った事があった
「あっ、自称妹の名前聞いてない……」
俺は昨日、悠馬と一緒に飲み物を買いに行って浩太達のいる屋上に戻る途中に俺を兄と呼ぶ女性……自称妹に遭遇した。あっちは俺の名前を知っていたが、俺は自称妹の名前すら知らなかった
「仮にも妹なんだから名前くらい知らないとヤバくね?」
本当の母の事も自称妹の名前も俺は何1つ知らない。いや、知ってる事はあるか。本当の母は借金を理由に俺を施設に預けた事。遊亜の話によると本当の母と自称妹は俺の人間関係を壊そうとするらしい事
「いくら何でも情報が少なすぎる」
ザックリと整理すると、本当の母は金にがめつく、自称妹は自分の思い通りにならないものは壊してでも言う事を聞かせようとする。こんな感じだろう。うん、ぶっちゃけ怖い
「まぁ、何とかなるだろう」
どんな手段を用意してようと俺は本当の母の元へ行くつもりなんてない。迎えに来た時にどうなるかはしらんけど、多分、何とかなる。
「何が何とかなるのかな?」
リビングの入り口を見るとパジャマ姿の遊華がいた
「おはよう、遊華」
「うん、おはよう。それで?何が何とかなるのかな?」
遊華はさっき俺が言ってた独り言を聞いていたらしい。どこから聞いてたのかは知らんけど。だが、どこから聞いていたのかは知らんが、遊華には……いや、遊華達には正直に言うべきか言わざるべきか悩むところではある。
「あー、今日の夕飯に使う食材が減ってたんだが、帰りに買い物すれば何とかなるかな~って」
本当の母が迎えに来るのは週末。今日が火曜日だから時が来たら言えばいいと思い、この場は適当に誤魔化す
「ふぅ~ん、お兄ちゃんは私に隠し事するんだぁ~、へぇ~」
誤魔化したのが遊華に一瞬でバレてしまった
「あ、いや、別に隠し事をしたわけじゃないぞ?本当に冷蔵庫の中が壊滅的だっただけだ」
ここは正直に言うべきだったんだろうけど、俺は誤魔化した。本当の母と自称妹の事は本来俺自身の問題だ。遊華達や浩太、敬を巻き込む事はできない。そんな俺の思いを知ってか知らずか遊華はツカツカと俺の方へ向かってきた。そして────────────
「そんな誤魔化しが通用すると思ってんの?どれだけお兄ちゃんの事見てきたと思ってんの?」
耳元でこう囁いた。ハッキリとは言わなかったが、遊華は暗に“私に誤魔化しは効かない、お前の身に起きた事を全て話せ”と言っているように俺には聞こえた
「…………遊華に誤魔化しは効かないか」
「当たり前でしょ?昨日何があったか全て話して」
「わかった。わかったから一旦離れてくれ」
「私的にはこのまま話してもらっても構わないんだけど?」
「俺が話しづらいんだよ」
「ふぅ~ん、まぁいいや。けど、正直に全部話してね?」
「ああ。でも先に朝飯を作り終えておきたいんだが」
「それまで待ってる」
遊華は俺から離れ、リビングに行った。そして、俺は朝食の用意を済ませ、俺と遊華の朝食を持ってリビングへ運び、俺は遊華と向かい合う形で座る
「今日の朝食は目玉焼きとパンなんだが……それでよかったか?」
「うん。それよりも昨日何があったか話して」
「あ、ああ、わかってる」
それから俺は遊華に昨日あった事を全て話した。悠馬と飲み物を買いに行き、その帰りで自称妹に声を掛けられた事、自称妹と本当の母が週末に迎えに来る事。念のために遊亜から聞いた自称妹と本当の母が目的の為なら手段を選ばない事を。それを全て話し終えた遊華は……
「ふ~ん、お兄ちゃんの妹が……」
「ああ、俺の妹って言ってもあくまで自称だ。それに、俺は自分に遊華以外の妹がいるだなんて話は本当の母からの手紙で初めて知ったくらいだ。それにだ、本当に妹がいたとしたら俺が施設に預けられた後に生まれた事になる」
昨日の時点で解っている事は自称妹が1年生である事、当たり前だが、俺よりも年下な事だけだ。名前とはともかく、本当に俺の妹かどうかは正直怪しいところだ
「自称ってところは否定でないところではあるね。お兄ちゃんと私が血の繋がりがない事だって告白されて初めて知ったくらいし」
「ああ、俺は飛ばされた未来で遊華の日記を読んでそこで知った。が、俺自身本当の母は死んだと思っていた。死んでなくても俺に会いに来る事はないと思っていたんだが……去年の夏休みでそれは一気に打ち砕かれたよ」
