表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/165

俺が集団告白に出くわした件について

今回は遊華の入学式から集団告白まで

今回の見どころって後半の集団告白かな?

では、どうぞ

 入学式。俺達2年生にとっては初めてできる後輩との初対面の瞬間でもある。後輩との初対面という部分では3年生も同じだが……それは置いといてだ。俺はこの入学式で自分の恋人3人が同じ高校を受験し合格した事を初めて知った。え?聞く機会はいくらでもあっただろって?聞いても教えてくれなかったんだよ!


『その時は優しく力を貸していただけると嬉しいです。新入生代表 藤堂遊華』


 俺は今、遊華の新入生代表挨拶を聞いてマジかと思っている。入場の時にチラッとだけ遊華達の姿を見た時は他人の空似くらいにしか思ってなかったが、まさか本人だったとは……


「他人の空似だと思っていた……」


 別に遊華達が同じ学校に入学してくるのが嬉しくないわけじゃない。でも、これからの事を考えると何て言うかやりづらい……いろいろと


「遊華ちゃんが入学してくるとは思ったなかったって顔してるな。遊」


 隣で浩太がものすごいニヤニヤしてるんだが殴っていいよね?


「ああ。遊華達に聞いても誰1人として教えてくれなかったからな。まさか同じ学校だとは思いもしなかった」

「遊を驚かせようとしたんだろ。ん?“遊華達”?」

「ああ、新入生代表の挨拶は遊華がしてるが、新入生入場の時にチラッとだけ由紀と美優の姿を見た。んで、遊華がいるって事はどういう事だと思う?」


 一括りにしたくはないが、遊華がいるという事は由紀と美優もいるという不思議な公式ができる。本当に不思議だ


「あー、由紀ちゃんと美優ちゃんもいるだろうなぁ……まぁ、頑張れ」


 浩太よ心の全く籠ってない応援をありがとう。だがな、俺が何か災難に巻き込まれた時はお前も道連れだからな!


「死なない程度に頑張るわ」


 死なない程度に頑張る。目の前に大きな問題が待ち構えている状態の俺が出せる最善の答えだった


「死なない程度ってお前な……」


 そんな俺の答えに呆れた顔をする浩太だが、お前だって知ってるだろ?2年に進級したら本当の母が迎えに来るって手紙を寄こした事を


「今の俺に出せる最善の答えだ」

「………………」


 俺の答えに黙る浩太は何か言いたげだったがそれを言う事はなかった。




「遊、帰りはどうするんだ?」

「どうすっかな……」


 入学式が終わった後、俺達は教室に戻り帰りのHRを終わらせ下校となった。身内に新入生がいる奴の中には家族と一緒に家に帰るって奴もいるだろう。一緒に帰るかどうかは別として俺も新入生の中に身内がいる奴の1人だ。浩太や敬と一緒に帰るか、遊華達と帰るか。二者択一を考えなきゃいけない


「どうすっかなってお前……今日は遊華ちゃん達の入学式だろ?一緒に帰ってやったらどうだ?」


 浩太の言う通り遊華達と一緒に帰るのは悪くない。でも、変に注目されたくない。


「遊華達と一緒に帰るのもいいが……親父達がいるんだろうなって考えるとな」


 親父達を邪険に扱うというわけじゃないが、親父達がいると多分だが冷やかされる


「親父さん達がどうしたんだよ?」

「いや、親父達がいると冷やかされる可能性があるんだよ」

「そんな事気にするな」


 浩太にしては雑な意見だ


「いや、気にするなって……」

「俺なんて明美と同棲してからしょっちゅう冷やかされてる」

「……………何かごめん」

「いいんだ……」


 浩太、同情するぞ……


「親父達に冷やかされるかもしれねーけど遊華達と一緒に帰るわ」

「ああ、そうしてやれ」


 俺は教室で浩太と別れ、1人玄関に向かった。




「……………………………………マジかよ」


 俺の目の前には今、空想上の物語でしかありえないと思われる光景が広がっていた。


「「「「「「「藤堂さん!!」」」」」」」

「「「「「「「秋野さん!!」」」」」」」

「「「「「「「冬野さん!!」」」」」」」

「「「「「「「付き合ってください!!」」」」」」」


 実際に集団告白する連中を生まれては初めて俺はこの目で見た。


「……………………………………どうすんだよ」


 最初は何やら人だかりができてるなくらいにしか思ってなかった。それでも空想上の物語でしかありえないと思われる光景だったのにそれが集団告白と来たもんだ。俺にはどうする事もできん


