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朝から精神的に疲れた俺が厄介事を浩太に押し付けた件について

今回は遊の精神的疲労と浩太が面倒事を押し付けられる話です

みなさんは1年前に遊が遭遇した美優のストーカーだった少年を覚えてますか?

では、どうぞ

 遊華達が入学してきたのが昨日。で、1日が経ち、今日からは通常の授業がある。何て言うか、やっと2年生になってからの学校生活がスタートした感じだ。それでだ。ラブコメ的展開だと一目置かれる新入生か先輩が登場するだろ?それで特にイケメンでも何でもない主人公に声を掛けてそこから恋愛に発展したりとかするなんて展開がよくあると思う。俺、藤堂遊も今じゃいろんな意味で有名だったりする


「「「「「「「お義兄さん!!妹さんを僕に下さい!!」」」」」」」


 登校して早々、入学式の日に遊華に告白していた連中が校門前で待ち構えていた


「まだ諦めてなかったのか……お前ら」


 今目の前にいる連中はさっきも言ったと思うが、入学式の日に遊華に告白した。結果はこっ酷くフラれるという散々な結果に終わったはずなのだが、どういう訳かこうして校門前で待ち構えていた


「当たり前です!!遊華さんとの交際を認めて頂けるまで何度だって来ます!!」


 1人の男子生徒の言葉に他の連中もうんうんと頷いている。


「入学式の日に告ってフラれてんだからもう少し学習しろよ……」


 一目惚れを否定するわけじゃないが、それを抜きに考えたってコイツ等は学習しなさ過ぎる。って言うか、狙うなら俺1人の時にしてくんない?一緒にいる遊華本人もそうだが美月や由紀、美優までもが引いてるから。まぁ、後ろでは由紀と美優に告った連中も待ち構えているみたいだからこれからさらに疲れる事になるんだろうな。俺……


「恋愛は勉強とは違います!!」


 今度は美優に告った連中の1人が前に出てきた。確かに恋愛は勉強とは違うけどよ……順序ってモノがあるだろ


「あー、うん、そうだね。じゃあ遊華達にもう1度告ってみれば?」


 ただでさえ朝は怠いというのに登校して早々こんな連中に絡まれたら怠さが2倍になる(当社比)


「オニイチャン?ナニイッテルノカナ?ワタシガコンナヒトタチアイテニスルワケナイデショ?ワタシハオニイチャンサエイレバソレデイインダカラ。ナニ?ワタシガアイシテルノハオニイチャンダケダヨ?」


 さっきまで喋らなかった遊華が口を開いたと思ったら俺の前に出てきて光のない目で見つめてきた。


「悪かった。でも、この手の連中は何度でもフッてやるか心折れるまで罵倒しないと学習しないぞ?」


 世の中には罵倒されて喜ぶ性癖の持ち主がいるから一概に罵倒すれば絶対に安全だとは言い切れないが、それでもしないよりはマシだろう。本当は俺と遊華は血が繋がってない事、遊華・由紀・美優と恋人関係にある事を言えばすぐに心折れるんだろうけど、それを言ってしまうと変な噂が立つ


「ふ~ん。お兄ちゃんはそんな面倒な事するんだ」

「まぁ、暴力は好かんからな。平和的解決が一番だろ?」


 暴力で解決しても何の意味もない。特に恋愛事だと1回暴力で解決すると絶対にノータリンが自分の力を過信して俺が勝ったら~っていう展開にしそうだ


「遊さん。そんな手間を掛けなくても簡単に解決できますよ?」

「うんうん!」


 さっきまで黙っていた由紀と美優までいきなり何を言い出すんだ?でも、遊華だけじゃなく由紀と美優も告白騒動(この一件)の当事者だ。当事者が簡単に解決する方法があるって言ってるなら俺が口出しする事ではない。好きにさせよう


「遊華達がそう言うなら俺は何も言わない。やってみるだけやってみればいい」

「「「うん!」」」


 元気よく返事をした遊華達はそれぞれが告白してきた連中の方へ向かっていった


「学校って来るだけでこんなに疲れるもんだっけ……?」


 1年の頃はただ学校に来てただ勉強するだけの場所だったから何とも思わなかった。しかしだ。こうして遊華達と登校する事を除いて朝から多くの男子生徒に絡まれるとは思いもしなかった。