遊華と血の繋がりがない事は最初に飛ばされた未来で遊華の日記を読んで知った。この時は俺を産んだ母親は死んだから今の両親……藤堂遊斗・華夫婦に引き取られたと思っていた。だが、実際はどうだ?去年の夏休みに遊華達、浩太と明美さん、敬と早川と共に学校に忍び込み職員室で手紙を見つけてそこで初めて俺の産みの母親は生きている事を知った
「ツッコミどころはいろいろあるけどさ、今の私……いや、私達から言えるのはお兄ちゃんは誰にも渡さないって事くらいかな。それが例え鬼や悪魔、神様であってもね」
「ああ、俺だって遊華達と離れるつもりはない。いきなり新しい環境で生活しろとか言われても困るしな」
「そこは遊華達が必要だからだくらい言ってくれた方が私的にはよかったんだけど」
「それに似たような事はいつも言ってるだろ?」
「もうっ!お兄ちゃんのバカっ!」
いつも似たような事を言ってるから趣向を変えてみたが、遊華はそれが気に入らなかったらしく、そっぽを向いてしまった。
「おはよう、遊」
遊華がそっぽを向いてる間に香月が起きてきた。
「おはよう、香月。朝飯にするか?それとも、先にシャワー浴びてくるか?」
朝食を先にすると言われたらキッチンまで取りに行かなきゃならないからな。聞いておいて損はない
「先にシャワーにするよ。ありがとう」
香月はそのまま洗面所の方へ歩いて行った。俺は俺で目の前にいる遊華の機嫌を治さなきゃならない
「遊華、俺が悪かったから機嫌を治してくれないか?」
「つーん」
向かい合う形で座っているのに俺の方を全然向いてくれない遊華。元はと言えば俺が悪いから強くは言えない。強くは言えないのだが、そっぽを向かれ続けているのは些かキツイ
「はぁ……」
こういう時俺は自分の語彙力のなさが嫌になる。俺にもっと語彙力があれば遊華がどうしたら機嫌を治してくれるか、何を望んでいるかを上手く聞き出せるのに
「何その溜息?私が悪いみたいじゃん」
やっとこちらを向いてくれたと思ったら表情は不機嫌そのものだ
「別に遊華が悪いと思って溜息を吐いたわけじゃない。ただ、自分の語彙力のなさに絶望しただけだ」
「あっそ」
さらに不機嫌になる遊華。このままじゃマジで喧嘩になるぞ……何とかせねば!!と思っても特に何かを思いつくわけではなかった。だから俺は行動で示すしかないそう思い席を立ち、遊華の方へ回り込んだ。そして──────
「遊華」
「何?目の前に立たな──────」
遊華の言葉を遮って俺はキスをした。もちろん、唇に
「んっ……むぐっ、んちゅ……んふっ、あふぅ……」
遊華と朝からディープキス。キスをしたのは俺からだったが、首に腕を回し、ガッシリとホールドしてきたのは遊華からだった。どれくらいの時間遊華とキスをしたかは知らんが、キスが終わった時、俺は……
「はぁ、はぁ……き、キスをしたのは俺からだが、ふ、普通、ディープキスするか……?」
息が上がっていた。
「だ、だって……久々だったから嬉しかったんだもん……」
顔を紅潮させ、俯く遊華。確かに遊華とキスするのは久々だし、ディープキスをしたくなる気持ちはまぁ、解らんでもない。だからってなぁ……
「た、確かに久々だが、お、俺は吸い殺されると思ったぞ……」
走ったわけじゃないから息を整えるのに時間は掛からなかったのはいいとしてだ。自分の彼女に吸い殺されそうになるとは思わなかった
「お、お兄ちゃんからキスしてきたんじゃん!」
これを言われると俺は何も言えない。それはそれとして、問題は遊華の機嫌だ
「そうだったな。それより、さっきは悪かった。いつも言ってる言葉だから言わなくても解るだろうと軽く考えてた」
「ううん、私の方こそごめんね?つまらない事でへそ曲げて」
「別にいいさ、元はと言えば俺の発言が原因だからな。だから遊華が謝る事なんて何もないんだ」
「う、うん……それよりお兄ちゃん」
「何だ?」
「香月さん達にも同じ事してあげなきゃダメだよ?」
俺は遊華達を平等に愛すると決めているから誰かを贔屓するだなんて事はしない。だけど、遊華はどうしてこのタイミングで香月達に同じ事をしろと言うんだ?