「「「ごめん、無理」」」


 事の成り行きを見守っていた俺だが、告白をバッサリ切り捨てた遊華達に若干驚いてる。うん、俺ビックリ


「「「「「「「なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」」」」」」」


 告白をバッサリ切り捨てられた男子達は皆一様に膝から崩れ落ち、雄叫びを上げているが、お前らの中にはもう少し親しくなってから告白するって考える奴はいないのか?いきなり知らない奴に告白されてOK出す奴なんてあんまりいないぞ?


「両親が来ている日によく告白できるよな……俺には無理な芸当だ」


 バッサリ切り捨てた遊華達も遊華達だが、それ以上に入学式という両親が来ている日に告白する。しかも、集団で。その辺は評価してやってもいい


「「「「「「「り、理由を教えてください!!」」」」」」」


 遊華達にフラれた連中は納得がいかなかったようでしつこく食い下がっている。フラれたんだから諦めろよ……


「「「入学式に告白してくる人は生理的に受け付けないから」」」

「「「「「「「そ、そんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」


 校門で愛の告白をしフラれた男の集団とその告白をバッサリ切り捨てた女子3人。最早地獄絵図だ。身内の事とはいえこういうのは関わらない方が身のためだ


「遊華達には悪いが触らぬ神に祟りなしだ」


 俺は遊華達と告白した男子集団に見つからないようにして校門を抜け出そうとした


「あ!お兄ちゃん!」


 が、遊華にアッサリ見つかってしまった。この場合どんな反応したらいいんだ?


「よ、よぉ、偶然だな。い、今帰りか?」


 俺が遊華達とあったのはあくまでも偶然だ。うん。偶然だ。


「うん!お兄ちゃんも?」

「あ、ああ、今さっき終わってな。で、帰ろうとしたら何やら人だかりができてビックリしてたところなんだが……何?この男子達」


 本当は崩れ落ちている男子集団が遊華達に告白する場面を最初から見ていた俺なのだが、これが1人の男子生徒によるものだったら嫉妬していたかもしれない。が、集団での告白でしかもフラれたとなると嫉妬する気も起きない


「何でもありませんよ。ちょっと道を聞かれただけです」

「そ、そうか……」


 由紀の言い訳は男子達が告白するところからフラれるまで全て見ていた俺としては苦しいものがある。それにだ。『今日入学したばかりの由紀達に道を聞くのは変だろ』って言われたらなんて言い返すつもりだよ


「私達も今日入学して学校に慣れてないのに困っちゃうよね~」


 あくまでも自分が告白されてたという事実をなかった事にするつもりなのか告白をされた事を全力でスルーする美優


「そ、そうだな……ところで、さっきからそこの男子集団からすっごい見られてるんだけど?」


 遊華達をスルーして帰ろうとしたところで遊華達に声を掛けられたのはこの際いいとしてだ。問題は遊華達に声を掛けられた時からずっと俺に突き刺さっている男子集団からの嫉妬や殺意が込められているであろう視線。俺はそれが気になる


「気のせいだよ!お兄ちゃん!」


 遊華、嫉妬や殺意の視線を気のせいで済ませられるほど俺は神経が図太くないんだよ?


「いや、気のせいじゃないんだが……」


 なるべく見ないようにしていた男子集団に目を向けると『アイツ藤堂さんの何なんだよ……』とか『冬野さんと親し気に話すとか死ね』とか『俺の秋野さんを返せ』とか聞こえてくる。うん、由紀と美優のはともかくとして、遊華は思いっきり俺を“お兄ちゃん”と呼んでた時点で察してくれると助かるのだが……