「仕方ないんじゃないかな?遊華ちゃんは新入生代表挨拶をするくらい優秀だし、由紀ちゃん、美優ちゃんは他の子とは違うオーラを出してるから……」


 俺と同じで疲れ切った様子の美月が苦笑いしながら遊華達の人気がある理由について語ってくれた。しかし、俺には優秀だとか出してるオーラが違うとか言われてもなって感じだ


「美月……遊華はともかくとして由紀と美優から出ているオーラなんて他の女子とそんなに変わらないだろ」

「それは遊ちゃんがいつも遊華ちゃん達と一緒にいるからだよ」


 聞き分けのない子をあやす母親のような顔で俺を見る美月を見ていると本当に年上なんだなと思う。普段は天然系で家にいる時は時々クールになる美月。天然系モードで美月が年上に見えたのは初めてだ


「そんなもんか?」

「そういうものだよ。ところで遊ちゃん」

「何だ?」

「アレどうするの?」


 美月が指差す方向にあったのは入学式の時以上の地獄絵図だった


「どうするって放っておくしかないだろ?遊華達が何をしたのかは知らんが、アレをどうにかするほど俺は優しくない。それに、余計な体力も使いたくない」


 目の前の現状について触れたくない俺は遊華達を連れ逃げるように玄関に向かった。




「昼か……」


 朝のHRを終え、1時間目から4時間目まで授業があった。が、今日は初日という事で最初は自己紹介から入り、それから各教科担当の授業の進め方についての説明と教科書や問題集の中身について軽く説明があった。これが4時間目まであった程度だ。授業らしい授業はしてない。そして、昼休みとなった


「今日は弁当作ってきてなかったな」


 今日は弁当を作ってきてない。時間がなかったわけじゃなく、遊華達が購買に行きたいと言い出したから作ってないだけだ。


「購買に行くか。もしかしたら遊華達とばったり会うかもしれないし」


 去年までは浩太と敬。この2人と購買に行く事が多かった。でも、浩太も敬も彼女と同棲をしているから弁当を作ってもらっているだろうと思う。なので俺は1人寂しく購買に行く事にしよう


「これから購買か?遊」


 教室を出ようとしたところで浩太に声を掛けられたが、その手に弁当らしきものはなかった


「そうだが……浩太、明美さんからの弁当はどうした?」


 明美さんの事だから弁当を用意しているものだとばかり思っていた。だが、浩太の手に弁当はない


「……………………………………聞かないでくれ」


 浩太は顔を反らした。初めて会った時の香月と同じように明美さんの料理もマズイとかそんな感じか?そういえば最初に飛ばされた未来じゃ俺と浩太が飯を作ってたっけ


「聞かれちゃマズいのか?」


 いつもなら聞くなと言われたのなら深く聞くような真似はしないのだが、今回はそうはいかない。敬に限った事じゃないが、浩太だって大人になってからも交流がある。明美さんの料理が不味い事は俺にとっても都合が悪い


「マズくはない。でも、聞いた後で引くなよ?」


 浩太の緊張感溢れる表情からは並々ならぬ事情がある事が見て取れる。一体どんな事情があるってんだ?


「ああ、カレーが唐突に変色したとかそんなんじゃない限りは引かねーよ」


 カレーが唐突に変色したは言い過ぎかもしれない。でも、世の中何が起こるかわからない。それを俺は身を持って体験している。ぶっちゃけカレーを唐突に変色させるくらいやってのける人がいてもおかしくないと思っている


「重箱だったんだ……?」

「はい?重箱?お前何言ってんだ?」


 いきなり重箱と言われても反応に困るぞ浩太


「だから、明美の奴が俺に持たせようとしたのは重箱だったんだよ!」


 今の言葉で何となく察せてしまった。多分だが、明美さんは浩太の為に弁当を作ったのだろう。でも、その弁当箱が重箱で開けたら料理がビッシリ。で、いくら何でもこれは持って行けないという事で浩太の弁当はなし。こんなところだろうな