「俺は遊華達を平等に愛するって決めているから贔屓をするだなんて事はしないが、どうして同じ事をしろだなんてこのタイミングで言うんだ?」
「ん?だって香月さんはシャワーから出てきてるし、美月さん達だって起きてきてるからだよ?さっきからずっとお兄ちゃんの後ろにいるし」
「えっ──────?」
遊華から香月達が後ろにいると言われたので振り返ってみた。すると──────
「遊」
「遊ちゃん」
「遊さん」
「遊くん」
Oh、ナンテコッタイ……。マジでいたよ……しかも、俺の肩をガッシリ掴んでたよ……
「お、おはよう、みんな……」
「「「「うん、おはよう」」」」
「あ、朝飯できてるぞ?あ、それとも、シャワーにするか?」
嫌な予感しかしなかった俺は必死に取り繕う
「私は朝ごはんにするよ。遊」
「私はシャワーにするね~。遊ちゃん」
「じゃあ、私は歯を磨いてきますね。遊さん」
「それなら私も由紀ちゃんと同じく歯を磨いてくるね。遊くん」
「そ、そうか……」
香月はキッチンへ、美月、由紀、美優は洗面所の方へ。各々が向かっていった。勝った!これで誤魔化せる!そう思った時だった
「あ、そうそう、遊」
キッチンへ向かう香月が足を止めたのは。それに倣って美月達も足を止めた
「な、何だ?」
香月が足を止め、美月達がそれに倣った事で俺は若干恐怖を感じた。正直、嫌な予感しかしない
「「「「後で私達にも同じ事してね?」」」」
香月達はこちらを振り返ることなく同じ事をしろ────つまり、遊華と同じく自分達にもディープキスをしろと言ってきた。見られてないのなら誤魔化しきれるが、さすがに見られていたと観念した俺は──────
「わ、わかりました」
こう答えるしかなかった
それから、香月は朝食後に、由紀と美優は歯磨きが終わって戻って来た時に、美月はシャワーから出てきた時に。それぞれにディープキスをしたのだが……遊華の時同様に吸い殺されると思った。そんなプチイベントを乗り越え登校し、教室へ辿り着いた俺はというと……
「朝からフルマラソンした気分だ」
1人机に突っ伏していた。そんな状態はHRまで続いた。補足として言っておくが、俺が教室に入ると浩太と敬はおらず、その数分後くらいに浩太が、浩太が教室に入って来て数分後に敬と早川が来た。んで、ここからなのだが、浩太と敬は俺と同様に教室に入ってくるなり机に突っ伏してしまったという事を言っておこう。
昼休みまで必要な事以外は誰とも喋らなかった俺なのだが、昼休みに入り、珍しい事が起きた
「藤堂君、3年の先輩と1年の子達が呼んでるよ?」
昼休みも朝と変わらず突っ伏していた俺は1人の女子生徒の声で顔を上げた
「3年の先輩と1年の子達?」
「うん、ほら」
女子生徒が入口を指さした。その方向にいたのは──────
「遊ちゃん!」
「お兄ちゃん!」
「遊さん!」
「遊くん!」
手を振っている遊華達だった
「遊華達だったか」
「早く行ってあげたら?」
「ああ、そうする」
俺は女子生徒に礼を言ってから遊華達の元へ向かった
「よう、お待たせ」
昼休みに遊華達が俺の教室に来る理由なんて1つしかないので『どうした?』とは聞かなかったが、遊華達が俺のいる教室に来る事自体は今日が初めて。まぁ、遊華には自称妹に会った話をしたし、多分、遊華経由で美月達にも伝わってできる限り俺と一緒にいようってなったんだと思う
「そんなに待ってないよ。遊ちゃん」
「それならいいが……美月達が呼びに来るとはな」
「ま、まあ、遊華ちゃんから昨日の事は聞いてるからね。できる限り遊ちゃんと一緒にいようと思って」
美月の答えは俺の思った通りのものだった。朝の事は……思い出すと恥ずかしくなるから言わないが、多分、家で身支度をしている時か登校中にでも遊華が自称妹の事について喋ったんだろう
「そうか……」
遊亜から聞いた話もあったからか、気にする必要なんてないとは気軽に言えないかった
「それはいいとして、お兄ちゃん!お昼ごはんなんだけど──────」
「やぁ、楽しそうだね。藤堂君」
遊華が喋ってるのを遮って乱入してきた人物がいた。ソイツの名は──────
「邑田……」
転入生の邑田亮平。遊華が喋ってるのを遮ってきた人物である
「うん。そうだよ。いやぁ~、嬉しいな~。藤堂君に名前を憶えられてて。ところでそちらの可愛らしい女性達は?」