「気のせいだよ!お兄ちゃん!それより、そんな蟻のような人達なんて放っておいて帰ろうよ!」


 遊華、曲がりなりにも自分に告白してきた人たちを蟻呼ばわりかよ……


「あ、ああ、そうだな……ところで親父達の姿が見えないんだが?」


 姿が見えないのは親父達だけではない。由紀と美優の両親の姿も見えない


「お父さん達は保護者説明会に出てるよ?お兄ちゃんの時にもあったでしょ?」

「あー……そういえばそんなのあったな」


 俺は自分が高校に入学出来た事実に驚き過ぎてて入学式の後に保護者説明会があった事なんて忘れていた。去年はそんな事あったかな?程度の認識だ


「遊くん忘れてたの?」

「ああ、忘れてた」


 新入生の立場だった時も同じ事を思ったが、入学式って怠い。ただ座って話を聞くだけの式なんて怠いの一言に尽きる


「あ、入学式と言えば!お兄ちゃんは私の新入生代表ちゃんと聞いてた?」


 遊華は新入生代表の挨拶をした。自分の身内が代表の挨拶をすると言うのは何ともむず痒い気持ちになる。一応、ちゃんと聞いてたけど


「ああ、聞いてたぞ。よく頑張ったな」


 俺は遊華の頭を優しく撫でた。例え半分以上聞いてなく終わりの方しか聞いてなかったとしても頭を撫でておけばとりあえず何とかなる。これは親父が誤魔化す時に使う手法だ


「えへへ~」

「「むぅ……」」


 子供みたいな笑顔を浮かべる遊華と頬をリスみたいに膨らませる由紀達。


「剥れんでも後でいくらでもしてやるって」

「「本当!?」」

「ああ。本当だ」

「「やった!」」


 剥れていた由紀達は先ほどとは違い、満面の笑みを浮かべた


「さて、いつまでも校門で駄弁ってても仕方ない。帰るか」

「「「うん!」」」


 俺達は親父達を待たずに家へ────────────


「「「「「「「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」」」」」


 帰れなかった。


「う、うるせぇ……」


 男子達の雄叫びにより思わず耳を塞いでしまった俺達。そして、それを何事かと見ている周囲の人達。君達、場所考えようよ


「貴様!!藤堂さんの何なんだ!!」


 俺に指をさし1人の男子が俺と遊華の関係について質問してきたが、コイツはさっきの会話を聞いてなかったのだろうか?


「さっきの会話聞いてなかったのかよ?俺は遊華の兄だ」

「嘘だ!!」

「本当だ。あと人に指をさすな」


 俺と遊華は本当の兄妹じゃないから嘘だと言われても仕方ない。血縁上は義理の兄妹だが戸籍上は本当の兄妹だ。血縁上で見れば嘘かもしれないが、戸籍上は本当だ


「「「「「「「お義兄さんと呼ばせてください!!」」」」」」」


 先程質問(?)してきた男子を含め遊華に告白していた男子全員が俺の前で土下座して“義兄”と呼ばせろと言ってきた。本来なら俺が認めた奴以外に妹をくれてやるつもりはない的な事を言うべきだと思うのだが、それ以上にこの連中の変わり身の早さに驚きだ


「ダメだ。俺を“義兄”と呼びたいなら遊華と付き合って結婚してからにしろ。まぁ、結婚する前にちゃんと恋人同士にるのが先だがな」


 遊華と付き合っている事はもちろん、由紀、美優と付き合っているなんて事は絶対に言えない。それに、未来の事も迂闊に喋ったらとんでもない事になるのは目に見えている。この連中が悪い奴とは言わんが、完全に信用できるかと言われれば否だ


「「「「「「「そ、そんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」


 再び男子の合唱が校門前に響き渡る


「そんなもこんなもあるか!遊華だけじゃない!由紀や美優も同じだ!彼氏彼女の関係になりたいならまず互いを知ってからにしろ!自分の想いを一方的に押し付けるんじゃねぇ!」


 面倒になった俺は遊華に告白した連中だけじゃなく由紀と美優に告白した連中にも同じ事を言った。入学式の日くらい穏やかに過ごしたいものだ。


「お兄ちゃん……」

「遊くん……」

「遊さん……」


 やってしまった感が尋常じゃない。そして、遊華達の熱い視線をどうしたものか……


「帰るぞ」

「「「うん!!」」」


 今日の俺は入学式が終わって教室を出るまでは普通だった。遊華達が告白されているシーンを見てからおかしくなったんだ。じゃなかったら校門前であんな恥ずかしい事を言うはずがない。












今回は遊華の入学式から集団告白まででした

次回から新学期本番の話をしようと思います。それに伴って謎の女性だったりいろいろ出てきますが

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