「あー、要するにだ。明美さんが弁当を作ってくれたのはいいがその弁当箱が重箱で開けたら料理がビッシリだった。さすがに重箱なんて持って行けないと判断したお前は彼女の手料理を泣く泣く諦め、今日は購買で何か買う事にした。こういう解釈でOK?」

「あ、ああ。よくわかったな」


 俺が今言った事はほとんどが当てずっぽうだったのだが、どうやら当たったらしい。それにしても明美さん……さすがに重箱はねーよ


「最初に飛ばされた未来で年上ヤンデレとポンコツな大人に囲まれてたんだ。重箱ってワードで何となく察せたわ」

「そ、そうか……遊も大変だったんだな……」


 大変なんてもんじゃない。年上ヤンデレは言わずもがな遊華・香月・美月の事だ。ポンコツな大人はもちろん親父と羽月さん。後は……本人の為に黙っておく


「まぁな。で?明美さんの弁当はどうするんだ?」


 弁当を持って行く事を拒否っただけでも彼女としてはショックがデカかっただろう。そんな弁当を捨ててみろ。速攻で破局だぞ?


「晩飯に当てた」

「懸命な判断だ」


 喋っている時間がもったいなかったので俺達は一先ず購買に移動する事にした。




「なぁ、遊」

「何だよ?」

「何かあそこだけ騒がしくないか?」


 浩太が指差したのは購買の一角。昼時になると学生が弁当を求めてやってくるから騒がしくなるのは仕方ない。だが、それとは別のベクトルで騒がしくなっていた


「私と過ごすのよ?貴女は引っ込んでなさい」

「違うよ!あたしと一緒にいるの!!あなたこそ引っ込んでよ!!」

「違いますわ!(わたくし)と過ごすのです!!貴女方はすっこんでなさい!!」

「皆さん勘違いしないでください!!彼は私と過ごすんですよ!!」


 購買の一角で言い合いをしているであろう女性達の声がした。


「お、落ち着いてくれよ……」


 それをどうにか止めようとしている男性の声も聞こえる。これは……あれだ。修羅場だ。


「俺達じゃ止められないな。遊」

「だな」


 俺達じゃ止められない。それは他の連中も同じ事を思ったのか、みんな我関せずだ。中には言い合いしている連中なんて最初からいなかったと言わんばかりに話し込んでる連中もいるし


「触らぬ神に祟りなしだ。さっさと昼飯買って戻るぞ。遊」

「ああ。でも、あの声どこかで……まぁいいか」


 女性達の言い合いを止めている男性の声に聞き覚えがあったが、朝の一件もあり、これ以上疲れたくない俺は強引にその声を知らない事にし、適当に総菜パンを選び、会計しようとした。が──────


「あ!師匠~!助けてくださいよ~!」


 現実とは無情なもので俺の願いは無残にも打ち砕かれた。


「遊、何かお前の事師匠とか呼んでるけど知り合いか?」

「いや、知らね。大体俺は弟子を取った覚えはない」

「いやでも……」

「知らんもんは知らん!」


 1年の時に美優のストーカーだった少年に師匠と呼ばれた。俺を師匠と呼ぶ奴なんて後にも先にもあの少年くらいなのだが、まさかその少年が俺の通っているこの高校に入学しているなんて事があるはずがない。あの時の俺は私服だったから服装で高校がバレるなんて事はあるはずがない


「でもこっちに向かって来てるぞ?」


 浩太の指さした方を見ると確かに少年は『師匠~!』と言いながら俺の方に向かって来ている


「そうか。浩太、俺は用事を思い出したからいつもの場所で待ってるじゃあな」

「お、おい!遊!」


 自分の昼飯を確保した俺は踵を返しダッシュで逃げた




 遊が逃げた後、俺はどうしていいかわからなかった。


「し、師匠~……」


 遊に逃げられ、落ち込む少年。どうするんだよこれ


「とりあえず事情を聞いてみるか……」


 この少年から事情を聞かない事にはどうして遊が逃げた理由がわからない


「し、師匠~……こんな修羅場に俺を残して行くなんて酷いっすよぉ~」


 どうしたものか……今なら少しだけ遊の気持ちが解る。前途多難だ……。こういうのは遊の担当だろ……?


「あー、少年?大丈夫か?」


 とりあえず落ち込む少年に声を掛けてみた


「うぅっ……師匠~……」


 ダメだ。話聞いてないな


「はぁ……そんなに師匠に会いたいなら居場所知ってるから話をした後で連れてってやる」

「本当っすか!?」


 遊の事を出した途端に元気になるとは現金な奴だな


「ああ。自己紹介が遅れたな。俺は佐藤浩太。遊の友達だ。で?そっちは?」

川端悠馬(かわばたゆうま)っす!浩太先輩!」

「そうか。川端君」

「悠馬でいいっす!」

「そうか。悠馬君。それで?どうして遊を師匠って呼ぶんだ?」


 遊の事だからきっと何かしたに違いない。そう、悠馬君に師匠と呼ばせる程の何かを


「1年前、俺は秋野さんのストーカーだったっすけど、その時に会ったのが師匠っす!」

「それで?」

「はい!それで────────────」


 どうも話によると悠馬君は1年前に美優ちゃんのストーカーをしていた。そんな時、遊が現れた。最初は美優ちゃんの彼氏が自分をボコしに来たと警戒したけど遊は殴るでも怒鳴るでもなく、大人の女性の魅力について熱く語った。で、大人の女性が集まる店の名刺までくれたらしい。遊、親父さんの部屋から出たゴミを悠馬君に押し付けたな……


「話は大体わかった。俺から悠馬君に言う事はほとんどないからいいとして、君はどうして4人に取り合われるという修羅場に遭遇したんだ?」


 悠馬君の話が本当なら元とはいえストーカーは女子から嫌われても仕方ない。さっきの様子を見ると悠馬君は嫌われるどころか逆に好かれている


「自分でも不思議なんすけど、師匠の真似をして女子をストーカーから守ってたらいつの間にか日常的に修羅場になるようになったっす!」

「はぁ……」


 悠馬君が遊の真似をした。これを聞いた俺は溜息しか出なかった。それと同時に頭が痛くなった。なんつーか、遊の真似をする悠馬君も悠馬君だが、そんなんで簡単に惚れる方にも問題はある


「こ、浩太先輩?どうしたっすか?溜息なんて吐いて」

「何でもない。約束通り遊のところに連れてってやるよ」

「はいっす!」


 悠馬君は遊を師匠と呼ぶ理由を話してくれたから約束通り遊のいるであろう屋上に連れて行く。それはいいとして問題はさっきから俺を睨んでいる4人の女性だ。


「「「「…………………」」」」


 頼むから無言で睨むの止めてくれねーかなぁ……


「あー、そっちの4人もよかったらどうだ?」

「浩太先輩!?何言ってるんすか!?」

「「「「はい!是非!!」」」」


 驚愕した顔の悠馬君と嬉しそうに返事をする4人の女性。両者の反応は真逆だが、元々この4人は誰が悠馬君と過ごすかで争っていたんだ。俺と遊、遊華ちゃん達が増えても問題はないだろ。悠馬君と一緒に過ごせるなら


「この4人は悠馬君と誰が一緒に過ごすかで争っていたんだ。悠馬君は遊に会いたい、そこの4人は悠馬君と一緒に過ごせる。一石二鳥だろ」


 遊に会いたい悠馬君の願い、悠馬君と一緒に昼を過ごしたい4人の女性達。そして、多分、遊と一緒に昼を過ごしたい遊華ちゃん達。どの願いも叶えるには遊のいるであろう屋上に行くのが1番いい。そう考えた俺は遊華ちゃん達と合流し悠馬君達を引き連れ屋上へ向かった。







今回は遊の精神的疲労と浩太が面倒事を押し付けられる話でした

前書きでも書きましたが1年前に遊が遭遇した美優のストーカーだった少年を覚えていたでしょうか?多分忘れている人が多かったと思います。実際私も忘れてました。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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