邑田は爽やかスマイルを浮かべているが、俺としてはせっかくの遊華達のと会話を邪魔しないでほしかった
「俺の妹の藤堂遊華と親父の同級生の子で仲良くさせてもらっている小山美月。そして、遊華の友達の秋野美優と冬野由紀」
遊華達との会話を邪魔されイラっときたが、紹介しないわけにもいかなかったので関係と名前だけ言った。4人と付き合ってますだなんて口が裂けても言えなかったので軽い紹介になってしまったがな
「へぇ~、みんな可愛いね!藤堂君!あっ、僕の自己紹介がまだだったね!僕は邑田亮平!この学校にはまだ来たばかりだけみんなと仲良くなれたら嬉しいよ!よろしく!」
爽やかなスマイルを浮かべ、遊華達に握手を求める邑田。
「「「「よ、よろしく……」」」」
そんな邑田に若干引き気味の遊華達。爽やかイケメンでも引かれるんだな。しかも、地味に握手拒否られてるし
「よろしく!そうだ!これからお昼ならみんなで一緒にどうかな?」
「「「「いえ、結構です」」」」
邑田の提案を間髪入れずに拒否する遊華達を見てスゲーなと思う反面、周囲からの妬みとか大丈夫だろうか?と心配になる
「まぁ、そう言わずに。みんな待ってるからさ!ね?」
邑田が顔を向けた先にいたのは浩太と敬、早川を始めとするクラスメイト達だった
「いえ、私はお兄ちゃんと一緒に食べるので邑田さんはお友達とどうぞ!」
邑田の提案を考える暇なく断る遊華は肝が据わっていると思う。さすが、俺の彼女最強のヤンデレだ
「みんなで食べた方が美味しいと思うんだけど……それでもダ──────」
「お兄ちゃ~ん!一緒にお昼食べよー!」
邑田がダメかと聞くのを遮って登場したのは昨日俺を兄と呼んだ自称妹
「「「「「……………………」」」」」
「マジか……」
自称妹の登場で無言になる遊華達と邑田。そして、頭が痛くなる俺と騒然となるクラスメイト達。今日は厄日か?いや、本当の母が週末に迎えに来るから今週が厄週なのか
「お兄ちゃん!一緒にお昼食べよ!」
そんな俺の思いや無言の遊華達と邑田、騒然となるクラスメイト達にはお構いなしといった感じの自称妹は俺に抱き着いてきた。
「お、おい……!だ、抱き着くなよ……!」
抱き着かれるのは遊華達で慣れているからいいとしてだ、名前も知らない女性に抱き着かれた事など生まれてから1度もない俺はいきなりの事で動揺してしまった。
「え~!いいじゃん!兄妹なんだしさ!」
全然よくないんですが……とにかく!今はこの自称妹を引きはがそう!そう思った時
「「「「ダメだよ!!さっさと離れる!!」」」」
「え!?ちょ、離してよ!!」
無言だった遊華達によって自称妹は引きはがされた
「た、助かった……」
自称妹が引きはがされた事で俺はホッとした。遊華達はただでさえヤンデレなのだ。今はお咎めなしだったとしても家に帰れば今の事について何か言われるのはもちろん、その後俺は遊華達のご機嫌取りをしなければならない。言い方を変えると俺は今だけ助かったのだ
「は、ははは、遊華さん達は独占欲が強いんだね……」
遊華達の意外な一面を見てドン引きしている邑田。
「ま、まぁな、美月達はともかく、遊華は母親似だからな。独占欲が強いんだよ」
「そ、そうなんだ……」
と、ここで邑田が諦め、自称妹が自分の教室に戻ってくれれば話は済んだのだが、現実はそう甘くない
「お兄ちゃん!!いこ!」
遊華達によって引きはがされ、どこかへ連れて行かれたと思われた自称妹はどうやらその包囲網を突破したらしく、俺の元へ駆け寄ってきた。
「は!?行くってどこへだよ!」
「いいから!いこ!」
自称妹に俺は強引に手を引かれ教室を出た。後ろから遊華達の『待てッ!!』っていう声が聞こえたのだが、それでも自称妹は止まらず、俺を追いかけようとした遊華達は邑田によって足止めを食らってしまったらしく追いかけてくる事はなかった
今回は本当の母襲来編の1日目前編でした
この作品は久しぶりの更新なので遊もそうですが、遊華達の口調も若干迷子になりました。それはさておき、自称妹がついに動きました。次回は自称妹の名前が明らかに!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました